(3 / 8) 19話 (3)

小春は学校から帰るのが楽しみになっていた。
それは勿論卵の事である。
本当に死んでるかもしれないし、本当に孵るのかも分からないが、それでも帰って卵を撫でるのが楽しみなのだ。
夏目も楽しそうに、そして愛おしそうに卵を撫でている小春の姿を見てもう木登りしたことは怒っていないようで優しく見守っていた。


「ただいまー」


途中で会った兄と一緒に帰り、部屋に行くと…


「くそー!まだ割れんのか!」

「こ、こら!駄目だよ!先生っ!」


ずっと縛り付けられていた斑の限界がそろそろ突破するのかロコロコと転がしたり軽く叩いて見せたりしていた。
それを見て小春が慌てて駆け寄り八つ当たりする斑から卵を取り上げる。
夏目も妹が大切にしている卵が孵るのを楽しみにしているのを見ていたので斑の頭にもやしの拳骨を食らわした。


「あれ…?」

「どうした?」


小春の声に夏目は用心棒なのに護衛するはずの夏目にパンチ一発で沈む斑を放って妹へと振り返る。
妹は手に持っている卵を擦るように撫でていたがふと何かに気付いた。


「なんか…大きくなってない?」


そういう妹の言葉に改めて卵を見ると、最近までは小春の手の平に乗っても余るほどだったというのに今では丁度いい大きさになっていた。


「本当だ…卵って成長するっけ?」

「さあ…分かんない…」


動物関係には疎い夏目と小春はその日はお互い首を傾げるだけに終わった。


チクタク、と時計の針が刻まれる音がやけに響く夜。
小春は夏目の隣に眠り、小春の布団には卵を抱えた斑が眠っていた。
夏目に怒られたといのもあるが、何だかんだ世話焼きな彼は文句を言いながらも卵を温めてくれていた。
小春はそんな斑を撫でてあげていたが、そっと卵に触れる。
触れるとやはりまだ温かくて生きているのだと分かる。


(何の卵なんだろう…もし、雛が帰ったらどんな名前を付けようかな…)


そう思いながら小春は眠りについた。

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