(4 / 7) *6話 (4)

友人帳の存在を知らない小春は困ったように達磨男を見下ろしていた。


「あの…"ゆうじんちょう"って、何ですか?」

「何ですかとは何じゃ!!惚ける気か!?」

「いや、そうじゃないんですけど…」

「そっちがその気ならばこちらとて容赦はせんぞ!!」

「え……――――っ!!!」


知らないと言う小春に達磨男は信じず飛び跳ねたかと思うと煙と共に達磨男はしゃがみ込んでいる小春が立っても見上げなければ顔が見えないほどに巨大化する。
ずずず、と小春達を潰すように前に体を傾ける達磨男に小春は小さく悲鳴を上げながら慌てて後ろへと避難する。
小春が避難した瞬間ドシーーン、とまるで爆発が起きたかのような腹に響く音と、地震が起きたかのような揺れが辺りに響く。
その揺れに小春は転んでしまい、尻餅をついてしまう。


「名を返せ!!友樹の孫!!」

「だ、だから!知りませんってばー!!」

「まだ惚けるとは!!妖かしの命を握るのがそんなに楽しいか!!」


達磨男が起き上がればそこは達磨男のシルエット型にへこんでおり、小春はそのへこみ具合にサーッと顔を青くする。
まだ惚ける小春に達磨男は苛立ちが高まり、今度は高く飛び上がり小春を踏み潰そうとした。
それに小春は持っていた斑を盾にするように前に出し目を瞑ったその時――



「ええい!!人の話しを聞かんか!この老いぼれめ!!!」


「―――う…ッ!」



目が潰れるような強い光りがしたと思ったその瞬間コツン、と小春は自分の頭に軽い何かが当たった感触を感じた。
それと同時にいつまでも来ない衝撃に恐る恐る目を開けると巨大化した達磨男はおらず、どこか行ったのだろうか、と辺りを見渡す。


「うぅ…おのれ…斑めぇ…」

「!、あ…ちっさ…」


見渡しても巨大化した達磨男はおらず首をかしげていると下から達磨男の声が耳に届き小春は下へと目線を落とした。
そこにはゆらゆらと左右に揺らいでいる小さい達磨男がいた。
小春は小さい姿を見て目をパチパチさせた後、ゆっくりと達磨男の前にしゃがみ込む。


「小春に手を出そうとしたからだ。自業自得としか言いようがないな。」

「ふん…気を抜いていただけじゃ…お主にとって心を許す人間は友樹だけと思っていたからの。まさかたかが孫にまで心を許しているとはな…」

「……お前には分からんさ…小春も友樹も…私にとって特別な人間だということがな…」


目を細めて静かに答えた斑に達磨男は口を閉ざす。
しかしすぐに『まったく、ここの森の妖かし達は友樹に骨抜きにされおって…』と口を開きグチグチと文句を言い出す。
まだ夏目や斑から祖父や祖母の事を聞いていない小春は何故祖父に骨抜き?と首をかしげ達磨男を見下ろしていた。
すると小春と斑から目を逸らしていた達磨男が小春を見上げ、突然目が合ったことに小春はビクッと肩を揺らす。


「で、名を返してくれんのか、くれるのかどっちだね。」

「ですから名前を返すって意味が分からないんです…あ、あと友人帳も…自由帳なら持ってますけど…」

「はあ?お主夏目レイコの孫なんじゃろ?だったら友人帳のことくらい…」

「…友人帳を持っているのは小春の兄だ。」


『まだ友達1人もいませんし。』と寂しそうに苦笑いを浮かべる小春に達磨男は目を丸くさせる。
今、レイコの孫が名前を返してくれているというのは色々な噂に流れ自分の耳にも届いていた。
しかし会ってみれば友人帳を知らないという小春に達磨男は怪訝そうに小春を見上げる。
そんな達磨男に答えたのは小春ではなく小春の腕の中にいる斑で、達磨男と小春はゆっくりと斑に目を向けた。


「小春は友人帳の存在すら知らん」

「なに…それはまことか?」

「え?あ、はい…?」


静かに口を開いた斑の言葉に達磨男は再び小春へ顔を上げる。
しかし小春は友人帳のことも知らないため首を傾げつつ頷くしかなかった。
その小春の答えに達磨男は『そうか…それは困ったの…』と小春から目線を外しながらそう呟く。


「あの、友人帳って、なんですか?」

「友人帳というのは―――…」


知らない事は調べるか、知っている人に聞けばいい。
小春はここ最近に学んだ事を実行しようと達磨男に聞く。
達磨男は知らないという小春に友人帳の事を教えようとし、それに斑が止める為に口を開きかけたその時…



「小春?」



小春の後ろから誰かが声をかけ、2人の口は同時に閉じる。
小春がその声に振り返るとそこには首をかしげながら近づく兄、夏目がいた。
夏目はいつも自分の姿を見つけると嬉しそうに駆け寄ってくれる妹の姿が今日はなく、いつも座っている場所には居なかったため小春を探していると1人何もないところでしゃがみ込む妹を発見し、不思議に思いながら声をかけた。
…のだが、夏目の頭には既にじゃまも…ごほん、げふん…用心棒である斑の事など綺麗さっぱり消えていた。
因みに小春が心配だと夏目が…もう一度言おう、夏目が、用心棒として斑を付けさせたのである。


「お兄ちゃん…」

「何してるんだ?1人でそんなところに座り込んで…」

私は無視かコラ。

「何かあるのか?」


無視をする夏目に『そうか、無視か。』と青筋を立てる斑を再度見なかったことにし、夏目は小春の側へ近づいていく。
そして――…



「うわ!ちっさ!!」



小春の前にいる達磨男を見て妹と同じコメントをこぼした。
そんな夏目に達磨男はムッとし『小童!貴様もか!!!失礼な人間どもめ!!!』と小春の時と同じく夏目の顔面目掛けて飛び上がりそして小春と同じく達磨男の体当たりが見事夏目の顔面にヒットした。


「い…っ!」

「何度も何度も人を見て小さいと抜かしおって!!だからわしも己が小さいのは知っておると言っておるだろうが!!!それを一々言いおって!!!ええい!胸糞悪い!!」

「いだだだ…!いった!!ちょ、痛い!!やめろ!」

「お、お兄ちゃん…!」


『貴様のような人間はこうしてくれる!!』と声を荒げながら達磨男は夏目の頭部でピョンピョンと跳ねる。
とても微笑ましい(のか…?)場面だが、されている側は意外と痛いらしく夏目は痛がり達磨男を捕まえようとするも小さい達磨男はすばしっこく中々捕まらない。
痛がる兄を見て小春は慌てて地面に斑を降ろし自分より少し上にある兄の頭で跳ねる達磨男をパシッと捕まえようと奮闘する。
中々捕まらなくて痛がる夏目を見ながら地面に降ろされた斑は無視した恨みだとニヤニヤ笑いながら『いいぞー!もっとやれー!』と茶々を入れていた。


「やめろって…――――言ってるだろ!!!」

「ゔ…!!」

「フニ゙ャ…!!」


ガン、ゴン、と鈍い音が河川敷に響く。
しゅ〜、と達磨と猫の頭にタンコブが出来ており煙が上がっており、小春は拳を握り肩で息する兄とそのうつ伏せになり転がっている2匹をオロオロとした様子で見比べていた。

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