(10 / 13) USJ襲撃事件編 (10)

結果、除籍は嘘だった。
相澤曰く、生徒の力を引き出すための合理的な嘘…らしいが、それもまた嘘である。
相澤は去年も同じことをし、担任していた生徒を全員除籍にしている。
すなわち、琴子達は相澤に認められたという事だ。
それを知らない琴子達は除籍にならずホッと胸を撫でおろしていた。

―――次の日、授業は普通に行われた。
そう、普通に。
普通過ぎて英語教師であるプレゼント・マイクの授業では、一部を除きクラス一同が『普通だ』としか感想を述べなかった。
この学校では食堂でさえも一流であった。
クックヒーロー、ランチラッシュと呼ばれるヒーローが食堂を担当し、彼の料理を格安で生徒達は食べられるのだ。
彼のファンが聞いたら血涙でそうな待遇である。

そして、待ちに待った午後の授業。
その授業とは、ヒーロー基礎学。
その担当とは――――


「わーたーしーがー!!普通にドアから来た!!!」


NO1ヒーローでお馴染み、オールマイトである。
彼は特別に教師として招かれ、ヒーロー科の生徒に授業を行っている。
彼が現れた瞬間、クラスは騒めいだが、琴子はいつも微笑みを浮かべたままだった。
多くの人がオールマイトに夢中の中、琴子の推しと呼ばれるヒーローは彼ではないからだ。


「ヒーロー基礎学!!ヒーローの素地をつくる為、様々な訓練を行う科目だ!!」


ヒーロー基礎学はヒーローとなるための授業のため、普通科やサポート科にはない授業だ。
ヒーローはみんなの憧れだ。
そのため、他校も含め、ヒーロー科は人気故に狭き門となっている。
多くの人間がヒーローを目指して受験するも、ヒーロー科に合格するものはたった数十人である。
とはいえ、ヒーロー科の生徒だけがヒーローになれるというわけではない。
ヒーローになるには様々な方法もあるらしい。


「早速だが今日はこれ!!戦闘訓練!!」


初授業その日に行われた基礎学の授業は、戦闘訓練だった。
基礎を学ぶのではなく、まさか最初から実践をすると思っていなかった琴子は驚いたように目を丸くしてオールマイトを見ていた。
他の生徒も似たような反応をしており(例のごとく爆豪は嬉しそうにしていたが)、そんな彼らの反応を見ながらオールマイトはピッと何かボタンを押す。
すると壁から棚のようなものが現れた。


「入学前に送ってもらった『個性届』と『要望』に沿ってあつらえた…戦闘服(コスチューム)!!これに着替えて行ってもらう!!」


オールマイトの言葉に一同が一気にやる気を出した。
やはりヒーローを目指すためか、コスチュームを着ると言われると燃えるらしい。


「着替えたら順次グラウンド・βに集まるんだ!」


オールマイトの言葉に、クラス中に元気な声が上がった。







被服控除、というシステムがある。
入学前に『個性届』と『身体情報』を提出すると、学校専属のサポート会社がコスチュームを用意してくれるものだ。
自身の『要望』を添付することで便利で最新鋭のコスチュームが手に入る。
琴子も要望の紙をサポート会社に送ったのだが…


「わあ!琴子ちゃんのコスチュームかわええ!!」


届けられたコスチュームに袖を通していると、傍から明るい声が琴子に届いた。
そちらに目をやれば、麗日がいた。
麗日も届いたコスチュームを着終わっていた。
重力を個性としている彼女らしい、宇宙服のようなデザインだが、現代の宇宙服とは違い、身体のラインを見せるようなデザインだった。
対して琴子は、まるでサーカスで働く女性のような服装だった。
といってもセクシーコスチュームというわけではなく、胸元が軽くM字型に開けられ、袖なしのジャケットに、コルセット、ホットパンツ、首にはチョーカー、髪をシニヨンと三つ編みで後ろで纏め、ミニハットヘアクリップで頭を彩っていた。
ちなみに生腕、生足、腹チラである。
褒めてくれる麗日に琴子はニコリと笑ってお礼を言う。


「ありがとうございます…なんだか私の個性をサーカスのようだと思われたようで…このようなデザインになりました」

「え?それ、君が考えたんじゃないの?」


キョトンとさせる麗日の陰から一人女子生徒が顔を覗かせた。
顔を覗かせたのは、琴子とあまり面識のない生徒だった(というものの、まだ麗日しか面識がない)が、登校初日に全員の自己紹介を終えているので名前は憶えている。
その生徒は、酸を個性として出せる芦戸だった。
芦戸の問いに琴子は頷く。
琴子は個性届と身体情報を提出したが、要望はそれほど多くは送らなかった。
要望の紙には『動きやすさ重視』『嵩張らない服装』『ヒールはなし、または低め』という簡単なものだけを記入して送った。
拘りがないヒーローも多いので、必ずしも細かく書く必要はなく、拘りのない琴子はサポート会社に任せた。
担当者曰く、美少女にぬいぐるみ!?なにそのベタベタに狙ったような個性は!!ハァァァ!??まったく美少女は何を着させても似合うなくそ!!!ア゙ァ゙ァ゙ァ゙!!!考えるのチョーたのしぃぃぃ!!!―――だ、そうである。
どこの世にも変な人はいる。
そんな人に任せてしまった琴子も琴子である。
そのため、文句が言える立場ではないのだが…


「足を出しすぎていると思うんですが…胸元も…腕だって…それにお腹もでちゃってますし…」


琴子として露出が高い気がした。
確かに、麗日や梅雨達に比べたら露出は高いが、麗日や芦戸のようにパッツンなスーツでもなければ、八百万は胸元も大体に開いており、ミニスカ、足は生足、腕も出して豊満なボディをそのまま見せに行っている衣装である。


「こんな露出の高いコスチューム…はしたなくはありませんか?」


照れたようにほんのりと染めた頬に手を当てて上目遣いで問う琴子に、一同は『はしたないとは???』、と現代では決して聞かない単語に首を傾げながらも『まあ可愛いからいいか〜』と『はしたなくないよ〜』とフォローした。


「それを言いましたらわたくしの方が露出がありますもの…大丈夫ですわ」


八百万の個性は創造。
自分の体内(脂質)からあらゆる無生物を創り出す事ができるため、どうしても露出の高いコスチュームになってしまう。
八百万のフォローに琴子はにっこりと笑って返したが……その意識は胸に向かっていた。
八百万の体型は恵まれている。
ボンと出された豊満な胸に、キュッと絞ったウエスト、出すぎていないヒップ…このコスチュームは八百万だからこそ着こなせるコスチュームである。
そのため、フォローが若干フォローになっていないのに八百万は気づいていない。
さり気なく琴子は胸を庇うように体を傾けた。
そう…琴子は小さなお胸を気にしているのだ。
というよりは、胸もそうだが、華奢な体型を気にしている。
焦凍に言い寄る女子の大半は美少女で、八百万ほどではないが恵まれた体型をしていた。
中学の頃、振られた、または見向きもされない女子達が口々に『(私/○○ちゃん)の方が可愛いのになんで貧乳で幼児体型の義国なんかが選ばれるわけ!?轟君の目って節穴だよね!!』と陰で言っているのをよく遭遇することがあるため、気にしないようにしていても琴子だって思春期である…どうしても気になるのだ。
しかし、琴子は確かに華奢で豊満な胸はないが、それでもバランスはいい。
特に足は美脚ともいえる。
大人ぶりたい年頃、そして体が大人に向かって成長している同級生からしたら琴子は幼児体型だろう。
だが、くびれだってあるし、胸だって豊満ではないが美乳ともいえる。
大半は焦凍に振られた腹いせで言っているのに琴子は気づいていない。
琴子も焦凍本人に聞けばいいのだが、今は冷え切った関係…怖くて聞けず今に至っている。
さり気なくトレーニングにバストアップトレーニングメニューも加え、牛乳や豆乳からきな粉までバストアップに良いと言われている食材は常に試している。
――――が、結果は御覧の通り、背が伸びなかっただけではなく胸も成長しなかった。
だが、八百万もすごいが、上には上がいる。


「そうそう!考えすぎだよ〜!私なんか靴と手袋以外裸だよ〜?」


ぽん、と肩を叩かれたため、後ろを振り向けばそこには何もなかった。
正確には透明化の個性を持つ葉隠がいた。
葉隠は手袋と靴以外は何も身に纏っていないらしく、琴子はにっこりと笑って『風邪にはお気を付けくださいね』とだけ言っておいた。
もうここまで来ると自分が露出高いなんて言ってられなかった。

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