大きな音が耳に届き、大きな振動を身体で感じ、小春は振り返りながら柊に腕を引っ張られ走っていた。
あまり運動のしない小春は既に息が上がっており疲れ果てている様子だったが名取と重丸が心配で疲れを感じる余裕すらない。
「柊…!止まって…ッ!」
「駄目だ。主様の命令でお前をホテルに連れて行かねばならんからな」
「でも…でも名取さんと重丸くんが…!!」
「……あの妖かしならば主様に任せておけばいい」
「いや!!」
走りながらで小春は息が上がっているため息も切れ切れに繋げながら必死に止まるよう柊に伝えるが、柊は立ち止まらず走ったまま首を振る。
しかし首を振る柊に負けず劣らず小春も頑固なのか地面に足をくっつけ必死に抵抗するが、妖かしと人間では力の差は歴然である。
引っ張られながらも必死に抵抗する小春の言葉に柊はやっと立ち止まるも一切小春を振り返る様子はなかった。
「お前が行ってどうする…」
「それは…」
「お前には世話になっている者がおるのだろう?」
柊は背を向けたまま小春に問う。
その問いに小春は口を噤み、何も言い返せない小春に柊はゆっくろと振り返った。
「夏目もあの猫もお前の帰りを待っている…お前はその者達を捨てるというのか?」
「捨てるなんて…」
「言っているのも同じだ。例えだがお前があの妖かしの元へ行くとする…しかし、それでお前はどうするというのだ。何をするつもりだ?ただ妖力が強く我々が見えるだけのお前が、あの妖かしをどうするというのだ」
「……そ…れは……」
柊の言葉は小春に酷く冷たく突き刺さった。
面の奥から真っ直ぐに見つめてくる柊に小春はグッと口を閉ざし目を逸らす。
そんな小春に柊は表情は面に隠れ分からないがどこか神妙な面持ちで口を開きかけるが戸惑い口を閉じた。
しかし、すぐに覚悟を決めたらしい柊が再び口を開く。
「小春…お前達兄妹はなぜそうまでして妖かしに肩入れをする…」
「それは…だって……だってあなた達が見えてるから…」
「……たったそれだけの理由なのか…」
真っ直ぐ見つめてくる柊の言葉に小春は逸らしていた目線を戻す。
柊は小春と目が合い、そして真っ直ぐに見つめられながらの言葉に低く声を漏らした。
別に怒っているわけではない。
呆れてもいない。
…否、どちらかといえば呆れている方である。
小春は呆れたような柊の言葉にはっきりと頷いた。
それを見て柊は唇を閉じ、何を言っても無駄なのを察しそして…
「……あれは1000年前の事だ―――…」
溜息を1つ零し、知りうる重丸の過去を語りだした。
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