翌日。
小春と夏目は珍しく塔子に起こされた。
どうやら昨日夜遅くモコモコと話しをしていたのが寝坊の原因だったらしく、小春は寝ぼけ眼をこすりながら着替えるために自分の部屋へと向かう。
夏目と小春の部屋は2部屋繋がっているぶち抜きだった。
しかし襖一枚はあり、一応はプライベートは守られているようだが、基本2人は一緒にいるため襖は着替え以外では意味がないものとなっている。
兄妹とは言え年頃で本来ならいくら兄や妹でも襖一枚隔たれているだけの部屋は勘弁してほしいと思うだろう。
塔子と滋も小春が回復して退院して真っ先に部屋を変えようかという話しをした。
兄妹を引き裂こうとは全く思っておらず、気を使ったのだ。
しかし夏目兄妹は別に構わないと言い、決して他の部屋を選ぼうとはしなかった。
やっと一緒にいられるようになったのだから部屋も隣同士がいいと言ったのだ。
隣同士でも壁ではなく、襖でいつでも行き来できるこの部屋を小春も夏目も気に入っていた。
それに襖を開けていれば広い部屋に変わるのだから不便はなかった。
小春達の意見に2人はもう否とも言えず小春と夏目の部屋はそのままとなった。
「あ!雪積もってる!」
着替えの最中、小春はふと窓を見た。
タイツを履いていた小春は窓からの景色に嬉しそうに笑い、
真っ白なルーズフィットのフリルワンピースを雑に上から被さり慌てて兄のいる部屋に続く襖を開ける。
「お兄ちゃんっ!雪!雪が積もったよ!!」
「うわっ!!ちょ、小春!!ノックくらいしてくれ!!」
「あ、ごめんなさい…」
スパン、とあまりの嬉しさに勢いよく開ければ兄はまだ着替え中で、スウェットパーカーを頭に通した兄から驚きの声を貰い小春は慌てて謝った。
冬だから既に下に着ていたため裸を見られたわけではないためそれほど気にしていないが、流石に仲がいいとは言え妹に着替えを見られるのは恥ずかしい。
「慌ててたのか?小春、服が後ろ前逆だぞ」
「え!?」
しょんぼりさせる妹に夏目は頭を撫でてやる。
両手を通し整えると夏目は妹の姿に気づく。
急いでいたためか小春は後ろと前と逆に着ていた。
それを指摘すれば小春は『あっ』と零し、袖から両手を抜き服の中から前後ろを正し両手を袖に通す。
大雑把な着替えに夏目はもう注意する気を失くし苦笑いが漏れる。
小春は苦笑いを浮かべる兄の手を取り窓を開けて雪が積もったことを教えた。
庭を見れば見事に真っ白になっていたのだが、残念ながらその庭にはすでに先客がいた。
先客である斑は雪に足跡を付けたり転がって道を作ったりと一人楽しそうに遊んでいるのが見え、小春ははしゃぐ飼い猫の姿に目を細めた。
初めて本物の雪を見て嬉しそうにする妹に微笑み、『ご飯食べたら雪に足跡付けに行こうか』と零す。
兄の提案に小春は花を咲かせたような笑みを浮かべ頷いた。
朝食を食べに一階へと降り、夏目は塔子の手伝いを、小春は滋に斑が庭で雪と戯れているから呼んできてくれと言われタオルを持って庭にいる斑のもとへと向かう。
「ニャンコ先生〜!」
「む。小春、起きたか」
「うん…ね、ニャンコ先生、今日は学校休みだから最初の足跡お兄ちゃんと一緒につけに行こ?」
小春達より早く起きていた斑は雪と戯れていたため満足だが、小春は初めての雪を堪能していない。
正直面倒の一言に限るが、ニコニコと笑う上機嫌な小春に『嫌だ』とは言い切れず、斑は頷いた。
頷いた斑に小春は更に笑みを深め、呼ばれたためか『ご飯だって!早く行こう!』と廊下に上がった斑の体と手足をふき取ってからテーブルへと斑を抱いて向かう。
(私も小春に甘いものだな…)
小春の誘いに斑はどうしても断るという事が出来ないでいた。
多分夏目に言われても文句を言いつつも付き合ってやるのだろう。
2人に甘い自分に斑は溜息をつく。
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