(74 / 274) 原作沿い (74)

水城は他に木がないか気を付けながら紐を引っ張り白石とアシリパを引っ張り上げる。


「アシリパさん…どうしてここに?」

「気球にお前たちの姿が見えたから何かあったと思い追ってきたんだ…追ってきて正解だったな」


アシリパはキロランケと共に馬を用意し逃亡に備えていた。
だが鯉登に気づかれ気球で逃げることになった。


「水城、傷を負ったのか…少し見せてみろ」


変装するため軍帽はアシリパに預けていた。
それを返してもらい、被り直しているとアシリパは水城の肩が血で染まっているのを見て怪我を負ったのだと気づく。
アシリパは水城の怪我の具合を見るため脱がし、肩と胸元の傷口を見る。


「肩の銃弾は貫通してるが左胸にはまだ弾が入ってる…後で取り出さないと…」


肩の方は貫通し後は薬を塗る処置をすればいいが、肩の方は弾が残っており取り出す作業をしなければならない。
血で塗れた服を着なおす水城に白石はポツリとつぶやく。


「こんな危険を犯してまで俺を取り戻しに来るなんて……俺は脱獄王だぜ?自分で逃げれたのに…」

「みんな白石を諦めようと言った…でも助けに行こうと言ったのは水城だけだ」

「え…ほんと…?」


白石も水城達が自分を取り返しに来るとは思っていなかった。
見捨てられているだろうなと思っていたのだ。
だからアシリパの言葉に白石は嬉しくてつい顔が緩んでしまう。


「網走では白石が必ず私達の役に立ってくれる…あんたを信じてたから助けに行こうと決めた…でもね、白石…私思い出したのよ…ニシン番屋で出会った変な老人のこと…」

「え…?」

「―――お前、土方と内通してたな」

「…ッ!」


ニタニタしそうになる顔を何とか引き締めようとしていた白石だったが、続いた水城の言葉に緩んだ顔を強張らせる。
低く呟かれたその声には確かな怒りが込められていた。
その声に、その怒りに、白石は水城に刺し殺される夢を思い出す。
白石は間違いなく内通していた。
そして自分たちの情報を土方達に流していた。
それは変えられない事実だ。
白石は夢が現実になると思い慌てて水城から離れ飛び降りて逃げようとした。


「待てシライシ!!逃げるな!!これを見ろ!!」


そんな白石に水城は叫んで引き留めた。
その声に白石が恐る恐る水城の方へ目をやれば水城の手には見覚えのあるものが握られていた。
それは白石が札幌で牛山に渡した辺見和雄の刺青の写しであった。


「土方歳三が私に見せてきた…確認したが…―――デタラメの写しだった」


水城が白石の内通に気づいたとき、土方は白石が持ってきた辺見の写しを見せてきた。
それを照らし合わせてみればその写しは辺見の入れ墨と異なっているのが分かった。


「白石は私達を裏切っていなかった」


水城は内心それが嬉しかった。
白石はアシリパに続いて仲間になり付き合いが長い仲間だ。
白石の軽い性格は水城は嫌いではなく、むしろ心地良かった。
友人ではなく、親友でもない。
戦友でもなく、ただの利害の一致で集まった三人だが、居心地はよかった。
だから殺す気は勿論あったが、できれば白石は殺したくないと思うほど水城は白石に信頼を寄せていた。


「そう!!その通り!!言ったはずだぜ!俺はお前らに賭けるってな!!」


しかし、白石はただ水城達を裏切りたくないから偽物の写しを渡したわけではない。
水城が怖くて…水城が中々隙を見せないため偽物の写しを渡すしかなかった。
それが自分の運命を別つとは思っていなかったが、気づいていないのならそれに乗るしかない。
あたかも『そうでしたよ』と言わんばかりに笑う。
そんな白石に水城は…


「でも牛山が旭川製の特大ストゥで白石の肛門を破壊するって言ってたから、その罰は黙って受け入れてね」

「えっ…やだぁッ」


にっこりと笑い不吉なことを言う。
許しはしたが、水城はまだちょっと怒っていた。

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