(12 / 16) 子作りは計画的に (12)
ニュースというものは生が一番おいしい。
そう分かっているが、結野アナは『いや、これ無理だから!』と内心思っていた。
アナウンサー歴うん年…流石にエイリアンはないわぁーとか思っていた。
だが仕事は仕事。
視聴者のみなさんの事を考えれば勇気だって湧く。
そう現場に出る前までは思っていた。
だがいざ現場に出ればやっぱ無理!、なわけで…
だがプロ意識から逃げ惑う観客を押しのけんばかりに結野アナはカメラマンと共に勇敢にもエイリアンの実況をしていた。


「おー、危ないぜィ。どいときな」

「…!」


実況しながらも『私も流石に逃げたくなりました!!』と本音も混ざる結野アナの背後から、のんびりとした声がし、結野アナとカメラマンは後ろに振り返った。
そこには黒い服を着る集団がいた。


「あっ!真選組です!我らが江戸の守護者!!武装警察真選組が駆けつけてくれました!!もうだいじょう――え。」


黒い服の集団、それは江戸を守る武装警察・真選組だった。
沖田を先頭に後ろには強面の真選組隊員が大勢控えており、結野アナはその中に一人だけ煌びやかな気配を察知した。
チラリとそこへ目をやれば今まで見たことのない美形が立っているではないか。
その美形こそ、残念なイケメンである鷹臣であるが、結野アナは思わず黄色い悲鳴を上げそうになったが、そこをカメラが回っていると思い我慢し、実況を続ける。
だがそんな結野アナの我慢などよそに沖田は拡声器を手に何故かターミナルを見上げた。


≪エイリアーン、お前は完全に包囲されている。大人しく投降しなさい≫

「え…ちょ、ちょ…何やってんですか…」

≪故郷のお袋さんも泣いてるぞ。こんなエイエイアンにするために産んだんじゃないってな。ねェ、お母さんなんか言ってやってください。≫

「えっ!?マジで!?ウソ!?」


キラキラと輝くそこを見ないよう必死にこらえながら、結野アナはまるで銀行強盗のコントのように拡声器でエイリアンに声をかける沖田に戸惑いながら弱弱しく突っ込んだ。
そんな結野アナなどよそに沖田はお母さん、と言い後ろに止めてあるパトカーに振り向く。
そこで連想されるのはエイリアンの母、なのだが…
出てきたのは…


「お父さん最後になんて言って死んでいったかあんたに分かる!!?お父さんねっ!最後までアンタのことを―――」


近藤だった。
それもエイリアンの着ぐるみを着て遺影らしき物を持っており、遺影には銀行の時に怪獣の着ぐるみを着ていた鷹臣の写真が入っていた。
この兄弟は案外ノリがいいのかもしれない。
鷹臣は兄がエイリアンの着ぐるみを着ているにも関わらず何の反応もせずターミナルを見上げている。
近藤は涙を浮かべエイリアンの母を熱演した。
だが、そんな近藤へエイリアンの触手の一本が向けられ、近藤は最後までセリフが言えず吹き飛ばされてしまった。
ぎゅむっ、とエイリアンの着ぐるみがクッションとなりつつも落下した近藤やそれを涼しい顔で何の違和感もなく止めもしない真選組へ…結野アナは『何してんのあんたらアアアア!!』と心の底から突っ込んだ。


「ターミナルは幕府の重要建築物に指定されているんでィ。許可なく発砲すればこっちの首が飛ぶ。」

「い、言ってる場合ですか!?ここで本物の首飛ばされたいんですかアア!!」


近藤の着ぐるみが怒りに触れたのか、は分からない。
だが近藤を吹き飛ばしたのを切っ掛けにエイリアンは触手を沖田達真選組へと伸ばし襲い掛かってくる。
真選組達はエイリアンから逃げ、結野アナやカメラマンもその場にいたら危険だと逃げる。
幕府に飼われている真選組は重要建築物に指定されているから下手に手は出せず逃げ出すしかできなかった。


「おーい、早く逃げねえと死ぬぞ、てめえら。」

「なんなの!?一般市民差しおいてパトカーで逃げてんの!?何この人達!!」


後ろからパトカーが追いつき、出てきたのは土方だった。
その上には鷹臣が乗っており、ちゃっかり吹き飛ばされ気を失っている兄を回収している。
結野アナは楽してパトカーで逃げる土方達に批難の声を上げるが、土方はそんな些細な事気にも留めずチラリとエイリアンに浸食されているターミナルを見る。


「しっかし、あれがまだ生きてたとはな…どういう経緯でここにきたのか知らねえがえれえ事になったもんだ…どうやら奴さん、想像以上にしぶとい上に食ったら食っただけデカくなる厄介な奴らしいぜ……しかも運悪いことに今度の住まいはターミナルときた…あれは膨大なエネルギーを使って船を転送する云わば、エネルギーのポンプ。奴の急成長はターミナルに流れる強大なエネルギーそのものを食らったせいだ……やべえな、このままじゃ江戸は喰いつくされるぞ……っててめえ何撮ってんだ!!」


得た情報を零しているとジッとカメラがこちらに向いているのに気付き、土方は手でカメラを覆い撮影を中断させる。
鷹臣は兄が衝撃で落ちないよう手で押さえながらジッとターミナルを見上げていた。


「ん?この匂い…」


ふと、ふわりとある匂いに気づいた。
それは嗅いだことのある甘い香りで、一度嗅げば警察犬よろしく忘れることはないであろう香り。


「あっ!あれは何でしょうか!!」


『いや、まさか…いやいや、まさかァー』と信じ来ないように思いながらも確かにその香りは嗅ぎ覚えのある香り。
もう一度嗅いでみるもその香りはもう消え、エイリアンの生臭い香りだけが残っていた。
首を傾げ『やっぱ気のせいか』と納得しかけたその時、結野アナの声が鷹臣の耳に届く。
結野アナを見下ろせば、後ろへと指を差し、鷹臣もそちらを見ようとした時―――白い犬…定春の背に乗っている銀時が現れた。
突然現れた銀時に辺りは騒然としていた。


「旦那!?」

「お前…なに…ッ!?」

「あ、これカメラ?カメラ!?―――えっとー、エイリアンVSヤクザ、絶賛上映中!見に来てね!」


唖然としている周りなどよそに銀時は何故かカメラを見つけ、上映中らしい映画の宣伝をしていた。
どうやら散歩に出かけていた銀時は丁度映画館で住み込みで働いていた長谷川の頼みで客寄せをしていたようである。
周りはポカーンとしていたが、鷹臣だけは何の表情もなく銀時を見下ろし、目で動きを追っていた。
宣伝も終わったらしい銀時はいつも腰に差してある木刀を手にエイリアンに突っ込んでいく。


「野郎…!死ぬつもりか!?」


でかい犬に乗り、日本刀ではなく木刀を手に突っ込む銀時に真選組や結野アナ達は目を丸くして驚く。
目を覚ましたらしい兄、近藤の驚きの言葉に鷹臣は『死ねばいいのに』と空気を読まず雪を独り占めする銀時へ嫉妬の炎を燃やしていた。
定春と銀時は人目も気にせずまっすぐエイリアンに向かって走っていた。
それはさながら今上映している映画の主人公のようで、カメラを通して見ている人達は固唾を呑み見守っていた。
今、銀時は丈の兄貴のように凛々しい姿を見せていた。
数少ない輝いた目を見せていた。
しかし―――


「定春!散歩の時間だ!!今日はどこでクソたれようがじゃれようが自由だ!!行くぜエエエ!!!」


勢いに乗り定春にそう声をかけ、銀時は迫るエイリアンと戦うため声を上げた。
気合をいれたのだ。
だが、その瞬間、目の前にいたエイリアンの一部に銀時と定春は食われてしまう。
それを見た真選組と結野アナ、そしてカメラマンからは沈黙が落ち、相変わらず鷹臣は無反応ながらも心の中は『グッジョブ、エイリアン!』と拍手喝采である。
ストーカーとか恋敵とかうんぬんではなく、もう人でなしである。


「ええええええ!!?」

「呑み込まれたァァ!!散々かっこつけて呑まれちゃったよ!オイィィィ!!何しに来たんだァァァ!!」


一瞬の間を置いて真選組達はまるでコントのような銀時と定春の末路(?)に心の底から突っ込んだ。
多分、テレビの前の全員が同じ突っ込みをしているだろう。
そうこうしているうちにエイリアンはこちらに襲い掛かって来た。
近藤は降りたが、まだ鷹臣はパトカーの上に乗っており、こちらに向かってくるエイリアンから逃げるためパトカーが走れば当然鷹臣もエイリアンから遠ざかっていく。
だが再び鷹臣の鼻にふわりと嗅いだことのある匂いがかすめる。
その瞬間、沖田達とは違いただぼうっとしているだけで逃げていた鷹臣の目がカッと見開いた。


「!――やっぱりこの匂い…!!―――お雪さん…ッ!!!」


そう、鷹臣は雪の匂いに反応したのだ。
気持ち悪い事風の如し、と某武将の言葉を借りて私は言いたい。
鷹臣はパトカーの上から飛び上がり、グググ、とまだ完全に食われていなかったらしい銀時が何とか脱出しようと力の限りエイリアンの口を開き支えていたそのエイリアンの上に…着地する。
おかげで支えていた銀時は再び口の中へIN、である。


「お雪さアアアアアん!!!今!お雪さんの王子!この鷹臣があなたの危機へ馳せ参じます!!待っていてください!!!」


銀時の存在などもう鷹臣の中では消えているのだろう。
せっかく開けかけた口が鷹臣の重みで再び閉じられ、暗闇再来な銀時の悲鳴などよそにそのまま鷹臣はエイリアンを橋のように伝い雪がいるであろう所へ走っていく。
その間も鷹臣へエイリアンの攻撃が向けられたが、短剣やら刀やら爆弾やらで回避していた。


「っ〜〜〜〜きゃーーーっ!!かっこいい!!誰あの人の!なにあの人!!どうしてあんなにイケメンなの!!?―――ッは!……ご、ゴホン!!えーっ!失礼しました!!みなさんご覧ください!!おう……、一人の男性が勇敢にもエイリアンに向かっております!!あの美青…ゴホン!あの青年は誰なのでしょうか!!そして彼の言うお雪さんとはいったい誰なのでしょうか!!心のそこからうらやま………気になります!!」

「オイ、本音が所々出てんぞ」


真っ直ぐ前だけを向きながらも妨害してくる前方のエイリアン、左右、後ろのエイリアンも次々と倒し突破する鷹臣の姿に、結野アナは我慢ができず黄色い声で叫んだ。
しかしカメラがジッとこちらに向かって撮られているのを見て、ハッとさせ我に返った結野アナは咳払いをして誤魔化す。
…が、隠しきれない本音がチラチラ見え、パトカーから降りてきた土方に突っ込まれてしまう。


「…土方さん」

「なんだ」

「タッキーマジキモイ」

「……………」


雪の名を叫びながらエイリアンの中を疾走する鷹臣を土方は何とも言えない表情で見送っていた。
休暇だったはずの鷹臣の着流しからは『どこに隠してたの?』と聞き出したいばかりの武器弾薬諸々が登場し、次々と攻撃してくるエイリアンを粉々にしていく。
その姿を見て土方は『ああ、こいつ昔から全然変わってねえな』と思ったとか。
そんな土方に沖田が声を掛けてきた。
声を掛けてきた沖田に返事を返せば、鷹臣を想い口にも心にも出さなかった言葉がかけられ、土方はとりあえず何も言わないでおいた。
雪の匂いがすると言う鷹臣のストーカーぶりに、あの鷹臣に懐きに懐いている沖田ですら気持ち悪がるほどであった。

というか……そろそろみなさん、銀さんも思い出してあげてください。(おま)


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