(7 / 158) 浦原娘主 (007)

アタシの後ろをひよこのようについて来る真由美サン。
時々後ろを振り返り真由美サンが追いつくまで待ってあげるの繰り返し。

手を引く事や抱っこしてあげるのも手なのだが桜サンが拒否反応を示し、刀をカタカタ鳴らすので出来ませんでした。
そのとき真由美サンは『し、しつれいだよ!!』って慌てていましたが…言っている事は予想がつきます…
確かに必死についてこようとする姿に周りの死神はにやにや…じゃなくて微笑ましく見ていて、こちらも可愛くてつい笑みになってしまう。
頭を撫でたときの嬉しそうな顔なんて仕事じゃなければそのまま養子にしてもいいぐらいだ。

ついた時にはすでにお昼でした。
すれ違う人にヒソヒソと何か言われていたが、まぁ、多分…桜サンと同じような事や屋敷の使用人と同じ事を言っているのだろうなぁとちょっと涙を浮かべながら思いました。
まだ犯罪者になるつもりもないし、結婚もしてないですからね。
そこんとこ分かってくださいね…



****************



「遅かったんじゃな」

「いやーすみませんね。」


二番隊に入っても目線は弱まることはなく、時々ロリコン?とか警察呼ぶ?とか誘拐…?とか聞こえます。


隊長室へ入り、夜一サンは真っ先に笑ってくださいました。
それは思いっきり。
側にいた砕蜂サンが驚いているほど盛大に。
アンタが預けたんでしょ!!と言いたいが真由美サンがいるんで言えません…
あぁ、アタシって結構いいパパになるんじゃないでしょうか…


「やはり主人の元に行ったか。」

「行ったか、じゃないですよ。取り来てくださいよ。おかげでエライ目にあったんですから。」

「ごごごごごめんなさい!!!!」

「イ…イヤ、真由美サンを責めてるわけじゃないですから!!ね!?」


夜一サンは真由美サンの謝りっぷりがツボに入ったのかまた爆笑。
真由美サンは行き成り笑い出した夜一サンに唖然として口を大きく開けて夜一サンを見上げる。


「すまん、まさかこんな可愛い女子だとは思わなくての…笑ったのは喜助に笑ったのじゃ、気にするな。」

「はぁ…」


あぁ、アタシに笑ったんですね。
失礼な上司には慣れっこなので気にしてませんけどね!
だけどやっぱり辛くて無意識にアタシは真由美サンの頭を撫でていた。
それをみた砕蜂サンが『犯罪くさい』と呟きアタシは我に返り手を放す。
真由美サンは残念そうな顔してたのが救いです…
そして真由美サンを座らせ、本題に入る。


「それで、聞きたい事があるのじゃ。よいか?」

「はい……きのうの、ことですよね…」


真由美サンは桜サンをぎゅっと抱き締め俯く。


「まず、何があった」


夜一サンは優しく、なるべく真由美サンが怯えないように話しかける。
真由美サンは俯きながら答える。


「きのうの前の夜…さんぞくが来たんです。お母さんがかくれてって…わたしと、お姉ちゃんと、お兄ちゃんにいって…かくれました。」

「………」

「かくれたけど…見つかって…お母さんもお兄ちゃんもお姉ちゃんもころされて…わたし、さんぞくにゆかに寝かされて…いやだって思って…でも声がでなくて…」

「そうか、辛かったの…」

「でも、声がきこえたんです」

「声…?」

「桜ちゃんの声が…頭のなかにひびいて…きづいたら桜ちゃんをにぎってて…そしたらまわりのさんぞくが氷におおわれて…」

「桜ちゃん…?」

「この子…」

「その斬魄刀が桜ちゃんと言うか?」

「斬魄刀?」

「その刀のことっすよ」

「…?」


死神ではない。しかもまだ子供の真由美サンには斬魄刀が分からず首を傾げアタシを見上げる。
アタシは真由美サンに『後で教えてあげますよ』と言って頭を撫でる。


「あ、でも桜ちゃんのほんとうのなまえは姫桜って言うんだって」

「「「姫桜!?」」」


撫でられご機嫌なのかアタシにそう告げる真由美サン。
その名前を聞いたアタシと夜一サン砕蜂サンは息を呑んだ。

姫桜。
姫桜という可愛い名前をしているがこの斬魄刀は天使にもなり、悪魔にもなるという斬魄刀。


「わたし、たたかえないの。人をころしたことないの。だけど桜ちゃんがわたしのからだをあやつってさんぞくをころしてくれたの。おかあさん達の仇をうってくれたの。」

「…斬ったのは山賊だけか?」

「………おぼえてないの…桜ちゃんがわたしの視界をふさいで、わたしの耳をふさいで…わたし、ねむっていたの…」

「そうか。」


どうやらアタシと出会ったのは姫桜に完全に乗っ取られた真由美サンらしい。


「ねぇ、わたししょばつされるの?桜ちゃんと離れ離れになるの?」


真由美サンは不安そうな顔を夜一サンに向ける。
夜一サンは安心させるよう微笑みを真由美サンに向ける。


「大丈夫じゃ。お主は処罰されぬ。…じゃがお主の斬魄刀は少し問題がある。」

「桜ちゃん、しんじゃうの?」


真由美サンは涙を溜め奪われないように力一杯姫桜を抱き締める。
そんな真由美サンにアタシたちは離れ離れにすることも出来ず、どうしようかと困惑する。
するとアタシは会話できる事を思い出した。


「そういえば、アタシ姫桜と会話したんですが…」

「桜ちゃんは、そんじょそこらのざんぱくとうとは違うから何でもできるっていってた。」

「そうなのか。やはり伝説級の斬魄刀は違うのう…」

「伝説?」


まだ斬魄刀の意味もわからない真由美サンは首を傾げる。
夜一サンは説明するにも色々面倒だったのか今だ首を傾げている真由美サンを誤魔化し、姫桜と会話できるよう真由美サンに頼む。


「……………………」

「…………」

「…………いいって。」

「そうか、すまんのう」

≪ちょっと、さっきから聞いていたら私の真由美様に慣馴れしくして…死神風情が無礼ですよ!?≫

「あわわ!!桜ちゃん!しつれーだよ!!だめだよ!!この人えらい人なんだよ!?」

≪いいえ。真由美様は人類の頂点に立っておられる方なんですもの。それくらい当たり前のこと。≫

「えー!?わたしじんるいのちょうてんに立ってんの!?何そのあーるぴーじーのまおうみたいなせってい!!」

≪あーるぴーじー?何ですか?そのあーるぴーじーとは…≫

「とにかくあやまらなきゃ私たち離れ離れだよ!?わたしそんなのやだよ!!」

≪あぁ!この姫桜光栄の至りですわ!!≫

「だーかーらー!」


感激しているであろう姫桜に真由美サンは頭を抱える。
というかアタシとの会話と今の会話では印象が大分違う。
こんなキャラだったのか…と隣の砕蜂サンが呟く。
おや、奇遇ですねアタシもそう思ってました。
砕蜂サンが聞いたら怒鳴られそうなことを思い、アタシは隣にいる真由美サンを見る。


「そろそろ本題に入っていいか?」


いつまで経っても本題に入れないので夜一サンが声をかける。
真由美サンは我に返り姿勢を正す。


≪で、その死神風情が何の御用ですの?≫

「……昨日の話しを聞きたいのじゃ。山賊を殺す理由は分かる。だが、死神を殺した理由が分からぬのだ」

≪ふふ、わかりませんの?だから死神は嫌いなのです。自分がしてきたことを忘れ、すべてコチラが悪いと思い込む…≫

「桜ちゃん。」

≪…畏まりました。いいでしょう。理由は簡単。憎かったからですの。≫

「憎かった…?」


姫桜は随分と死神に恨みを持っている。
部屋の空気が重く、普通の人間や新人なら耐えられないだろう。


≪そう、憎い。二刀一対だったお姉さまと私を離れ離れにし、ここ数千年はお互いを感じる事はできなかった。≫

「だから、死神を殺したのか」


夜一サンは表情を険しくさせ、姫桜に殺気をおくる。
その殺気に真由美サンは怯えアタシの服を掴む。
それを見た夜一は慌てて殺気を止める。


≪あなた達にしてみればそんな事で仲間を殺したのか、とお怒りになられるでしょうね。でも、こちらは掛け替えのない姉を縛り、自由を奪った…あなた達死神には分からないでしょうね、この私たち姉妹の気持ちは≫

「桜ちゃん…」

「あの姫桜が姉妹刀だというのは聞いたことないが…」


砕蜂サンが呟く。
アタシも夜一サンも知らない。
多分、真由美サンも。


≪それはあなた方が生まれる前の出来事だからでしょうね。死神というのは自分達に不利なことは隠したがるものだもの…≫

「不利…?」

≪……真由美様がいて話せる内容ではないもの、という事だけ言っておきますわ≫


それは主に…真由美サンに知られてはまずいのだと、子供が耐えられない程酷い事件が起きたのだとアタシ達は推測する。
夜一サンも砕蜂サンもアタシも険しい顔をする。
それを感じ取っているのか真由美サンは片方の腕で姫桜を抱き、もう片方でアタシの服を掴み不安そうな顔をする。
アタシは見ていられなくてアタシの服を握っている真由美サン小さな手をアタシの手でそっと触れる。
真由美サンはハッと顔をあげアタシを見る。
アタシに笑顔を向けられ少し安心したのか真由美サンも少し笑顔を見せる。


≪兎に角、ようやく現れた私達の主様…その生活を壊すというのならば私はあなた方を殺してでもここから逃げますわ。≫

「………そうか…それは困ったな。」


夜一サンが苦笑いで姫桜を見つめる。
真由美サンは姫桜を見つめる。


「すでにわし達に危害を加えていてその斬魄刀があの姫桜だった。」

≪何が言いたいのです。≫


行き成り話し始める夜一サンに姫桜は困惑する。
夜一サンはそんな姫桜を無視し、真由美サンを見る。


「のう、お主、姫桜と一緒にいたか?」

「はい」

「そなたはどうじゃ?」

≪…………いとうございます≫


アタシと砕蜂サンは何でこんな事を聞いているのだろうと不思議に思いお互い顔を見合う。
だが、夜一サンが何かいい案でも思い浮かんだのだろうとすぐに顔を夜一サンに向きなおす。


「なら、約束しろ。もう死神や他の者には危害を加えないと。」

≪何故…?≫

「約束するのならば上には適当に誤魔化してやろう。真由美とも離れ離れにしない。お主達は死神になるのも良し、普通に暮らすのも良し。…どうじゃ?いい話しではないか?」


夜一サンの提案に姫桜は考えるように黙る。
真由美サンは夜一サンを明るい顔で見つめ、真由美サンの目線に気付いた夜一サンは笑顔を向ける。


≪……確かに、いい提案ですこと。でも衣食住はどうなさるおつもりで?まさか放り投げる訳ではないでしょうね。≫

「勿論そんな事はせん。喜助の養子になればよい。」



あれ、なんか、アタシの名前が聞こえたような気が…




≪真由美様がこの男の養子になられる…断ったらどうなさるのかしら。≫

「そうだのう…上に話さなきゃ駄目じゃのう。そうなればお主は封印、真由美と離れ離れじゃ。そして真由美は蛆虫の巣送りじゃ。喜助以外お主の存在を知っている人いないし。」

≪あなた方ではならないのですか?≫

「構わぬが…喜助の方が金持ちじゃぞ?その上お姫様じゃ。」


金持ちだからっていう理由であの姫桜が大切な主をこんな男に預けるわけないと思いますよ、夜一サン…


≪貴族という事ですか…それでは尚のこと賛成しかねます。≫

「大丈夫じゃ、お主の心配するお家騒動はないと言い切れる。喜助の使用人達は皆大喜びして真由美を蝶よ花よと育てるぞ。」

≪……………一つ、問題がございます。≫

「なんじゃ?」



≪お姉さまの名は姫椿と申します≫


「「「!!!!???」」」


姫桜より衝撃的な名前にアタシたちは息を飲む
真由美は何の事か分からず首を傾げ固まるアタシ達を見渡す。
姫椿、その名を知らない死神はいない。
姫椿は過去に使い手の精神を乗っ取り残虐非道を尽くしたと言われ封印されたと聞く。
姫桜の姉刀も封印されたと聞いたがまさか姫椿だとは思わなかった。


≪先も言ったように私達は元は二刀で一つの斬魄刀。真由美様は必ずお姉さまをお使いなられる。それでもよいのでしたら私からは何も言いませんわ。≫

「……………」

「……………」

「……………」

「……………」


なんでアタシを見るんですか…


4人(三人一刀?)に一斉に目線を向けられアタシは目を背けるしか出来なかった。
すると真由美サンが夜一サンをみて…


「でも…迷惑かけたのにまた迷惑かけれません…どこでもいいです。桜ちゃんのことはうまくかくしますから……だから…」


あぁ、アタシはなんて馬鹿なんだろうか。
こんな子供に気を使わせた上に子供に我慢をさせるだなんて最低な大人だ…


「真由美サンがアタシで構わないならアタシの娘になってもらえませんか?」


そうしてアタシと真由美サンは親子になった。
あの姫椿の事なんてどうにかなりますものね…

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