何とか今日中にフチの姉が住んでいるコタンに寄る事ができ、水城達は馬を繋げてお土産を持って大伯母を訪れた。
「この人が私の大伯母だ」
「アシリパ!」
アシリパや水城達の訪問を大伯母は喜んでくれた。
特に妹の孫に大伯母は笑顔を浮かべ、ウルイルイェというしゃがんで抱き合い髪や肩や手を擦り合う久々に会った際に行う女性の挨拶をし合う。
ウルイルイェも終わったのか立ち上がった大伯母にお土産として持って来たアザラシの皮と肉を手に近づく。
「見て!ほら!トッカリが獲れたんだ!」
「肉と皮ですよお婆ちゃん」
「…!」
お土産のアザラシを見せると大伯母はアシリパと会えて笑顔だった顔が悲し気に変わり、涙まで流し始めた。
ポロポロと流す涙に水城達に動揺が走る。
「あ、あれ?泣いちゃったけど…」
「な、何かあったのか?」
泣き出してしまい涙が止まらない大伯母にアシリパも動揺し、水城は後ろにいるキロランケと白石と顔を合わせた。
落ち着いたのか話は中に入ってからすると言い、大伯母は悲し気にしながらも健気に水城達を暖かく家に迎え入れてくれた。
中に入れば火を焚いているので暖かい空気が水城達を包む。
それぞれ座り、アシリパが大伯母の隣に座り涙ながらに語る大伯母の言葉を和人のために訳してくれた。
「フチ達の家には母親から代々譲り受けてきた大切な宝物があったそうだ…」
その宝物は衣服だった。
普通の衣服とは違い、何頭もの上質なアザラシの皮を使って作られた手の込んだ物らしく、大伯母の娘が結婚した時にも譲った受け継がれた大切な衣服だった。
しかし、その娘の夫…義理の息子は正に絵の描いたような駄目男だった。
酒と博打の癖があり、博打や酒のために妻の家で代々大切に受け継がれた宝物をたったの30円で人に売って本人はどこかへ逃げてしまった。
「酷い…許せない」
そう呟いたのは白石だった。
犯罪者である白石が聞いてもその義理の息子の所業は決して許せるわけがない。
その呟きにアシリパが頷いた。
「フチの家に伝わっていたものなら私にとっても大切なものだ!私が買い戻してくる!」
フチの家で大切にされていた物なら当然アシリパにとっても大切な宝物だ。
悲しむ大伯母にそう言って元気付けた。
「そんなお金あるのぉ?」
「………」
「あれ?アシリパちゃん??なんで何も言わないの???」
「………」
「えええ…むしぃ??」
白石はうんうんと頷いていたが、ふと疑問に思った。
大損させた自分が言うのも何だが、そんな大金あるのか、と。
たった30円と言うが、大体数十万はする。
猟をして必要な費用を稼いでいるとはいえ、決して自分達は裕福なわけではない。
そう思っていたが、アシリパからは無言を返された。
インカラマッが当たりの馬券を買っていてくれたおかげで5円が37円になったのだが…アシリパはそれを脱糞王には黙っていた。
アシリパは『ねえ??無視はやめよぉ???』と零す脱糞王を無視し水城へ目線をやる。
「いいだろうか、水城…」
「勿論!私もほっとけないよ」
「それで…誰に売ったんだ?」
水城も同じ女として、そして母として、義理の息子のした事を決して許せず聞いていて怒りしか湧いてこなかった。
満員一致でその宝物を取り返す事に決まり、キロランケはアシリパの大伯母に売られた場所を聞く。
するとこの近くで牧場を経営するエディー・ダンというアメリカ人の手の中にある事が判明した。
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