※ちらっとキバナ夢予定だった夢主が出ます。
※こちらは某キャラの成り代わりなので苦手な方はご注意ください。
※本当に話題だけで、登場はしません。
※ここからは話題が出ても前置きは書きません。
※ネズの口調が迷子。(いつものこと)
****************
あれから一同はまた日を跨いで挑戦することにした。
「今日こそカジッチュを捕まえるぞ!!」
前回同様ホテルのロビーで待ち合わせ後にレストランで朝食を終えたダンデ達は、現地に向かいキバナの声掛けにソニア達が『おー!』と声を上げて気合を入れる。
「……なんで俺まで…」
そのやる気みなぎっている4人の傍には、全くやる気のない少年…ネズは深い深い溜息をつく。
肩も気持ちガクリと落としており、やる気でみなぎっている4人とは対照的だった。
「なんだよ!ダチの恋を応援する気はないのかよ!」
「ありませんよそんな面倒臭いこと…大体カジッチュを渡したとしても想いが通じていなければ意味ねーでしょうが」
『そもそもカジッチュを渡す段階なのか?』、と続けるネズにダンデは目を反らした。
その反応から全てを察したネズはまた溜息をつく。
そもそも。
そもそも、だ。
ネズ達はあちらの気持ちを知らない。
もしもあちらもダンデに気があるのなら、ネズだって素直に応援するし、力にだってなる。
だけど、どうもダンデの一方通行にしか見えなかった。
「まあ、仕方ない…こうなれば乗りかかった船です」
「ありがとう!ネズ!!」
とはいえ、友人の初めて(か分からないが)の恋心。
応援しなければ友人ではないだろう。
ネズはトレーナーの他にも歌手にもなりたいと思い、幼い頃から自分で作った歌詞で作曲している。
今は趣味の域ではあるものの、今回はいい経験になるだろうと思う事にした。
告白が成功しようと、振られようと、どっちにしろいい歌詞が作れそうだと後ろ向きの考えを捨てた。
「いいか、ネズ…カジッチュ探しを舐めるなよ?」
「はあ?…まあカジッチュの出現率はあまり高くはないでしょうが…そこまでか?」
「そこまでなのよ!二日間収穫ゼロよ!」
「二日で二匹しか姿見てないもんな」
「その二匹も捕まえるどころか戦闘になる前に逃げ出しちゃったしね」
先輩面するキバナ達の言葉に、ネズは怪訝とした表情を浮かべる。
カジッチュの出現率は決して高くはない。
しかし、低くもない。
どちらかと言えばシズクモやカモネギの方が確立でいえば低いのだ。
『カモネギとか沢山出たのにね』『ねー』、と談話するソニアとルリナの会話を聞きながら『そんな馬鹿な』と思う。
(大げさにもほどがあるだろ…ただ探すのが下手なだけでは?)
経験者は語る。
しかし、経験していないネズからしたらどうしても信用性はない。
なんたってネズもこの道路を通った際、何度も草むらにいるカジッチュを見た事があるからだ。
数は少ないが、一日でも何匹も見た事があるネズは彼らの言葉をただの大げさに誇張されたものだと思った。
脅しのつもりかよ、と心の中でぼやくネズは知らない。
すぐに彼らが嘘を言っていないと信じることに。
◇◇◇◇◇◇◇
ネズは後悔していた。
なぜ、自分はあの時、ルリナ達の手を振り払ってでも拒まなかったのかと。
―――彼らが草むらに入りカジッチュを探して、数時間。
「なんでいねえんだよ!!!!」
二度あることは三度ある。
ダンデはネズの叫び声を聞きながら頭の中でその言葉が思い浮かんだ。
ソニア達は三日目にしてすでに慣れたもので、文句を言うネズに『あるある』と微笑ましそうに見つめながら草むらの中にいるであろうカジッチュを探す手を止めなかった。
頭をかきむしるように抱えるネズに、当事者のダンデは『いや、本当、ごめん』と心の中で謝る。
「おいダンデ!その駄々洩れの欲情を消し去れ!!だからカジッチュが出てこねーんだ!!!」
「よよよ欲情なんてしてないぞ!!!」
やはり激情のような苛立ちの向かう先はダンデだった。
もう三度目となると、この流れは俺に来るな…と分かるようになったダンデは何を言われるのかと構えた。
しかし、ネズの直球な言葉に、まだ10歳のダンデは顔を真っ赤に染めて否定した。
思春期真っ盛りのダンデの反応に、ブチギレているネズは『あ゙?』と10歳にして強面風にダンデを睨みつける。
「欲情してないわけねーでしょーが!じゃあなんでカジッチュは出てこねーんだ!?」
「し、知らないぜ!!そもそもアキに欲情なんて不埒なこと考えるわけがないだろ!?」
「はあ!?お前それでも男か!?好きな女であれこれ妄想するのが男ってもんだろうが!」
「そ、そうなのか!?」
「そうでしょーよ!じゃあ聞くがお前、その女にキスしたくねーのか?」
「したい!」
「じゃあ胸を揉みたくは?」
「も…っもむ!?」
ダンデは敬語が消えたガチギレモードのネズの問いに顔をカッと真っ赤に染める。
その熱で顔から煙が見えそうなほど顔を赤く染めたダンデに、ネズは少しずつ冷静さを取り戻す。
正直ソニアとルリナのいるこの場(しかも外)で言うべき質問ではなかったと反省する。
想像したのだろう…『あわわ』と慌てるダンデにネズは溜息をつく。
「恋人になったんだから恋人と一線を越えたいって思うのは至極当然の事では?」
「そ、そうなのか?」
「そうですよ…お前はキス以上の事をしたくないんですか?」
「キス以上…いや、しかし…俺達はまだ子供だぜ?」
「子供だからって機能しないわけではないでしょう…触れば感じますし、ぬ―――」
「まて待て待て待て!やめろネズ!!それ以上は危険だ!!」
危ない発言をしかけるネズ、キバナが二人の間に入り込む。
キバナも猥談は好きだが、流石にまだ段階的に早くないかと慌てた。
ダンデの出身地は田舎の部類になるし、彼自身ポケモン一筋だったのもり、キバナやネズに比べてその興味は薄い。
それでもキスをしたがるところを見るに、決して無関心というわけではないのだろう。
「遅いよりはいいのでは?」
「いや年齢を考えろって言ってんの!」
「じゃあキバナは妄想しないと?」
「そ、それは…」
「誰でしたっけ……確かジョウト地方のドラゴン使いの女性でしたっけ?その人に片思いしてるなら妄想の一つや二つしてるでしょう?」
「おいやめろ俺以外の男があの人を汚すな」
「一番汚してるのはお前でしょうが」
キバナが初恋を拗らしているのをネズは知っている。
相手はジョウト地方から来たドラゴン使いの女性で、年上である。
その女性はキバナの実家であるナックルジムに修行という名目で訪れ、そこでキバナはその女性に一目惚れした。
しかも彼女はドラゴン使いを多く輩出し、ドラゴン使いの界隈では聖地とも言えるフスベシティ出身であり、フスベシティの長老達に期待されているトレーナーでもある。
しかも、更に付け足せばそのフスベシティの長老の一人娘の孫でもある。
生まれながらにドラゴンタイプのポケモンと生きるお嬢様なのだ。
いわば、まだ駆け出しのトレーナーのキバナにとって雲の上の人間というわけだ。
そんなお姉さんにハートどころか心臓を鷲掴みされたキバナは、只今初恋を拗らせ片思い中であった。
ジムチャレンジしているのも、その女性の隣に立つのに相応しくありたいという下心あってのことだった。(勿論チャンピオンになりたいという純粋な気持ちも強い)
10歳とは言えど男は男。
恋とは下心しかない感情。
そんな男が好いた女性で妄想しないわけがない。
ネズとしては別に汚しているつもりはないし、汚しているうちには入らない。
しかし、拗らせている男は、自分以外の男の口から好きな女性の話題が出ただけで汚れた認定されているらしい。
真顔で静かにキレるキバナに、ネズは構わず突っ込む。
(ガラルの男は碌な奴いねえな…マリィには絶対に彼氏はガラル地方以外の男にしろと言い聞かせなければ…)
ダンデもダンデで初恋を拗らせており、ネズは面倒臭いガラルの男に妹の将来を心配する。
妹は可愛い。
きっと可愛い妹に悪い虫はつくだろう。
害虫駆除は得意だが、駆除ばかりしていては妹はいつまでも独り身になってしまう。
妹には嫁に行ってほしくないというのが兄の本音ではあるが、だからと言っていつまでも独り身というのも可哀想だろう。
連れてくる彼氏を吟味するのも兄の役目だが、妹の幸せを願うのも兄の役目だ。
何事もほどほどがいいという事だろう。
まだ妹のマリィは一桁の年齢だというのに、もう結婚のスピーチになんて言おうか、結婚式に流す曲はどんな曲がいいだろうか、と考える。
想像上でしかない成長したマリィのウェディングドレス姿に涙がちょちょ切れていたネズだったが、ふと冷たい風に気づく。
風が吹く方へ振り返ったその瞬間―――ネズは『ひぇ…』と思わず声がこぼれた。
(やべぇ…調子に乗りすぎた…)
視線の先には、二人の少女がいた。
その少女…ソニアとルリナはネズ達をまるで生ごみに沸く虫のような軽蔑した目で見つめており、ネズは顔を引きずらせる。
勿論、先ほどの会話はソニアとルリナ達にも聞こえており、すぐにシモの話題に発展する男子を女子二人は冷たい目で見つめていた。
ネズが気づいたということはダンデとキバナも十分察知することができ、二人もソニアとルリナの『こごえるかぜ』が急所に当たったようで『さ、さーて、カジッチュを探すかー』『そ、そうだな』と何事もなかったように装いながら彼女達の視線から逃れる。
ネズは片思い相手は今はいないため彼女達の視線はそこまで痛くはないが、手持ちにドラゴンがいるダンデとキバナ(特にドラゴン使いのキバナ)は強い攻撃だったらしい。(手持ち関係ないが)
―――それから、お互い会話もなく黙々とカジッチュを探す。
あれから余裕で数時間経っており、ネズは早々に飽きてきていた。
「もう諦めたらどうですか…ここまでカジッチュを探しても見つからないっていうことはその人のことを諦めろと天が言っているのでは?」
ネズは宗教はやってないが、いくら低確率のポケモンといえどここまで出てこないのはもはや偶然とは言い難い。
これはもう天がダンデを見放したのも同義である。
しかしだからと言ってダンデは諦めるつもりはないらしく、ネズの言葉には決して首を縦には振らなかった。
ダンデは一度決めた事は決して曲げないタイプの人間なため、ネズは返答は予想していたのもあり『そうですか』とだけ返した。
正直何時間も探し回って疲れすぎて思考が安定しない。
とはいえ、友人には成功してほしいと思うのも本音なため慣れない作業を続ける。
「そういえば…その子の写真とかないんですか?」
飽きたのだろう。
応援はするが永遠と続く単純作業にネズはとっくの昔に飽きていた。
その為、ふとネズはダンデの片想い相手の顔を見た事がなかったと気づく。
ネズの問いにその場にいる全員が手を止めた。
「そういえば見た事ないな…」
「そうね…名前は聞いたけど」
「でもあのダンデくんだよ?片想いに気づかなかったダンデくんだよ?一緒に写真撮れる?撮れる度胸ある??」
ネズの呟きにキバナ達が反応する。
幼馴染ゆえの遠慮の無さなのか、それとも自覚するまでの苦労がそうさせるのか…ソニアは辛辣だった。
全員の視線を受け、ダンデは…
「……………撮ってない」
そう答えた。
それも、彼らから目を反らして。
その言葉に反してダンデの反応にキバナ達はダンデに詰め寄る。
「いやいや!その反応で撮ってないわけないだろ!!見せろ!!」
「撮ってない!!撮ってないからな!!」
「その反応がますます怪しいのよね…あっ、もしかして盗撮…?」
「――――」
断固として撮っていないと断言するダンデに、キバナ達はますます怪しむ。
更に、ルリナの何気ない言葉にダンデは口をきゅっと閉じた。
その反応にルリナ達の疑いの目は更に深まった。
「えっ…うそ…本当に盗撮…?」
ルリナとしてはそこまで深い考えがあっての発言ではなかった。
からかいでもなく、何となく思った言葉だった。
しかし、それが当たったようにダンデは口を固く閉じた。
まるで『からにこもる』ように固く閉ざされた口に、ルリナはドン引きさせる。
そんな失礼な態度をするルリナに『違う』と言いたいが、言えない現状であった。
「その反応…やっぱお前も一人の男なんだな」
二人のやり取りを見ていて今度はキバナが何故か納得したように頷く。
その言葉の真意が分からないダンデは首を傾げ、『何がだ』と怪訝とさせた。
首を傾げ怪訝とさせるダンデに、キバナは…
「エロ写真なんだろ?」
「断じて違う!!!!!!」
そう言い放った。
ルリナよりも失礼な言いがかり(ルリナは言いがかりではないが)に、ダンデはこればかりは否定しなければと声を張り上げる。
もう認めよう。
盗撮したとは認めよう。
だが、キバナの言うエロ写真ではない事だけは伝えなければならない。
そうしなければ友人と恋心を失くすどころか社会的に死ぬ。
「絶対エロ写真だろ!!じゃなきゃそんな必死に否定しねーもん!!」
「だから違うって言ってるだろ!?そもそもそれはキバナの方じゃないのか!?」
「ばっかお前あの人にそんな隙あるわけねえだろうが!!あの人はドラゴン使い随一の使い手なんだぞ!?高貴なんだぞ!?俺のは健全な写真ばかりだ!!」
しかし、否定すればするほど怪しいのはどこの世界でも同じ。
声を張り上げて否定するダンデはますます疑われてしまった。
ルリナ達に疑われるのはまあ、いいだろう。
疑わしい態度をとった自分の責任だ。
ただしキバナ、テメーはダメだ。
理由は同じ片想い相手がいるからだ。
自分よりも心が成長しているキバナこそ片想い相手のエロ画像を所持していそうである。
それを言えば、当然キバナに否定された。
勿論、嘘ではない。
それでもダンデは仕返しに疑いの目を向ける。
「じゃあ見せてくれよ!キバナのを見たら俺も見せる!」
「言ったな!?絶対だからな!!!」
二人のやり取りはネズ達からしたら『どっちもどっち』だ。
ダンデはビシッと指さし、キバナのフォルダを見せれば自分のフォルダも見せると宣言した。
それをキバナは『言質を取ったからな!!』とスマホロトムを取り出し、片想い相手専用のフォルダを表示しダンデに渡す。
渡されたスマホを覗き見れば、ダンデは顔を引きつらせる。
「うわぁ…キバナ…お前…これ…盗撮じゃないか…」
「ととと盗撮だけじゃねーし!!!」
キバナのフォルダには片想い相手の写真が多く残っていた。
ダンデとは違い、姉弟子という関係性なのもあり、ツーショットもあるが、大半が本人の視線がこちらに向けられていない…いわば盗撮というものだ。
年上ではあるものの、年齢が近いのか幼さが残る片想いの相手は、アキと同じ系統の顔つきをしていた。
地方は違うがカブと同じ国から来たのだと言っていたことを思い出す。
確かにシモ系の写真はないが、あれだけ偉そうな態度をしておきながらほとんどが視線の合わない盗撮(本人は強く否定)ばかりのフォルダに、ダンデは半目でキバナを見る。
その視線からキバナは逃れるように、『俺は見せたんだから次お前だぞ!!』とダンデにフォルダを見せるよう請求する。
ダンデはその言葉に、うぐっ、と言葉を詰まらせたものの、見せてくれたら自分も見せると宣言してしまった手前、嫌だとは言えず渋々スマホロトムを起動しキバナに渡す。
「お前さぁ…人のこと言えねえじゃん…」
「…………」
キバナの言葉に、ダンデは視線を反らした。
言い返したいものの、言い返せない。
しかも、恐らく、キバナにもダンデは言い返せないだろう。
キバナは確かに視線が合わない写真が多いが、その中でもちゃんと二人で一緒に写っていたり、撮ろうとしているキバナに気づいた相手が笑顔で撮らせてくれたり、ピースなどのポーズもしてくれたりと、意外と報われている。
それに対してダンデは完全に盗撮であった。
呆れたような目線を送るキバナの後ろから、ルリナ達がスマホを覗き込む。
キバナの片想いの相手の話題は聞き飽きた&見飽きたルリナ達は興味の欠片も見せなかったが、ダンデなら話は別だ。
ここにいるのもダンデの片想いを成就させるためにいるため、ルリナ達も片想い相手の顔くらい見る権利くらいはある。(勝手に盛り上がって勝手に来ているが)
「へえ…可愛いじゃない」
「カブさんと似た容姿ですね」
「意外だなぁ…ダンデくんって可愛い系が好きだったんだ」
最初は、魚を獲りすぎた時にヌオーとピカチュウと戯れる姿を見て何となく撮りたいと思ったからだった。
離れている間、画面越し、画像越しでも彼女といつでも会いたいからという小さな寂しさからだった。
それが、気づかれないのをいいことにダンデは会う度に密かにアキの写真を撮っている。
時々アキのポケモン達がカメラ目線の写真があるので、恐らくピカチュウ達には気づかれているだろう。
それでも何も言わないでおいてくれるのは、知り合った縁か、それとも幼い子供の恋心に慈悲をくれているのか。
ピカチュウとヌオーは少なくとも幼い恋心を応援してくれているので、後者だろう。
ただ、流石というべきか…ガオガエンの守備が完璧すぎてガオガエンの写っている写真は一枚もなかった。
ウォーグルは一応許してくれてはいるのか、ピカチュウとヌオーに比べたら数は少ないが何枚かは一緒に写っている写真がある。
アキの写真(盗撮)を見たルリナ達は好き勝手に言ってくれる。
ルリナ達から見ても、アキは愛らしい容姿をしていた。
とはいえ、誰もが見惚れる美少女というわけではないが、幼げな容姿は好印象を与える。
ピカチュウとの組み合わせなど男ならば射貫かれるほど愛らしかった。
ソニアはダンデの好みまで把握していないが、勝手にキレイ系が好きそうと思っていたので意外そうにダンデを見れば、ダンデは顔を帽子で隠していた。
髪からチラリと見える耳が真っ赤になっているので、友人達に片想い相手を見られて照れているのだろう。
「も、もういいだろ!?早くカジッチュを見つけるぞ!!」
照れ隠しから、キバナの手にある自分のスマホを奪いダンデはカジッチュを探すのを再開させる。
そんなダンデの反応を見て、ルリナ達はお互いを見合った。
「そうだな!友人の初恋を実らせるため頑張るか!」
「仕方ないですね…とっとと見つけてとっとと終わらせましょう」
「そうね、ここまで来たんだもの絶対に見つけてゲットするわよ!」
「今度こそゲットしてやろう!」
もうすでに3日もかけてカジッチュを探しているので、正直ルリナ達はいい加減捕まえたいと心底思う。
ネズは今日参加したばかりだが、長時間探しても見つからない事にゲンナリしていた。
それでも帰らないのは、彼らもなんだかんだ言っても友人のために行動しているからだろう。
とはいえ、気持ちだけでポケモンが現れるわけがない。
それも相手は野生のポケモンだ。
やる気を出してもカジッチュは中々ダンデ達の前に現れてはくれなかった。
しかし、苦労は必ず報われる。
「見つけた!」
ダンデの声に誰もがその声の方へと振り返る。
振り返ればダンデと対峙するように立つカジッチュの姿があった。
何時間も見つからなかったカジッチュの姿にダンデを含んだその場に居た者達全員が緊迫した空気を纏った。
すでにこれまで二日、捕まえるチャンスを無駄にしている。
それこそ、今日も捕まえる事ができなかったら、ネズの言う通り天が邪魔している説が濃厚となる。
「頼むぞエルレイド!!」
昨日の失敗はちゃんと学んでいた。
昨日は殺意の高いポケモンしか持ってこなかったダンデは、あの後一人でワイルドエリアに向かいハシノマ原っぱにてエルレイドを捕獲した。
エルレイドは、『みねうち』、『さいみんじゅつ』、『でんじは』を覚える優秀な捕獲要員である。
「エルレイド!『みねうち』!!」
主人の命令通り、エルレイドは『みねうち』で一発で瀕死一歩手前の状態にさせる。
ダンデはすでにバッチが8個集まっているため、ワイルドエリアでゲットしたこのエルレイドはすでに60レベルを超えている。
対して16レベルしかないカジッチュでは抵抗むなしく瀕死になってしまうだろう。
残念ながら木の実は所有していないのか、瀕死寸前のままカジッチュは抗うように『からにこもる』で防御を上げる。
エルレイドとのレベル差を肌で感じ取っているはずのに、怯える素振りは見せずギロリとこちらを睨みつけている。
どうやらこのカジッチュは根性はあるらしい。
だからこそ、ダンデはこのカジッチュをアキに贈りたいと思った。
「ダンデくん!今だよ!!」
「ああ!」
フーフー、と痛みを堪えながらギロリと睨むカジッチュにダンデは思わずゴクリと喉を鳴らす。
レベルだけならダンデの手持ちにも及ばない。
それどころか目の前のエルレイドですらカジッチュは叶わないだろう。
『みねうち』でなければ、カジッチュが攻撃する前に倒されていた。
それでも、目の前のカジッチュは諦めない。
目には諦めなど見せずギラギラと輝いているのを見ていると、バトルジャンキーとしてウズウズしはじめる。
ここで仕留めるのが…捕まえるのが惜しい―――そう思った。
しかし、ソニアの声にハッと我に返り、ダンデは慌てて空のボールを取り出しカジッチュに投げる。
「な――っ!」
「跳ね除けた!?」
カジッチュはダンデを拒絶するように尻尾でボールを叩き返した。
返ってきたボールはダンデの足元にバウンドして返ってきた。
そのボールを拾うとダンデは目を輝かせて体力が残り少ない状態のカジッチュを見つめる。
「いいぞ!!それでこそアキに相応しいぜ!!だが悪いが俺も本気なんだ!!だから終わりにしよう!!―――エルレイド!『さいみんじゅつ』!!」
なんて育て甲斐のあるポケモンなんだとダンデは興奮した。
しかし、ここで長引いては逃げられる隙を作るだけ。
ダンデは興奮を抑え、今度はエルレイドに『さいみんじゅつ』を指示した。
命中率が60しかない技だが、運のいいことに『さいみんじゅつ』は見事にカジッチュに当たり、カジッチュはぐうぐうと眠りにつく。
これで目を覚ますまでの間は逃亡される事はないだろう。
ダンデはその隙に戻ってきたボールをもう一度投げた。
ダンデが投げたボールは、眠るカジッチュの体に当たり、カジッチュは赤い光に包まれボールに吸い込まれるように消えていく。
地面にバウンドして落ちたボールはフルフルと横に震える。
それはまるでカジッチュが眠っていようと最後まで抵抗を諦めていないようにも見えた。
そして―――カチッと音とともにボールの震えが止まった。
それはカジッチュがダンデの手持ちになったということになる。
「カジッチュをゲットしたぜ!!!」
「―――ッぃやったあああああ!!!」
「やったなダンデ!!!」
「おめでとう!ダンデくんおめでとう!!!!」
ダンデが地面に落ちているボールを拾いその場で天高く掲げた瞬間、その場は三人の歓声が沸き上がる。
…否、歓声、というよりは…
「叫びだな…」
やっとカジッチュ探しから解放された事への喜びの叫びだった。
今日参加しただけのネズにはきっと彼らの喜びや達成感は分からないし分かち合えないだろう。
「っていうか…カジッチュにマスターボールって……」
天高く掲げられたダンデの手には、野生のポケモンを必ず捕まえられる究極のボールが握られていた。
Mと書かれ、普通のモンスターボールの赤い部分が紫色に染められているそのボールは、トレーナーなら喉から手が出るほど欲しがるであろうボールである。
本当にいるかは別として、本来ならそのボールは伝説と言われているポケモンに使用すべきものだ。
それをダンデはただの普通のポケモンでしかないカジッチュに使用した。
しかも…
(あのカジッチュ…マスターボールを跳ね返してたぞ…)
言わずもなが、マスターボールは野生のポケモンを必ず捕まえるボールである。
本来ならダンデがボールを投げた時に捕まっているはずなのだが、どういう原理かは不明だがあのカジッチュは一度マスターボールを跳ね返していた。
それだけではなく、本来マスターボールを使用するならバトルして体力を削る必要はないのだ。
だが、ダンデはわざわざ捕獲用にエルレイドを手持ちに加えて、減らさなくてもいいカジッチュの体力を減らしてからボールを投げた。
それは即ち…
(よっぽど疲労困憊してたんだろうなぁ…)
ネズは色々察した。
それはもう、色々と。
色々突っ込みどころは満載だが、あえて何も突っ込まず泣く勢いで喜ぶ友人達を静かにそっと見守っていたのは、ネズの優しさからだろう。
****************
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