小春は柊の話した重丸の過去に言葉さえ出なかった。
小春が口を閉じ、全てを話した柊も口を噤む。
その場には静けさだけが残った。
「重丸くんは…捨てられた…の…?」
「…ああ」
小春の言葉に柊は目線を小春から逸らしながら小さく頷く。
その頷きを見て小春の瞳は悲しみの色を濃くさせ涙で瞳を揺らす。
「どう、して…」
「……思い出したくなかったのだろう…大切な友の思い出を…」
「でも、それでも…あんまりだよ…っ」
安陪晴明と言えば有名で、何も知らなかった小春も色々なテレビを見て知った人物の1人だった。
どれも晴明を持ち上げている物ばかりだったからか、晴明の行動に小春は信じられなく否定するように首を振る。
首を振れば溜まっていた涙が流れ、滴が舞った。
顔を手で覆い俯く小春の震える肩に柊はそっと静かに手を伸ばし、慰めるように肩を指の腹で撫でてやる。
それでも小春は顔を上げることはなかった。
「小春…泣くな…」
泣かれてしまったらどうしたらいいか分からず、柊は困ったような声を零す。
静まり返っている空間では柊の声は大きく響いていた。
柊の声を耳にしながら小春は『だったら…』と呟き鼻を鳴らしながら顔を上げる。
しかしそれでも俯いており、柊を見つめることはなかった。
「だったら私は…尚更あの子の元に行かなきゃ…」
「!――何を馬鹿な事を!自ら行ってどうするというのだ!今度こそあの妖かしの元へ行けばお前はもう夏目達の所へは帰って来れないのだぞ!?」
「でも行かなきゃ何も終わらない!!」
「もう終わりだ!!!あいつはもう長くはない!!」
「…!」
柊に反論しようと顔を上げた小春だったが叫ぶように上げた柊の言葉に目を丸くし息を呑んだ。
柊はここまで言うはずじゃなかったと言った後、後悔したように重い溜息をつき落ち着かせるも言った言葉は取り消すことできない。
唖然と見つめる小春の目線に柊は渋々と続ける。
「…あいつは寿命が尽きかけているらしいんだ…」
「寿命がって…じゃあ…重丸くんは…もう……」
静かに呟いた柊の言葉に小春は耳を疑い、信じられないと自分の言葉に頷いた柊を見つめた。
柊が頷いたのを見て小春は止まっていた涙がじわりと瞳から溜まりぽつりと頬を伝って流れる。
涙が溢れる小春を見つめ、柊はただ肩に置いていた手の力を強める。
「どうして…」
「小春…?」
「どうして…私と関わった妖かし達は全てみんな死んでいくの…」
「小春…」
瞬きをするたびに涙は流れていき、柊は絞り出すような小春の悲しげな声にかける言葉が見つからなかった。
影鬼と同じく寿命が尽きかけていると知り、小春は悲しそうに…そして辛そうに眉を顰めゆっくりと柊の肩へ顔を埋める。
顔を寄らせる小春に柊は何も言わず、その華奢で触れれば壊れそうな小春の身体を力強く抱きしめた。
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