その頃、真由美は再び血を吐き苦しんでいた。
「お嬢様…!!」
「だい、じょうぶ…だから…ゲホッゲホっ」
「お嬢様…」
何時もならもう止まっているはずなのにまだ血は止まらない。
何故だろうと真由美は思う。
だがその答えを見つける前に真由美は目の前が真っ暗になってしまった。
****************
「真由美サン!!!」
喜助は屋敷の者からの報告に仕事を切り上げ真由美の元へ急いで帰ってきた。
「旦那様!!真由美お嬢様がっ!!」
「落ち着いてください、トキ。大丈夫ですら」
手や服を血だらけにしてトキは目に涙を溜めて帰ってきた喜助に詰め寄る。
そんなトキに喜助は肩に手をやり落ち着かせる。
喜助が帰ってきて安心したのかトキは落ち着きを取り戻す。
「真由美お嬢様は突然血をお吐きになられそのまま気を失ってしまいました…旦那様が仰られたようにお医者様を呼ばず血が止まるまで安静にさせておりましたけれど……」
トキは血だらけの手を胸元で握り締め喜助を見つめる。
「旦那様…なぜお医者様を呼ばないのですか…」
「……真由美サンは病気ではないんスよ…」
「ご病気ではなかったら何故血をお吐きになられるのですか!!」
長年トキは浦原家に仕えているが喜助にもその父親である大旦那のときだって声を荒げたことはなかった。
喜助は少し興奮状態のトキを落ち着かせるよう言うが落ち着くことはなかった。
「落ち着いてください!」
「落ち着けません!!お嬢様がこんなにも苦しんでおられるのに…!」
「アタシもそれには心苦しいッス!だが嘆いたってもう真由美サンは元の体には戻りらない!!」
喜助の言葉にトキは目を丸くし喜助を凝視する。
言葉の意味が上手く理解できていないのだろう。
口をパクパクとさせ混乱していた。
喜助はトキの背中を押して部屋に入る。
誰も居ないことを確認し、障子を閉める。
トキは座らず呆然と立っていた。
喜助はトキを座らせ、自分もトキの前に座る。
「アタシはアナタ達に真由美サンは流魂街で起きた村の虐殺の生き残りだから保護しその後養子にした、と言いましたよね?」
「はい…」
「アレは半分嘘なんです。」
「う、そ…?」
トキは驚き目を丸くする。
「…真由美サンの村は山賊に襲われ、真由美サンだけが生き残りました。」
「………」
「ですが真由美サンは山賊に襲われそうになった時、斬魄刀に助けられたのです。」
「斬魄刀…」
「その斬魄刀で真由美サンは山賊を返り討ちにしました。」
「…!」
信じられない、とトキは思う。
トキの知っている真由美は優しい子だ。
人を殺したことのないような純粋で無垢で真っ白で。
到底人を殺した感じはなかった。
喜助はそんなトキに苦笑いを浮かべる。
「姫椿と姫桜、この名に覚えはありますか?」
「はい…誰でも知っている斬魄刀、ですよね…」
喜助は頷く。
トキは喜助を見つめ、次へと急かす。
「そのお二人が真由美サンの斬魄刀なんすよ。姫桜が真由美の代わりに山賊を殺したんです。」
それを聞いてトキはホッとする。
だが一つ、疑問が浮かぶ。
「ですがその斬魄刀と吐血…どういった関係が…」
「吐血は姫椿が原因なんす。」
「斬魄刀が…原因?」
トキは首を傾げる。
喜助は頷き、夜一や銀嶺に説明したのと同じようにトキに説明する。
「そんな事…あるのですか…?」
「わかりません。アタシも今まで生きていてこんな事初めてですから…でも姫椿はアタシ達が思っている以上の力の持ち主だという事は間違いありません。」
「………………」
「吐血はこれからも出るようですが回数は減らせるようです。…ですからどうか我慢してくれませんか?」
「………………」
「心配なのはアタシも一緒です。…でも制御しなくてはずっと血を吐き続け生き地獄になってしまう…」
「………………」
トキからの返事は来なかった。
喜助は黙って部屋を出ようとする。
「お嬢様は、もう健康には戻れないのですか…」
「……はい。でも病人ほど弱まる訳ではないようです。持病持ち、と考えた方が早いでしょうね…」
「…わかりました。このトキ、お嬢様のお側に仕え心の支えとなりましょう…」
決心したトキの目を見つめ、喜助はお礼を言い部屋を出る。
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