(11 / 13) USJ襲撃事件編 (11)

指示された施設へと移動すると、生徒達は続々と集まってきた。
みんなそれぞれ思い思いのコスチュームを身に纏い、戦闘訓練という授業に期待感を膨らませた表情で授業開始を今か今かと待っている。
琴子はグランドに麗日達と話をしながら到着した。
しかし、ある人物を見つけると麗日達に一言断りを入れてから麗日達から離れ、その人物の元へと駆け寄って向かった。
『申し訳ありません、離れますね』と言いながらすでに体も足もそちらへと向かっている琴子の背を、麗日達は手を振って見送ってくれた。


「……やっぱ、恋人なのかな」

「そりゃそうじゃない?轟の姿見て飛んで向かうなんて恋人以外なくない?」


ある人物、とは…焦凍だった。
隠すまでもないが、琴子は焦凍の姿を見た途端琴子の足は焦凍の方へと向けられた。
琴子の表情は相変わらずの微笑みだった。
だが、琴子とは短い間柄だが麗日には焦凍を見た瞬間琴子の表情が破顔したように明るくなった気がした。
琴子が焦凍の方へと真っ直ぐ向かった姿を見て、もはや疑う余地もない…と芦戸達は確信を持った。
まだ本人から聞いていないため、聞かれないように小声で話していると傍から意外そうな声が聞こえた。


「えっ…義国さんと轟くんって恋人なんだ…」


その声の方へ向くと一馬が琴子達…いや、琴子を見つめながら立っていた。
芦戸達は呟かれた一馬の言葉に、お互いを見合う。
視線で話し合い、葉隠が代表として一馬に話しかけた。


「ねえねえ、あのさ…ちょっと聞いてもいいかな?」


葉隠に声をかけられ、一馬は琴子から葉隠へと視線を向ける。
葉隠は透明化の個性のため、表情は分からないが手が挙がっているようなので挙手しているのだろう。
一馬は葉隠の問いかけに『なんだい?』とにこりと笑う。
その笑みはまさしく爽やかな少年。
一馬は焦凍や爆豪には劣るものの、顔は整っている方だ。
その整った容姿も相まって、穏やかな笑みに周りはキラキラ光っていた。
まだ慣れないイケメンオーラに葉隠達は目を細めながら質問をぶつける。


「琴子ちゃんを気に掛けてるけどさ、君たちってそういう関係なの?」


ずっと聞きたかった問いを一つ、一馬にぶつける。
葉隠のちょっとセーブした問いに一馬は首を傾げた。


「そういうって?」

「うーん…まあ、はっきり言っちゃうと三角関係?」

「三角関係??誰が??誰と??誰を??」

「だから、轟君と、琴子ちゃんと、内規君が」


点、点、点…とその場には静けさだけが残された。
一馬は葉隠達の疑問に目を瞬かせる。
葉隠達はゴクリと一馬を見つめて答えを待っていたが…一馬は笑い出した。
大きな声ではないが、クスクスと笑う一馬の反応に、今度は葉隠達が全く別の反応を期待していたためキョトンとさせる。


「内規君?」

「ごめんごめん…でも、僕たちは三角関係ってわけじゃないよ」


どうやら見当違いだったらしく、一馬の言葉に葉隠と芦戸はあからさまにガックリとした。
琴子とは友達ではあるが、やはり少女と言えど女性…泥沼展開はワクドキであった。


「じゃあ、同級生だったとか?」


なーんだ、と顔に書いてある芦戸の問いに、これまた一馬は首を振った。
その一馬の問いの言葉に芦戸達は首を傾げる。


「じゃあ、なんなの?」

「なにも…」

「なにもないって雰囲気じゃないよね?」


誤魔化そうとしているのか、それとも本当に何もないのか…首を振られた。
しかし、何もないという割には雰囲気はそうは言っていない。
あまり根掘り葉掘り聞くのは人としてどうかと思うが、どうも気になって夜も眠れないのだ。
そこにあるのは純粋な疑問であった。


「僕達はなんでもないよ、本当に…」

「ええ?本当にぃ?」


否定されはしたが、やはりどうしてもそうは思えなかった。
疑いのジト目を向けられても一馬の答えが違えることはなかった。
一馬は女子達から琴子へと視線を向ける。


「そう…僕達は他人なんだ…」


その呟きに、麗日は一馬を見る。
一馬の表情は悲しそうに見えた。
だから、麗日は一馬の言葉の意味を聞き返す事ができなかった。

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