(4 / 12) 13話 (4)

妖2人は登校だけの誠意ではなかった。
夏目には一つ目が、小春には牛が付きまとう。


「小春様〜!」


一つ目と違いこう言ったら悪いがあまり知能は高くない方なのか、それとものんびり屋なのか、あまり多くの言葉は喋らない。
しかし見えているこっちとしては鬱陶しいにもほどがある。
よく無いモノと思えばどうってことないという者がいるが、小春はどうも気になって仕方がない。
今は体育の時間でドッジボールだった。
コートの中にちらほら味方がおり小春のチームは負けている。
美少女オーラのお蔭か、はたまた妖力のお蔭か、小春はボールが向けられてもギリギリ外れるか偶然別の人に当たるかで難を逃れていた。
そんな小春を少し離れた場所で牛の妖が応援していた。
『小春様〜』やら『がんばれ〜』やら日の丸の紙扇子を両手に持ち張り切って応援していた。
小春は正直授業参観に来た親が大はしゃぎで応援している感覚になり、入院していたため経験していないし、周りには見えないのに何だかものすごく恥ずかしくなった。


「隙ありー!!」

「!――あてっ!」


後ろの妖ばかり気にしていたからか前からのボールに気づかず小春は顔面を食らった。
投げた敵…奈々はガッツポーズをしていたが、ドッジボールなため顔面セーフというルールによって小春は助かった。
しかし小春の顔面にボールが当たった瞬間、別々でドッジボールをしていた男子達からは絹を裂いたような悲鳴が上がったが…小春がクラスに溶け込んだ時から慣れ親しんだ悲鳴に女子たちは気にも留めず全員総無視である。
男子も男子で『俺達の天使にボールぶつけんな!』と言ったら最後、女子全員からの冷たい視線を送られると過去に学んだため悲鳴でとどめていた。


「…………」


小春はズキズキと痛む顔面の擦りながら早く授業が終わればいいのに…と心の底から思う。


体育の授業は小春も外野に追いやられ負けて終わった。
最後に残った女子生徒は頑張って敵のボールを避けていたが、集中攻撃に逃げきれず当たってしまい、そこで授業終了のチャイムが鳴った。
それから授業をいくつかこなし、小春は廊下を歩いていた。
廊下を見れば兄についていた一つ目の妖と自分についていた牛の妖が仲良く外で何か石や木の枝で何か文字を書いていた。


「それ、祝いじゃなくて呪い…」


牛の妖が一つ目の妖に『これなんて書いてあるか読めるか?』と問いて遊んでおり、牛の妖は本気かボケか…『祝い』と答えた。
しかしどう見てもそれは『呪』だった。
妖らしいと言えば妖らしく、呪いと祝いをよく間違えるネタがあると言えばあり…小春は静かに突っ込むしかできなかった。
幸い周りの生徒たちには妖は見えず、小春の呟きは小さかったため聞こえなかったが…小春はふと視界に一人の少女が入り視線をその少女へと移した。


「…………」


少女は小春ではなく、窓の外を見ていた。
その視線の先には妖がいた…ような気がした。


(見えてるの…?)


小春は冷や汗が頬を伝う。
それは暑さからではない。
心臓がこれでもかと動き煩く感じる。
少女は外の風景を見ているようではなかったのだ。
呪いと文字を書く妖を…見ているように小春は思えた。


「…っ!」


小春はじっと少女を見つめていた。
凝視と言ってもいいだろう。
流石にジッと見つめれば誰だって視線に気づき、少女は窓の外の妖から小春へと顔を上げる。
目と目が合った瞬間、小春は息を呑む。
少女はこちらを、小春を睨んでいたのだ。
視線で人を殺せるのが本当ならば小春はもう既に息はないだろう。
それほど少女の目はとても恐ろしかった。
しかし、何故か少女は息を呑む小春を数秒見つめた後、何も言わずそのまま生徒たちに交じって姿を消した。


「……っ」


小春は知らないうちに緊張していたのか…少女の姿が見えなくなりホッと安堵したらしく、長い安堵の息を零す。

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