(5 / 8) 愛犬の散歩は適度なスピードで (5)
2人の新たなキャラクターの登場に銀時は目を見張っていた。


「あれ…阿音さんじゃないですか!?」

「あら、そういうあなたはお雪さんじゃない。」


しかし隣にいた雪の驚きの声にハッと我に返り雪を見る。
雪は銀時の視線に気づかず銀時同様驚いたような表情を浮かべ阿音と名乗った女性に声をかけた。
雪と阿音の会話からどうやら知り合いだという事は伺え、銀時はとりあえず説明を求める。


「えっと…雪?これは一体どういう…お知り合い?」

「あ!すみません!!…えっと、阿音さんはスマイルで働いててそこで知り合いました」

「え、スマイルって…あそこだよね?キャバクラだよね?いいの?巫女がそんなとこ居ていいの?」

「しょうがないでしょう!色々事情があって巫女だけで食っていけないんだから!!」

「にしても…穢れた巫女とか…」

「ああ!?なんか文句でもあるわけ!?巫女ってだけで食ってけるなら私だってそうしてるっつーの!!」


説明を求めてみれば、阿音という女性の方だけを知っているようで、その人は雪がたまに働くキャバクラであるスマイルのキャバ嬢らしい。
その説明を聞いたとき、銀時は『えっ』と思い阿音を見る。
先ほど"巫女"とはっきりと言っていた記憶はまだ新しい。
と、いう事は、だ。
巫女がキャバ嬢をしているという事実に流石に銀時も驚かざるを得ない。
雪も雪で『まさか本物の巫女さんだったんですねぇ』とキャラづくりだと思っていたのかのほほんと驚いていた。

とりあえず、のほほんとする暇はなく、説明は移動しながらという言葉を信じて
銀時と雪は原チャリで移動していた。
いつも通り銀時の後ろに乗り、謎の(自称)美人姉妹の後を追うように銀時は雪が乗り腰に腕を回すのを確認した後原チャリを動かす。
暫く走っていると街中に入り、どこかで爆発音が鳴り響いた。
その音へと目線を向ければ大きな煙が上がっているのが見える。
当然騒動の中心には定春や神楽がいるのが目に見えており雪の顔には焦りが浮かぶ。


「な、なんかえらい事になってますよ!?どうしよう!銀さん!!」

「心配するな雪…俺達は捨て犬を育てた善良な市民だ、罪は無い。」


大きな煙が上がっているという事は、被害も相当なものというもの。
その原因を作った一員として雪は顔を青ざめる。
銀時のフォローもあまり利かなかった。


「狛神は龍穴という大地の気の流れが噴出する穴…中でももっとも大きな穴、黄龍門を守る神の子なのです」

「おいおい!いきなり出てきて何わけのわからねえこと言ってんだ!肛門の話ならよそでやってくれ!」

「誰もそんな話してねえよ!!」


心配性な雪に内心銀時は苦笑いを浮かべていると、突然隣で走っていた(自称)美人姉妹の姉である阿音が語り出した。
下ネタに走る銀時に負けずに阿音はつづける。
2人の話によれば、阿音と百音は代々続く由緒ある本物の巫女らしい。
巫女である二人は黄龍門を守っていたが、戦争で幕府が敗れた際その黄龍門の上にターミナルを立てたせいで仕事も無くなり、それで仕方なくキャバ嬢をしているという話しを聞いたのだが、雪は心の中で『仕方なくっていうかあんた結構ノリノリだったよね…』とは思っているようで思っていないようで、思っていたりもする。


「それで…なんで定春があんなになってしまったんですか?」

「狛神は大人しい生き物ですが、一度力を解き放つと恐るべき獣神へと姿を変えてしまいます…でも儀式も行わずに覚醒なんて…」

「儀式って…」

「"紅き果実と山羊の血を与えん…さすれば神子の力、解き放たれり"」

「紅き果実と山羊の血?」

「山羊の血っていうか乳よ…ようは牛乳よ。」

「果実は…イチゴとかやってましたわね、腐りかけたやっすいやつ。」

「…………」

「…………」


説明は大方分かったが、だからと言って定春があんな姿になった理由が見当たらない。
もしかしたら黄龍門と何か関係があったのかもしれないと思っていた。
だが、言い伝えで伝わっている言葉を簡単に訳した阿音や百音に雪も銀時も『ん?』と思った。


「……いちごと」

「……牛乳」

「…………」

「…………」

「いちご」

「ぎゅうにゅう」

「…………」

「…………」


心当たりはあった。
物凄くあった。
ありすぎてそれ以外見当たらなかった。

いちご牛乳……それは定春も飲んだことある飲み物だった。


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