俺は貴族なんて知らないし、興味がない。
本気で死神になるために此処にいる。
もう誰も傷つけたくなくて。
だから浦原真由美なんて人間がいることすら知らなかった。
「おい、あそこに貴族様がいるぞ」
「本当だ。暢気に読書なんかして…いいよなぁ金があるやつは」
「お前それって暗に金で入学したって言いたいのか?」
「あ、そう聞こえる?」
「貴族様に聞こえたら退学になんぞ?」
「うわ!こっわ〜」
わざと大声で言っているのがバレバレで鬱陶しい。
だが当の本人は本に夢中か、無視をしているか…
多分無視をしているのだろう。
反応をしないそいつにやつらは舌打ちをしてどっかに行った。
それが俺が初めて浦原真由美という人物を知った時だった
****************
それ以来そいつは俺の視界に入ってくる。
いや、違う。
俺がそいつを見てるんだ。
そいつは別に優秀だとか天才とかで騒がれる程成績は良くない。
上の中というところだ。
それでも凄いと俺は思うが成績よりも貴族という事で妬んでいる奴しかここにはいなかった。
俺も天才だと言われ妬まれるがまだマシな方だったのかと思わざるを得ない。
そいつは最初、初歩的というか定番というか…無視や陰口だけだったが段々エスカレートしていって今じゃ水をかけられそうになったり授業を邪魔したり…
酷いときはそいつの書物を池に捨てたり破いたりしていた。
先生達も気付いているのに気付かないフリをしていた。
先生は何故かあいつを白い目で見る。
皆が皆と言うわけではないがあいつは先生に嫌われている。
嫌われることをしたとしてもやりすぎ感が否めないがあいつはそれすら無視している。
正直凄いと思う。
貴族というのは弱いものだと思っていたからだ。
精神的にも能力的にも。
だがあいつは耐えている。
昔の俺のようだと思った。
だからだろうか…
放っておけないんだよな…
そう思っていても中々接点は持てないものだ。
持とうと思っていないが、見ているだけというのもなんかスが付く人みたいで気が引ける…
そう思っていたらあいつが三人の女に絡まれていた。
会話の中に朽木という貴族との婚約者だと聞いた瞬間胸が痛んだ。
その痛みに首を傾げながらいるとそいつはその貴族のために怒り出した。
どんな時だってあんなに怒りはしなかったあいつが元婚約者のために怒る。
さっきよりも大きな痛みに襲われ、俺はその場にしゃがみ込んだ。
すると悲鳴が聞こえた。
顔を上げると絡んでいた三人が何故か木で吊るされていた。
俺は流石にヤバイと感じてそいつの腕を掴んで止めさせる。
意外と細い腕で俺は驚く。
「日番谷…冬獅郎…」
不謹慎だがそいつが俺の名前を知っていた事に喜びを覚える。
だが顔に出さないように必死だ。
「何してんだ…お前…」
「……………」
そいつは俺を見つめる。
俺もそいつに見とれ、お互い見つめあう形になる。
「た、助けて!!」
「私達なにもしてないのにこの子が…」
「お前らに聞いているんじゃねぇよ」
「なっ…」
俺はぎゃーぎゃー騒ぐ女達を黙らせる。
「……なぜ、貴方が出てくるのかしら」
「誰だってこんな場面見たら止めるだろ。」
そう言った俺にそいつは少し呆れ顔された。
正直、お前だから止めたんだ。
「桜ちゃん、解放していいわ」
ボソっと俺にしか聞こえないように呟く声に反応して木は三人は解放した。
解放された三人はそいつに怯えた顔を向けて一目散に逃げていく。
そいつはその三人を見届け反対側に歩き出す。
俺など目もくれず去っていく。
俺はそいつを食い入るように見ていたことに気付かなかった。
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