「またエライ物を拾ってたのう…」
「はは。否定できませんね。」
人目を避けてついた先は二番隊の隊長室。
そのソファで血だらけの着物を着た少女が横たわって眠っている。
「で、どうしまようかね。この子…」
「そうだのう…とりあえず目を覚ましてから考えるとするか。まだ謎は残っているからのう、本人に聞いた方が早い。」
「……そうッスね」
「と、言うわけで喜助、その子供連れて帰れ。」
アタシはその言葉にフリーズした。
夜一サンは子供をアタシに抱かせて二番隊から追い払った。
あの人は文句言っても聞きやしないのでしょうがなくこの子供を屋敷へと連れて帰る。
あぁ、屋敷に帰ったら煩そうだ…
****************
「き、喜助様!?その子供はどうなさったのですか!?」
「ちょっと預かる事になったんですよ。」
「どなたに?」
「あー…夜一サンからですかね…」
やはり屋敷の者は大騒ぎ。
アタシの隠し子とまで言われる始末…
しかも嬉し泣きされ違うと言うと悔し泣きされる始末…
なんですか、なんなんですか…
そんなに結婚させたいんですかあんた達は…
手伝いの者にこの子供の部屋と布団を用意させ、決して近づかないように言ってからアタシも布団に入る。
例え子供が持っていた刀は夜一サンが預かっているとしても油断は出来ない。
というかなんでアタシが預かる事になったんでしょうね。
監視させればいいのに…
****************
朝、目が覚め子供の部屋へ向かう。
目を覚ましていたら事情を聞かなくてはならない。
多分あの子供は警戒して喋ってくれないかもしれないだろう。
面倒だなぁ…
「入りますよ。」
起きているか分からないが礼儀なので一応。
部屋に入ると布団には子供の姿は見えない。
周りを見回ると部屋の端っこで身体より大きい刀を抱いて怯えた顔してコチラを見ていた。
「その刀…」
「ひっ!!」
「………………」
『なんで持っているのですか?』、と聞きたかっただけなのに喋っただけで怯えられた…
アタシってそんなに凶悪な顔してましたっけ?
でも確か、その刀は夜一サンが持っているはずなのに何故この子が持っているのか…
「そんなに怯えなくても何もしませんよ。アナタが何もしなければ、ね。」
「…………………」
「…分かりました。ここから動きませんから質問に答えてくれませんか?」
「…………………」
アタシはとりあえず話だけでも聞こうと怯え震える子供を安心させるよう微笑みを作りその場に座る。
子供はまだ警戒しているのか、ただ単に怯えて何も言えないのか。
分からないが答える気配はない。
ぐーーー…
「……………」
「……………」
「…まずは朝ごはん食べましょうか。」
「……………」
よく考えれば子供もアタシも夕飯を食べず寝たのだから子供が腹を鳴らすのは当たり前だ。
だけど子供は恥ずかしいのか顔を赤くして頷く。
あらやだ、結構可愛い…って何を言っているんだ、アタシは…!
****************
「…………」
「…………」
食事を用意させてる間、沈黙が続く。
配膳係りの者が来たら子供はまた怖がるそぶりを見せる。
人が怖いのだろうか。と思いアタシはその者たちに部屋の前に置いておくよう言ってアタシが子供の前に食事を置く。
アタシが動くと子供はビクッと体を揺らす。
アタシの前に子供の食事を置く。
少し…いや、大分距離はあるが子供はそれでもアタシを警戒し、ゆっくり配膳の前に移動する。
その間も刀、多分この子供の斬魄刀なのでしょうね。
その斬魄刀を抱え食べにくそうに食べる。
「それじゃぁ、食べにくいでしょう?それを置いて食べた方がいいと思いますよ?」
「でも…桜ちゃんが…ぜったい放しちゃだめって…放したら守れないからって…」
「桜ちゃん?」
子供が喋った。
いや、喋るだろうけど。
返事は期待してなかったので驚きだ。
それにしても桜ちゃんとは誰だろうか…
「……おじさんは…わたしをどうするの?」
「
(おじさん…)…まずはご飯を食べてからにしましょうか。」
「……………」
今言うことではないので食事を終わらせることにする。
子供は流魂街で暮らしていたにしては上品な食べ方をする。
貴族ほど上品ではないが普通と言えばいいのか。
子供らしく少しずつ小さい口でご飯を平らげていく。
子供にしては多い量だ。
きっと屋敷の料理人が張り切ったのだろう。
ここの屋敷の者は基本いい人間だから。
だけど子供は無理して平らげる。
根はいい子なのか、それともアタシが怒るとでも思っているのか。
分からないが昨日の子供とは別人なんじゃないか、と思うほど雰囲気が違っている。
****************
食事も終わり、夜一サンのとこへ連れて行くのもまだ時間があり、とりあえず話しを聞く事に。
「さて、まずアナタの名前を教えていただけないでしょうかね。」
「真由美…」
「真由美サンですか。アナタはまずある人に会ってもらいます。」
「ある、ひと…?」
「はい。アタシの上司で…上司って分かりますか?」
「えらい人のこと…」
「そうです。その偉い人に会って、辛いでしょうけど昨日の事を話してもらいたいんです。」
「き、のう……」
子供は昨日、という言葉に顔を青くし、俯く。
正直心が痛むが生き残りはこの子だけなのだ。
しかもアタシ達を襲った理由も聞きたい。
子供を処罰するのはアタシも夜一サンも賛成しかねるが、もし理由が理由ならば何かしらの処罰も考えなくてはならない。
「桜ちゃん、だめだよ………だって…この人はいい人だと……でも……」
「…あの…?」
俯き何も喋らなかった子供…真由美サンが急に喋りだす。
しかも独り言。
声をかけるがアタシの声は聞こえていないらしく、反応がない。
「そうじゃないよ。おちついてよ……わかってるよ…だけど、ちがうと思うんだ…………それは…」
「………………」
「かんがえすぎだよ…だからおちついてってば!わたしの頭がわれちゃうよ!
!!
桜ちゃん!!だめぇ!!!!」
「…!!?」
今まで小声だったのが急に大声を出す。
そして急にアタシに向かって斬魄刀を抜く真由美サン。
その瞬間キンッという刀がぶつかり合う音、そして子供とは思えない力でアタシを押さえ込む真由美サン。
アタシは紅姫で真由美サンの斬魄刀を受け止める。
「やめてよ!!やめて!!桜ちゃん!!!!わたしもうやだよ!!!桜ちゃん!!!!!!」
真由美サンは泣き出しそうな顔をして斬魄刀に話しかける。
多分、身体が斬魄刀に操られているのだろう。
よくある話しだがどうやら真由美サンは完全に操られていないようだ。
桜、というのが斬魄刀の名前だろう。
名前と本体と会話出来ているという事は驚きだ。
その時アタシの頭の中に直接話しかけてくる声がする。
≪貴様この方になんの用があって引き止める!!!≫
「アナタは…」
≪私はこの方の斬魄刀だ!!死神如きがこの方に何の用だ!!!≫
「おちついてってば!!!もうだれもころしたくないよ!!!桜ちゃん!!!!」
「とりあえず落ち着いてください。真由美サンが泣いてしまってますよ。」
≪死神如きがこの方の名を気安く呼ぶな!!!!……貴様が今すぐこの方を解放するというのならばこの身、退こう。≫
「桜ちゃん…いうこときいてよ…おねがい…」
≪真由美様…畏まりました…≫
真由美サンに言われ、渋々真由美サンの身体の自由を解いた桜サン。
真由美サンはアタシの目の前で泣きながら謝る。
「…ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい…」
「…大丈夫です。気にしてませんから…怪我もなかったですし…ね?」
安心させるように真由美サンの頭を撫で励ます。
普段のアタシじゃ考えられない行動だ。
夜一さんが見たら槍が降ると言われそうだ。
それでも真由美サンは泣き止まず、結局出勤ギリギリまで泣いていて、誰もが泣いたと分かるほど目を赤くしてしまった。
使用人に冷たいタオルを用意させ、少し目の腫れが引いたとき、大遅刻になってしまった。
まぁ夜一サンなら許してくれるだろう。
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