(3 / 5) キャラクターはシルエットだけで読者に見分けがつくように描き分けよう (3)
「そういえば、あんたらこれからどうするんだい?」

「あ?」

「あんたら二人で万事屋やるのかって聞いてるんだよ。三人でやっと食っていけてたっていうのに。」


お酒を飲んでいくと未成年の雪とお登勢、キャサリン、たま以外はほろ酔い気分となっていき、お妙と銀時の殺気立った空気も2人の酔いによって緩和していく。
三人でも生計が立てられてはいなかったが、何とかやっていけていたのに一人(しかも結構な戦力)がいなくなりやっていけるのかとお登勢は心配になった。
『これ以上家賃滞納されたら困るんだけどねぇ』と憎まれ口を叩くお登勢に銀時は鼻で笑う。


「んなもんどうにかなんだろ…元は俺一人でやってたしな」

「あらじゃあ雪ちゃんもいらないわよね?雪ちゃんは返してもらいますから。」

「は?そうは言ってねえだろうが…何勝手な解釈してるんですかー?何妄想してるんですかー?あーあ、これだから女っつーもんは嫌になるぜ…勝手に解釈して勝手に自己完結しやがるんだもんなぁー」

「あ?そう言ってんだろうが…元は一人でやってたってことは雪ちゃんはいらないってことですよねぇ?一人で何でもできるってことですよねぇ?あーあ、これだから男は嫌だわぁ。女を勝手に自分のモンだと思い込んで私物化して勝手に決めて…ほんと、男ほど馬鹿な生き物はいないわよねぇー」

「はァ!?んだとゴラ!」

「あァ!?やんのかゴラ!」


どう転んでも二人の間に洗剤は存在していないようで、二人が取り合っているはずの雪が間に入っても意味を持たないようである。
まあ、雪本人がもう呆れて間を取り持つ気がない、というのもあるが。
雪は『やっぱり神楽ちゃん帰ってこないかなー』と思いながらチビチビとお妙が注いでくれたジュースを飲む。


「やれるやれないってことじゃないんだよ。少し前にさ、私を経営者だと間違えて履歴書を置いてった人がいてねえ…今それを思い出したところさ」

「履歴書ォ?俺んところにィ?なになに?万事屋ってそんなに有名だったわけ?」


お登勢ももう何も突っ込む気はないのかカウンターからある物を取り出し、雪を挟んで鉄壁の壁と睨み合うのに忙しい銀時ではなく、挟まれて肩身の狭い思いをしている雪に渡した。
お登勢の言葉に睨み合っていたのをやめ、雪の横から履歴書らしき物を見る。
興味があるのかお妙も銀時の反対側で雪の横から履歴書を覗き、長谷川達は雪の後から覗いていた。


「って…履歴書っつーよりは見合い写真じゃねえの、これ…」

「あら、でも綺麗な人よ?銀さん、この人採用しちゃったらいいんじゃないですか?こんな綺麗な人だったら銀さんの標的が雪ちゃんからこの人にすり替えられて雪ちゃんの貞操も守られて万々歳だわ」

「おい何勝手に人の雇用に口出してんだ?ほんっと、てめえは口うるせえ姑バb―――ぐほァっ」


履歴書、と言われ渡されたソレに雪は違和感を感じた。
雪もいくつものバイトの面接をしたから面接の紙がどういう物かは知っている。
そのまま出す人もいれば封筒に入れて出す人もいるのだが、渡された履歴書なる物はペラッペラの紙ではなく、分厚いファイルのような物だった。
開いてみればそこには着物姿の綺麗な女性の全身写真があり、雪は一瞬長谷川と同じことを思う。
しかもなんかものすごく見たことのあるような気がするような気もするのだ。
お妙は綺麗な女性の写真に『これで雪ちゃんは安全ね』と笑みを浮かべたが銀時のポロリと出た本音に笑みをそのままに拳を銀時の顔に叩き込んだ。


「あら、でもこの人経歴が凄いわ…お庭番衆を辞した後、殺し屋に転職ですって」

「えっと……銀さん、これって…」


姉が経歴を見て感想を述べたため、雪も釣られて写真の横にある経歴を見た。
そこで見覚えのある名前がデカデカと書かれているのも見る。
気のせいにしたかったが出来るはずもなく、雪は横にいる銀時に声を掛けよとする。
しかし突然この場に気配が増えた。
バサリという音に全員ハッとさせ後ろへ振り返った。
そこにはやはり雪の予想通りの人物がいた。


「く、曲者オオ!曲者だーッ!!何奴じゃ貴様ーー!!」


バサリ、というのは髪の毛が垂れた音だったらしい。
その人物はなぜか照明に足をひっかけ逆さになっていた。
長谷川が一番驚き、その声にその人物は軽やかに降りる。
音もなく降りたその人物に雪はこれから更にややこしくなるのを予想しため息をついた。


「祗園精舎の鐘の声…諸行無常の響きあり…沙羅双樹の花の色…ヒロイン交代の理をあらはす……こんばんは、万事屋さっちゃんだぞ」


現れたのは、銀時のストーカー…猿飛あやめだった。
さっちゃんと慣れ親しんでいる彼女が1人万事屋に欠けた情報を見逃すわけがなく、早速現れた。


「商売を一人でやってける程世の中甘いものじゃないわ」

「あ、私はガン無視なんですね…わかってたけど…」


普段、銀時のストーカーであるさっちゃんでも雪を無視することはない。
ライバルと見られているがそれなりに仲がいいとは思う。
というよりかは話しかけたら答えてくれる程度には仲はいい。
だが今は採用されたくて無視するつもりのようで、分かっていたが実際無視されると悲しいというか分かりすぎて呆れるというか…雪は乾いた笑いを零す。
そんな雪をよそにさっちゃんは続ける。


「アダムにイブ、社長に美人秘書、ご主人様にメイドさん、林家ペーにパー子が寄り添うように…何をするにもヒロインという存在は必要不可欠なのよ!」

「さっちゃんさん、途中からズレてます。」

「かと言ってアルアル中国娘と巨乳と地味だけが取り柄の女はもう古いし、猫耳年増女なんて問題外。ババアにいたっては男だか女だか大蛇丸だかわからない始末…わかる?これからはコレよ!これからはメガネっ娘くの一…アレ?くの一メガネ…あ、これでいこう!――91メガの時代なのよ!!あっ、間違った!」


どこかズレているさっちゃんを突っ込みながらも雪は無視されるも突っ込みとしての役割を果たそうとしていた。
先ほどまでお前なにもしてねえじゃねえか、というセルフ突っ込みは、いらない。
もう何もかもがグダグダなさっちゃんに雪も流石に突っ込むのは諦めた。
少しばかり桂と同じ電波臭(というよりは天然臭?)を感じ取った雪に罪はないと思いたい。


「あ、あの〜…そういう事だから〜…あの〜、私をお嫁さんに〜……じゃねえや!万事屋に入れて…」

「メガネは雪と被るからダメ。」

「…!」


どうお妙が躍起になって採用させようと、雪が拒否ろうと最終的に決めるのは銀時である。
雪は見合い写真を手に持ちながらもじもじとさせるさっちゃんを見る。
さっちゃんは中身はともかく顔も体もその辺の女性より魅力的な物を持っているからモジモジとさせるその姿もいじらしくて愛らしい。
雪はさっちゃんを見た後自分の胸を見た。
程よいぼんっきゅっぼんなスタイルを持っているさっちゃんに対し、雪はボン、キュ、ボンである。
いや、同じ効果音じゃねえかという突っ込みはいらな(ry
要するに、雪は正直大きすぎる胸がコンプレックスなのだ。
更に言えば最近神楽が揉むものだから大きい胸が更に大きくなってきているような気がするという悩みもある。
厳密に言えば揉んでも大きくはならないらしいのだが、そんな気がするのだ。
無意識に雪はむにっと自分の胸を突っつく。
そんな誰もが採用するほど愛らしいさっちゃんに銀時は断った。
銀時の断りに雪は思わず銀時を見上げる。
そこには自分で新しく注いだお酒を飲みちょっぴり頬を赤らんでいる銀時がおり、雪は冷静にも『あ、酔ってる』と思った。


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