(8 / 18) 17話 (8)




――夢を、見た。


小春は夢を見ていた。



そこは真っ黒な暗闇だったが何故か小春は気づいたら大きな門の前に立っていたのだ。

中華風の豪邸の門。

門番らしい人影はなく、小春はただただその赤く大きな門を見上げるばかりだった。


― おいで ―


何も考えずただ門を見上げていただけの小春の耳に声が届く。

その声は綺麗な女性の声だった。



― おいで ―

― おいで ―

― ここにおいで ―



声は小春を誘い小春は怪しいなど考えることもなく手を上げて門を開けようとしていた。



― そう ―

― そう ―

― いいこ ―

― いいこ ―

― こっちにおいで ―

― 入っておいで ―

― 私は貴女を歓迎するわ ―



赤く木で出来ている門に小春の指先が触れた。

それを感じ取ったように声は嬉しそうに言葉を弾ませる。

重そうな門なのに女の子の小春の力でも門はギ、と音を立て開かれようとしていた。

薄らと門が開き小春は門を開こうとする。

思考は全くない。

考えてもいない。

ただ小春は声に従って動いているだけだった。



― おいで ―

― 中においで ―



声は小春が中に入るのを今か今かと待ち望んでいるかのように小春を急かした。

しかし…



小春の手に誰かの手が重なり、小春を止めた。

小春はその手に止められ、ふと顔を上げる。

そこには…

夏目がいた。


その瞬間、小春は夢から目覚めた。


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