(12 / 18) 17話 (12)

結局、小春と夏目は地道に毛玉を探すことを選んだ。
地道に探すしか方法が見つからなかったし、何より三日しか期限を与えられていないため急いでいたのだ。


「ほぉ、毛玉の妖ですか?」

「そうなんだ…こんな感じの…」


地道に探す道を選び、まずしたのが毛玉の似顔絵だった。
そしてその似顔絵を持ち八ツ原へと向かい、妖達に聞き込みを開始したのだ。
夏目と小春が来ていると言う噂を聞きつけ現れた中級達にも聞くが、差し出された紙に描かれているその絵を見て中級達は噴き出す。


「………これをお探しですか…」

「…言っておくが俺の絵心うんぬんじゃなく本当にそんな姿だからな?」


その紙に描かれている絵を見て中級達は笑いをこらえているからか体を震わせていた。
その紙には夏目作の毛玉が描かれており小春も斑も『似ている』『そっくり』だと評判だったが毛玉を見ていない中級からしたら笑いを誘うものだったらしい。
一応、と言い訳のように夏目は反論し、中級から紙を返して貰いながら重いため息を尽き事情を説明する。


「この妖についた指輪を三日以内に見つけないと家や裏山一帯を焼かれてしまうんだ…」

「ほう…それはご災難。では八ツ原に参られよそんなところにいては危ないですぞ?」

「え…」

「夏目様と小春様に人の世は生きにくそうだと日頃思っておりました。いっそのこと八ツ原でご一緒に面白おかしく暮らしませぬか?」


中級達の言葉に小春も夏目もお互いを見合った。
まさか中級達からそんな言葉を貰うと思ってもみなかったからだろう。
それに中級達からしたら夏目や小春ほどの人間はどちらかと言えばあちら(人間)側ではなくこちら(妖)側に感じられるのだろう。
夏目や小春は他の見える人間とは違い一線が薄くも感じられるから余計に。
中級達も2人を想っての言葉なため、小春も夏目も強く否定はできなかった。


「ありがとう…でも俺は今の生活が大切で仕方ないんだ」


微笑む夏目のその返しに中級達は少し残念そうにし……小春は夏目を見つめていた。
夏目にとって妖や人の世は面倒な事が多いと思う事もあるがその反面手放しがたい事も多い。
どちらが良くてどちらが嫌だというのはまだ夏目には決められなかった。
人間も妖もどちらも見える夏目には両方の世界にも面倒な事、いい事があるのを知っているから。


「この辺りには私の友人の妖もおりますし、何より面白そうだ!夏目様!小春様!お手伝いいたしましょう!」

「本当か!?ありがとう!」


小春の視線など気づかず夏目は笑みを浮かべていた。
どちらも愛おしい世界だから選べないのだ。
やんわりと断られながらも中級達はそんな夏目だからこそ好意を持っているのだろう。
人間の小春と夏目に中級達は手伝ってくれると言ってくれた。
夏目と小春は手伝ってくれるという中級達に素直にお礼を言い、紙を中級達に渡して別れた。



****************



夏目と小春は姿を見ているので聞き込みを中級達に頼み2人と一匹は毛玉本人を探そうと森の奥へと入る。


「毛玉ー!おーい!」

「毛玉ー!出てきてー!」


2人と一匹で毛玉を呼び出すように声を上げる。
だがやはり毛玉は現れてくれなかった。
色々な所を探しても小さな毛玉は一匹も見つからず小春も夏目も途方に暮れる。
小春も夏目が大量の毛玉を見たと言う場所の近くに来ても毛玉の毛先も見つからない事に少し落胆し足も歩き続けたからか余計に重く感じられる。


「…?」


はあ、と疲れと見つからない不安さにため息をつく夏目だったがふと何かに後ろから服を引っ張られるような気がした。
立ち止まり後ろを振り返ると誰もいない。
誰もいない代わりに小さな蛇がいた。
森だから蛇がいたっておかしくはないが、蛇=危険生物という認識だからか、それとも爬虫類だからか、夏目は蛇を見た瞬間固まってしまった。
しかし蛇は少し珍しい色をしているのに気付き緊張状態が少しだけ和らぐ。
その蛇はクリアな黄みの赤の色をし、その瞳は少し濁っているが綺麗な黄金色だった。
その蛇を夏目はマジマジと見つめ、対する蛇も夏目に何もするでもなくジッとこちらを見るだけ。


「あ…!」


しかし暫く見つめ合っていると蛇が動き出した。
蛇はシャーと鳴くでもなく無言で目を細め夏目に背を向けて去ろうとした。
去ろうとした蛇に夏目は思わず声を上げてしまうが、蛇はお構いなしに去ろうする。
しかし何故か蛇は少し動くと止まり夏目を振り返る。
そして口をパカリと開けシャーと鳴く。
それはまるで夏目を誘っているようで夏目は無意識に足を一歩踏み出す。
そしてまた一歩、また一歩と歩き出し、こちらに来る夏目を蛇は満足げにある程度近づけばまた進み、時折様子を見に振り返る。

夏目は蛇に誘われるままについて行ってしまった。

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