私は、夢を見ていた。
小さい頃の夢。
まだ目も耳も声も足も、使えていた時の夢。
私はいつも1人だった。
人間の友達なんていなかった。
それを寂しいと思ったことなんて数え切れないほどあった。
――レイコ…!!レイコ!!!
ふと誰かの声がして小さな私は振り返った。
――許さない!絶対許すものか…!!!返せ!友樹を返せ!!!レイコ!!!
振り返ったその瞬間、
大きなお猿さんが瞳に映ったと共に私は、
―――全てを失った。
「―――っ!」
小春は視界全てが真っ黒になり飛び起きる。
はあ、はあ、と肩で息をし、胸元をギュッと白い手が更に白くなるまで握り恐ろしい夢に耐えようとしていた。
(…綾部さん…綾部さん…?)
側にいるからね、と優しい声で呟かれ手を優しく握ってくれているはずの綾部の気配がない事に気付き顔を上げた。
いつもなら『どうしたの?怖い夢でも見たの?大丈夫、私がいるから大丈夫よ』と優しく撫でてくれるはずの綾部はおらず、小春は仕事で呼ばれたのだろうかと落胆したその瞬間大きな揺れを感じ咄嗟にベットの枠を掴む。
この時病室やその外には大きな爆発音にも似た音が当たりに響いていた。
(な…なに!?…、―――っ!!!)
目が見えず耳が聞こえない小春は他の人間より困惑していた。
逃げたくても逃げれず、綾部もいないこの状況に泣き出しそうになる。
しかし次の瞬間何かに掴まれる感覚に小春は心の中で悲鳴を上げる。
(なっ…なんなの!?何が起こってるの!!?)
混乱していく頭を必死に冷静に取り戻させようとするも周りの情報を見る事も聞くことも出来ない為小春の見えず閉じられている瞳は濡れて揺らいでいた。
その掴まれている物からは所々強い振動を感じ、何かが体当たりしているような感覚があり、小春はその通常ではありえない感覚に更に混乱してしまう。
小春は目が見えないため見えないが、小春を掴んでいるのは影鬼だった。
影鬼は斑の攻撃に傷を負いながらも死に物狂いで小春のいる病院へと向かい、小春の病室に体当たりして無理に入って来た。
そしてベットにしがみ付いていた小春の体を掴み外へ出ようと邪魔してくる斑を小春を掴んでいない腕でなぎ倒した。
「――ッ待て!影鬼!!!」
斑の声は誰にも届かない。
その場にいる人間にも、小春にも。
唯一聞こえる影鬼はそのまま小春を掴んだまま穴が開いた病室から外へと落ちるように降りていく。
3階であるその高さは巨体を持つ影鬼には容易い高さで、降りて行った影鬼は再び斑から去っていった。
「小春ーーーーッ!!!」
斑の叫びは空しく木霊し、冷たい風が吹く空へ消えていった。
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