(18 / 21) キルアの婚約者 (18)

ヒソカは適当な場所にレオリオを降ろし、エレノアを探す。
バンジーガムはキルアの下から戻ってきたときに解除しており、念で辿ることはできない。
『やっぱりバンジーガムを取らない方が良かったかな』と思っていると、『あっ!ヒソカさーん!』と呑気なエレノアの声がヒソカの耳に届く。
そちらへ向かえば、ヒソカはその光景に目を細め笑う。


「おや、君たちいつの間に仲良くなったんだい?」


探し人であるエレノアは、木影に入り木を背もたれにして座る針の男…ギタラクルの膝の上に座っていた。
後ろから覆うように座り、腹辺りにガッチリ手を回されているので座っているというよりは、拘束されているに近い。


「丁度いいや…二次試験中はお姫様のお守をお願いするよ」

「えっ!二次試験会場に着くまでとおっしゃっていたじゃないですか!」

「でもお姫様、逃げたじゃないか…その罰だよ」

「愛する者達を引き離すなんてなんて酷いお方なのでしょう!私はヒソカさんに抗議いたします!叔父様にあることないこと言ってやりますわ!」

「じゃあボクは婚約者君と人目憚らずイチャついてたってチクってあげる」


エレノアの叔父はエレノア可愛さ故に純潔さを求める。
いわば、婚約者を含めた男を知らないおぼこを姪に望んでいるのだ。
それを叔父は婚約者のいる恋する少女に求めている。
更には他の叔父と叔母や、まだ物分かりのいい母を含めたカトラー家もそれを願っているのだから、愉快でしかない。
それと同時に、同じ男としてキルアに同情をしていた。
だから叔父にイチャついていたとチクれば、エレノアは叔父達に怒られ、家族にも怒られることになる。
下手をすれば本当に婚約を破棄させられる。
それくらい、エレノアの周囲には過保護しかいない。
エレノアはヒソカの脅しにもなる言葉に、ムキになり吊り上げていた目が憐れんだ目に変わった。


「お可哀想なヒソカさん…爛れた関係しかお知りにならないから恋人同士のコミュニケーションも分からないのですね…恋人を作られることをお勧めしますわ…一夜限りの相手では得られない幸せを感じることができますのよ」

「……………」


別に爛れた関係を好んでいるつもりもないし、恋人が欲しいなんて微塵も感じていない。
エレノアの言葉は本来なら軽く流せるが…なんか腹が立つ。
顔は笑っているが目が笑っていないヒソカを目の前でもエレノアは『私もキルア様と〜』と惚気だした。
そんな惚気にヒソカは止める気にもならず『へー、ふーん、そーなんだー』と遠い目をしながら適当に返し、ギタラクルは惚気るエレノアの頭を無言で撫でる。
そのカオスな光景に周りは一切近寄らなかった。

――そうしている合間に、ゴン達が合流し、二次試験が開始された。
建物の門が開けられ、女性の声で中入るよう言われて全員が門をくぐる。
ヒソカから下った罰として、エレノアはギタラクルと手を繋いだ状態である。
そこには、建物の前に設置されているソファに座る女性と、そのソファの後ろに地べたで座るふくよかな男性がいた。


「ようこそ!私が二次試験試験管のメンチよ!」

「同じくブハラ!」


どうやら、二次試験はその2人の試験管で行うという。
ハンター試験を始めて受けるエレノアは試験管が2人なのはありなのかと思う。
すると、辺りにグーという低い唸り声のような音が響き、受験生達はどよめく。
エレノアもその音に周囲を気にするが、殺意もなければ獣の気配すらない。


「どうやら腹ペコのようね」

「もうペコペコだよぉ」


唸り声ではなく、ブハラの腹の音だったらしい。
よほどお腹が空いているのか、グウグウと今も鳴り響いている。


「そんなわけで!二次試験は料理よ!」


一次試験はマラソンだったが、二次試験は料理が試験内容となるらしい。
エレノアはそれを聞いて困った。


「まあ…お料理だなんて…私、包丁どころか食材にすら触れたことありませんのに…」


エレノアは暗殺一家とはいえ、令嬢である。
普通なら花嫁修業に料理は必ず含まれるが、暗殺を生業としている家に育ち、同業に嫁ぐ者への花嫁修業は一味違った。
主に家でしている修業と変わらないが、嫁入りするのだからとゾルディック家が行う修業もさせられている。
一般の花嫁修業もするにはするが、生け花やピアノなどばかりで、怪我をする危険性や必要性の感じない料理などは飛ばされている。
だから、エレノアは生まれてこの方料理などしたことがない。
キキョウのお茶会にも誘われるが、それはあくまで招待客の立場であって、お茶を振る舞う立場ではない。
生け花だって鋏と針を使うが周りが怪我しないよう注意深く見守ってくれている。
お茶会も、招待しくれたお礼に毎回お茶請けをこちらで用意するが、それはカトラー家の使用人が作った物である。
エレノアの手作りクッキーやケーキなど一度も出した事はない。
勿論、使用人がいるのになぜ料理を学ぶ必要があるという令嬢らしい理由もあるが、主な理由はエレノアが包丁で怪我をしたらいけないという過保護からくるものである。
困ったように呟くエレノアの頭を、ギタラクルは慰めるように撫でる。


「指定する食材はブタだよ!このビスカの森にいる豚なら種類は自由!ここにある調理器具を使って作った料理でオレ達2人が揃って美味しいって言えば合格だよ!」

「美味しいと言っても味だけじゃダメ!料理を舐めないでね…分かった?」


2人は美食ハンターと名乗り、それを笑われた。
それが引っ掛かっているのか、先ほどよりもメンチの口調が刺々しく聞こえる。
だが、原因はそれだけではなく――ヒソカだろう。
エレノアにも分かるほど彼は一次試験からずっと試験管に喧嘩を売っていた。
エレノアは美食ハンターと聞いても笑うまでには至らなかったが、どう反応すべきか困惑していた。
美食と聞けば、レストランなどが想像つくが、ハンターと名乗り、教会から試験を依頼されるのだから実戦経験や実力は持っているのだろう。
ただ、食材すら触れたことのなく幼い頃から三ツ星レストラン並みの料理を毎日目の前に出され恵まれているエレノアからしたら彼らがどう活躍しているのかが想像できなかった。
想像している内に、試験の開始が合図された。
ブハラが腹を叩いた音で開始の合図となり、一斉に受験者達が門から森へと向かって走っていく。


「た、大変ですわ!ギタラクルさん!私達も参りましょう!」


考えごとしていたため、周囲に後れを取ってしまった。
一斉に走り出したことによって我に返った待っていてくれたギタラクルの手を引いて慌てて他の受験者達を追いかける。
森にどれほどの豚がいるかは分からないが、受験者達全員が捕獲できる数があるとは限らない。
これは早い者勝ちでもあるのだ。
ギタラクルはカタカタ音を鳴らしながらエレノアの小さな手に引っ張られて後に続いた。


「うーん…豚さんと言ってもどこにいるのでしょう…」


食材に触れたことがないとはいえ、流石に豚がどんな姿をしているかは分かる。
しかし、先ほどから森を探すが豚どころか、他の動物すら見当たらない。
虫や、空を飛んでいる鳥は見かけるのだが、目的の豚がいないのでは話にならない。


「どうしましょう…豚さんが見つからなければ不合格になりますわ…お父様に逆らってハンター試験を受けたのですからせめて合格したいのですが…」


手分けした方が早いのだが、森中受験生だらけで手分けの意味がなくなってしまっている。
一次試験で半分以下は脱落すると読んでいたが、案外エレノアの予想以上に今年の受験生達はスタミナがあったらしい。
『見つかりました?』と二次試験のお守り役のギタラクルにそう問おうと、彼を見上げた時―――遠くから悲鳴が聞こえた。


「ギタラクルさん!豚さんいましたわ!」


ギタラクルの影から顔をひょこりと出し、悲鳴の元へ視線を向けると…ピンク色の豚達から逃げる受験生達が見えた。
しかも、豚と受験生達はエレノア達の方へと向けて走ってきている。
慌てて逃げるべき光景だが、エレノアはやっと探していた豚を発見したと嬉しそうに破顔する。
同じ光景を見ているギタラクルの服をクイクイと摘まんで引っ張るほど、エレノアは豚探しにげんなりしていたらしい。
向かってくる豚達にぶつかって飛ぶ受験生達がいるなか、散らばって近くの人間を襲う豚にエレノアは立ち向かう。
しかし、コルセットの影に手を添えて豚を待ち構えるエレノアを、ギタラクルが立ちふさがるように庇い針で豚を狩ろうとした。
しかし、その針を豚は大きな鼻で跳ね返す。


「まっ!なんて硬いお鼻なのでしょう!」


カキンと食材とは思えない音で針を跳ね返す豚を見てエレノアは驚きと共に、面白いオモチャを見るような目で豚を見ていた。
こちらに向かってくる豚に、ギタラクルはエレノアを抱き上げて軽やかに避ける。
エレノアはギタラクルに横抱きにされながら辺りを見渡す。


(他の方も苦戦をされているようですわね…)


豚と人が入り混じる中、エレノアはギタラクルという安全圏から周囲を観察する。
相手は叔父や父達のように手練れの人間ではなく、ただの食料。
最初は探すのに苦労するだけで簡単かと思ったエレノアだったが、実力者であろうヒソカやギタラクルが一匹も仕留められていないのを見て考えを改める。


(あの鼻、邪魔ですわ)


す、とエレノアは目を細め豚を見る。
他の受験生達を見る限り、あの大きな鼻が彼らの武器と防具となっているらしい。
邪魔だとエレノアが思ったその瞬間、エレノアとギタラクルを狙っていた豚の頭上に何かが降って落ちて来た。
それが何なのか目視できるのはこの場ではエレノアとギタラクルとヒソカだけだろう。
ここに試験管がいたら、彼らも見えていたかもしれない。
ソレはまっすぐ豚の鼻と額の間に向かって落下したが、跳ね返ってしまう。
豚は無傷でソレを跳ね返し、ヒュンヒュンと何かが風を切る音がした。
ギタラクルはエレノアを抱き上げたままその場から飛んで避けると、後ろにあった木に何かが刺さった音が聞こえた。
それを見てエレノアは『あわわ』と顔を青ざめギタラクルを申し訳なさそうに見上げる。


「ギ、ギタラクルさん…申し訳ありません……まさか鼻以外も堅いとは思っていませんでしたわ…」


ギタラクルが避けなければ大惨事どころか、ギタラクルが怪我をするところだった。
まさか跳ね返ってこちらに飛んでくると思っていなかったエレノアは彼に申し訳なく感じて謝ると、彼は口が利けない代わりに『気にしていない』と横抱きをしたまま手でポンポンと軽く叩いて返事をしてくれた。
それにお礼を言っていると、周囲に異変が現れる。
次から次へと受験生達が豚を倒し始めたのだ。


「なるほど、額が弱点なのですね」


観察してみれば、誰もが豚の額に攻撃を当てていた。
誰かが額が弱点だと見抜いたのだろう。
確かに、あの豚の姿は額を守るように鼻が進化したと言われれば納得ができる。
エレノアは先ほど惜しかったということだ。
あれが、額と鼻の間ではなく、額を狙っていたのなら一発で仕留める事ができただろう。
ギタラクルはエレノアを降ろし、2人分の豚を狩る。
更には二匹の豚を運ぶこともしてくれた。


「ギタラクルさん、ありがとうございます…ここから先は頑張ってみようと思います」


コンロの準備をしてくれるギタラクルにそれから先の工程を断った。
エレノアが断らなければ全部ギタラクルがしてくれる勢いだったので、エレノアは流石にそれは罪悪感があった。
ギタラクルはエレノアの言葉に首を振った。
火や串や包丁など怪我をする恐れがあるため、エレノア1人でやるのを反対しているようである。
どうやらヒソカの協力者兼エレノアの監視役のギタラクルは、エレノアの周りにいる過保護達と同じ枠に括られるらしい。
エレノアの言葉を制して火をつけるギタラクルに、エレノアは困ったように『うーん』と唸る。


「ならこれならいかがです?ギタラクルさんがお手本を見せてください…それを私が真似いたしますわ」


『流石に試験ですので人任せですと不合格を頂きそうですし』と続ければ、ギタラクルは考えるように黙り込む。
じっとエレノアは彼を見つめ、彼も考えながらエレノアを見つめる。
しばらく見つめ合う時間が続いた時、コクリとギタラクルが頷いた。
それを見てエレノアはパッと明るく笑う。


「ありがとうございます!では早速お手本をお願いします!」


せっかく初めてキルアと外でデート(違う)できたというのに、人任せにしたことで不合格になりデートが出来なくなるのは困る。
ギタラクルはやっと自分の豚に手を伸ばし、エレノアに見せるようにゆっくりと豚を調理し始める。
それをエレノアは見ながらギタラクルが獲ってくれた豚を調理する。
しかし―――


「駄目!中がまだ生じゃない!」


メンチからはバツの札を出された。
後ろにいるブハラは美味しそうに食べていたが、メンチは見るだけでエレノアの作った料理が中まで火が通っていないと分かった。
勿論、ギタラクルも不合格である。
次から次へと持ってくる料理(と言えるかは不明のほとんどが丸焼き)をジャッジするメンチ達だったが…


「もうお腹いっぱーい!」

「はーい、私もお腹いっぱい」


ついにブラハのお腹が満たされてしまった。
メンチも満腹になったと言った。
その言葉に、エレノアだけではなく、その場にいる受験生全員が呆気にとられる様子を見せた。
審査する側である2人が満腹になったということは…


「てなわけで、合格者なし!しゅーりょー!」


試験は終わったという事である。
あれほど無限ではないかと思わせる食欲っぷりを見せていたブラハのお腹は本当に満たされてしまったようで満足気に座っている。
だが、メンチは一般的に考えてもそれほど食べてはいなかった。
美食ハンターを名乗るくらいだから人並に食べるのだろうが、メンチは想像力もなければ馬鹿の一つ覚えに丸焼きしか持ってこない受験生達に辟易したようだ。
しかし、当然受験生達からは不満の声が上がった。
エレノアはチラリとヒソカを見る。


(これは危ないですわね…)


ヒソカは一試験からずっと試験管に喧嘩を売る様に殺気を向けていた。
戦闘狂である彼が大人しくしているわけがない。
しかし、ヒソカを止める義理も、理由も、エレノアにはない。
引き止めるには親密度が足りないのである。(なんせ顔見知りなだけの関係だ)
とはいえ、ここでヒソカに暴れられても困る。
試験でなければ『やったれ!』と煽るが、恐らくブハラとメンチを殺したとしてもエレノア達が不合格を免れることはない。
ということは、満足にキルアといることもできず実家に強制送還されてしまう。
人は欲深い生き物だ。
あれほど真偽を確かめればそれでいいと思っていたのに、キルアと心を通じ合えていると知るや否やこのまま傍にいたいと思ってしまっている。
だからここでヒソカが暴れて試験管の機嫌を更に悪くさせたくはなかった。
ヒソカに敵うなどと自分の力を過大評価はしていないが、叔父の姪という絶対的な安全な肩書を盾にすれば彼を止めることくらいはできるだろう。
そう思い彼に注意していると―――大きな音が聞こえた。
そちらに視線をやれば、トンパに紹介された一人であるレスラーでもあるトードーがいた。


「納得いかねえな!こんなのオレは絶対認めねえ!」


トードーは料理ごときでハンター試験を不合格にされたのがよほど腹が立ったのだろう。
その自慢の力でハンター協会が用意したキッチンを怒りのあまり破壊した。


「不合格の決定は変わらないわよ」


きっぱりと切り捨てるメンチに、トードーは更に捲し立てるがメンチの気持ちは変わらない。
そもそも料理をするにしても、ほとんどが丸焼きで、調理したとしても味は二の次。
料理らしいものは一度も出されたことはない。
トードーが目指す賞金首ハンター、メンチの美食ハンターのように、様々なハンターがいる。
ハンターライセンスが種別に分けられていない以上、内容が偏らないよう工夫するのがハンター協会である。
賞金首ばかりがハンターではない。
今年の受験生の殆どが賞金首が多いのか、トードーの『美食ハンターごときに合否を決められたくない』という言葉にほとんどの受験生が賛同していた。


「美食ハンターごときが試験管で残念だったわねぇ…また来年、頑張れば?」


気が強い彼女の言葉は、トードーを逆なでした。
顔を真っ赤にするほど怒りを覚えたトードーは、メンチに襲い掛かろうとした。
それを止めたのは、メンチ本人でもなければ、他の受験生達ではなく―――後ろにいたブハラだった。
巨体に似合った力でブラハは、まるで虫を払うようにメンチに襲い掛かるトードーを叩き飛ばす。
トードーはそのまま吹き飛ばされ、門へと激突し、落下した。
それを見送った後、エレノアはブハラとメンチへと視線を戻す。
目の前で襲われかけたメンチはブハラがトードーを叩き飛ばしたというのに涼しい顔を浮かべたままだった。


「ブハラ…余計な真似しないでよ」

「オレが手ェ出さなきゃアイツ殺ってただろ?」


ブハラの言葉に、メンチは『まあね』と呟きながら受験生達を見下ろす。
あれほど美食ハンターを馬鹿にし笑いものにしていた受験生達は叩き一発でトードーを伸したのを見て慄いていた。
それに鼻を鳴らしながら、メンチは反撃するために持っていた武器を軽やかに扱って見せる。


「言っておくけどね…私らも食材探して猛獣の巣に入ることだって珍しくないのよ」


美食ハンターと言っても、食べるだけがハンターと言えるのなら料理の評論家どころか、自称評論家を語るただの食べ歩きの感想を書いたブロガーだってハンターだ。
だが、美食ハンターは自分から食材を求め、そして新たな食材を探し、未知なる場所へ赴く。
その際に他の武闘派ハンターと同等の危険を伴うことは当然にある。
それに、密猟者との戦闘だって避けては通れない。


「注意力も未知のものに挑戦する気概もない…それだけで十分ハンターの資格なしよ!」


それは最もではあるが、エレノアは納得できなかった。
納得できないというよりは困った。
エレノアは別にハンターの資格を取りたいとは思っていないし、もしも取るために受験を受けていたとしても、また来年受ければいいだけの話だ。
ただ、エレノアはここに来た理由はキルアに会うため。
婚約破棄が杞憂で終わった今、まだ実家に帰りたくなかった。
勿論、帰りたくない理由はキルアと一緒にいたいからという理由だけではない。


≪それにしても合格者ゼロはちとキビシすぎやせんか?≫


誰もが口を閉ざし静まり返る中、男性の声がその場に響く。
頭上から聞こえたその声へと視線を向ければ、晴れ晴れとしている空に一機の飛行船が見えた。
しかも、ただの飛行船ではなく――ハンター協会の飛行船であることが発覚する。
その飛行船から一人の男性が無謀にも身一つで降りてくる。
しかし、その男性は怪我一つなく、着地した。
それだけでも自分達とは別格の人間だと見て取れる。


「何者だ…あの爺さん…」


落下した衝撃で上がった土煙から現れたのは、1人の老人だった。
白髪の髪に、先が黒い白ひげ。
和服を連想させる服装に、下駄を履いていた。
誰しもが思っていた疑問を口にした受験生に答えたのはメンチだった。


「審査委員会のネテロ会長…ハンター試験の最高責任者よ」


目の前にはハンターを目指す人間にとって頂点ともいえる存在が現れた。
その場に緊張が走るのをエレノアは感じた。

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