遅刻ギリギリで学校についた小春は授業をしていた。
あと数時間すればお昼休みになり、そしてまた数時間すれば放課後となる。
少し克服した小春はようやく奈々達と会話することもでき、心配していた奈々達はホッと安堵のいきをつきお互い久々の友達の会話を楽しんでいた。
休み時間はあっという間に過ぎ眠たい授業を受けていた。
「だから次のは――」
学生の本分は遊ぶ事と学ぶ事。
それは理解できるが勉強大好きと断言できるほど勉強が好きでもない小春は正直早く終わらないかな、と思っていた。
聞き逃せばテストでは散々な点になるため聞き逃さないよう頑張ってついていこうとはするがやはり小春も年頃という事もあってか勉強が大好きな優等生とはいかなかった。
成績は悪くもない方だが上位に上がるほど頭はよくはない。
まあ至って普通だろう。
頭がいいのは奈々の方だった。
ああ見えて学級委員をしているし実は出来る女なのである。
教師が書く方式をノートに写していくとふと窓に白い何かが映った。
その何かが気になりそちらへと視線を写せば、そこには毛玉がいた。
(!、毛玉!?ついてきちゃったのかな…どうしよう…)
朝別れたばかりの毛玉が窓の外にちょこんとおり、小春は目を見張った。
学校にまでついて来てしまった事に焦りも覚えれば毛玉が―――増えた。
「うわっ!増えた!!」
「お、夏目元気だな〜、じゃあこの方式を解いてみろ」
「えええ!?」
一匹が二匹となり小春は流石に驚いてしまう。
思わず驚きの声を上げて立ち上がると突然声を上げて立ち上がった小春を元気だと評し教師は小春を名指し黒板の前で方式を解いてみろと言いだし小春は二度目の声を上げた。
結局その方式は何とか解けたが教師に正解の言葉を告げられ安堵の息をつき席へと戻った小春は窓の外を見た。
(あれ…いない…)
窓にはすでに毛玉×2の姿はなく、小春は安心したような不安なような…複雑な思いを浮かべていた。
****************
授業の終わりの鐘が鳴り、小春は立ち上がる。
「小春−あのさ今日…」
「ご、ごめんね!また今度聞くから!!」
「あっ!小春!!」
立ち上がった小春に奈々が声をかけるも小春は友人の用件を聞くよりも奈々に一声謝りながら教室から出て行ってしまう。
「いっちゃったね」
「もう…何急いでるんだろう…さっきの事聞こうとしただけなのに…」
「寝惚けてただけじゃないの?」
「…だったらいいんだけど…」
手を伸ばしても掴むことなく姿を消した小春に奈々は溜息をつく。
溜息をつく奈々の傍を薫が歩み寄りながら声をかけ、薫の言葉に奈々は小春の秘密を知っているため意味深めの視線を小春が出て行った教室の出入り口へと向けた。
そんな奈々など気づかず薫は肩を竦め『今度じっくり聞けばいいよ』と零した。
小春は廊下を走り外へと出た。
すっかり奈々の事など頭に抜け落ちていた小春は今、あの毛玉の事しか考えていなかった。
「毛玉〜!いるの!?毛玉!!」
小春は走りながら毛玉を探していた。
まだじくじくと毛玉につけられた傷が痛み、小春は時折痛みに声を零しながらも探し回る。
毛玉はあの愛らしい姿に反して人間に対して毒を持っていることは小春で証明されており、正直学校に来られると困るのだ。
まだ自分達ならいいが、何も知らず妖達が見えない人が何らかのはずみで毛玉に傷つけられたらと思うと小春は顔を青くさせる。
それは人間を心配しているわけではなかった。
否、人間も心配していたが、それよりも毛玉の事を心配していた。
人は見えない何かに非常に怯える。
見える自分達から見ても妖を恐怖の対象で見ることもあるというのに見えない人は余計恐怖感があるのだろう。
だから毛玉が怪我しないうちに住処でもどこでも逃がしてやりたかった。
走り回っていると見慣れた人の背中を見つめ、小春の足は無意識にその背中へと駆け寄っていく。
「お兄ちゃん!」
その背中の主とは、夏目だった。
夏目は小春の声に振り返る。
「小春…どうしてここに…」
「じ、実は毛玉が学校に来てて…!見たの授業中だったからすぐには追えなくて…!でも毛玉が増えてて!!」
「わ、分かった!分かったからとりあえず落ち着け!……毛玉なら俺も見た…それで増えた…」
「え、お兄ちゃんも?」
「ああ…俺のところは二匹になった。」
「あ、私も二匹に…」
兄に駆け寄った小春は毛玉が学校に来たことを伝えようとした。
しかし慌てていて興奮していたのもあり上手く説明できなかった。
興奮する小春に夏目は落ち着くよう言えば小春は深呼吸をする。
落ち着いたのを見て夏目も小春と同じく毛玉を見たと伝えた。
どうやら夏目も毛玉を授業中に見たらしく、小春と同様毛玉は二匹に増えたと言う。
『じゃ…毛玉は4匹いるってこと?』と小春は呟けば夏目は『そういうことになるな…』と頷く。
毒を持つ妖が4匹もいることに小春も夏目も正直げっそりとするしかなかった。
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