(2 / 8) 愛犬の散歩は適度なスピードで (2)
結局、二日酔い…というか夜通しで飲んでいたツケでの症状に悩まされ続けていた銀時は頼りにならず、二人は自力で脱出した。
また噛もうとした定春に雪はギリギリに避け難を逃れ、神楽も咄嗟に避ける。


「定春はいちご牛乳が好物ヨ!大きくなったけど性格は変わってないネ!」

「でもなんでこんなことに…」

「お前らがむやみにカルシウムなんか取らせるからこんなデカくなんだよ…カルシウムなめんなよ?カルシウムさえとっときゃ全てうまくいくんだよ!」

「…あんたは全然うまくいってないですけどね。」


そう言って神楽が飲ませているのは銀時の物であるいちご牛乳だった。
雪が安売りの時に買い溜めして隠していたいちご牛乳(勿論賞味期限も考えて買い溜めしている)が神楽によって暴かれあっという間に買い溜めしているいちご牛乳の器を空にしていく。
銀時は床一面に広がるいちご牛乳の空のパックを見下ろしながら『雪、お前…こんなに溜めてたのか…俺に内緒でこんなに買ってたのか…俺に一言も言わず、俺に隠して…』と零し最後の一本を死守していたのだが、雪の『あんた隠さないと調子に乗って飲むでしょうが。一日一杯って決めないと飲むでしょうが。お医者様に怒られるの私ですよ?何か文句でも?』という冷たいお言葉と冷たい眼差しと眼鏡の反射をおまけされてしまい何も言い返せなかった。
SだSだと言っている割には嫁(仮)に尻に敷かれていた。


「それより一体どうするんですか?こんなに大きくなっちゃって」

「大丈夫だよ、お雪ちゃ〜ん…こんな時はぁ、―――たらりらったらー!なんじゃこりゃーー」

「…ほんとに何ですか、それ…なにか見覚えあるんですけど…なんか聞き覚えあるんですけど…」

「これさえあれば犬が何を喋っているのか鳴き声から分かるんだ」

「すごいじゃないですか!いつの間にそんな便利なアイテムを?」

「昨日飲み屋で隣の親父に枝豆と交換してもらったんだ」

「胡散臭さ100%じゃねえか!!んなもん交換してる暇あるなら早く帰ってこいやマダオが!!」


銀時がいい物があるからと取り出したのは黄色の何かだった。
玩具のようにも見えるそれに首を傾げていると、物まねなのだろうか…聞き覚えのあるようなないようなダミ声で説明する。
しかしその説明の内容のくだらなさに雪は強く突っ込んでしまう。
雪はあれほど自分が泊まる時以外で朝帰りはしないでというお願いしたのに堂々と朝帰りをする銀時に若干腹を立てていた。
それも強く出てしまう原因だろう。
朝帰りの事は銀時自身なかったことにしているのか突っ込みと睨みを向ける雪から目をそらしながら立ち上がり『とりあえず、』と呟き定春の前に立つ。


「とりあえずこれなら定春がデカくなった解決策が分かるかもしれねえ…定春、お前はどうしてそんなにデカくなったんだ?」

「…………」

「おい!何とか言え!」


飲んで気分も悪いからか、短気な銀時は口を閉ざし鳴かない定春の頬を叩いた。
動物虐待な銀時に罰は下るもので…定春は不機嫌そうな声を出しながら銀時の頬を叩き返す。
叩き返され銀時は吹き飛ばされたが、その衝撃で持っていたその機械も床に落ちてしまう。
だが壊れてはいないようでピピ、と音をさせ小さい画面に文字を出した。
吹き飛ばされた銀時をよそに雪が落ちていた機械を手に持ちその画面を見ると…


『いてーな!動物愛護団体に訴えるぞこの野郎!』

「……合ってるっちゃ、合ってるアル…」


定春からのメッセージが届いていた。
それも微妙に合っていると言えば合っている程度の文字が出ている。
その画面に出ている文に雪の手にある機械を覗き込んでいた神楽は何となく納得した。


「この野郎!!ご主人様になにしやがんだ!!!」

「ふふん!次は私の番ネ!私は定春いつも可愛がってるから大丈夫ネ!――定春〜、とりあえず私への日頃の感謝を言ってみるアル!」

「わん!」


吹き飛ばされた銀時はひっかかれた跡を痛々しく残す頬に手を当て声を荒げた。
雪はそんな銀時に『まあ確かにご主人様は銀さんだろうけど、あんた可愛がるばっかりで何もしてないですよね…』と心の中で呟く。
散歩は大体神楽がし、エサは大体雪がしている。
まあ、雪が思っている通り家の大黒柱である銀時が動物でいえばリーダーの位置にいるため何も言わないが。
神楽も三人の中で一番可愛がっていると自負しているからか得意げに銀時を見下ろした後定春の前に立った。
銀時の時とは違いすぐに鳴いてくれた定春だったのだが…



『お前7位だったな、ジャンプの人気投票』



という文字が出てきた。


「てめエエエエエ!!なんでそんなこと知ってんだアアアア!!!」


古傷をえぐられた神楽は苛立ちに拳を上げそうになる。
しかしそれに気づいた雪に止められ不発に終わった。
そして最後に残ったのは、雪である。


「しょうがないなぁ、なんだかんだ言って定春の世話をしてるの私だしね…さあ、定春?私の言う事は聞いてくれるよね?」

「わん!」


雪は散歩以外の事は大抵していると自負していた。
エサだけではなく排泄物の掃除や寝床の掃除まで色々としていると自負していた。
だから二人より少し自信はあった。
あったの、だが…


『お前という女を常日頃観察した結果を述べる。お前セクハラだセクハラだという割にはこの男にはっきりと断りを入れるでもなく受け入れるでもなく曖昧にしうやむやにしてるがその態度はどうかと俺は思う。こいつらを調子づかせてるのは周りではなく、お前自身だ。お前自身が曖昧に流しているからあいつらは調子にのってセクハラしまくりなんだろうが。セクハラ発言や行為はお前自身が招いた種だろ。』

「す…すみません……」


説教されてしまった。
長々とした文字に突っ込む前に雪は思わず謝ってしまう。


2 / 8
| back |
しおりを挟む