≪――…特に××市では強い寒気が伴い大吹雪が続くと予想され、現在も暴風や暴風雪警報が出されています………≫
ニュースではこれが何度も流れていた。
どのチャンネルを回しても吹雪が止む気配はないという言葉ばかりで小春はテレビの電源を切り、机に置きながら溜息をつく。
「まだ止みそうにないって…」
「えー?まだ?」
携帯でニュース記事を見ていたリンに小春は振り返りながら声をかけ、リンは携帯から顔を上げながら眉間にしわを寄せる。
「携帯の天気予報もずーっと雪だるまのマークばっかだったんだよねぇ…あーあ…いくら雪が珍しいうちらだってこんなに降ってたら飽きるっつーの!」
「でもでも名取周一もこのホテルで足止めされてるんだよね!同じホテルの中で夜を共にしてるんだよね…!」
「薫…あんたキモイよ…」
ドキドキ、と好きな俳優と同じホテルにいると考えただけで興奮する薫に奈々が半目で見つめポツリと呟く。
それにリンも頷き、薫は『な、なんでー!?』とショックを受け項垂れた。
奈々もリンも遠目だが生名取を見れてそれなりに興奮し満足したようで、薫は本当に名取のファンなのかまだ興奮が冷めないようである。
小春は名取のファンではないが知り合いのため名取のファンになってくれたことが嬉しくて、嬉しそうに笑みを浮べていた。
「お姉ちゃん…」
友人達の会話を聞いていた小春だったがコンコン、と扉を叩く音に気付き『はーい』と返事を返す。
すると扉の向こうから重丸の声がし、小春は扉を開ける。
やはりそこには昨日と同じコートを羽織っている重丸が立って小春を見上げていた。
「重丸くん?」
「うん…お姉ちゃん、あそびにいこ?」
「遊びにって…お外は大吹雪だよ?」
「じゃあホテルのなかをたんさくでもいいよ。いこ?」
「でも…」
「あれ?誰?その子。」
何故か扉の前で立って部屋に入ろうとせず小春に手を伸ばすことをしない重丸に何の疑問も持たず遊びに行こうと誘う重丸に小春は困ったように笑う。
困ったように笑う小春に気付きながらも重丸は再度遊びに行こうと誘うと、その会話を聞いていた奈々がこちらに歩み寄ってきていたのかいつの間にか小春の肩から顔を覗き込んできた。
小春はさほど驚きはしなかったが重丸は驚愕した表情を浮かべ目を丸くさせる。
すると奈々の後に続きリンと薫も重丸を見にやって来た。
「この子、重丸くんっていうの。ホテルによく遊びに来てるんだって。」
「こんな吹雪の中!?」
「へぇー…流石地元っ子。」
「わざわざ吹雪の中来るんだからよっぽど懐かれてるんだねえ」
「…………」
重丸は2人も知らない人が増えたことに緊張しているのか、人見知りらしく顔が強張っていた。
そんな重丸などよそに3人はきゃっきゃっと会話を弾ませ、奈々が『外は吹雪なんだし中でお姉さん達と話そうか』と提案し、重丸の返事など聞かず重丸の腕を奈々が取り部屋の中へと入れようとした。
しかし――…
「――ッやめろ…!!」
重丸の腕が部屋に入る前に奈々に取られていた腕を振り払う。
奈々は突然のことで目を丸くさせ、小春もリンも薫も同じく驚きが隠せないでいた。
「……っ」
「あ…し、重丸くん…!」
唖然とし、静まり返ったその場から重丸は泣き出しそうな表情を浮かべ立ち去る。
重丸が走る足音に小春はハッと我に返り慌てて重丸の後を追いかけた。
「えっと…私…何か悪いことしたっけ?」
「あれじゃないの?返事も聞かず勝手に部屋に連れ込もうとしたから嫌だったんじゃないの?」
「あと奈々ちゃんが嫌いだとか…」
「………」
「薫…あんた…時々毒を吐くよね…」
「え…?」
拒絶され置いていかれた奈々は唖然としており、開けられた扉を支えていた小春が重丸を追いかけたためゆっくりと閉じていき、閉められ鍵がかかった音により我に返る。
そして同じく唖然としていたリンと薫にゆっくりと振り返り傷ついた表情を浮かべながら聞く。
リンはフォローをするものの、ぽつりと呟いた薫の言葉に奈々は口を閉じる。
呆れたように見てくるリンの言葉に薫は本当に分かっていないのか毒を吐くと言われ納得してないように首を傾げた。
7 / 26
← | back | →
しおりを挟む