授業は全員揃い始まった。
何人かはマスクを被っており、誰が誰か分からない人はいるが顔を出している人間を見て何となくそうではないかと判断する。
するとフルアーマータイプのコスチュームの生徒が手を上げる。
「先生!ここは入試の演習場ですがまた市街地演習を行うのでしょうか!?」
その生徒は声からして飯田だろう。
飯田の言葉通り、グラウンド・βは琴子達が受験した際に試験のために利用された会場の一つだった。
そのため、飯田の質問は当然だった。
だが、その飯田の質問をオールマイトは首を振って見せる。
「いいや!もう二歩先に踏み込む!屋内での対人戦闘訓練さ!」
オールマイトの言葉に生徒たちは目を瞬かせた。
そんな生徒達にオールマイトは説明する。
オールマイト曰く、ヴィラン対峙は統計で言えば屋内の方が凶悪なヴィランの出現率が高いのだという。
監禁、軟禁、裏商売…様々な犯罪が屋内で行われている。
オールマイトも多くの屋内戦を経験してきた。
「君らにはこれから『敵組』と『ヒーロー組』に分かれて2対2の屋内戦を行ってもらう!」
そして、今日、初めての授業をオールマイトは屋内戦へと選択した。
しかも二人組でヒーロー側とヴィラン側に分かれて授業が行われる。
それを聞いて生徒たちはどよめいだ。
オールマイトの言葉に、梅雨は疑問に思う。
「基礎訓練もなしに?」
その疑問は誰もが頭に過ったものだった。
ヒーローの基礎を学ぶ授業だが、誰もが最初は座学だとばかり思っていた。
しかしその基礎を知る為に実践を行うのだという。
しかも今回はロボ相手ではなく、生徒と生徒を戦わせるシステムである。
すると八百万や爆豪、麗日、飯田、青山などが次々と好き勝手に質問等を投げかけ、オールマイトは『んんん〜〜聖徳太子ィィ!!』と唸ってしまう。
流石にナンバー1ヒーローでも生徒たちの質問の声は全て拾えないらしい。
「いいかい!?状況設定は『ヴィラン』がアジトに『核兵器』を隠していて『ヒーロー』はそれを処理しようとしている!」
オールマイトが考えた設定はいかにもアメリカ的な設定だった。
生徒はクジで二人組のコンビとしてそれぞれランダムに組み、『ヒーロー』と『ヴィラン』と別れる。
その理由としては、プロのヒーローは他事務所のヒーローと急遽組んで活動することが多いためである。
ヒーローは制限時間内にヴィランを捕まえる、または核兵器を回収。
ヴィランは制限時間まで核兵器を守る、またはヒーローを捕まえる事がそれぞれのクリア条件である。
出席番号順に呼ばれ、それぞれクジを引く。
琴子は義国なので呼ばれるまで時間がかかるものの、呼ばれてクジを引くだけなのでそう時間は掛からなかった。
あっという間に名前を呼ばれ、クジを引く。
クジには『K』と書かれていた。
その紙をただジッと見つめながら、『相手は誰だろう』と思っていると近づいてくる気配に気づく。
そちらに視線をやれば最も会いたくも話したくもないと思っている男子がいた。
琴子は笑みをそのままに、内心眉間にしわを寄せる。
「義国んさんもKグループだね…僕もKなんだ、よろしくね、義国さん」
「……よろしくお願いします」
どうやら同じKチームらしい。
同じグループになったのだから声掛けするのは当たり前だ。
しかし、一馬に対しては冷たい態度をとる琴子は声を掛ける一馬に冷たい視線を向けながら、表面は笑みを浮かべ穏やかに対応する。
だが、隠し切れない…いや、隠す気もない冷たさが現れており、一馬は困ったように笑いながら『じゃあ、また』と言って離れる。
(…あいつと何かあったのか?)
その一部始終を見ていた焦凍は怪訝とした表情を浮かべる。
琴子の態度は周囲にも見て取れるほど露骨だった。
そのため、クラスメイトになったばかりの麗日達にはすでに一馬と琴子の仲は最悪…というよりは、一方通行だと認識されている。
琴子と壁を作っている焦凍でさえ、琴子と一馬の仲は認識済みだ。
先ほども一方的に琴子が冷たい態度で対応していたのを見て、焦凍は珍しい物を見るような目で琴子を見つめていた。
琴子は誰にでも分け隔てなく柔らかい対応をする。
言葉の表現は様々あり、一見優しいともとれるが…しかし、それはすなわち、誰にも興味を示していないということにもなる。
琴子は後者だ。
そして、その対象は自分も含まれている。
だから一馬への対応は珍しいのだ。
だからこそ、琴子と一馬の間に何かあったのか勘ぐってしまう。
焦凍は何かモヤッとしたものを感じ、ふと琴子から視線を逸らす。
「………」
そもそも、一馬の態度も可笑しいのだ。
琴子は穏やかに対応してはいるが、誰にでも分かるほど一馬を冷たく突き放している。
それが分からない人間はいないだろう。
いたとしたら相当な馬鹿だ。
一馬も冷たくされる度に悲し気な笑みを浮かべているので、馬鹿ではないのだろう。
それなのに一馬はよく琴子に声を掛ける。
琴子の冷たい態度にめげない一馬に、すでにクラスメイトの男子から『内規一馬は義国琴子に気がある』と言われていた。
それを聞いた時、焦凍は今まで感じた事のないモヤモヤした感情が生まれた。
その感情に気づきたくなくて焦凍はモヤモヤした感情に蓋をした。
12 / 13
← | 目次 | 表紙 | →
しおりを挟む