銀時に助けを願い、銀時の顔を思い浮かべ、雪は寂しさに涙を流し、そして――――
「どうにか脱出できないものか…」
脱出方法を目論んでいた。
あれから自分の危機的状況にポロポロと涙を流していた雪だったが、いつまでも泣いていても仕方ないと思い始める。
それは万事屋で働きだして図太いあの二人に感化され似てしまったのかもしれない。
とりあえず部屋を見て回る事にする。
荒くれの過激派攘夷浪士を率いている高杉の部屋が狭いわけがなく、だが船なのでそう広くはなく、それなりに窮屈しないですむ部屋ではあった。
タンスやら窓やらと調べてもやはり脱出できる場所は見当たらない。
窓も全部格子がつけられ、どんよりとし雨が降り始めた空が余計に狭く感じ、雨が降っている光景でも勿体なく感じる。
窓が駄目なら出入り口のドアなら、と思ったが、試すまでもなく鍵がかかっているのは音で聴いて分かっているので試すことはない。
しかし外の様子を伺うべくドアに耳を当ててみると音は小さいが拾える事を発見した。
(晋さま…ドアに二人の見張りつけてる……どうしよう……あ、でも誰もいないよりはいいかも…)
ドアの両側に誰かが立って会話しているのが聞こえた。
その内容はどうやら高杉の女…自分の事らしい。
話からして攘夷浪士たちも雪の顔は見た事がなく、暇なのかその女の容姿を言い当てようとしていた。
よっぽど暇なのか、無駄な会話をする中で、雪は辻斬りがあの岡田似蔵だと知り、そして紅桜というものも知る。
まだ銀時が繋がっているとまでは聞けなかったが、雪は辻斬りがあの岡田と知り驚きが隠せなかった。
しかもあの岡田が桂を斬ったと言うではないか。
「……晋さまが桂さんを殺そうとした…?」
見張りの話を聞いて雪はそう思ったが、どうも納得ができなかった。
狂ってしまった理由は分からないが、高杉は確かにこの江戸を、この国を壊そうとしているらしい。
それは恐らく本気なのだろう。
そのためならばかつての同志達をも殺すつもりであるだろう。
しかし、理由は分からないが桂を辻斬りさせるというのは雪の中でどうも納得がいかない事だった。
それは見張りの話でどうやら岡田が勝手にやった事だと知り、雪はホッと胸を撫で下ろす。
しかし、安心するのは良いが、このまま見張りの暇つぶしである会話を聞いていても埒が明かないのは確かである。
このまま大人しくしていると高杉に叱られることもなければ殺されることもないだろう。
だが、その代わり江戸から離れて姉と離れ離れになり、そして神楽とも会えず……銀時にも、会えないという事になる。
雪は姉や神楽達を思い浮かべ、そして銀時の姿を思い浮かべると、胸が温かくなるのを感じる。
「……銀さん…」
銀時を思い浮かべれば思い浮かべるほど…雪は安心出来た。
それはきっと…そう、きっと不安だから、と雪は思う事にする。
そうしないと彼への想いを自覚してしまうのを分かっていたのだろう。
正直愛だの恋だの雪には分からなくて、過去が過去だから勇気がなくて、彼への愛を押しつぶそうとしているのだ。
雪は目を瞑り銀時と、そして神楽、姉の妙を思い浮かべ、彼等に勇気を貰う。
そして…雪は胸元の着物に手を伸ばし、バッと大胆に開き―――
「―――きゃあああ!!!」
雪は胸だけではなく寝間着の着物を思いっきり肌蹴、部屋の奥で悲鳴を上げる。
すると見張っていた攘夷浪士の二人がその悲鳴を聞きつけて入ってきた。
2人は見張りだけではなく雪の監視や護衛も補っているらしい。
「どうした!!」
刀を手にかけながら二人は鍵を解除し入り、薄暗い中二人は倒れ込んでいる雪に駆け寄った。
襲撃があったかと部屋を見渡しても部屋が散らかっていることもなければ雨で塗れているというのもない。
怪訝としながらも二人は雪を見下ろす。
雪はうるうると濡れた目で二人を見上げ、肌蹴た若い肌が二人の目をくぎ付けにさせる。
胸がギリギリなところで肌蹴、足も惜しげもなく放り出されているその状態に二人の欲が湧き上がる。
だが、相手は高杉の女…そう頭で理解している二人は安易に欲に駆られて襲う事はなかったが…隙が大きく生まれる。
「ひ、人が…!」
雪は怯えた演技をして適当な場所を指さす。
侵入された形跡はないが雪が怯えているので取り合えず調べることにし、一人が背を向けて部屋を探す。
もう一人は雪の護衛という意味で傍にいたが、雪のあられもない姿にくぎ付けだった。
男のねっとりとした目線を感じながら雪はその護衛の男をどう視線を逸らせるか考え、雪は恥じらったように肌蹴た寝間着の着物を整える。
「あの…あまり見ないでください…」
「す、すまない…!」
気恥ずかしそうに頬を染めて肌蹴た部分を整えれば、護衛の男は見ないようにしてくれた。
しかしその気遣いが仇となる。
雪は目を逸らした男の隙をついて力一杯男の腹を蹴る。
『ぐ、』と声を零して突然の蹴りに受け身も取れなかった男は吹き飛んでしまう。
その音に当然気づく見て回っていた男はすぐに振り返ったが、吹き飛んだ男から刀を奪った雪はその男に鞘がついたままで男の頭を刀を叩きつける。
逃げる為に力の加減をせず何度も殴ったせいか気を失った男に雪は次は吹き飛ばした男へと向けて同じく頭を何度も殴る。
起き上がりかけていた護衛していた男もまた、見回っていた男と同じく気を失った。
雪は刀を手にしたまま着物を整えそのまま部屋を出る。
その時にちゃんと扉を閉めて鍵をかけるのを忘れずにし、見つからないように静かに船内を隠れながら出口を探した。
(まだ空を飛んでないなら逃げれる!!最悪海に逃げ込めばいいし…何とかなる!!と、思いたい…)
雪は道場で剣道を学んだだけで銀時や神楽のように戦いに慣れているわけではない。
彼等と一緒に行動するようになって腕は多少上がっているが、やはり周りが化け物過ぎて自分の腕はまだまだなのだ。
真剣の重さに多少不安が煽られるが、人を斬るという選択肢は持っていないため、どうにか鞘を収めたまま済めばいいかなと思っていた。
船内から出ることに成功した雪は後はそのまま海に飛び込むか、どこか脱出経路を見つけるかと悩んでいると、見慣れた赤い服の少女を発見する。
「あれ…神楽ちゃん…?」
その少女は、同じ万事屋で働く夜兎族である神楽だった。
神楽はこちらに気付いていないようすで、雪が声を掛ける前に物陰から出て船首へ向かう。
それを何となく見送っていると、雪は目を見張った。
「おい、お前…この船の船員アルか?ちょいと中案内してもらえねェか…―――頭ブチ抜かれたくなかったらな」
雪の目に映つるのは大きな月。
そしてその月に照らされているその人物に神楽は傘を突きつけた。
その人物は夜となって暗くても雪にはすぐに分かり、だからこそ神楽の行動に冷や汗を流した。
その人物とは…
「今日はまた…随分とでけえ月が出てるな……かぐや姫でも降りてきそうな夜だと思ったが……とんだじゃじゃ馬姫が降りてきたもんだ…」
高杉晋助であった。
高杉は背を向けていたが神楽の脅しの言葉に振り返り、煙管の煙を吐き出し、そして――ニタリと笑う。
その笑みや気配から神楽は高杉がその辺の雑魚やモブと違うと察した。
(―――ッやばい…!こいつ…ヤバイ匂いがするアル…ッ!)
夜兎の血なのだろう…高杉が危険な男だと気づき、神楽は背筋に冷たい何かが走る。
高杉にぞっとさせる神楽だったが、背後からの殺気にすぐに気づき咄嗟に飛び退いて避ける。
するとどこからともなく銃弾が放たれた。
雪がその銃弾が放たれた方へと見れば、船の屋根の上に人影が見えた。
そこにはちょっと露出の高い赤い着物を着た女性がいた。
神楽も銃弾を交わしながらも傘に搭載されている銃で反撃をする。
足場を撃たれた女性はそのまま飛び上がる。
それを見ていた雪は神楽の危機に体が勝手に動いた。
女性が落下したし衝撃で砂埃が舞い上がり、2人の姿は隠れた。
高杉は黙って二人を見ていたが…―――砂埃が晴れ、2人の間にいる少女…雪の姿に微かに目を見張る。
「なッ―――お前は…!!」
「雪!?」
二人もお互い砂埃で見えず、晴れたその瞬間、自分たちの間にいる人物にお互い目を見張った。
女性は話に聞いていただけの慕う男性が女と呼んだ存在に、そして神楽は別れたきりだった同僚の存在に…驚いていた。
雪はあの時、体が勝手に動き砂埃の中でも倒れる神楽に銃を向ける女性と、倒れる神楽の間に入り、神楽を覆うように入っていた。
雪は女に背を向け、神楽を抱きしめて庇っていた。
「お前…っ!なんでここにいるっすか!!?」
女性は侵入者を庇う高杉の女に銃を向けたが、撃つつもりはない。
ただの脅しであるが、正直撃っても構わないと思っていた。
慕う高杉が自分の女と望んだ存在を疎ましく思い、嫉妬するのは当たり前の事で、正直雪を連れていくのも反対ではあった。
雪は高杉が自分の女と呼び攫った存在。
高杉の目の前で怪我一つでも負わせるとどうなるか…結末は目に見えて分かっているのだ。
だからこの銃は脅しだった。
それを雪も分かっているのか、神楽を隠すように抱きしめ、睨むように背後にいる女性を見上げていた。
「雪…!?なんでここにいるネ!!」
「神楽ちゃんこそなんでここに?桂さんを探してたんじゃ…」
「ヅラを探してたらここに辿りついたネ…雪だってヅラを探してたはずじゃないアルか?なのになんでこんなところにいて、なんで寝間着に着替えてるネ!!」
「ゔ…それは、まあ…色々ありまして…」
「なんネ、色々って…話すヨロシ!サボってるわけじゃないなら話せるアル!!」
神楽も雪を抱きしめられながらこちらに銃を向ける女に銃を構える。
もはやそれは本能としかいいようがなく、その脳は雪の姿に驚いていた。
桂を探すために別れた雪。
その雪が自分と同じくここにたどり着いたのなら話は分かるが、雪の格好を見ているとそうとは思えなかった。
恐らく、何となくだが…神楽も何となく分かっているのだろう。
だけど彼女はまだ少女と言える年齢。
大人ぶってはいるがまだそういう事には疎いのだ。
それに母と慕う雪が銀時以外にそういう事をされたのも、そして無理矢理でもしたということも、受け入れがたい事なのだろう。
彼女は何だかんだ言って男の欲とは無関係に生きてきたのだから余計に。
「――そいつは俺の女だ…返しな、小娘」
「…!!」
今まで黙って見ていた高杉の声が、神楽達の耳に入る。
神楽は倒れており雪が押し倒しているため、高杉を見るには顔を上に向けなければならない。
視界にはいる高杉の姿が上下逆になっているが、神楽は高杉のその言葉に銃を彼に向けようとした。
しかしそれを察した女が神楽に向かって威嚇の意味で当てはしないが撃った。
高杉に意識を向けていた神楽は再び女へ向け、高杉に構えていた銃を再び女に向ける。
自分を押し倒している雪の体が少し震えているのを見て、神楽は床に放り出している傘を持っていない方の手を雪の腰に回し、守る様に雪の着物を握りしめた。
腰を引き寄せれば密着する雪の匂いを嗅いで神楽は不思議と冷静になれた。
頭に血が上ったとはいえあの警戒すべき高杉に銃を向けた事にちょっぴり反省していると女が殺さんばかりにこちらを睨みつけて来た。
「貴様ァァ!何者だァァ!!晋助様を襲撃するとは絶対許さないっす!銃をおろせ! この来島また子の早撃ちに勝てると思ってんスかァ!?」
女…また子は高杉を襲うとした神楽に怒りを覚えていた。
怒りのまま叫べば、神楽はニッと笑って見せる。
「また子股見えてるヨ、染み付きパンツが丸見えネ!」
「か、神楽ちゃん!?女の子がそんな事言うんじゃありませんっ!!」
元の調子に戻った神楽はあからさまな挑発をする。
それに敵陣にいてどちらかと言えばこちらが不利な状況下でありながらもニタニタと笑って挑発する神楽に雪は慌てた。
『めっ!』といつも通り踊ればニタついた顔で神楽は『だって本当の事だもんネ』と雪ではなく、また子にベッと舌を出す。
それにまた子の額に青筋が立てながら神楽に嘲笑を浮かべる。
「甘いな注意を逸らすつもりか!―――そんなん絶対ないもん!毎日取り替えてるもん!」
「いやいや、ついてるヨ…きったねえなァ〜!また子の股は染みだらけ〜!」
「貴様ァァ!!これ以上晋助様の前で侮辱することは許さないっす!!晋助様ァ!違うんす!本当!毎日取り換えてますから確認してくださ―――」
また子は神楽の魂胆など分かり切ってはいたが、その挑発に乗ってしまった。
雪は挑発し下品な言葉を連発する神楽に『か、神楽ちゃんンンンン!!』と叫んだが、その瞬間、神楽に横へ引っ張られた。
ゴロンと床に降ろされた雪が顔を上げた時、すでに脱ごうとしていたまた子の顔を神楽が蹴り飛ばしたところだった。
「どうにか脱出できないものか…」
脱出方法を目論んでいた。
あれから自分の危機的状況にポロポロと涙を流していた雪だったが、いつまでも泣いていても仕方ないと思い始める。
それは万事屋で働きだして図太いあの二人に感化され似てしまったのかもしれない。
とりあえず部屋を見て回る事にする。
荒くれの過激派攘夷浪士を率いている高杉の部屋が狭いわけがなく、だが船なのでそう広くはなく、それなりに窮屈しないですむ部屋ではあった。
タンスやら窓やらと調べてもやはり脱出できる場所は見当たらない。
窓も全部格子がつけられ、どんよりとし雨が降り始めた空が余計に狭く感じ、雨が降っている光景でも勿体なく感じる。
窓が駄目なら出入り口のドアなら、と思ったが、試すまでもなく鍵がかかっているのは音で聴いて分かっているので試すことはない。
しかし外の様子を伺うべくドアに耳を当ててみると音は小さいが拾える事を発見した。
(晋さま…ドアに二人の見張りつけてる……どうしよう……あ、でも誰もいないよりはいいかも…)
ドアの両側に誰かが立って会話しているのが聞こえた。
その内容はどうやら高杉の女…自分の事らしい。
話からして攘夷浪士たちも雪の顔は見た事がなく、暇なのかその女の容姿を言い当てようとしていた。
よっぽど暇なのか、無駄な会話をする中で、雪は辻斬りがあの岡田似蔵だと知り、そして紅桜というものも知る。
まだ銀時が繋がっているとまでは聞けなかったが、雪は辻斬りがあの岡田と知り驚きが隠せなかった。
しかもあの岡田が桂を斬ったと言うではないか。
「……晋さまが桂さんを殺そうとした…?」
見張りの話を聞いて雪はそう思ったが、どうも納得ができなかった。
狂ってしまった理由は分からないが、高杉は確かにこの江戸を、この国を壊そうとしているらしい。
それは恐らく本気なのだろう。
そのためならばかつての同志達をも殺すつもりであるだろう。
しかし、理由は分からないが桂を辻斬りさせるというのは雪の中でどうも納得がいかない事だった。
それは見張りの話でどうやら岡田が勝手にやった事だと知り、雪はホッと胸を撫で下ろす。
しかし、安心するのは良いが、このまま見張りの暇つぶしである会話を聞いていても埒が明かないのは確かである。
このまま大人しくしていると高杉に叱られることもなければ殺されることもないだろう。
だが、その代わり江戸から離れて姉と離れ離れになり、そして神楽とも会えず……銀時にも、会えないという事になる。
雪は姉や神楽達を思い浮かべ、そして銀時の姿を思い浮かべると、胸が温かくなるのを感じる。
「……銀さん…」
銀時を思い浮かべれば思い浮かべるほど…雪は安心出来た。
それはきっと…そう、きっと不安だから、と雪は思う事にする。
そうしないと彼への想いを自覚してしまうのを分かっていたのだろう。
正直愛だの恋だの雪には分からなくて、過去が過去だから勇気がなくて、彼への愛を押しつぶそうとしているのだ。
雪は目を瞑り銀時と、そして神楽、姉の妙を思い浮かべ、彼等に勇気を貰う。
そして…雪は胸元の着物に手を伸ばし、バッと大胆に開き―――
「―――きゃあああ!!!」
雪は胸だけではなく寝間着の着物を思いっきり肌蹴、部屋の奥で悲鳴を上げる。
すると見張っていた攘夷浪士の二人がその悲鳴を聞きつけて入ってきた。
2人は見張りだけではなく雪の監視や護衛も補っているらしい。
「どうした!!」
刀を手にかけながら二人は鍵を解除し入り、薄暗い中二人は倒れ込んでいる雪に駆け寄った。
襲撃があったかと部屋を見渡しても部屋が散らかっていることもなければ雨で塗れているというのもない。
怪訝としながらも二人は雪を見下ろす。
雪はうるうると濡れた目で二人を見上げ、肌蹴た若い肌が二人の目をくぎ付けにさせる。
胸がギリギリなところで肌蹴、足も惜しげもなく放り出されているその状態に二人の欲が湧き上がる。
だが、相手は高杉の女…そう頭で理解している二人は安易に欲に駆られて襲う事はなかったが…隙が大きく生まれる。
「ひ、人が…!」
雪は怯えた演技をして適当な場所を指さす。
侵入された形跡はないが雪が怯えているので取り合えず調べることにし、一人が背を向けて部屋を探す。
もう一人は雪の護衛という意味で傍にいたが、雪のあられもない姿にくぎ付けだった。
男のねっとりとした目線を感じながら雪はその護衛の男をどう視線を逸らせるか考え、雪は恥じらったように肌蹴た寝間着の着物を整える。
「あの…あまり見ないでください…」
「す、すまない…!」
気恥ずかしそうに頬を染めて肌蹴た部分を整えれば、護衛の男は見ないようにしてくれた。
しかしその気遣いが仇となる。
雪は目を逸らした男の隙をついて力一杯男の腹を蹴る。
『ぐ、』と声を零して突然の蹴りに受け身も取れなかった男は吹き飛んでしまう。
その音に当然気づく見て回っていた男はすぐに振り返ったが、吹き飛んだ男から刀を奪った雪はその男に鞘がついたままで男の頭を刀を叩きつける。
逃げる為に力の加減をせず何度も殴ったせいか気を失った男に雪は次は吹き飛ばした男へと向けて同じく頭を何度も殴る。
起き上がりかけていた護衛していた男もまた、見回っていた男と同じく気を失った。
雪は刀を手にしたまま着物を整えそのまま部屋を出る。
その時にちゃんと扉を閉めて鍵をかけるのを忘れずにし、見つからないように静かに船内を隠れながら出口を探した。
(まだ空を飛んでないなら逃げれる!!最悪海に逃げ込めばいいし…何とかなる!!と、思いたい…)
雪は道場で剣道を学んだだけで銀時や神楽のように戦いに慣れているわけではない。
彼等と一緒に行動するようになって腕は多少上がっているが、やはり周りが化け物過ぎて自分の腕はまだまだなのだ。
真剣の重さに多少不安が煽られるが、人を斬るという選択肢は持っていないため、どうにか鞘を収めたまま済めばいいかなと思っていた。
船内から出ることに成功した雪は後はそのまま海に飛び込むか、どこか脱出経路を見つけるかと悩んでいると、見慣れた赤い服の少女を発見する。
「あれ…神楽ちゃん…?」
その少女は、同じ万事屋で働く夜兎族である神楽だった。
神楽はこちらに気付いていないようすで、雪が声を掛ける前に物陰から出て船首へ向かう。
それを何となく見送っていると、雪は目を見張った。
「おい、お前…この船の船員アルか?ちょいと中案内してもらえねェか…―――頭ブチ抜かれたくなかったらな」
雪の目に映つるのは大きな月。
そしてその月に照らされているその人物に神楽は傘を突きつけた。
その人物は夜となって暗くても雪にはすぐに分かり、だからこそ神楽の行動に冷や汗を流した。
その人物とは…
「今日はまた…随分とでけえ月が出てるな……かぐや姫でも降りてきそうな夜だと思ったが……とんだじゃじゃ馬姫が降りてきたもんだ…」
高杉晋助であった。
高杉は背を向けていたが神楽の脅しの言葉に振り返り、煙管の煙を吐き出し、そして――ニタリと笑う。
その笑みや気配から神楽は高杉がその辺の雑魚やモブと違うと察した。
(―――ッやばい…!こいつ…ヤバイ匂いがするアル…ッ!)
夜兎の血なのだろう…高杉が危険な男だと気づき、神楽は背筋に冷たい何かが走る。
高杉にぞっとさせる神楽だったが、背後からの殺気にすぐに気づき咄嗟に飛び退いて避ける。
するとどこからともなく銃弾が放たれた。
雪がその銃弾が放たれた方へと見れば、船の屋根の上に人影が見えた。
そこにはちょっと露出の高い赤い着物を着た女性がいた。
神楽も銃弾を交わしながらも傘に搭載されている銃で反撃をする。
足場を撃たれた女性はそのまま飛び上がる。
それを見ていた雪は神楽の危機に体が勝手に動いた。
女性が落下したし衝撃で砂埃が舞い上がり、2人の姿は隠れた。
高杉は黙って二人を見ていたが…―――砂埃が晴れ、2人の間にいる少女…雪の姿に微かに目を見張る。
「なッ―――お前は…!!」
「雪!?」
二人もお互い砂埃で見えず、晴れたその瞬間、自分たちの間にいる人物にお互い目を見張った。
女性は話に聞いていただけの慕う男性が女と呼んだ存在に、そして神楽は別れたきりだった同僚の存在に…驚いていた。
雪はあの時、体が勝手に動き砂埃の中でも倒れる神楽に銃を向ける女性と、倒れる神楽の間に入り、神楽を覆うように入っていた。
雪は女に背を向け、神楽を抱きしめて庇っていた。
「お前…っ!なんでここにいるっすか!!?」
女性は侵入者を庇う高杉の女に銃を向けたが、撃つつもりはない。
ただの脅しであるが、正直撃っても構わないと思っていた。
慕う高杉が自分の女と望んだ存在を疎ましく思い、嫉妬するのは当たり前の事で、正直雪を連れていくのも反対ではあった。
雪は高杉が自分の女と呼び攫った存在。
高杉の目の前で怪我一つでも負わせるとどうなるか…結末は目に見えて分かっているのだ。
だからこの銃は脅しだった。
それを雪も分かっているのか、神楽を隠すように抱きしめ、睨むように背後にいる女性を見上げていた。
「雪…!?なんでここにいるネ!!」
「神楽ちゃんこそなんでここに?桂さんを探してたんじゃ…」
「ヅラを探してたらここに辿りついたネ…雪だってヅラを探してたはずじゃないアルか?なのになんでこんなところにいて、なんで寝間着に着替えてるネ!!」
「ゔ…それは、まあ…色々ありまして…」
「なんネ、色々って…話すヨロシ!サボってるわけじゃないなら話せるアル!!」
神楽も雪を抱きしめられながらこちらに銃を向ける女に銃を構える。
もはやそれは本能としかいいようがなく、その脳は雪の姿に驚いていた。
桂を探すために別れた雪。
その雪が自分と同じくここにたどり着いたのなら話は分かるが、雪の格好を見ているとそうとは思えなかった。
恐らく、何となくだが…神楽も何となく分かっているのだろう。
だけど彼女はまだ少女と言える年齢。
大人ぶってはいるがまだそういう事には疎いのだ。
それに母と慕う雪が銀時以外にそういう事をされたのも、そして無理矢理でもしたということも、受け入れがたい事なのだろう。
彼女は何だかんだ言って男の欲とは無関係に生きてきたのだから余計に。
「――そいつは俺の女だ…返しな、小娘」
「…!!」
今まで黙って見ていた高杉の声が、神楽達の耳に入る。
神楽は倒れており雪が押し倒しているため、高杉を見るには顔を上に向けなければならない。
視界にはいる高杉の姿が上下逆になっているが、神楽は高杉のその言葉に銃を彼に向けようとした。
しかしそれを察した女が神楽に向かって威嚇の意味で当てはしないが撃った。
高杉に意識を向けていた神楽は再び女へ向け、高杉に構えていた銃を再び女に向ける。
自分を押し倒している雪の体が少し震えているのを見て、神楽は床に放り出している傘を持っていない方の手を雪の腰に回し、守る様に雪の着物を握りしめた。
腰を引き寄せれば密着する雪の匂いを嗅いで神楽は不思議と冷静になれた。
頭に血が上ったとはいえあの警戒すべき高杉に銃を向けた事にちょっぴり反省していると女が殺さんばかりにこちらを睨みつけて来た。
「貴様ァァ!何者だァァ!!晋助様を襲撃するとは絶対許さないっす!銃をおろせ! この来島また子の早撃ちに勝てると思ってんスかァ!?」
女…また子は高杉を襲うとした神楽に怒りを覚えていた。
怒りのまま叫べば、神楽はニッと笑って見せる。
「また子股見えてるヨ、染み付きパンツが丸見えネ!」
「か、神楽ちゃん!?女の子がそんな事言うんじゃありませんっ!!」
元の調子に戻った神楽はあからさまな挑発をする。
それに敵陣にいてどちらかと言えばこちらが不利な状況下でありながらもニタニタと笑って挑発する神楽に雪は慌てた。
『めっ!』といつも通り踊ればニタついた顔で神楽は『だって本当の事だもんネ』と雪ではなく、また子にベッと舌を出す。
それにまた子の額に青筋が立てながら神楽に嘲笑を浮かべる。
「甘いな注意を逸らすつもりか!―――そんなん絶対ないもん!毎日取り替えてるもん!」
「いやいや、ついてるヨ…きったねえなァ〜!また子の股は染みだらけ〜!」
「貴様ァァ!!これ以上晋助様の前で侮辱することは許さないっす!!晋助様ァ!違うんす!本当!毎日取り換えてますから確認してくださ―――」
また子は神楽の魂胆など分かり切ってはいたが、その挑発に乗ってしまった。
雪は挑発し下品な言葉を連発する神楽に『か、神楽ちゃんンンンン!!』と叫んだが、その瞬間、神楽に横へ引っ張られた。
ゴロンと床に降ろされた雪が顔を上げた時、すでに脱ごうとしていたまた子の顔を神楽が蹴り飛ばしたところだった。
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