軍艦に乗り込み、片栗虎は目の前まで迫ったターミナルに残っている民間人に避難しろと無茶ぶりをする。
「聞けェェ!!ターミナル周辺に留まっている民間人に告ぐ!!ただちにターミナルから離れなさーい!!今からエイリアンに一斉放射を仕掛ける!!直ちに離れなさい!」
≪とっつぁん待て!!民間人のガキが一人エイリアンに取り込まれている!!≫
片栗虎の無茶ぶりはいつもの事だが、今回は冷や汗物では済まされない。
下手したら片栗虎どころかその部下の自分達も腹を切らされるかもしれないのだ。
それでも片栗虎はやる気(と呼んで殺る気と書く)なのは変わらない。
そんな片栗虎に真選組の局長、近藤が無線で抗議する。
近藤の抗議に片栗虎の部下達はどよめいだが、片栗虎は表情一つ変えない。
「近藤ォ…ガキ一人と江戸、同じ秤にかけるつもりか?人を救うということはな、人を殺める以上の度胸が必要なんだ…大義を見失えば救う命も救えなくなるぞ?甘ったれてんじゃねえよォ」
≪それはそうだが……、た、鷹臣!!鷹臣がいるから!!あいつエイリアンの中に入っていったから!!だからまだ撃つな!!≫
「鷹臣だァ…?」
言っている事は正しいとは思う。
だが、その正義が子供一人救えないのでは意味がないと思うのは近藤の考えだった。
甘い考えでもなんでもいいのだ。
人を救えず見殺しにしてまでの平和は誰も得はしない。
だからハッと鷹臣がエイリアンの中に入っていった事を思い出し、片栗虎は鷹臣を本当の息子のように可愛がっているため鷹臣を出せば止まってくれると思った。
だが、鷹臣の名を聞いた片栗虎の声が無線越しに低くなるのを近藤は聞いた。
「鷹臣がなんぼのもんじゃアアアア!!」
何故か片栗虎はブチ切れたのだ。
鷹臣を可愛がっているはずの片栗虎のキレ方に近藤は思わず声を上げた。
≪えーーー!!?あんた鷹臣見殺しにする気か!!?≫
「当たり前よォ!!あいつは生かしておけねェ!!骨も散りとなるまで消し去ってくれるわァァァァ!!」
≪どーしてよ!?なんでよ!?あんた鷹臣を息子のように可愛がってたじゃねえか!!≫
「どうしてだァ!?なんでだァ!!?んなもん決まってんだろ!!!あいつはな…!あいつは俺を裏切りやがった!!!俺ァ栗子の父親だぞ?栗子の半分は俺の遺伝子で出来てんだぞ?それを…それをあいつは栗子の誕生日会に男を連れ込もうとしてんだぞゴラアアア!!!栗子の彼氏候補とか抜かしてたんだぞゴルアアアア!!!お父さん彼氏なんて認めねえぞゴゥルラァァァァァ!!!」
≪心底どうでもいい!!心底!!≫
近藤の言葉にマジ切れし始める片栗虎に近藤は心の底からの突っ込みを入れた。
栗子は遊園地で骨抜きだった彼氏と別れ、マヨラー13に惚れてしまった。
しかし栗子の好意を受け入れるつもりはないマヨラー13こと土方十四郎は屈辱だが銀時達に協力してもらい諦めてもらったのだ。
失恋し落ち込む栗子を見て鷹臣は可哀想に思ったのか、メル友に独身男性を紹介してもらったのだ。
メル友同様エリートなため栗子の家柄と釣り合う男性を何人か毎年行われる栗子の誕生日会に独断で呼んだ。
鷹臣も栗子を妹のように想っているからこその行動で、栗子の母と相談して決めた事だった。
しかし、問題が一つあった。
その問題は当の本人である栗子ではない。
そう…問題は父親である片栗虎だった。
母曰く、女は新しい恋をすれば失恋で出来た心の傷はすぐに癒えると言う。
だが、父親という生き物はそうはいかない。
父親…片栗虎のように娘を溺愛している親馬鹿という部類は娘に彼氏が出来るたびにこの世の地獄を味わうと言う。
お前何回地獄味わってんだよと言いたいほど、娘に男の気配を感じると思春期の少女のように繊細な心は粉々になると言う。
片栗虎もそうだった。
鷹臣が知り合いから紹介された男性を密かに誕生日会に呼ぶという情報を得てそれが頭に来ていたらしい。
鷹臣はこうなると分かっていたため話さなかったし、それも読めているから余計腹が立っているのだろう。
近藤も栗子を妹のように可愛がっているが、それがあの遊園地の時の彼氏ではなくしっかりとした身なりの男性だと知ればきっと心から祝福してやれるだろう。
鷹臣の時だってきっと寂しいと思いながらも喜ぶだろう。
だが片栗虎は違った。
娘にはずっとそばにいてほしいと思うのが親というもので…普通の親なら寂しがるが娘の親離れを温かく見守るのだろう。
しかしそれすら許しがたいのが…親馬鹿である。
片栗虎はチャラ男だろうが固い家柄の男だろうが真面目人間だろうが何だろうが娘に手を出す輩は死、あるのみと心の底から本気で真面目にそう思っている。
だから鷹臣の行動が許せなかったのだ。
「きょ、局長!!エイリアンが…!」
「…ッ!!」
心の底からの突っ込みをしていた近藤に隊員が焦った声を零す。
その声に顔を上げ、隊員が指差す方へ目をやれば、先ほどまで大人しかったエイリアンが再び動き出しこちらに向かってきていた。
「ほォら見ろォ…おじさんの言う事聞かないから。な?おじさんのいう事は大体正しいんだよ…おじさんの80%は正しさで出来ていまァーす。―――そういうことだからさァ、お前らもうちに帰りんさァい。邪魔だっぺ!」
そのエイリアンを近藤達下の真選組達は必死にバズーカなどで潰していくが、このまま行ってもいずれは圧倒されてしまう。
あのようにターミナルを呑み込めるほどの大きさになったエイリアンに対抗できるのは人の手では無理なのだ。
それでも近藤達が諦めないため、片栗虎は強引なやり方に移った。
「松っちゃん砲、発射用意。」
「長官…!」
「いいから撃て。」
「い、いや…そうじゃなくて……―――やつら…逃げるどころか……増えてます!」
命令を無視してもそこから逃げださず民間人を助けるためにバズーカで打ち続ける近藤達に片栗虎は構ってられるか、と言わんばかりに砲弾の準備をさせた。
そんな片栗虎に部下の1人が声を上げたが、それを批難と受け止めた片栗虎は有無を言わせない声で再度命ずる。
だが、部下はその批難もだが……画面に映ったものに声を上げたのだ。
部下の指さす方へ目をやれば、片栗虎も驚きの表情を浮かべる。
片栗虎が驚くその先には…
「貴様らアア!!このオッサンが目に入らねえかアアア!!!」
「今撃ったらもれなくこのバカ皇子も爆死するぞオオ!!!もれなく国際問題だぞオオ!!5分だ!5分でいいから待てって言ってんだよ!!コラアア!!!」
「5分なんてすぐじゃん!!矢の如しじゃん!!カップラーメンでも作って待ってろって言ってんだよ!!!」
ハタ皇子を盾にする雪、鷹臣、爺、定春がいた。
あの後合流した定春に触角を噛まれて拘束されているハタ皇子の左右には肩臣と爺がおり、鷹臣の手にはナイフが握られており、そのナイフはハタ皇子の首元に当てられていた。
笑顔で他星の皇子を脅しに掛かっている鷹臣の隣には雪もいた。
「てめえら…」
突然現れた4人と一匹に星海坊主は唖然とする。
特に帰るよう言いくるめたはずの雪の姿に驚きが隠せなかった。
「………ったく…あの天然パーマが…来るなら来るって最初から言えってんだよ。どうせ来ると思ってましたけどね…あの天邪鬼が…」
雪の後ろ姿しか見えないが、声色からして泣いているのだろう…雪はそれでも泣き崩れないようグッと拳を握った。
そんな雪の後姿を星海坊主は無言で見つめながら、娘の言葉を思い出す。
―――私…変わったでしょ?私…人を守ることもできるようになったヨ…そういう風にしたらネ、いっぱい友達できたヨ…もう誰も私を恐がったりしないアル…もう一人じゃないネ…
エイリアンとの戦いで倒れる神楽を抱き起した時に言われた言葉。
それが星海坊主の中で何度も繰り返しに再生されていた。
壊すことしか知らない夜兎。
夜兎のねぐらである星以外ではみんな夜兎の力を恐れ、本当の意味で根を張る事はできない。
それはエイリアンハンターとして各星を回ってきた星海坊主だから言える言葉だった。
所詮は宇宙最強と言われるほどの破壊の力を持つ種族なのだ。
そんな種族とは正反対のように壊れやすい地球の人間と分かり合えるわけがなかった。
そう…星海坊主はそう思っていた。
だが神楽は違った。
神楽はあちらが歩み寄るのを待つのではなく、まず、こちらから変えていこうとした。
夜兎である自分達に地球の人間が合わせろというのが無理なのだ。
力加減を一歩でも間違えれば赤子のような人間の体はあっという間に死んでいく。
それを学んだから、神楽は自分を変えた。
少しずつ、ちょっと失敗もするけど、力加減を覚えた。
見た目は地球の人間と一緒なのだ…力さえ加減できれば溶け込む事も容易くはなかった。
初めて同い年の友達が出来た時…神楽はそれに気づいたのだ。
気づいて制御していくと段々と友達が増えていった。
幼い頃寂しい思いしかしていなかった神楽にとって、それはとても嬉しい出来事の一つになった。
やんちゃな所は変わらないが、自分を夜兎として恐れるのではなく、自分を自分として受け入れてくれる人たちがいる…だからこそ神楽はここに執着していた。
あの2人がいる空間に、執着していた。
それを今になって星海坊主はやっと少しだが理解した。
全てを今、理解するのは無理だが、星海坊主は神楽が変わった事への疑問が解かれた気がしたのだ。
「おやっさーーん!ちょっとやめてくれませんかー!」
≪てめえェ…鷹臣ィィ!!てめえだけは絶対許さねェよオオオ!!栗子の彼氏候補なんて連れてきやがって…!!お父さんは彼氏なんて許しませんよ!って何度言わせんだ!!!てめえなんてエイリアンごと粉々にしてやんよォォォオオオ!!!≫
「ありゃ、滅茶苦茶怒ってる…根に持つな〜、あのおっさん。」
「どういう理由で怒ってんのあの人!!娘の彼氏候補とか心底どうでもいいわ!!心底!!どんだけ過保護なの!?…って鷹臣さん!!あんた連絡できる物持ってないとか言ってたよね!?その手にある物体すっごく携帯っぽいんですけど!?」
「いやー。なんか懐探ってたらあったんだよねー」
「アハハ、じゃねエエエエ!!!」
一向に軍艦を引こうとしない片栗虎に鷹臣は痺れを切らしたように携帯を手にした。
雪は怒り爆発な片栗虎に困ったように(でもそうは見えない)頭をかく鷹臣の手にある携帯らしきものに突っ込んだ。
今から少し前に連絡が取れる物を持っていないと当の本人から聞いたばかりだったからだ。
鷹臣の懐には様々な物が隠されていた。
武器を多く隠しており、それはもう癖のようなものなので逆に何か武器を隠していないと落ち着かないらしい。
鷹臣は心の底からの雪の突っ込みに反省の色ゼロの笑顔で対応する。
「聞けェェ!!ターミナル周辺に留まっている民間人に告ぐ!!ただちにターミナルから離れなさーい!!今からエイリアンに一斉放射を仕掛ける!!直ちに離れなさい!」
≪とっつぁん待て!!民間人のガキが一人エイリアンに取り込まれている!!≫
片栗虎の無茶ぶりはいつもの事だが、今回は冷や汗物では済まされない。
下手したら片栗虎どころかその部下の自分達も腹を切らされるかもしれないのだ。
それでも片栗虎はやる気(と呼んで殺る気と書く)なのは変わらない。
そんな片栗虎に真選組の局長、近藤が無線で抗議する。
近藤の抗議に片栗虎の部下達はどよめいだが、片栗虎は表情一つ変えない。
「近藤ォ…ガキ一人と江戸、同じ秤にかけるつもりか?人を救うということはな、人を殺める以上の度胸が必要なんだ…大義を見失えば救う命も救えなくなるぞ?甘ったれてんじゃねえよォ」
≪それはそうだが……、た、鷹臣!!鷹臣がいるから!!あいつエイリアンの中に入っていったから!!だからまだ撃つな!!≫
「鷹臣だァ…?」
言っている事は正しいとは思う。
だが、その正義が子供一人救えないのでは意味がないと思うのは近藤の考えだった。
甘い考えでもなんでもいいのだ。
人を救えず見殺しにしてまでの平和は誰も得はしない。
だからハッと鷹臣がエイリアンの中に入っていった事を思い出し、片栗虎は鷹臣を本当の息子のように可愛がっているため鷹臣を出せば止まってくれると思った。
だが、鷹臣の名を聞いた片栗虎の声が無線越しに低くなるのを近藤は聞いた。
「鷹臣がなんぼのもんじゃアアアア!!」
何故か片栗虎はブチ切れたのだ。
鷹臣を可愛がっているはずの片栗虎のキレ方に近藤は思わず声を上げた。
≪えーーー!!?あんた鷹臣見殺しにする気か!!?≫
「当たり前よォ!!あいつは生かしておけねェ!!骨も散りとなるまで消し去ってくれるわァァァァ!!」
≪どーしてよ!?なんでよ!?あんた鷹臣を息子のように可愛がってたじゃねえか!!≫
「どうしてだァ!?なんでだァ!!?んなもん決まってんだろ!!!あいつはな…!あいつは俺を裏切りやがった!!!俺ァ栗子の父親だぞ?栗子の半分は俺の遺伝子で出来てんだぞ?それを…それをあいつは栗子の誕生日会に男を連れ込もうとしてんだぞゴラアアア!!!栗子の彼氏候補とか抜かしてたんだぞゴルアアアア!!!お父さん彼氏なんて認めねえぞゴゥルラァァァァァ!!!」
≪心底どうでもいい!!心底!!≫
近藤の言葉にマジ切れし始める片栗虎に近藤は心の底からの突っ込みを入れた。
栗子は遊園地で骨抜きだった彼氏と別れ、マヨラー13に惚れてしまった。
しかし栗子の好意を受け入れるつもりはないマヨラー13こと土方十四郎は屈辱だが銀時達に協力してもらい諦めてもらったのだ。
失恋し落ち込む栗子を見て鷹臣は可哀想に思ったのか、メル友に独身男性を紹介してもらったのだ。
メル友同様エリートなため栗子の家柄と釣り合う男性を何人か毎年行われる栗子の誕生日会に独断で呼んだ。
鷹臣も栗子を妹のように想っているからこその行動で、栗子の母と相談して決めた事だった。
しかし、問題が一つあった。
その問題は当の本人である栗子ではない。
そう…問題は父親である片栗虎だった。
母曰く、女は新しい恋をすれば失恋で出来た心の傷はすぐに癒えると言う。
だが、父親という生き物はそうはいかない。
父親…片栗虎のように娘を溺愛している親馬鹿という部類は娘に彼氏が出来るたびにこの世の地獄を味わうと言う。
お前何回地獄味わってんだよと言いたいほど、娘に男の気配を感じると思春期の少女のように繊細な心は粉々になると言う。
片栗虎もそうだった。
鷹臣が知り合いから紹介された男性を密かに誕生日会に呼ぶという情報を得てそれが頭に来ていたらしい。
鷹臣はこうなると分かっていたため話さなかったし、それも読めているから余計腹が立っているのだろう。
近藤も栗子を妹のように可愛がっているが、それがあの遊園地の時の彼氏ではなくしっかりとした身なりの男性だと知ればきっと心から祝福してやれるだろう。
鷹臣の時だってきっと寂しいと思いながらも喜ぶだろう。
だが片栗虎は違った。
娘にはずっとそばにいてほしいと思うのが親というもので…普通の親なら寂しがるが娘の親離れを温かく見守るのだろう。
しかしそれすら許しがたいのが…親馬鹿である。
片栗虎はチャラ男だろうが固い家柄の男だろうが真面目人間だろうが何だろうが娘に手を出す輩は死、あるのみと心の底から本気で真面目にそう思っている。
だから鷹臣の行動が許せなかったのだ。
「きょ、局長!!エイリアンが…!」
「…ッ!!」
心の底からの突っ込みをしていた近藤に隊員が焦った声を零す。
その声に顔を上げ、隊員が指差す方へ目をやれば、先ほどまで大人しかったエイリアンが再び動き出しこちらに向かってきていた。
「ほォら見ろォ…おじさんの言う事聞かないから。な?おじさんのいう事は大体正しいんだよ…おじさんの80%は正しさで出来ていまァーす。―――そういうことだからさァ、お前らもうちに帰りんさァい。邪魔だっぺ!」
そのエイリアンを近藤達下の真選組達は必死にバズーカなどで潰していくが、このまま行ってもいずれは圧倒されてしまう。
あのようにターミナルを呑み込めるほどの大きさになったエイリアンに対抗できるのは人の手では無理なのだ。
それでも近藤達が諦めないため、片栗虎は強引なやり方に移った。
「松っちゃん砲、発射用意。」
「長官…!」
「いいから撃て。」
「い、いや…そうじゃなくて……―――やつら…逃げるどころか……増えてます!」
命令を無視してもそこから逃げださず民間人を助けるためにバズーカで打ち続ける近藤達に片栗虎は構ってられるか、と言わんばかりに砲弾の準備をさせた。
そんな片栗虎に部下の1人が声を上げたが、それを批難と受け止めた片栗虎は有無を言わせない声で再度命ずる。
だが、部下はその批難もだが……画面に映ったものに声を上げたのだ。
部下の指さす方へ目をやれば、片栗虎も驚きの表情を浮かべる。
片栗虎が驚くその先には…
「貴様らアア!!このオッサンが目に入らねえかアアア!!!」
「今撃ったらもれなくこのバカ皇子も爆死するぞオオ!!!もれなく国際問題だぞオオ!!5分だ!5分でいいから待てって言ってんだよ!!コラアア!!!」
「5分なんてすぐじゃん!!矢の如しじゃん!!カップラーメンでも作って待ってろって言ってんだよ!!!」
ハタ皇子を盾にする雪、鷹臣、爺、定春がいた。
あの後合流した定春に触角を噛まれて拘束されているハタ皇子の左右には肩臣と爺がおり、鷹臣の手にはナイフが握られており、そのナイフはハタ皇子の首元に当てられていた。
笑顔で他星の皇子を脅しに掛かっている鷹臣の隣には雪もいた。
「てめえら…」
突然現れた4人と一匹に星海坊主は唖然とする。
特に帰るよう言いくるめたはずの雪の姿に驚きが隠せなかった。
「………ったく…あの天然パーマが…来るなら来るって最初から言えってんだよ。どうせ来ると思ってましたけどね…あの天邪鬼が…」
雪の後ろ姿しか見えないが、声色からして泣いているのだろう…雪はそれでも泣き崩れないようグッと拳を握った。
そんな雪の後姿を星海坊主は無言で見つめながら、娘の言葉を思い出す。
―――私…変わったでしょ?私…人を守ることもできるようになったヨ…そういう風にしたらネ、いっぱい友達できたヨ…もう誰も私を恐がったりしないアル…もう一人じゃないネ…
エイリアンとの戦いで倒れる神楽を抱き起した時に言われた言葉。
それが星海坊主の中で何度も繰り返しに再生されていた。
壊すことしか知らない夜兎。
夜兎のねぐらである星以外ではみんな夜兎の力を恐れ、本当の意味で根を張る事はできない。
それはエイリアンハンターとして各星を回ってきた星海坊主だから言える言葉だった。
所詮は宇宙最強と言われるほどの破壊の力を持つ種族なのだ。
そんな種族とは正反対のように壊れやすい地球の人間と分かり合えるわけがなかった。
そう…星海坊主はそう思っていた。
だが神楽は違った。
神楽はあちらが歩み寄るのを待つのではなく、まず、こちらから変えていこうとした。
夜兎である自分達に地球の人間が合わせろというのが無理なのだ。
力加減を一歩でも間違えれば赤子のような人間の体はあっという間に死んでいく。
それを学んだから、神楽は自分を変えた。
少しずつ、ちょっと失敗もするけど、力加減を覚えた。
見た目は地球の人間と一緒なのだ…力さえ加減できれば溶け込む事も容易くはなかった。
初めて同い年の友達が出来た時…神楽はそれに気づいたのだ。
気づいて制御していくと段々と友達が増えていった。
幼い頃寂しい思いしかしていなかった神楽にとって、それはとても嬉しい出来事の一つになった。
やんちゃな所は変わらないが、自分を夜兎として恐れるのではなく、自分を自分として受け入れてくれる人たちがいる…だからこそ神楽はここに執着していた。
あの2人がいる空間に、執着していた。
それを今になって星海坊主はやっと少しだが理解した。
全てを今、理解するのは無理だが、星海坊主は神楽が変わった事への疑問が解かれた気がしたのだ。
「おやっさーーん!ちょっとやめてくれませんかー!」
≪てめえェ…鷹臣ィィ!!てめえだけは絶対許さねェよオオオ!!栗子の彼氏候補なんて連れてきやがって…!!お父さんは彼氏なんて許しませんよ!って何度言わせんだ!!!てめえなんてエイリアンごと粉々にしてやんよォォォオオオ!!!≫
「ありゃ、滅茶苦茶怒ってる…根に持つな〜、あのおっさん。」
「どういう理由で怒ってんのあの人!!娘の彼氏候補とか心底どうでもいいわ!!心底!!どんだけ過保護なの!?…って鷹臣さん!!あんた連絡できる物持ってないとか言ってたよね!?その手にある物体すっごく携帯っぽいんですけど!?」
「いやー。なんか懐探ってたらあったんだよねー」
「アハハ、じゃねエエエエ!!!」
一向に軍艦を引こうとしない片栗虎に鷹臣は痺れを切らしたように携帯を手にした。
雪は怒り爆発な片栗虎に困ったように(でもそうは見えない)頭をかく鷹臣の手にある携帯らしきものに突っ込んだ。
今から少し前に連絡が取れる物を持っていないと当の本人から聞いたばかりだったからだ。
鷹臣の懐には様々な物が隠されていた。
武器を多く隠しており、それはもう癖のようなものなので逆に何か武器を隠していないと落ち着かないらしい。
鷹臣は心の底からの雪の突っ込みに反省の色ゼロの笑顔で対応する。
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