(2 / 11) *5話 (2)

斑はあの後夜に帰ってきた。
しかし体中に血がついており、夏目と田沼は慌てる。


「静かにせんか!!騒がしい!」

「だ、だが先生が血だらけに…!!」

「こ、この辺の動物病院ってこんな夜中でもやってるところあるかな!?」

「誰が動物だ!!誰が!!」


小春はもう既に眠っていた。
アサギに与えた妖力がよほどの量だったのか、死んでいるように深く眠ってピクリとも動かない。
そのせいか混乱している2人とそれを静かにさせようとする一匹の大声にも起きない。
というか元々耳が聞こえないので大声出しても気付かないので普段もきっと起きないだろう。


「これは私の血ではない!!全て返り血だ!!」

「え!?か、返り血…!?」

「誰の!?」

「影鬼だ」

「…!!」


影鬼、という言葉に田沼は怪訝そうに眉をひそめ夏目へ目をやる。
夏目は目を丸くさせただ斑を見ていただけだった。


「影鬼って?」

「影鬼は妖かしだ。」

「先生!」

「言わない理由がないだろ。田沼の小僧も今日あやつを見ているんだから」

「………」

「…何かまずい妖かしなのか?」


田沼の問いに簡単に答える斑に夏目は咎めるように名を呼ぶ。
今日は田沼も危険な目に合わせた事もあり、これ以上危険な事に首を突っ込ませたくなかったのだ。
そんな夏目に田沼は戸惑う。


「まあ、お前には関係ない妖かしだな。」

「そ、そうか…」

「だが夏目と小春には関わりが深い妖かしだ。」

「え…夏目と小春ちゃんに?」


斑はあまり気を使う事などしない。
だからこそ包み隠さず直球でグサッとくる言葉を口にする。
それも正しいから言い返す事も出来ない。
最初に出会ったときもグサッと来ることを言われていた田沼だったため慣れたと言えば慣れたが、やはり関係ないと言われてしまえば傷ついてしまう。
夏目が自分を思い巻き込ませたくないというのを知っているためあまり深くは聞き出せないが、次の斑の言葉に田沼は目を丸くし、夏目も同じく驚く。


「俺と小春も!?」

「覚えていないのか、阿呆めが……影鬼は友樹に執着している。レイコにも懐いていた妖かしだ…多分レイコと友樹を探してここまで降りて来たのだろう。」

「じ、じゃあ…」

「ああ…友樹の生き写しである小春を見つけてしまい、その隣にはレイコに生き写しのお前がいた……影鬼は多分お前がレイコで友樹が小春だと思い込みレイコであるお前が友樹である小春を奪い攫って閉じ込めたと思っているだろうな。」

「なんで…!!」

「んな事私に聞くな阿呆。」


斑の説明に夏目は目を丸くし声を上げた。
夏目の問いに斑は足についている返り血を舐めたが眉を寄せ『まずい』と呟き舐めるのを止めた。


「…だが恐らくあやつは衰弱しているな。」

「え…」

「私に攻撃されてもやり返さなかったのとあやつの血が薄く不味いからもう争う力はないだろう」

「血?血なんかで力の強弱が分かるのか?」


田沼の問いに斑は『ああ』と頷いた。


「血は力を測るのにとても分かりやすい方法だ…力が強い上級な者ほど血肉は美味なもので、神ならば極上なものだと言われている」

「へぇ…」

「まあ、祟られるのが怖いので誰も神を食おうとはしないがな……とにかく、今のあやつならば私でも対処できる。」

「……ということは衰弱してなかったら先生でも負けてるっていうことか?」

「…………」


初めて聞く妖怪知識に田沼と夏目は感心するように呟いたが、夏目はある疑問を斑に問いかける。
斑は夏目の問いに動きをピタリと止め、口を閉じたかと思うと顔を歪めた。


「…生憎とあやつは私より力は上だった」

「そ、そうか…」

「…だが、小春を食したとしてももうあやつの力が復活することはないだろうな…」

「?、何でだ?小春は妖怪達に力を与えるって言ったのは先生だろ?」



以前言っていた事を思い出して問う夏目に田沼は『え…そうなのか?』と眉をひそめる。
そんな田沼に『小春は高級品らしい』と同じく眉をひそめそう夏目は呟いた。
不快感をあらわにさせる2人をよそに斑は目を伏せ続ける。


「あやつはもう、昔には戻れん。」

「戻れない?」

「……あやつは衰弱しすぎたのだ……もっと早く私のところに来れば何とかしてやったものを…」


そう悔しそうに呟く斑に夏目と田沼は目を微かに見開きお互いを見合った後斑を見下ろした。


「先生って…」

「なんだ」

「先生って、その影鬼って奴のこと好きなのか?」

「んな…っ!?な…ななな夏目!!何を言うのだ!!!ああああああやつなどどうにも思ってなどいないわ!!!だ、第一あやつと私は種族が違うのだぞ!!?高貴で美しい私が誰が大きいだけが取り得のゴツくて可愛げもない猿なんかに欲情なぞ…」

「え……俺…普通に友人として好きなのかって聞いただけなんだか…」

「――――ッッ!!!」


夏目の言葉に斑は一瞬ポカンと口を開けて夏目を見上げていたが、その投げかけられた言葉を理解した瞬間顔を茹蛸のように真っ赤にさせ言葉を詰まらせながら否定していく。
夏目と斑はすれ違ってしまい、斑は絶句してしまう。
固まった斑を見て田沼は『墓穴掘ったな』と呟きその呟きに夏目が『ああ、墓穴掘ったな。』と返した。


「っていうかあいつもオスじゃないのか?」

「あれじゃないか?妖かしだから性別はありませんってやつ。あとそれか妖かしに性別は関係ないとか…」

「どっちもありえそうで怖いな…」

「な。」


……言っておくが影鬼はメスだぞ


「……………」

「……………」


ハハ…と普通の男の子の2人はめくるめく薔薇世界に引きつった笑みを浮かべていた。
そんな2人に固まっていた斑はポツリと呟いた。
その言葉に夏目と田沼はてん、てん、てん、と点が続き、そして…



「「なにーーーーーッ!!!?」」



真夜中の空に2人の叫びが響いた。

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