「真由美お嬢様、集まりの日に備えてお着物を選びましょう」
「えぇ」
私は世話をしてくれるトキに何着もの綺麗な着物を用意してくれた。
三日後…もう夜だから二日後だけど貴族の集まりに行かなくてはならないらしく着飾らなければならないらしい。
「これらのお着物は旦那様がお選びになられたんですよ」
「お父様が?」
「はい。なんせ明々後日はお嬢様の一世一代の舞台と言っても過言ではございませんからね!」
「トキったら…大げさよ」
一世一代って…そりゃ表に出るのは苦手だけどさ…
お父様とトキ…というか浦原家は私を表に出す気はないらしい。
恥ずかしいから、とかではなく私を愛してくれているからだ。
私は少し恥ずかしくて嬉しくて頬を染めていたと思う。
だってトキがとても愛おしそうに見てくるのだから。
「どのお着物になさいますか?」
「そうね…どれも素晴らしいから迷ってしまいますね…」
「えぇ、旦那様は真由美お嬢様を思い選んだ物ですからね。どれも素晴らしいお着物ばかりです」
私とトキは顔を見合わせて笑い合う。
でもやはりどれも綺麗で可愛くて選びきれない。
「そう言えばお父様は今日帰れないのでしたね?」
「はい。まだやり残った仕事があるとのことです」
「そう…」
「寂しゅうございますね…」
寂しそうな顔の私につられたのか、トキも寂しそうにする。
そんなトキに私は首を振り、少し笑顔を見せる。
「寂しくないと言ったら嘘になるけどお仕事だもの…仕方ないわ…」
「お嬢様はお強いですね…」
トキも笑顔になって私は着物選びに戻る。
私はその夜、お父様に決めた着物を見せることを楽しみにして眠りについた。
それの楽しみが悲しみに変わることを知らずに…
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