(26 / 43) その生命に恋う (26)

この日もアキはポケモン達に食べ物を分けてもらっていた。
その際にダンデと、ダンデの友たちともまた会い、そして一緒に遊ぶ。
その時にアキはバトルというものを知る。


「今よカジリガメ!『シェルブレード』!」


ルリナのポケモンであるカジリガメのシェルブレードが、今日の護衛役であるウォーグルに向けて放った。
だが、それをウォーグルが避けて回避する。
そんな二匹と1人のバトルをアキは離れた場所でダンデ達と見ていた。


「ルリナー!交わされてんじゃねーぞー!」

「ウォーグル、余裕そうですよー」

「ルリナー!頑張れー!」

「うっっさいわねぇ!外野は黙ってなさい!ソニアは応援ありがとう!」


アキと一緒に離れて見ていた外野がルリナに野次を飛ばした。
応援してくれるソニア以外の野次にルリナはギロリと睨む。
ウォーグルはそんな外野など気にも留めずチラリとアキを見る。


「ばとる…ぽけもん…たたかう…」

「そう、あれがバトル、ウォーグル達がポケモン」


アキはダンデとイチャつき…ではなく、お勉強していた。
バトルよりも単語を気にするところや、自分から指示を出そうとせずバトルにも参加しようとしないところから、アキはバトルに興味がない子なのだろう。
最初こそハラハラしてガオガエン達が怪我をしないか、相手の子に怪我をさせないかと気が気ではなかったようだが、ピカチュウ達が説得してくれたのか心配そうにはしているが今では見守ってくれている。


「ばとる…ぽけもん…」


ダンデに教えてもらいながら、アキは文字を書く。
膝の上でお昼寝しているピカチュウを机にしているが、信頼の証かピカチュウは起きなかった。
アキの手元にあるノートとペンはルリナとソニアがプレゼントしたものだ。


「アキの国の文字は独特だな」

「くにぇ…どこちょく…」

「国、独特」

「くに…どくとく…」


ノートを贈られてからアキはずっと身につけているカバンの中に入れて、肌身離さず持ち歩き気になる単語があればダンデ達に聞いてメモをしていく。
ダンデがそのメモを覗くと、拙い文字でガラル語が書かれており、その後ろにはダンデ達では読めない外国語が書かれていた。
恐らく、この文字がアキの国の文字なのだろう。
国と独特という単語はまだ知らないアキはまたノートに新しく文字を書く。


(カブさんと似た容姿だし…カブさんの出身国の文字…調べたら分かるかな…)


アキの書く文字は身に覚えのない物だった。
ガラルでも見たことのない文字。
外国の言葉なのだからそれは当たり前だが、何となく不思議だ。
ただ、それがアキの国の言葉なら、ダンデも覚えたいと思った。
アキがこちらの言葉を覚えようとしてくれるなら、ダンデもアキの国の言葉を覚えてアキの国の言葉で会話をしてみたい。


「これはなんて読めばいいんだ?」

「きのみ」

「そうじゃなくて…アキの国ではなんて発音するんだ?」


前に教えた文字もノートに書いて忘れないようにしていた。
ダンデは木の実とガラル語で書かれている隣の文字を指さす。
それでアキはダンデが何をしたいのか気づいた。


「―――」

「えっと…『―――』?」

「はい、そうです」


ダンデは正解したのか、アキの言葉と笑みに安堵したように笑った。
アキのガラル語のように、ダンデの言葉も拙く片言なのだろう。
それでもアキと同じ言葉を話せたことが嬉しかった。


「めしゃぁ?」


『じゃあ、これは?』と次の言葉を教えてもらう主人達にドラパルトのドラメシヤ達が近づく。
ポケモン達がアキに会いたがるため、アキと会う時はダンデ達は出してあげていた。
殆ど主人ではなくアキの傍におり、アキの傍は野生も混じって賑やかだった。
ソニア達も最初こそ野生の最終進化のポケモン達が傍にいて気が気ではなかったが、慣れとは恐ろしいものでもう何も思わない。
ドラメシヤはアキのカバンに興味を持ったように近づく。


「どうした?ドラメシヤ」

「めしゃ!」


主人であるダンデがドラメシヤの様子に気づき、声をかけたが、ドラメシヤ達の興味は主人やアキではなくカバンに向けられていた。


「なぁに?」


ダンデが気づいてアキも気づく。
ドラメシヤ達に優しく声をかけると、ドラメシヤ達はアキに向かって何かを鳴く。
ダンデは何を話しているのか分からないのだが、アキは分かったようにクスリと笑い、後ろに置いていたカバンを自分とダンデの間に置き開いて見せてくれた。
ドラメシヤ達と一緒にダンデもその中身を覗けば目を丸くする。


「タマゴ?」


カバンの中には1つのタマゴが入っていた。
衝撃で割れないよう布でクッションを作っているそのカバンは、もうタマゴ専用である。
ダンデはその中で隅に二冊の絵本を見つけ、嬉しそうに目を細めた。


(俺が贈った本…持ち歩いてくれているんだ…)


二冊の絵本はダンデが贈ったものだ。
これまで勉強のために何冊か絵本を贈ったが、どうやらアキはその二冊がお気に入りらしい。
その二冊とは、キバナがダンデの恋心に気づいたポケモンのいない世界の絵本。
絵本の内容がどうであれ、ダンデはアキが自分の贈り物を持ち歩くくらい気に入ってくれたことに嬉しくなる。
アキはそんなダンデに気づかず、中からタマゴを出すとドラメシヤ達に差し出すように見せてあげる。


「わっ!それなんのタマゴ?」


ドラメシヤ二匹がタマゴを嬉しそうにしながら周りを浮遊している。
バトルが終わったのか、ルリナやソニア達がタマゴに気づき集まって来た。
その周囲にはダンデ達の手持ちや野生のポケモン達も同じく集まっていた。


「にゃんおちゃまじょ」

「なんの、タマゴ…どんなポケモンのタマゴですかって意味よ」


タマゴの柄は基本どのポケモンも同じだが、大きさはその種族や個体によってバラバラだ。
アキはどんなポケモンかと問いには首をひねって答える。


「どんなポケモンか分からないのか…誰かに貰ったのか?」


キバナの問いにもアキは首を傾げ、困ったように笑った。
アキ自身がポケモンのタマゴを貰ったわけではないので、首を傾げるしかない。
『見せて』とソニアが興味津々に手を差しだせば、アキは疑いもせずそのタマゴをソニアに渡した。
それを見て、ダンデは内心複雑に思いながらも感激に近い感情が込み上げてきた。
複雑は、自分だけの秘密の友人(片想いだったが)だったのにという子供らしい独占欲。
感激に近い感情は、アキがタマゴを疑うことなく渡せるくらい友人達と仲が良くなったことへの感情。
独占欲に至っては、子供らしい欲なのか、それとも男としての欲なのかは、まだ分からない。
ソニアは祖母が博士というのもあって、ダンデ達よりもタマゴに興味を示していた。


「どう?どんなポケモンのタマゴか分かった?」

「うーん…流石に種族は分からないけど…ちょっと冷たいから氷か水かゴーストかドラゴンか鋼かなぁ…ね、アキちゃん…この子、時々動く?」


ルリナが問えばソニアは首を傾げる。
どんなベテランな博士やトレーナーでも流石にタマゴだけで種族を見分けろというのは無理である。
ただ、そのポケモンがどんな種族かによってタマゴの温度は微かに異なる。
ほのおポケモンなら通常よりも温かく、フェアリータイプなら触れていると心が穏やかになるなど。
このタマゴは暖かいというよりは冷たいので、絞ることができる。
ただ、絞っても水、氷、ゴースト、ドラゴンとまだグループがある。
ただ、そのポケモンのタイプが複合型ならその複合のタイプによってタマゴが冷たくても予想外なタイプのポケモンだったりもする。
そこまで分けてしまったらどのタイプにも当てはまるので大まかに分けておく。
タイプが分かっていないタマゴが冷たい場合、最悪死んでいるか弱っているかという選択もあるため、動くのかとアキに確認する。
コクリと頷くアキを見て、正常なタマゴなら、水か氷などのポケモンなのは間違いないだろう。
水とドラゴンと聞き、それぞれ得意なポケモンで戦うルリナとキバナが更に目を輝かせタマゴに興味を向けた。


「へえ!だったらドラゴンだな!!」

「はあ?なによそれ!ドラゴンって決まったわけじゃないでしょ!水よ!水ポケモン!」

「それこそ決まってるわけじゃないだろ!ドラゴンは体温が低いから絶対にドラゴンポケモンだ!」

「それを言うなら水ポケモンだって体温が低いわ!!」


ドラゴンと水を得意としている2人が睨み合う。
ソニアが慌てて止めようとするも、2人はヒートアップしついにはバトルすることになった。


「ダ、ダンデ…」

「大丈夫、バトルで楽しんでるだけだから」


アキも喧嘩しながらバトルする2人に、ダンデを戸惑いながら見る。
ダンデはアキが何を言いたいのか察したが、心配いらないと笑顔を送った。
ダンデが大丈夫と言うのならそうかぁ、とアキはギャアギャア騒ぎながらバトルをするキバナとルリナを見た。

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