(2 / 13) 7話 (2)

小春の学校生活はそれなりに充実…はしてないものの悪くはないと小春は思う。
最初小春は妖かしで苦労していた夏目の話しを聞き少し不安だった。
自分も妖かしを見て聞いて触れる。
そして妖かしには嫌悪感もなく夏目ほどではないが妖かしに弱いのだ。
だから変に思われないか行動の1つ1つに臆病になりそのせいで挙動不審になって皆が遠ざかっているんじゃないかと自分で思いまた落ち込んでいた。
しかし同時に想像してたよりも悪くはない、とも思う。
皆遠目でヒソヒソとこちらを見ながら何やら話しているのを除けばイジメもなければ罵倒や貶す言葉も投げかけられる事はない。
それでも普通の人なら十分に落ち込むが、小春は長い間人との関わりを断ち切られていたためそこで不思議に思うことはなかった。
多少落ち込みはするが、慣れやすいタイプなのか学校生活を繰り返していればあまり気にしなくなった。


そう、小春は小さい頃から1人に慣れていたのだ。


だから、子供の…影鬼に全てを奪われる前の事を考えればどうでもないと小春は前向きに思うようにしている。
でないと兄どころか塔子や滋に心配をかけさせてしまい、逆に自分の事に関しては心配しすぎる兄の胃が心配になってしまうからだ。


そんな小春だったが、まさに兄を心配する事が起きた。





それはある日のこと。
小春はその日兄とは別に帰宅をしていた。
毎日一緒に帰るというのはお互い都合があり無理なのだ。
しかし小春は西村や北本と兄とで一緒に帰り、別々というのはあまり少ないのだが…今回は運悪く先生に捕まり小春は資料を運ぶのを手伝わされてしまい帰りが別々となる。
そして、小春が兄を心配する要因になった出来事は帰宅してからだった。
小春は着替えようと自分の部屋で制服から私服へと着替えた後塔子の手伝いをし夕飯の準備が出来、兄を呼ぼうと二階に上がった時だった。


「お兄ちゃん、もう夕飯だって………」

「小春…!?」


小春達兄妹の間に遠慮はなく、小春はノックもなしに自分の部屋の隣の夏目の部屋を勝手に開ける。
しかし小春は兄ではなくその足元にいるある物に硬直してしまった。
夏目は小春が入ってきて一瞬ヒヤッとさせ驚きの声を上げるが、そんな夏目をよそに小春は未だ兄の足元を凝視している。


「ち、ちっちゃい…ニャンコ先生…」


夏目の足元にはポケットに入っても可笑しくないサイズの斑がいた。
あまりの出来事に小春は目を点にし立ち尽くし斑を見つめている。


「お、お兄ちゃん…なんで…ニャンコ先生小さいの?何かの病気?この辺って動物病院あったっけ…」

「それは…その…」

「これは夏目が…むぐっ!」

「これはあれなんだ!!酒を飲んでこうなんったんだ!!!」

「え?お酒?」

「はあ!?」


呆然としていた小春はゆっくりと斑から兄の方へ目線を変え、夏目はどういえばいいのか戸惑ってしまう。
そんな夏目を気にもせず斑はプリプリ怒り出し小さくなった原因を小春に話そうとした。
しかしそれを夏目が両手で斑を閉じ込めギュッと遠慮なく握り締めて止めた。
小春は兄の言葉に怪訝そうに首をかしげる。


「お酒でって…無理があるんじゃない?」

「ないない。だって妖かしが飲む酒だぞ?こうなっても可笑しくないじゃないか?」

「そうだけど…そうかもしれないけど……ねえ、もしかして何か隠してる?」

「え゙?な、なにを隠すって言うんだ?」

「妖かしでの問題とか…お兄ちゃん、1人で解決しようとしてるの?」

「ばっ!…な、なにを…!?だ、大丈夫だって!!もし妖かし関係でトラブルあったら真っ先に小春に言ってるって!!!ニャンコ先生のは本当に変な酒を飲んでこうなっただけだってば!!な!先生!!」

「――――」

「ほら!!ニャンコ先生も『ああ』って言ってる!!」

「え?聞こえなかったけど…本当に言ったの?」


夏目は疑うような目をする妹に思いっきり首を振って笑みを浮かべた。
その笑みが更に胡散臭く見え、小春は更に疑いの目を強めた。
疑いの目を弱めない小春に夏目は斑を閉じ込めている手を振ってまるで斑がそう言っているかのように言った。
それでもやはり小春の疑いの目は弱まることはない。
そんな妹に夏目は決して目を逸らさず弱気なところを見せず『ああ!!言った!!』と断言した。
気持ちいいほどの断言に小春は完全に疑っていたのを半信半疑にしたもののまだ納得していないようである。
しかし夕飯が出来たため、とりあえず言いたい事を飲み込み小春は夕飯が出来たと夏目に伝え、夏目は後から行くと引きつった笑みで返した。
それがまた怪しいが、小春はお腹もすいている事もあり渋々夏目の部屋から出て行き一階へ降りていった。


「……はあ…何とか凌げたか…」

「いい加減手を離さんかバカモノーー!!」

「い…ッ!!」


小春が階段を降りていく音を聞きながら、妹が遠ざかっていった事に夏目は安堵の息をつく。
しかしその気の抜いた瞬間手の中に閉じ込め思いっきり潰していた斑が夏目の手を思いっきり噛み付いたため、夏目は斑を放り投げる。
小さい斑は高いところから投げ出されたのに関わらず体操選手顔負けのバク転で着地する。
小春がその場にいたらきっとその綺麗な着地に拍手を送るだろう。


「いってて…」

「おい!夏目!!なぜ小春に話さん!!小春には話した方がフォローもしてくれるであろうに!!」


綺麗に着地した斑はプリプリ怒り、声を上げる。
しかしその声は体が小さい為あまり迫力がなく、普段の姿でもそんなに迫力はないだろう。
夏目は噛まれた手を振って痛みを逃がしながら斑を見下ろす。


「…小春には危ないことはさせたくないからな…あまりこういう事に首を突っ込ませたくない…まして俺の不注意で呪いをかけられたんだ…もしかしたら小春にも呪いが移るかもしれないだろう?」

「…お前という者は……」


夏目の言葉に斑は怒りも鎮火していき、怒る言葉さえ見つからなかった。
確かに移る呪いもあるだろう。
しかしならばその呪いに触れている自分はとっくの昔に呪われていても可笑しくはない。
こいつシスコンの鏡だな…、と斑は思いながら呆れたように溜息をついた。


「では小春に気付かれぬ間に事を済まさねばならんな…友人帳を使うぞ」

「友人帳を…ああ、妖かしを呼び出すのか?」


呆れたように呟く斑の言葉に夏目は一瞬首をかしげたが、すぐに斑の言っている意味を理解し納得したように頷く。
斑は夏目の言葉に『ああ』と返し、『使い方は覚えているか?』と顔を上げながら問う。
その問いに夏目は自信なさげだが頷いた。


「ま、まあ…一応…ただ陣の描き方を忘れた。」

「阿呆め」

「…あんなの一度で覚えられるわけないだろ?」

「ふん、ただお前の脳が小さいだけであろう?阿呆め。」


夏目はムッと呆れ返る斑に睨むように見下ろすが、斑は今度は鼻を鳴らすというオプションをつけて返した。
そしてカーン、とないはずのリングの音がどこからか部屋に響いた瞬間その部屋の温度は一気に氷点下にまで下がる。
2人の静かな戦いはやはり止める者がいないと永遠と続くのか小春が中々降りてこない2人を呼びに来るまで無言の戦いは続いた。

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