(14 / 18) 17話 (14)

夏目達が去っていったその場には静けさだけが残された。
夏目達の姿が完全に消えると木の影から一匹の蛇が現れた。
その蛇こそ夏目をここに誘い込んだ者であり、夏目をカルに襲わせた本人だった。
蛇は赤い舌をチロチロと出しながらも悔しそうに夏目の後姿を見送っていた。
すると人の気配を察し蛇は気配のするとことへと目をやる。
そこには黒い布で顔を覆われ黒と赤の漢服を着ている男が立っていた。


「お父様…」


蛇はそうぽつりと呟き、そして蛇の姿から一転させ美しい女性の姿へと変えた。
女は髪に淡い花の髪飾りをし、男同様淡く美しい漢服を身にまとっていた。
男は女の呟きに反応することなく淡々と口を開く。


「失敗したからと焦るからこうなった…これはお前の失態だ」

「…はい」

「小僧は野良猫どもがどうにかするだろう…その時を待て」

「しかし我々にはもう時間が…それに力があると言っても所詮は人間です…我々妖にいつまでも抗えるわけがございません」

「確かにな…しかし野良猫が小僧を物にするのを待つ時間はある。…時を待て」

「…………」


男の言葉に女は黙り込み視線を落としてしまう。
そんな女を予想していた男は何も言わず夏目達が去っていった方へと顔を向けた。


「今は退き時だ…それを誤るようでは我が一族にお前はいらぬ」


男の声はとても淡々としていた。
黒布が顔を隠しているため声や纏う空気でしか感情は感じられないが、男はその隙すらなく、ただただ淡々としていた。
怒りでもなく、呆れでもなく、悲しみでもないその声に女は俯いていた顔を上げ、男と同じく夏目達が去っていった方を真っ直ぐ見つめた。


「承知しております…必ず、あの娘を当主様に…」


顔を上げた女の表情からはもう憂いはなかった。
あるのは決意。
もう失敗はしないという思いのみ。

女の言葉に、男はやはり淡々としているだけだった。

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