(36 / 43) その生命に恋う (36)

アキはどうやら、カブという男性に保護される身となったらしい。
あの後、すぐに退院したアキはカブと共にポケモンセンターにいるウォーグルとピカチュウに扮しているミュウの見舞いに向かった。
2匹はすぐにアキに気づき、アキが元気づけるとあれだけ落ち込んでいたのに2匹は元気を取り戻した。
とはいえ、アキは退院できたが2匹はまだ傷が癒えていないので入院は続く―――かと思われた。


「ぴぃ!ぴかぁ!」


また明日来るからね、と手を振るアキを見てゲージの中からピカチュウがピーピー泣き出した。
あまりにも泣き出すものだからアキとカブは驚き、ジョーイとイエッサンが駆け込んできた。


『お、落ち着いて!暴れたら傷が開いちゃう!』

「ぴか!!ぴかぴかっ!!」


ピカチュウがイヤイヤと首を振り泣き続ける。
大型用のゲージにいるウォーグルも負けじと鳴きだし、アキは困ってしまった。


『二人とも落ち着いて!ね!また明日来るから!安静にしたらそれだけ早く退院できるから!』


2匹にそう説得するも暴れるのを止めない。
暴れる2匹の切ない声に同じく入院していたポケモン達も落ち着かなくなってきた。
それを見て、ひとまずアキとカブを連れて部屋を出る。
だが、外からでも聞こえるほど2匹の鳴き声は零れていた。
それを聞いてジョーイはここで2匹を入院させるのは無理だと判断した。


「これ以上暴れられては他のポケモン達にも影響が出ます…その、申し訳ないのですがこれ以上この子達を預かることはできません…」

「ご、ごめんなさい…」

「きっと貴女に会って安心して寂しくなってしまったのね…傷は浅くないですが毎日薬を塗って安静にしていれば治りますから自宅療養でも構いませんよ」


アキは深々と頭を下げるが、続けられたジョーイの言葉にカブを見た。
カブとアキはそこまで身長差はなく、見上げる必要ない。
アキの視線に気づいたのかカブとはすぐに目が合い、彼はアキが何が言いたいのかすぐに察してくれた。


「僕は構わないよ…僕のポケモン達も大型の子が多いから家もそれなりの広さもある…君のポケモン達が増えても十分伸び伸びとできるだろう…君さえよければウォーグルとピカチュウを僕の家で療養させてあげてほしい」


家と言ってもアキはカブの家に保護され世話になる身だ。
面倒な人間を居候させてくれるだけではなく、カブはむしろアキに気を使ってくれた。
それに申し訳なさと、カブの優しさに嬉しく感じた。
『ありがとうございます』と頭を下げお礼を言うアキに、カブは苦笑いを浮かべる。
会ったばかりなのは分かっているが、他人行儀さに少し寂しく感じる。
ピカチュウとウォーグルは結局退院となり、自宅療養としてカブの家にアキ共々お世話になることになった。

―――カブの家は一軒家だった。
カブからは一人暮らしだと聞いていたが…目の前にあるのは一人暮らしにしては大きすぎる家だった。
中にはいると、外から見た家に恥じない広さの玄関がアキを迎え入れてくれた。
玄関だけでもアキが住んでいた家の半分ほどだろうか。
いや、なんで玄関でこんな広さが必要なんだ…とアキは自分で自分に突っこむ。


「僕はガラルの出身じゃなくてね…僕がいた国では靴を脱いで家に上がる風習だったんだ」


そう言ってカブはお客様用のスリッパを出してくれた。
"こちら"でもそういう風習の違いがあるのかと思いながら、アキは靴を脱ぎスリッパに履き替える。
まず案内されたのはリビングだった。


(リビングの途中までで私の住んでた家丸々入るってどういうことなの…これが…異世界…?)


独り暮らしのマンションだから狭いのは分かっているがこうも格差を見せつけられると落ち込みそうになる。
いや、もうあの家には帰れないのだが、ここに来てからアキの常識は全て無に帰されてきたからもはや驚きもない。(驚かないとは言っていない)
リビングに案内されたものの、どうすればいいのか分からず居心地の悪そうに立つアキにカブは自分のポケモン達を全員ボールから出した。
突然目の前にポケモンが現れアキは目を丸くし、腕の中にいるロコンとカジッチュもビャッと驚いたように小さな身体を跳ねさせた。
驚いたように跳ねる二匹に『驚かせちゃったね、ごめん』と頭を撫でる。


「これが僕のポケモン達さ…いつも家ではみんなボールから出して一緒に過ごしているんだ…もしよかったらアキ君もそうしてあげてほしい」


アキがボールからガオガエン達を出しやすいように最初にカブが手本を見せるようにボールからポケモン達を出してあげたらしい。
それに気づき、アキはその気遣いに甘えてガオガエンとヌオーをボールから出してあげた。


「みんな、今日から一緒に過ごすことになったアキ君とポケモン達だよ…ご挨拶して」


カブの言葉にウインディ達が一斉にアキに向かって駆け寄ってきた。
ウインディやマルヤクデやキュウコンは体が大きいので威圧感がすごい。
アキはあっという間に毛という毛に埋もれてしまった。


「こ、こら!危ないから飛びつかない!」


『うぷ』という言葉を最後に毛に埋もれて姿を消したアキに、カブは慌てて発掘する。
炎タイプのポケモンというのもあって温かい彼らの毛に埋もれ体温が上がったアキの頬は少し赤く染まっていた。
更には顔をベロベロンに舐められたため、顔中に彼らの毛がついてしまっている。
引き抜いたアキの姿にカブは慌てて謝り、濡れタオルを持ってこようとリビングから出る。
その際、ウインディ達に『大人しくしてなさい』と指示を出すのを忘れずに。


「くぅん…」


主人に怒られたウインディ達は悲しそうにアキを見た。
『ごめんね』と言う彼らにアキは顔に張り付いている毛を一本一本取りながらクスリと笑う。


『心配してくれたのね…ありがとう…』


ウインディ達は10年前からアキを気遣ってくれていた。
きっとセレビィが来なければウイディとマルヤクデ達は実力行使でアキを病院に連れて行っただろう。
アキの言葉にウインディ達は嬉しそうに鳴く。
たまたま傍にいたマルヤクデの顎下を炎に気を使いながら撫でると、マルヤクデは嬉しそうに目を細めた。


「コーン!」


気持ちよさそうに体を揺らすマルヤクデにアキもつい微笑みが零れてしまう。
そんな2人にウインディ達は大人しく自分の番を待っていたのだが…キュウコンが待ちきれずマルヤクデを押しのけてアキにすり寄った。


『わっ…びっくりした…ふふ…我慢できなくなっちゃった?』

「きゅ」

『いけない子ね…あとでみんなに謝らないと駄目よ』


頭を何度も何度も摺り寄せるキュウコンにアキは毛並みが乱れないよう優しく撫でてあげる。
後ろからキュウコンに対して抗議の声がちらほら聞こえたが、彼には届いていない。
『はーい』と鳴くが反省が見られないキュウコンにアキは苦笑いを浮かべた。
それぞれ懐いてくれるカブのポケモン達を撫でていると見守っていたガオガエンがふと自分の後ろへ視線を向けたのに気づく。
釣られて後ろへ振り返ると、カブの目と合った。
どうやらタオルを持ってきたのは良いが声をかけるタイミングを見失っていたようだ。


「あっ…ご、ごめんなさい」


カブのポケモンに勝手に触れたことに謝る。
謝るアキにカブは笑みを浮かべ首を振った。


「謝ることはないよ…マルヤクデ達と仲良くなれて安心した…この子達は他人と関わるのが好きな子達だから君さえよければもっと触ってあげてほしい」


濡れタオルを渡しながら『毛だらけになるのに懲りなかっただけどね』と苦笑いを浮かべるカブにアキは笑って返した。
顔を舐められても、毛だらけになっても、彼らの愛を嫌えるはずがない。
嫌ではない様子に安堵しながら、カブは部屋を見渡す。


「ウォーグルとピカチュウはこの辺りで休ませようか…彼らが床ずれしないようクッションを持ってくるから待ってて」


カブはタオルを渡し、自分のポケモン達にアキを任せクッションを探しに向かった。


「さて…クッションと言ってもなぁ…僕の家にそんな上等なものないし…シーツやタオルをかき集めれば何とかなるかな…」


クッションと言っても、そんな洒落たものカブはあまり持っていない。
あるとしてもソファに何個かある程度で、床ずれ防止になれば何でもいいかと考えながら部屋中を探す。
この際自分の枕を奉げるのも仕方ないだろう。
あれだけ寂しそうな鳴き声を聞かされれば尽くしてあげたいと思ってしまう。


「まあ、こんなものかな…足りなかったらまた探せばいいか…」


広いとはいえ、男の寂しい一人暮らしだ。
同僚である各シティの若いジムリーダー達とは違い、オシャレに疎いオジさんである。
部屋中を探してなんとかかき集めてなんとか集まった程度しかクッション替わりになる物がなかった。
ピカチュウだけだったらシーツをかき集めることはなかったが、ウォーグルほどの体格では少し難しい。
足りるか不安だったが、お客様用のシーツやポケモン用のタオルケットなどをかき集め敷き詰めると、ウォーグルでも十分休めるスペースが出来た。


「よし…準備は終わった…もうウォーグルとピカチュウを出しても大丈夫だよ」


カブに言われてアキはコクリと頷き2匹のボールを出してたどたどしい手つきでボールから2匹を出す。
ボールから出すとウォーグルとピカチュウはカブを見る。
明らかに警戒している目。
だが、彼らはガオガエンを見るとその警戒の色は消えた。
人間には分からない彼らのやりとりがあったのだろう。
警戒が解いた2匹はカブとアキが敷いたスペースへ向かい、自分達それぞれ落ち着いた体勢になって横になった。
アキがあからさまにホッと胸を撫でおろしたのが見えた。


「この子達は怪我をしているからあまりちょっかいをかけたら駄目だよ」


興味津々にウォーグルとピカチュウを見ているウインディ達に気づき、無暗に絡む子達ではないが一応注意をする。
カブの言葉に小さく鳴いたので、理解してくれたのだろう。
今日の薬はジョーイが塗ってくれた後なので、今は安静が必要である。
アキはそれぞれ楽な体勢で横になる2匹の傍にいた。
自分のために傷ついてまで守ってくれた2匹の傍をアキは離れたくはなかった。
その姿を見て、カブはお茶でもと声をかけようとしたがやめた。
今の彼らからアキを奪うなんて出来なかった。


「今日はもう疲れただろうから軽めの夕食を用意するよ…何か食べれない物とか、アレルギーとかないかい?」

「ない、です…あ、でも……その……」


ウォーグルとピカチュウを撫でているとカブの問いにアキは思い出したように振り返る。
しかし、怪我をしたウォーグルとピカチュウも世話になっているのにこれ以上彼に迷惑はかけられないと口を閉ざしたが、それにカブは気づく。


「僕達は今日会ったばかりだから気兼ねできる関係ではないけど…ここを君の家だと思ってなんでも言ってくれると嬉しいかな…」

「…………」

「まあ、ご家族と再会するまでだけどね」


口を閉ざし俯くアキに、カブはできるだけ明るく言った。
カブは10年前にアキと会ったが、アキはその時気を失っていたため、実質アキとカブは今日が初対面だ。
そんな日に親しくしたいと言っても無理なのは百も承知だが、カブの気持ちはちゃんとアキに伝えたい。
責任うんぬんもそうだが、何よりも言葉が不自由なアキが過去のガラルに来たばかりの自分と重なった。
成人しているとしても、年老いているとしても、やはり身内や家族と顔を合わせるのは心を落ち着かせるものだ。
ちゃんと家族を探しているよと伝えれば、アキは更に俯いてしまった。


「アキ君?」

「……あの……家族…えっと…探す、する、です?」


どうしたのかと、もしかして具合でも悪くなったのかと思い声をかけると、おずおずと声が零れた。
まさかの問いに一瞬間が開いたが、カブは慌てて頷く。


「あ、ああ!勿論!家族の人達も君を探しているだろうからね…ただ、時間がかかるかもしれないんだ…早く家族に会いたいだろうけど僕達も出来るだけ早く君の家族を探すから待っていてほしい」


初めてアキが自主的に話そうとしているので、カブはついテンションが上がってしまった。
アキが驚いた様子もないので安心したが、己を落ち着かせて少し我慢させてしまうことを謝る。
眉を下げるカブにアキは少し考えるそぶりを見せた後、ポツリと呟いた。


「探すの、駄目…して…駄目?」


アキの言葉にカブは何を伝えたいのか考えるがすぐに気づく。


「えっと…家族を探さないでってことかな…」

「さがす、どこ?」

「そう、探すのは、どこにいるのって意味」

「じゃあ、探さないで」


アキは家族を探すなと言った。
その意味が理解できないカブは首を傾げ『どうしてかな?』と優しく、出来るだけ怯えさせないように優しく聞く。
子供に語り掛けるような優しい声色の問いにアキは俯きながらポツポツと答える。


「…家族、いない……探す、意味、ない、です…」


俯いて髪で顔を隠しているから、今アキがどんな表情を浮かべているか分からない。
だが、悲しんでいるように声からして感じた。
カブは『家族がいない』という言葉に言葉を失う。


「…家族が、いない…」

「はい…」

「親族……家族の家族もいない?」

「いない、です…誰も……だから、探す…意味、ない…」

「……そっか…教えてくれてありがとう」


家族がいない人間はそう珍しくはないがそれほど多いというわけではない。
カブは家族がいないという言葉を伝える際、アキの膝の上にある手がギュッと握り締められるのを見てしまい、胸が痛む。


(家族の話をすれば安心すると思ったが……可哀想なことをしてしまった…)


大人でも家族のいない寂しさは耐えられない。
カブだってポケモン達やジムリーダー仲間達や友人達がいるが、時々家族のいない孤独感に苛まれることがある。
年を重ねたカブですらそうなのだから、まだ若いアキの身にどれほどの寂しさや孤独感に襲われるのか想像できない。
カブは丸まるアキの背中に触れる。
カブの温かい手にアキは俯いていた顔を上げ、カブを見上げる。


「じゃあ、もし君が良かったら一緒に住まないか?」


カブの言葉にアキは目を丸くする。
目を丸くして驚くアキを見てカブは慌てて釈明する。


「あ!いや!君が心配しているようなことは絶対にないから安心してくれ!ほら、僕と君は年が離れているし!流石に君ほど離れている子と関係を持ちたいなんて思っていないよ!どちらかって言ったら娘みたいには思ってるけど!」


普通、見ず知らずの男性から一緒に住まないかという提案に乗る女性はいない。
今のカブは通報されて逮捕されても仕方ない事を言った。
年の差を理由に劣情を抱いていないと釈明するも、年の差婚や、ロリコンやショタコンという文字が存在するように、年下を好む男性や女性がいるのは確かだ。
カブがいくらそんな趣味はないと言っても、その言葉を証明するものはない。
今更だが、背中に触れるのもセクハラになるかとパッとアキの背中から手を放した。
アキは先ほどまで自分に触れていた手を目で追った後、静かにカブを見上げる。


「…なぜ…私に…そんなに…してくれるの、です?」


拙い言葉。
ダンデ達に教えて貰った単語を全て思い出して繋げた言葉。
だけどカブには通じた。
どうして、という当然の疑問にカブは迷う。


「信じられないと思うが……君は10年後の未来に来たんだ」

「みらい…じゅうねんご…」


10年後の未来、という単語がまず理解できない。
首を傾げるアキに、カブは分かりやすく説明をしてあげる。
カブの砕けた説明にアキは思考を巡らせるように視線をあちこちに向けた後、一点に止まった。
勿論そこには何もない。
突然過去から来たんだよと言われても素直に受け入れる人間はいないだろう。
考え込むアキにカブは見たままの事を話す。
その中でアキが未来へと飛ばしたポケモンの名を口にした。


「セレビィ」


セレビィという伝説のポケモンが未来へ飛ばしたと言っても、アキに信じてもらえないとはカブは思っている。
だが、どうしても隠し事はできなかった。
なぜなのかは自分にも分からないが、教えた方が彼女のためだと思ったのだ。
セレビィの名を聞いてアキは信じられない反応ではなく、どこか腑に落ちたように落ち着いていた。
そこにカブはまず違和感を感じた。


「セレビィを知っているのかな?」

「知ってる、です…家族です」


先程家族はいないと言ったのに、ポケモンを…それも伝説ともいえるポケモンを家族と呼ぶアキ。
セレビィを家族と言ったその表情はとても穏やかで、カブは初めてアキの感情を見た。
ポケモンを家族と呼ぶ人間は多い。
それほどポケモンと人間の絆が深まっているという事だ。
だが、どうしてか…アキの言った家族とはそれとは異なる気がした。
カブは気になったが今の関係性で聞けるはずもなく、あえて軽く流した。


「10年前、僕は怪我をしたウォーグル達と君を発見した…君の服はピカチュウの血で染まっていたから僕は君が怪我をしたのだと思ったんだが…君達を助ける前にセレビィが君達を10年後の未来に飛ばしたんだ…」


あえて流して触れずにいたのが功を奏したのか、アキの表情は穏やかなままカブを見つめた。
だが、カブの言葉にアキはそっと視線を逸らした。
それはつまり『その事に関しては言いたくない』――ということだ。
事件に巻き込まれたのか、はたまた事故か。
分からないが今は心を落ち着かせることが大事だ。
今更ぶり返すのは今のアキにはよくないだろうとカブは判断した。
ただ、落ち着いた頃…アキがもっとカブや外で友人などを作れるほど心を開いてくれた頃に教えてくれたらいいなとは思う。


「だからだろうね…今の君と過去の自分を重ねてしまって…放っておけなかった」


カブも未来に飛ばされたというわけではないが、この国に来たばかりの自分とアキを重ねてしまった。
カブはこの国で生まれたわけではなく、この国では外国人という分類に入る。
言葉の壁や、知り合いのいない孤独。
そして多くのトレーナー達から勝ち取ったジムリーダーという責任の重さと、周囲とのコミュニケーションや、手持ち達の育成の難しさ。
自分が望んだことだとは言え、外国で暮らす事への困難さに心が折れたって仕方ない経験をカブはいくどもしてきた。
道を外しかけてしまい、批難もされたこともあった。
それでも身内も友人達もいなかった外国に留まっているのは、今はもうここが自分の居場所となっているからだ。
それに孤独だったと言っても傍にはいつも手持ちのポケモン達がいたし、言葉を覚えてからは多くの友人が出来た。
今もジムリーダーのカブとしてファン達もいる。
国を出ること全てが悪い方へと向かうことではないということも、カブは知った。
同じ孤独でも、他国に単独で訪れたカブと、家族がいないアキでは違うかもしれない。
孤独と言ってもポケモンがいる。
それでも、1人はつらいものだ。


「時間は沢山あるからね…無理に僕との同居を選ばなくてもいい…今は心が落ち着くまで休む時間だと思えばいい…僕は君がここにいることに迷惑なんて思わないからね…勿論、一人暮らししたいとか、自分の育った国に帰りたいとかあれば遠慮せず言ってくれ…最後までちゃんと支援するからね」


アキはカブの言葉にコクリと頷く。
カブが会ったばかりの自分を構う理由は理解し、受け入れた。
今はカブの言う通り落ち着くことだけを考えることにした。
カブが聞きたいだろうに追及しないのが分かりアキはホッと胸を撫でおろし、彼の優しさに安心したように笑みを小さく浮かべ頷いた。
頷いたアキを見てカブも笑みを返し、『お腹が空いただろう?何か作るよ』と言ってキッチンに向かい、キッチンに姿を消すカブをアキは笑顔を張り付けて見送った。
カブの姿がキッチンに消えたのを見てアキは張り付けていた笑みを消し、大人しく2人の傍にいたコータスを撫でる。


『とても良い人ね』


アキにカブを褒められ、カブのポケモン達は嬉しそうに鳴いた。
それだけでも彼らの関係性の深さを感じ取ったアキは愛おしそうに目を細めた。

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