アルシオンに見つかったアキはウォーグルに乗ってアルシオンの手から逃げ回っていた。
「キュィィ!!」
「黙れギラティナ!!お前も私の邪魔をするのか!!お前とてどちらがツバキを守れるのか分かるであろう!!なぜそのポケモン達に許す!!!」
飛んで逃げ回るアキを追いかけ捕まえようとするも、それをギラティナが間に入り邪魔する。
ミュウ達を庇い、そして匿ったギラティナに怒りを露にした。
「ミュ!!」
ギラティナと共にミュウも2人の間に入るも、アルシオンの怒りは収まらない。
『あやしいひかり』を放ち、防ぐことができなかったギラティナが混乱してしまう。
『――っ』
混乱したギルティナは敵味方が分からなくなり、その場で暴れはじめる。
アルセウスと同じ巨体を持つギルティナが暴れてしまうと、アキ達を気遣っていてもどうしても危険は避けられない。
ギルティナがあちこち飛び回ると、身体がかすっただけでも突風でウォーグルの軌道が歪む。
更に追い打ちをかけるように、通り過ぎる際ギルティナの尾がアキとウォーグルに向けられる。
羽を動かしなんとか落下を免れたウォーグルだったが、ギラティナの尾がアキに当たると気づき咄嗟に庇う。
『ウォーグル!!』
アキの悲鳴にも似た声にミュウがいち早く気づく。
ミュウはギルティナを混乱とさせアキを奪おうとするアルシオンの相手をしていた。
だが、アキの声に気づき視線をそちらへ向ける。
アキを庇ったウォーグルがその強い衝撃に気を失い落下しているのが見えた。
彼の背には落ちないようウォーグルにしがみ付きながらも彼の名を呼ぶアキの姿があった。
―――アキ!!
ミュウは目の前の相手よりもアキを選択した。
小柄を生かしてアルシオンに追いつけない速さでアキの下へ急ごうとした。
その隙をアルシオンは狙った。
背を向けあっという間に小さくなっていくミュウに向かってアルシオンは『ギガドレイン』を発動させた。
その瞬間、周りに浮く緑色のプレートが微かに光る。
「ミ"…っ!」
『ギガドレイン』は相手にダメージを与えながら自身も回復する技だ。
ミュウ相手にその技で有利になれるとは思っていないが、散々削られたアルシオンに癒しを与えた。
そして、一瞬の隙を生んだ。
アルシオンはミュウの生命が吸われているその一瞬に緑色と黒色、紺色のプレートで囲む。
すると電気が走ったようにプレートがミュウを攻撃し始めた。
プレートは、色によってタイプが異なる。
このプレートは母であり父である創造主からの贈り物だった。
「フン…裏切り者どもめ…そこで指を咥えているがいい」
苦しむミュウを横目にアルシオンは落下しているアキの下へと向かおうとした。
だが―――体が動かなかった。
その場に冷気が漂う。
アルシオンはその巨体がカチコチに凍りついた。
しかし、すぐに氷を砕きミュウを睨む。
ミュウが捕らわれながらも、『ふぶき』で体を凍らせてアルシオンの動きを止めたのだ。
「き、さま…!」
―――行かせないよ!!アキには指一本触れさせない!!
アキの下へ向かおうとしたアルシオンの前に立ち塞がり、氷のつららを周囲に作り出し先をアルシオンに向けるようエスパータイプの力で動かす。
アキに一歩でも近づけば氷のつららを撃つ、という脅しである。
辺りに散りばめられるような冷気にアルシオンは悔し気に顔を顰めた。
アルシオンの足止めを成功させたミュウはアキとウォーグルの落下位置を確認し、2人が落ちる場所にピンク色のシャボン玉を作る。
何とか間に合い、シャボン玉に受け止めらるもアキとウォーグルは跳ね返った衝撃に飛び上がって地面に倒れてしまう。
『ウォーグル!ウォーグル!!』
軽く地面に落ちたアキは自分の身体を気にするよりも傍に倒れているウォーグルへ駆け寄る。
呼びかけるとやっとウォーグルの目が開いた。
しかし、動けないのか弱弱しい声で鳴きながら視線をアキへ向けることしかできなかったが、彼が目を覚ました事にアキは安堵する。
『ウォーグル…大丈夫?』
そう問えば、また弱弱しく鳴いた。
それがまた可哀想で見てられないほど弱っており、アキはどうすることも出来ないことが腹立たしい。
しかし、カバンに薬を入れていたのを思い出す。
『そうだ…拾っておいた傷薬…まだ残ってた気が…』
最初こそ、バトルを終えたガオガエン達をダンデ達に傷薬を分けてもらっていた。
だが、最近は『あの薬、どこで買うんだろう』という呟きを聞いたポケモン達が薬をアキに贈ってくれるようになった。
お金を持っていないポケモン達がどうやってアイテムを持ってくるのかと心配していると、彼らからアイテムは落ちている物を拾っていると聞き安心した。
ポケモン達からのプレゼントのアイテムをいくつかカバンに入れて持ち歩いている。
その中には傷薬も入っていた。
『でも…これ…えっと…「き、ず、ぐ、す、り」…傷薬だもんね…ウォーグル…怪我しているようには見えないけど……ごめんね、ちょっと、身体見せてね』
『うぉぐ…』
パッケージを見ればアキには見慣れないが、傷薬と書かれていた。
傷薬の言葉はダンデから教えて貰って読めたが、裏に書かれている注意書きや説明書きが読めない。
なんとなく目を凝らしても読めないものは読めない。
だが、傷薬と言うくらいだから外傷に使う薬なのだろう。
しかし、そう思ってウォーグルを見るも、彼の身体は羽毛に包まれて傷が分からない。
あったとしても、羽毛から零れるくらいの傷口ではこの薬は意味がないかもしれない。
あまり怪我をしているかもしれないのに無暗に触ることはしたくはないが、羽毛で隠れている傷を放っておけない。
ウォーグルもそれを理解して大人しくアキに触れさせた。
「キュィィ!!」
傷を探しているとまだ混乱が切れていないギラティナが真っ直ぐアキ達の方へと突っ込んできた。
『やめて!ギラティナ!!』
突っこんできたギラティナだったが、アキの声に軌道をずらした。
混乱していても無意識にアキの存在は気づいているのか何とか体を捻ってアキに突撃することはなかったが、地面に激突は避けられなかった。
破片が飛んでくるとアキは咄嗟に動けないウォーグルを庇おうとした。
だが、気づいたらアキは仰向けに倒れていた。
『ウォ、グル…?』
ウォーグルを庇っていたアキだったが、逆に怪我を負っていたウォーグルに庇われてしまった。
アキ達が落ちたこの場所は、どこにでもある街の歩道。
巨体を持つギラティナが勢いよくぶつかれば破壊された破片があちこちに散らばるのは当然だった。
ぶつかるのは避けられたがコンクリートやレンガの破片がアキとウォーグルに向かってしまった。
このままでは自分を庇うアキに大怪我を負わせてしまう。
ポケモン達はアキを守らねばならない。
あの子の血を、ここで絶やしてはいけないと。
あの子が父のために絶やさないよう紡いできた糸。
ミュウのように長命な個体ではない自分でさえ遺伝子に刻まれた絆。
自分の命でアキを守れるのなら、ポケモン達は喜んでその命を奉げる。
だが。
『ウォーグル…っ』
だが、きっと、アキも、あの子もそんな事は望んでいない。
だけど、庇わずにはいられない。
あの子もこの子も、愛しているから。
アキに覆いかぶさるウォーグルに触れるとアキの手が濡れた。
水と違うそれに手の平を見ると真っ赤に染まっていた。
血、という頭の中で理解しても体が動かなかった。
ウォーグルが自分を庇って怪我をしてしまったことがショックだった。
『ウォーグル…!待ってて!今…傷薬で治してあげるからね…!』
シュ、と傷薬を傷口にかけてあげると、ウォーグルは痛そうに顔を顰め声を零すが、大人しくしていた。
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