結局小春は音羽の家に預けることになり、同じ女の音羽では重いからと理由を付けて夏目はギリギリまで小春と一緒にいた。
「おや、音羽ちゃん、帰ってきたのかい?」
「ただいま、おじいちゃん」
音羽の家は田沼の家とそう遠くはなかった。
2階建ての大きな家で、門を潜れば庭に植えている植物に水をやっていた音羽の祖父がおり、帰ってきた音羽に気づき振り返る。
「その人達は音羽ちゃんのお友達かい?」
「ううん、私要以外興味ないっていつも言ってるじゃん。この人達は普通の同じ学年の子と先輩達」
「おやおや、そうだったねえ」
音羽の後ろにいる夏目と多軌達を見て祖父は友達かと聞くも音羽からは即答で首を振られた。
全否定する音羽に多軌は確かにそうだが隠すことのない音羽に顔を引きつらせる。
夏目はやはり表情はなく、感情が見抜けなかった。
「おじいちゃん、この子なんだけどさ、ちょっと妖怪と一悶着あって眠ったままなんだよね…だから目が覚めるまでうちに置いていい?」
「それは構わないが…妖怪に襲われたとは心配だねぇ…怪我はないかい?」
「ちょっとちょっとおじいちゃん、私を誰だと思ってるわけよ」
「やだなぁ、音羽ちゃん。音羽ちゃんに限って怪我とかするわけがないのはおじいちゃんはよおく知ってるよ〜?おじいちゃんが心配してるのは後ろのお友達だよー」
「いやいや、おじいちゃん、だからこの人達赤の他人だって」
「おや、そうかいそうかい、おじいちゃん最近耳が遠いからなぁ」
「ねえそれ言ったら許されるとか思ってるようだけど、私おじいちゃんの耳遠いどころか地獄耳だっていうの知ってるから。無駄だから。」
「そうかそうかい、おじいちゃん耳遠いから分からないなぁ」
2人の会話を聞き、多軌はどう反応しようか脳内会議していた。
とりあえず『あれ…私の知ってるおじいちゃんとの会話と違う』とでも言っておこうと思う。
斑は2人の会話に『流石魔王を引き取ろうとした兵…』と感心していた。
「蒼葉ちゃーーん!音羽ちゃんがお友達を連れてきたよ〜!」
「だから友達じゃないって」
祖父はニコニコと笑っており、見た目からしたらほんわかおじいちゃんで癒されるが、中身はどうやら一癖ある性格のようで、まったくもって人の話を聞いていない。
そんな祖父は音羽の言葉もスルーし、家に向かって声を上げた。
蒼葉という名前に斑はカラスの仮面を被った冷徹クールガールを思い出す。
しかし…
「おじいちゃん…うるさい…」
カラカラと窓を開けて二階から顔を出す蒼葉らしき女性はとてつもなくボサボサだった。
何が、と問われれば髪が、と答えるだろう。
まさにザ・寝起き、である。
斑は蒼葉を知っているため開いた口が塞がらず唖然と見上げ、そんな斑をよそに祖父はニコニコと笑う。
「おやまあ蒼葉ちゃん、今起きたのかい?」
「昨日寝たの夜中の7時…」
「それ夜じゃなくて朝だよね?またゲームかい?」
「ギャルゲー最高」
「はは、そこは乙女ゲームにしておこうか」
蒼葉の顔はボサボサの髪で容姿は見えず目もどこにあるか分からないほどで、ぐっと親指を立てる蒼葉に祖父は笑って流した。
すでに時間は夕方に差し掛かろうとしていた頃で、今起きたらしい蒼葉は祖父との会話も人通り終えた後チラリ?と?音羽を見た?あと部屋に引っ込んだ。
「ごめんねー、蒼葉ちゃん恥ずかしがり屋さんだから」
「え、いえ…だ、大丈夫、です…はい…」
奥に引っ込んだ蒼葉に祖父はやっぱり笑っていた。
笑って多軌達に謝り、この中で今普通の反応が出来るであろう多軌は歯切れ悪くしながらも首を振る。
このままじゃいつまでたっても家に入れないと思った音羽は『もういい加減家に入るよ』と言って玄関に向かい、そんな音羽に夏目達も続く。
音羽の部屋は二階にあるらしく、すぐに案内された。
小春は夏目が抱きかかえているため音羽がお客さん用の布団を用意して敷き、布団を用意して敷いている間服は音羽のパジャマを多軌が着させてやり、小春を寝かせる。
夏目は横になり眠る小春の傍につきずっと小春の髪を撫でていた。
「夏目くん…」
そんな夏目を多軌はただ見つめるしかなかった。
声を掛けたくても何の言葉を言えばいいのか分からない。
夏目は気にするなと言ったが夏目の様子に気にするなという方が無茶なのだ。
自分が夏目の名前さえ呼ばなければ、と後悔ばかりが浮かぶ。
だが、夏目も斑も多軌のせいだとは思っていないだろう。
彼らにとって妖関係に巻き込まれるのはもはや日常となりつつあるし、夏目も多軌と同じなのだ。
妖にとって夏目兄妹の血と肉は美味しい獲物にしかなく、そのせいで今まで沢山の人を傷つけてきた。
そのたびに多軌のように巻き込んだと落ち込んできた。
だから夏目の怒りは全てあの妖に向けられている。
だから多軌が罪悪感を抱えるのは間違いであるが、やはり多軌は巻き込んだという気持ちが強いのかグッと拳を握る。
そんな多軌を横目で見ていた音羽はチラリと夏目も見た。
夏目はただ何も言わず妹に触れていた。
その触れ方はまるで繊細なガラス細工に触れるかのように優しく、そして怖々としており、普段の音羽ならたかが妹1人が襲われ眠っているだけでしょ?と鼻で笑うはずだが、音羽はそれができなかった。
音羽は以前、夏目に自分達は同じだと言っていた。
夏目は否定していたが、今の夏目の姿を見て音羽は否定しきれない事を知る。
結局は夏目が否定しようが音羽と夏目は同じなのだ。
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