ついにこの日が来た。
セラはここ数日緊張したまま過ごしていた。
今日、オリヴィアの補佐に就くのだ。
補佐役は各部署の持ち回り制だったらしいが、オリヴィアやミカエルたちと会えるこの務めをやりたがる天使は多い。
代わってもらおうと頼み込む者も少なくはなく、天使とはいえ、気の弱い者もおり、断り切れないこともあった。
務めをきちんと果たしてもらえれば、オリヴィアもミカエルたちも文句はないのだが、ミーハー心が過ぎて彼女たちに迷惑をかける者や、前任者からの引き継ぎを十分に行えず、ミスを重ねる者もいたため、補佐役は慎重に選ばれるようになり、順番が回ってきても当事者以外に告げることはなくなった。
オリヴィアへの憧れを公言しながらも、こうして補佐役の一人に選ばれたのは、セラが務めを真面目に続けてきたからだ。
「が、頑張れ!私!」
鏡で何度も身支度を繰り返す。
今日は憧れの天使たちの前に出るのだから、身なりも完璧でなければならない。
補佐の一人にすぎない自分に、彼らが興味を示すことはないだろう。
だが、憧れの存在を前に身なりが少しでも乱れているのは嫌だった。
鏡の前で何度目かの確認をした後、グッと自身を鼓舞するように拳を握り締め、セラはもう一度だけ姿を確かめてから、ようやく部屋を出た。
補佐役初日に遅刻など、笑い話だ。
咎められることはないが、スピーカーには苦笑いを浮かべられそうである。
せっかく務めを認められ、スピーカーが補佐に選んでくれたのだから、恩を仇で返したくなかった。
急いで指定された場所へ向かう途中、同じ補佐役に選ばれた天使と出会った。
「おはよう!セラ!あなた、オリヴィアの補佐は初めてよね!一緒に行きましょう!」
「ありがとう!もう緊張してうまく飛べなくて…あなたと一緒なら心強いわ!」
「ふふ、あなたはオリヴィアに憧れてるって言っていたものね」
その天使は部署の先輩で、セラと同じく優秀な天使だった。
部署に配属されたのはセラよりも早かったため、これまでも何回かオリヴィアの補佐役に選ばれたベテランでもある。
セラは緊張で翼がつりそうになり、先輩の天使に出会えたのは幸運だった。
クスクスと笑う先輩につられるようにセラも笑う。
彼女のおかげでセラの緊張はほぐれた。
先輩天使と共に、補佐役の事務室に着くと、すでに数人の天使がいた。
セラの配属されている部署から選ばれているので、全員が顔見知りだったことは、緊張している初日のセラにとって救いだった。
「これ、書類ね…補佐って言っても大した仕事はないんだけど、一応目を通しておいて」
そのまま先輩天使が指導してくれることになり、セラのデスクには既に務めに必要な書類が置かれていた。
指導通り、デスクに座り自分に配られた書類にしっかりと目を通す。
セラは初めて補佐役を務めるということで、比較的簡単な務めが多い。
不満はないものの、やはりそう簡単にオリヴィアの傍にはいられないようだと肩を落とした。
それでも、これは夢の――目標の大きな第一歩なのだ。
ちゃんと務めを行い、いずれは補佐役のまとめ役になってみせると意気込む。
しばらくするとまとめ役が現れた。
「皆さん、おはようございます…えー、今日からひと月、私たちの部署がオリヴィアの補佐を務めることになります…初めての方もいますので一通りの注意点と流れを伝えます」
セラの他にも、新しく補佐役に選ばれた天使が数人いた。
その者たちのために、まとめ役が補佐役として務める際の注意点などを説明する。
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