リアナはホワイトベースの軍人からの指示で、ガンダムで使える部品とまだ使えるガンタンクの回収を行っていた。
なんで私が…、と思わなくはないが、今動けるパイロットは自分しかおらず、軍人も被害が出ており殆ど怪我人や怪我人の治療などで人手を取られていると言われてしまえばそれまでだった。
実質動けるのは自分しかいないのは確かなようで、部品やガンタンクの回収を急いでいた。
ガンタンクの大半はザクに破壊されており、細々した部品の回収が主な仕事となっていた。
すると、ホワイトベースから通信がきたため通信をオンにするスイッチを入れた。
スイッチを入れると、通信用のモニターに通信先が映る。
モニターに映ったのはノーマルスーツを来た若い男性と、ストレッチャーに乗っている怪我をした男性がいた。
≪艦長!こ、子供がガンダムに乗っています!≫
パッとモニターに映ってまず見えたのはノーマルスーツを着た男性だった。
男性はリアナの姿を見た瞬間、目を丸くさせ後ろへと振り返る。
その言葉からして、ストレッチャーに寝かされているのは艦長らしいことが伺う事ができた。
艦長も男性の言葉に目を剥け、モニターを見た。
確かに、モニターに映っているのは赤毛の少女だった。
≪本当に少女ではないか…ジオンのザクを倒したのもその少女なのか?≫
艦長も男性も、少なくとも成人した軍人が操縦していると思っていたのだろう。
モニターに映る少女に皆驚いているようだった。
艦長の困惑した言葉にリアナは首を振る。
「違います…ガンダムの性能のおかげで倒せたんです…ガンダムでなければ私は倒されていました」
嘘でも謙虚でもない。
ガンダムが高性能だったからリアナは生き残れた。
ガンダムではなく、ガンタンクであったのなら何度も殺されていただろう。
≪なぜそこにいる?≫
「その声は!さっき無線で私にガンダム関係の部品を運べって命令した人ですね!?」
部品の回収を指示した際、現場にいた男性は通信手段はなく無線でのやり取りしかできなかった。
その為、声でのやりとりだった。
だから、モニターに映るまで男性もリアナが少女だと気づかなかったのだろう。
声と無線の際名乗った名前からして女性だとは流石に気づいていたが、子供が乗っているとは思っていなかった。
「艦長、降ろさせます」
「パイロットが…生き残って、いたらな…」
流石に子供に任せられないと男性は艦長に振り返るが、艦長は傷の痛みに耐えながら首を振る。
今の現状はパイロットが極端に少ない。
殆どの軍人はやられ、怪我人の手当ですら民間人の手を借りなければならない状況だ。
(私どうなるんだろう…勝手に機密のMSを乗り回したからなぁ…銃殺にならなきゃいいけどなぁ…)
大人が話し合っている間、リアナは考えないようにしていた思考が戻ってしまった。
父親が作ったMSとはいえど、ガンダムは軍の機密扱いだったはずだ。
その機密として慎重に扱わなければならなかったMSを民間人であるリアナが許可なく乗り回している。
民間人だから銃殺とまではいかないまでも刑務所に入れられるかもしれないのだ。
(お父さん、助けてくれるかなぁ…っていうか…お父さん、面会も来てくれなさそう…)
リアナの中では逮捕される事が決定済みで、脳内シュミレーションでは、父親は出所するまで面会に来てくれない想像をしていた。
いや、あの父親のことだから出所しても迎えにくるどころか、自分の存在を忘れて仕事していそうである。
そんな現実逃避のようなことを考えているリアナを余所に大人達はああだこうだと話し合う。
しかし、その話し合いは爆発音と強い揺れで中断された。
敵が攻めてきたのだ。
≪また攻撃のようです≫
リアナのモニターに一人の女性が写り込んだ。
その女性は民間人らしく軍服ではなく、私服を着ている。
それを見てリアナは『人手不足って本当なんだ』と攻撃を受けているという緊張感を感じながらも頭の端で思う。
≪リアナの処分はどうなさいます、艦長≫
≪…ガンダム関係の部品で使えない物はすべて処分させる…ガンダムにはビームライフルを用意させよ≫
≪は?≫
処分、と聞きリアナは背筋を伸ばす。
いくらお堅い軍とはいえ15歳の少女を殺そうとは思わないだろう……思わないよね?、と恐々していたが、艦長の意外な返答に男性とリアナの心の声が重なった。
それは女性も同じなのか、驚いた表情で艦長を見ていた。
≪初陣にはやや若すぎるが…古来15、6歳の出陣がなかったわけではない…≫
『君達の働きに期待する』と言われても軍人ではないただの機械オタクであるリアナは心にも響かない。
ただ、痛みに苦しみながら言われて嫌だというほど子供でもなかった。
艦長は判断を下す前にオペレーターに敵の動きを聞いていた。
すぐ近くまで迫ってきていると聞き、他のパイロットを探すよりもガンダムを操縦できているリアナに託す賭けをしたのだろう。
ザク二体を撃破したという実績を評価してくれたともいえるかもしれない。
リアナとしては死にたくない一心だったし無我夢中だったから実力かどうかは疑問ではあるが。
そもそもリアナがこうして男性の前にいられるのだって、父が作ったガンダムの性能のおかげで決してリアナの実力だとは思えない。
≪リアナ、聞こえるか?サイド7に残ったガンダムの部品を破壊しろ≫
艦長の指示は絶対だ。
艦長がこの子供にガンダムとホワイトベースを任せるというのであれば、任せるしかない。
傷が響き痛みに顔をゆがめる艦長の代わりに指示を出すと、リアナからは怪訝な声を返された。
「どうしてですか?まだ三機分ぐらいは…」
≪ジオンに機密を渡すというのか?≫
そう言われてしまうと何も言えなくなってしまう。
しかし反発心からか、リアナは口をへ文字にして黙り込んだ。
それに敵の戦艦であるムサイが後退したという報告をオペレーターから受け、急を要する事態だと素人のリアナでも分かったのもあった。
その為、リアナは『勿体ないなぁ』と思いながらもスーパーナパームを使い基地を出て部品の処分をしに向かった。
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