五条を見送った後、しばらく慣れる意味で伏黒達と話をしていた。
小雛は兄の虎杖と同じく人見知りはしないタイプなのか気難しい人間が多い呪術師達に囲まれても楽しそうに会話を広げていた。
しかし、流石に小町の器を立たせたままにはできず、階段に座らせた。
真希達が驚いたのは、伏黒の行動だ。
『どうぞ』と、小雛お尻が汚れないように使用前のタオルを敷いた。
その驚きに突っこむ前に、話題が広がり、そこで真希達は小雛はあまり物を知らないのだと誰もが気づく。
だが、小雛は小町の器となり監禁され外部を遮断どころか、教育も満足にさせてもらえなかったと伏黒から聞き納得し受け入れた。
話は小雛の術式の話題となり、クロという式神を伏黒も持っていると知った小雛は嬉しそうに笑みを伏黒に向けた。
「恵様もクロという式神をお持ちなのですね」
「はい、これがクロです」
元々、犬型の式神は二体いた。
しかし小雛の兄である虎杖が死んだ任務でシロが破壊されてしまった。
破壊されたらそこで終わる小雛の術式とは違い、伏黒の式神は破壊されても性能を引き継ぐことができる。
その個体はもう顕現させることができないが、その個体を引き継いだ式神を使用することは可能である。
わざわざシロが破壊されたことを小雛に伝える必要はないので、クロだけを紹介した。
印を結んで出した黒色の犬に、小雛の喜びは強まった。
「わぁ!愛らしいワンちゃん!」
自分の術式に影響が出るほど動物が好きだった。
おいで、と両手を広げてみてみればクロが尻尾を振りながら腕を広げている小雛の下へダイブする。
『だれ?』『なでて!』とグリグリと頭を小雛に押し付けて人懐っこい仕草を見せる犬に小雛はくすぐったそうな笑い声を零した。
虎杖の妹とはいえ、その体には特級呪物であり上層部でさえ丁重な扱いをする小町が入っている。
小雛自身畏まった接し方はあまり好きではないようで、敬語は外せないが流石に線引きのない関係性は小町に対して無礼である。
一瞬やめろと言いかけた伏黒だったが、小雛が楽しそうな声や笑顔に口を閉ざした。
「ワン!!ワン!」
伏黒の式神を愛でていると、小雛の脇からにゅっと小雛の呪霊であるクロが顔を出した。
どうやら主人が知らない犬を可愛がっていて嫉妬したのだろう。
小雛の術式は基本戦闘を前提に制作されていない。
小町が要らぬ知恵を与えなければ基本的に愛玩動物として作り出した呪霊が多い。
だから、伏黒の式神と違って感情は生きている生物とほぼ同じである。
『そいつらばっかりずるい!』と鳴き、グイグイと伏黒のクロを追い出すように間に入って主人の膝の上を独占する自身の呪霊に小雛は頬が緩む。
「この子がクロです」
膝の上に乗った呪霊を伏黒達に向けて抱き直す。
主人に紹介された呪霊は、『ボク、クロだよ!』と名乗るようにひと鳴きした。
見た目は異様ではあるが、4本の尻尾をフリフリと振ってこちらを自慢気に見上げる姿は普通に愛らしい。
伏黒のクロが、現れた小雛のクロに興味があるのか犬がするように鼻をヒクヒクさせながら小雛のクロに顔を近づける。
それを小雛のクロも真似るように伏黒の式神より短い鼻で近づけてお互いの匂いを確かめ合う。
動物が嫌いではないかぎり、その光景は完全に癒しであった。
小雛のクロは異様な見た目ではあるが、少女と動物の光景はとてもとても癒される。
ほんわかな空気に誰もが日々の任務に疲弊した心を癒ししていた。
そんなほんわかな空気を壊すように、誰かのアラームが鳴った。
「おい伏黒…」
「………すまん」
等級関係なく、呪術師に与えられる任務は心も体も疲弊するほどのストレスを与える。
そんな貴重な癒しタイムを伏黒が台無しにしたのである。
同級生からジト目を貰いながら、伏黒はアラームを止める。
このアラームは伏黒がセットしたのではなく、『忘れたら大変だからアラームつけとくねー』と五条がいらん世話をしたのである。
後で消しておこうと思って忘れた結果である。
「小雛様、お時間になりましたので行きましょう」
「はい…よろしくお願いします」
伏黒がそう言えば、小雛は素直に立ち上がった。
「え、なに…どこ行くのよ?」
伏黒から日傘を受け取り、傘を開く小雛。
釘崎が伏黒にそう問えば、伏黒はチラリと小雛を見た後釘崎達に『任務だ』とだけ伝えた。
いうなれば、機密だということだ。
それに不服を感じてはいるが、親しくなったとはいえ、小雛は小町の器だ。
内密にしなければならないことも多いのだろう。
グッと言葉を飲み込み、釘崎は2人を見送った。
―――伏黒と小雛は門へと向かう。
小雛は門の傍に立つ人物を見て、パッと笑みを浮かべた。
「建人様!」
門の傍には七海がいた。
伏黒と七海は、小雛の護衛として付き添うことになっている。
「お久しぶりです、小雛様」
七海には珍しく穏やかな声。
顔合わせの際に、虎杖と同じ小雛の善良さに絆されたのである。
それに、七海は少し小雛に対しての罪悪感もあってか弱かった。
「よろしくお願いいたします、潔高様」
「はい、小雛様…お任せください」
目的地へは車移動。
運転は当然、伊地知がするのだが、七海と伏黒とは違い、ここまで五条と小雛を運んだので彼とは先ほどぶりである。
今回も目的地まで運んでもらうため一言いえば、伊地知は『ああ、いい子だなぁ』と五条によって廃れた心が癒された気がした。
いや、気がしたではなく、癒された。
伏黒が最初に後部座席に乗り、その次に小雛、最後に七海が乗り込み、車は出発する。
――車は都内にある、よくあるコインパーキングに止めた。
七海が最初に降りて周りを警戒し、何もなかったため、小雛を降ろして、最後に伏黒が降りた。
「では、エンジンを止めずに待っててください」
「はい」
いつでも出発できるように、エンジンは止めないようにと決めている。
どうせ経費は五条命名腐ったミカンどもにいくのだから当てつけにこれでもかと経費を掛ければいい。
そう言ったのは五条なので、七海も伏黒も伊地知も『しーらね』状態だ。
それを人は開き直りという。
「歩いてしまいますが大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です」
「疲れた時は言ってくださいね」
「はい、ありがとうございます」
気を使ってくれることは小雛も流石に分かる。
それが小町の器だからという理由だけでも、小雛には嬉しかった。
11年間家族さえも接触が許されず五条と小町しか周りにいなかったため、小雛は他人と会うことだけでも楽しくて仕方なかった。
歩くと言ってもそう遠くはない。
ただ、普段運動をしてこなかった小雛には少し遠く感じた。
それでも閉じ込められた小雛にとって周りの風景を楽しみながら歩けたので疲れは感じていなかった。
ついたのは、都内にある某ビル。
そこにはある宗教団体が拠点としていた。
しかも、そのビル一棟丸ごとその宗教団体の持ち物であり、一階から全て宗教団体が使用している。
その宗教団体が信仰するのは、小雛の中にいる小町だ。
名が知られていないだけで、この宗教団体は平安時代に小町を教祖に立ち上げられたものだ。
五条は信者に連絡を入れ、今日訪れる約束をした。
ビルの前にたどり着き、伏黒と七海はお互いに目配せをする。
ここから先、何が起こってもおかしくはない。
勝利条件は小町と小雛を高専に戻すこと。
相手は非呪術師なためその任務は簡単だろう。
だが、相手は小町を信仰する頭のいかれた人間だ。
五条は一度宗教団体と争った事がある。
宗教団体と、というよりは、その団体に依頼された呪術師殺しとだが―――結果は敗北した。
当時、まだ術式も完全ではなかったとはいえ、それでも特級の等級を与えられ、更にはもう一人特級の等級を持つ術師と任務にあたっていたのに、彼らは負けた。
呪力も持たない非術師1人に、特級2人は負けたのだ。
だから、伏黒と七海は何度も注意するように言われた。
だからこそ、どんな任務よりもこの任務に緊張してしまう。
「お待ちしておりました…我らが母、小町様とその器様、小雛様」
入り口に入るや否や、信者達に出迎えられた。
周囲にいる信者の前に立ち頭を下げて出迎えるのが、この宗教のトップ、または幹部だろう。
宗教によくある統一された服装はなく、外に出れば見分けがつかないほどの普通の衣服を身に纏っていた。
服を統一しなくても、信徒の心は揺らがないという意味なのだろう。
幹部はスーツを身に纏い、清潔さを感じさせる。
伏黒と七海は警戒を高めるが、小雛は大勢の人間の出迎えに驚いている様子だった。
幹部は小雛…いや、小町だけにニコリと笑みを向け、『こちらに』とエレベーターへと3人を案内した。
言われた通り幹部の後について行くが、信者達が小雛を凝視し目を追う。
その様子は明らかに異常で、居心地悪さと、気持ち悪さを感じる。
来たばかりだが、もう帰りたくて仕方なかった。
エレベーターは最上階へたどり着いた。
エレベーターを降り、ある部屋へと向かう途中…伏黒と七海は別室へ案内されそうになり、それを拒んだ。
「私達はお二人の護衛として五条悟から依頼されました…小町様の信徒であろうと何が起こるか分からない以上、お二人から離れるわけにはいきません」
「それは私達がお二人に危害を加える可能性があると言いたいのでしょうか…私を含めこのビルにいる信徒たちは全員お二人を慕っております…疑われるのは心外ですな…」
「承知しています…だからこそお二人のお傍を離れるなと厳しく命じられています」
五条からは絶対に小雛から離れるなと言われている。
2人も小町しか見ていない宗教団体になど小雛を接触させるべきではないと思っている。
小雛は小町の幸運を欲しがった汚い大人のせいで家族から引き離されずっと監禁され続けた。
祖父と兄とも満足にいることが出来ず、2人とは再会する前に死に別れてしまった。
残ったのは、婚約者だけ。
まだ14歳なのに、身内と呼べる人間がいなくなってしまったのだ。
いくらなんでもそれはあんまりだと思ってしまうのはいけないことだろうか。
特に2人は虎杖という善人を知っているから余計に心をくすぐられるのだろう。
ああだこうだと小雛を背中に庇って七海が信者達と話し合いをしていた。
信者達は小町だけと話がしたく、七海と伏黒達は邪魔だから別室で待っていてほしい。
2人は小雛に危害を加える心配はしていないが、必要のない嘘にもなる知識を小雛に与えて呪術師への疑念を与え教団側へと誘導されたくはない。
大した術者がいない教団など潰すのは簡単だ。
何しろ御三家の五条がいるし、御三家も小町が関わっているのなら妨害はしないだろう。
両者の意見は食い違い、そして、両者共に妥協する気は一切ない。
堂々巡りだと、小雛の傍にいる伏黒は諦めない信者達を呆れたように見つめていた。
その時――
「あまり我が仔を虐めないであげてくれないか、呪術師よ」
その声を聞いた瞬間、七海と伏黒はぞわりとした冷たい何かが背中に走った気がした。
思わず伏黒は一歩足を後ろへ向けてしまった。
「…小町様…起きていらしたのですね…」
七海も恐る恐る振り返れば、愛らしい丸い目だったのが吊り上がった釣り目に変わり、柔らかな雰囲気が冷たく凍えるように変わった。
七海の言葉に、小雛ならば『はい』と愛らしい笑みを浮かべるのに、目の前にいる小雛―――小町は、『フン』と鼻を鳴らして嘲笑めいた笑みを浮かべた。
「今日は妾の仔らに会えるというのでな…朝から起きておったわ」
『あのカスに気づかれると面倒だから雛には黙っておいてもらったがな』と零す小町に、2人は内心顔を顰める。
小町と五条の仲は悪い。
それは会話した五条と小町を一度しか見たことのない2人でもよく分かるし、その後小町の話題で五条が辛辣だったところからもよく分かった。
「我が仔らよ、せっかく再会したのだ、時間が惜しい…はよう部屋へ案内しておくれ」
小町は伏黒から離れて信者達の下へと向かおうとした。
それを伏黒は無意識に小町の手首を掴んで引き留めようとした。
しかし、伏黒は突然後ろへ吹き飛ばされ倒れてしまう。
「伏黒君!―――っ」
あっという間にその場の温度が上がったのを七海は気づく。
それと同時に、小町へ向かっていた足を止め、動きすら停止させた。
七海の耳にグルルと唸る獣の声が届く。
そちらへ視線を向ければ、起き上がろうとした伏黒の背を踏む太い足が見えた。
足を伝って視線を上へ向ければ、ここ日本にはありえない――虎が牙を露に立っていた。
威嚇しているのか、鼻にシワを寄せ七海を睨みつけるその虎はまるでサーベルタイガーのように上顎犬歯が太く長く発達し、より恐ろしさを演出させる。
その体にはまるで煙のように炎がまとわりついており、その炎が室内の温度を上げていると七海は思っているが、その実、虎自体が放熱している。
七海は自分が動けば一瞬にして2人は死ぬと感じて動く事が出来なかった。
その七海の判断に小町は伏黒に捕まれた手をまるで埃を払うようにしながら、目を細め笑う。
「英断じゃ…アレは人間を溶かすことができる…動くと機嫌を損ねるぞ」
伏黒を吹き飛ばしたのは、小町を呪う『ソレ』だ。
小町に触れたことが癪に障ったようで、吹き飛ばした。
『ソレ』は五条の六眼でさえもギリギリ半透明でしか見えないほど凝縮された呪いだ。
そもそも、半透明でも肉眼に捉える事ができる六眼が異常なのだ。
「お主らには悪いが妾の仔と話があるゆえ…別室にいてもらおう」
「………」
何か言いたげに視線を向ける七海。
動くなと言われているが言葉を発するなとは言われていない。
だが、相手は宿儺の妹である呪物だ。
何が機嫌を損ねるのかが分からない以上、安易に喋るのはよした方がいいだろうと判断した。
その判断が正しいのかは分からないが、少なくとも伏黒を人質にされている以上余計なことはできない。
何か言いたげの七海に気づいた小町は、『ああ、話すだけならば許す』と何でもないことを思い出したように話すことを許した。
「どうしてもお一人でなければなりませんか」
「邪魔者がおればせっかく再会できた我が仔との会話も弾まぬからのう…妾も主らにはすまないと思っておるのだぞ?主らはあのカスに頼まれて妾達の護衛をしておるだけじゃしな…じゃが、これだけは譲れぬ」
「…私達が一番に恐れているのはこの方々が小雛様に偽りの情報を伝えることです…わざと私達呪術師に対して不信感を与え私達から引き離そうとしていることを私達は恐れています」
「ふむ…それはいらぬ世話じゃ…妾の一番は妾の仔らではなく器である小雛じゃからな…その小雛が主らの下を離れないと決めた以上妾も離れる気はない」
「言い換えればそれは小雛様が離れたいと仰られたのなら我々から離れることも厭わないということでしょう…小雛様は無垢な方ですから向けられた言葉を全てそのまま受け取ってしまいます…ここの方々が小雛様に虚実を吹き込まない確かな証拠がない以上、離れるわけにはいきません」
「くどい…妾の仔らがそのような卑怯者であろうはずがない」
「貴女を受肉させるために多くの子供を攫い餓死させるような教団が正しいとは思わない」
小町は数百年前からこの宗教団体が保護保管していた。
そして、小雛と出会うまでこの教団は子供を攫い餓死にまで追い詰めた。
しかも、教団は女児のみを攫い殺し続けてきた。
子供の方が暴れられても抑えられ、恐怖を植え付けて制御しやすいからだ。
女児なのは、小町が女だからだろう。
小町を神と崇める教団は、性別に拘って女児を攫い続けていた。
呪物となった小町そのものが猛毒となる。
食べれば即死するのだが、それ以前に大人でもミイラ化したものは食べ物として認識しないだろう。
それが子供なら尚更だ。
だから、何も与えなかった。
一切、食料を与えず、水も与えず、光さえ許さず、死ねばまた新たな女児を連れて何も与えず放り込む。
まさに鬼畜の所業。
ただ、大人と違い、子供を攫うリスクは相当高い。
それでも対処できる伝手はあった。
攫い殺しを繰り返してやっと今の時代に小雛と出会えた。
当然、小雛も例に漏れず他の子供と同じく小町を食す前は餓死寸前だった。
しかし、空腹だから誰でも小町を受肉させることができるわけではない。
小雛以外は小町を食べる前に、餓死していた。
その遺体は親元に戻らず教団によって"廃棄"された。
その報告は五条から七海と伏黒も聞いており、それも彼らが小雛に対して甘い理由の一つなのだろう。
七海の言葉に、小町は真っ直ぐ彼を見た。
「貴様はゴミに一々何かを思うのか」
あれほど馬鹿にしたような笑みは消え、凍りつくような冷たい視線が七海を貫く。
敵意は感じない。
訝し気さも、不快感も、なにも。
何もないのだ。
小町は、人間を、子供を、自分のせいで消えて行った幼い子供達に対して動く感情がなかった。
子供が…人間が自分のために犠牲になるのを当たり前に考えており、尚且つ小町は人間をゴミと認識している。
それを七海達にすら隠さないほど、彼女にとって人間を人間と思わないことは当たり前であった。
小町の価値観に、七海と伏黒は腸が煮えくりかえるほどの怒りを感じた。
しかし、2人は呪術師として冷静さを取り戻す。
それが生死を分けたのだろう。
それに気づくが、関心する感情すら小町にはない。
相手が宿儺や五条ならいざ知らず、小町から見たら五条の足元にも及ばない呪術師など興味すら沸かない。
小町は納得しない2人に、面倒くさそうに言った。
「ならば、縛りを科すか…"我が子らの虚言には耳を貸さず、必ずお主達と共に五条悟の下へと戻る"…これならばお主達も安心して離れられるであろう?」
「……………」
小町の言葉に、七海は半信半疑だった。
小町は自ら呪術師に保護された。
事情や小町を知らない人間からしたら、小町は兄の宿儺とは違い呪術師達に友好的で
こちら側だと思うだろう。
だが、小町はどちら側でもないのだ。
呪術師側ではなく、呪霊側でもなければ、非術師側でもない。
小町と小雛の一対だけが小町の世界なのだ。
そこに当然、兄である宿儺は存在しない。
むしろ、小雛さえも彼女にとったらゴミと称する存在なのかもしれない。
「…いいでしょう…その縛りを科させていただきます」
伏黒を庇ったわけではない。
小町の立場からしたら、伏黒の犠牲は正しい判断だと言える。
だが、小町自ら縛りを科すというのであればそれに従うのも手だろう。
無駄に将来有望な術師と人手を減らすのは得策ではない。
七海が承諾した瞬間、縛りは科された。
その瞬間、炎の虎が伏黒の上に乗せていた前足をゆっくりと退かし、まるで霧が散るようにその姿を消した。
「ただし…五条さんに全て報告させていただきます…よろしいですね」
嬉しそうな信者に案内され、背を向ける小町に向かって七海が言葉を発した。
その言葉に、小町は足を止めず、振り返りもせずただ一言―――
「好きにしろ」
そう言って信者達と共に七海達から姿を消した。
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