(35 / 158) 浦原娘主 (035)

「夜一サン、ちょっとお話が…」


座椅子に姿勢を悪くして座っていた夜一の元に喜助が訪れた。


「おぉ、喜助。珍しいの、お主からわしに会いに来るなんて。」


夜一は目を丸くするが『何をしたんじゃ?』と含み笑いをする。
そんな夜一に苦笑する喜助だが、早速本題に入る。


「真由美サンの事ッスよ」

「また血を吐いたのか?」


心配そうに眉を顰める夜一に喜助は首を振る。
夜一は安心したように肩の力を抜いた。


「ではなんじゃ。彼氏でも出来たのか?」

「それは絶対ないッス」


キッパリと言い切る喜助に夜一は呆れるばかりだ。
夜一はウザそうに先を急がす。


「…先の真由美の体調不良は姫椿が原因なんス。」


喜助の言葉を聞いた夜一はスッと顔を険しくさせ喜助を見やる。


「それは…本当か?」

「本当っすね。本人に聞きましかたら。」

「本人…姫椿か」

「そうっす。」


頷く喜助を見つめ考えるそぶりを見せる夜一。


「信じられんが…あれ程の斬魄刀じゃ。そんな芸当も軽々やってのけるのだろうな…それで、何の用でお主にそんな事をいうんじゃ?」

「……真由美サンを鍛えてくれと。」


なんじゃと…?と夜一は眉を顰め喜助を睨みつける。
喜助は冷や汗をかき、夜一に弁解する。


「アタシも反対したッス!!けど姫椿を扱えないようにしないと真由美サンは一生寝たきりかもしれません。」

「…どういう事じゃ。」

「姫椿の力は今の真由美サンには毒なんすよ…」

「毒?」


そうっス。と頷く喜助に夜一は黙って話しを聞く。


「幸い姫椿は真由美サンを主として認めている為死ぬことはないんですが血を吐き続けるのは避けられないんス。」

「だから力を制御できるようにして少しでも軽くしようということか…」

「その通り。最初は真由美サンから頼まれた事なんスけどね…」

「……それで、何故わしにそれを言うのじゃ。」


勘繰るように喜助を見つめる。
その視線に喜助は苦笑する。


「手伝ってくれませんかね?流石のアタシでも一人であの斬魄刀を相手するのは難しい。」

「……………」

「無理とは言いませんよ。」


夜一は黙ってしまい、喜助もこれ以上なにも言わない。
沈黙が続き、夜一が溜め息を付く


「まったく。わしが真由美の事で断れないと知っていてそれを言うのかの……良かろう。修行は地下を使えばよかろう。」

「申し訳ないっす」

「お主の為ではない。真由美の為じゃ。…ところで、わしら二人でするのか?」

「いいえ、銀嶺殿にも協力を仰ごうかと。あの人なら秘密をそう易々話す人じゃないっすからね。」


夜一は目を細め笑みを作る。
その顔は『お主も悪よのう』と言っているかのようだった。
喜助も『いやいや、夜一サンこそ』といった顔だ。
巻き込まれる銀嶺には何の罪悪感もないらしい。
人として最悪だ…


その後喜助は銀嶺のいる六番隊を訪れ、協力を仰ぐ。
銀嶺は快く引き受けてくれた。
真由美を孫のように可愛がってくれている彼のことだから聞いたら断らないだろうと喜助は踏んでいた。
本当に銀嶺は哀れである…

35 / 158
| back |