(15 / 16) 紅桜篇 (15)
桂の後を追って神楽は船内に入り、因縁のまた子との対決をしていた。
その途中いつの間に来ていたらしい銀時が紅桜に乗っ取られすでに意識を失っていた岡田に押さえつけられながら上から落ちて来た。
岡田は味方も判別が出来ないのかまた子を倒したのは神楽ではなく岡田だった。
岡田は結局倒されたが、問題はまだった。
宇宙海賊春雨の登場である。


「銀ちゃん!!私雪を掻っ攫いに行ってくるアル!!」

「は?雪?え、なに…雪いんの?雪、ここにいんの!?」

「雪はあの男と一緒に行くつもりアル!!でもそんなのテントウムシ様が許してもこの歌舞伎町の女王である神楽様が許さないネ!!勝手に万事屋を抜けようとした馬鹿を一発殴ってやらないと気が済まないアル!!」

「テントウムシじゃなくてお天道様だろ…っていうか、おい…あの男って誰だよ…あれか?高がついて杉がつくあいつか!?ちょっとちょっとおいおいおい!!銀さん全然分からないんだけど!!ちょっと一から説明してくれない!?」

「そんな暇ないネ!!」

「ちょっとオオオ!?神楽ちゃアアん!?銀さん置いて突っ走るのやめてくんないイイイ!?―――ってかヒロインを救うのは普通ヒーローの役目だろうが!!その役目俺だろうが!!そして助けた雪ちゃんに惚れられるのも俺だろうが!!」

「銀ちゃんじゃ役不足ヨ!!ヒーローは常に私アル!!私なくして銀魂は成り立たないアルよオオオ」

「っておいイイイ!!だからって単体で敵陣に突っ込む馬鹿がいるかアアアアア!!!」


外に出たのは良いが、春雨から増援で戦力は大きく差が出来てしまった。
岡田と二回に渡って戦い深手を負っている銀時を鉄子が肩を貸してやり、襲ってくる敵を神楽が伸していき外へ出る。
外に出てまた子と岡田も倒したため、神楽は雪を救いに…いや、攫いに行こうとした。
銀時はここで初めて雪もこの船にいることを知り驚いてしまったが、そんな驚きが隠せない銀時などよそに神楽は『じゃあ行ってくるアル!』と言って来た道を戻り船内へ戻っていった。
銀時もそれに追おうとしたが、敵が襲ってきたため、追いたくても追いかけられない状態となる。
『あんの馬鹿娘が!!』と怒りに任せ次から次へ暇なく襲ってくる天人を斬って斬って斬りまくった。

――――そして、神楽は船内では見つけられず、春雨の船に侵入し雪の部屋を見つけ出したのだ。
雪は部屋の隅に立っていた。
神楽は中々見つからない雪に焦りを見せており、やっと見つけた雪にホッとさせる。
しかし…


「ロ、ロリコンさんンンン!!」


助けに来たというのに雪は自分ではなくロリコンだと叫んでいた。
意味の分からない事を叫ぶ雪に神楽はむっと頬を膨らませる。


「酷いネ雪!せっかく助けに来たっていうのに意味の分からない事を叫ぶなんて!!」

「いやいやいや!!意味わからなくないから!神楽ちゃん今自分が何を踏んでるか見ようよ!!」

「?」


雪はむすっとさせる神楽に思いっきり手を振って首をも振る。
意味が分かっていない神楽は下を見た。
その下にはいたって普通の艦隊の扉があるだけで何もない。
『何もないヨ!何ネ!さっきから!!』とぷんすこ怒れば雪から『いや、そうじゃなくて!下!扉の下!!』と叫ぶ。
扉の下、と言うので神楽は扉だった板をどかしてみる。
するとそこには一人の男が気を失っていた。
その男は雪の見張り兼護衛としてついていた武市だった。
チラリと気を失っている武市を見ればロリコンの彼はロリの神楽に踏まれ少し嬉しそうにしていた。
それを見た雪は『気持ち悪っ』と思い見なかったことにする。
神楽も同じことを思ったのかまた武市の上に板を置き雪に手を差し出した。
雪は手を差し出され、神楽の白い手から神楽へ目をやる。


「…帰るヨ、雪」

「神楽ちゃん…ごめんね」

「…なんで謝るアルか…なんで手を取ってくれないアルか!!なんで帰ろうって言ってくれないアルか!?雪はあっち側じゃなくてこっち側でしょ!!」


あっち、というのは高杉が率いている鬼兵隊側であり、こっち、とは万事屋の事だろう。
神楽の言葉に雪は反論ができない。
だって雪も今だって自分は万事屋だと思っているのだ。
だけど…雪もどうしてだか分からないが、高杉との約束を破る事が出来なかった。
神楽がもう高杉達に捕まっていないのに、どうしても高杉を置いて逃げることができなかった。
それはまだ高杉に対して未練があるのか、はたまた心から彼を愛しているのか…雪には分からない。
雪は何も言えず、曖昧で優柔不断な自分に気付かれたくなくてただ神楽の言葉に首を振った。
それを見て神楽はカチンと来た。


「じゃあもういいネ!!」


駄々っ子のように声を上げる神楽に俯く雪は神楽に見放されたと思った。
どちらかと言えば見放したのは雪なのに…勝手だが、彼女に見放されると心がズキリと痛く感じた。
身勝手だなァ、と自分に向かって嘲笑を浮かべていた雪だったが、俯き床を映していた視界に神楽が履いている赤い靴の先が見え顔を上げる。


「神楽ちゃ――――ッ!!?」


顔を上げれば目の前に神楽が立っていた。
神楽は去ったのではなく雪に歩み寄ったのだ。
雪は首を傾げていたが、神楽はむすっと不機嫌な顔を見せながら素早く雪の腰に巻かれている腰紐を解いてしゅるりと抜き取った。
唯一の紐がなくなったため雪の体が露わになる。
雪は声にならない悲鳴を上げ慌てて前を抑えたが、その両手を神楽に取られ、神楽は慣れた手つきで雪の両手首に腰紐をグルグルと適当に撒いてギュッと結び―――雪を拘束し、その腕力よろしく自分より背と体重がある雪を軽々と抱き上げた。


「か、かか…か、神楽ちゃん!?何してんの!?」

「雪をあんな奴なんかにやらないネ!だから無理矢理にでも連れていくネ!!」

「ま、待ってよ!私はもう…っ!」

「聞き分けのない奴の言葉なんか聞いてやらないネ!!雪は銀ちゃんの嫁で、私のマミーアル!!それ以外に何があるアルか!?」

「〜〜ッだから…!私は銀さんの嫁じゃないってば…ッ!!」

「じゃあ、雪は銀ちゃんの事、嫌いアルか?」

「―――っ!!」


神楽に抱き上げられ雪は荒れる寝間着を拘束された手で押さえて何とか大事なところは隠す。
女の子に抱き上げられ…それもお姫様抱っこされ、寝間着が際どくなり雪はここに神楽しかないないが顔を真っ赤にして羞恥に耐える。
しかし神楽の言葉に雪は顔を強張らせた。
神楽を見れば、彼女は不安そうな…悲し気な顔をしていた。
その顔を見て雪はグッと言葉を失い『そんな、顔…ずるいよ…神楽ちゃん…』と小さくつぶやいた。
それでも神楽は答えない雪に『どうあるか?』と問いただす。


「銀ちゃんの事、好きアルか?嫌いアルか?」


神楽のその問いに雪は息を詰まらせる。
そして雪は『ああ、そうか』と思った。
雪がなぜ神楽が無事なのに関わらず高杉から逃げない理由が自分でも分からなかったが、神楽がそれを気づかせてくれた。
雪は逃げようとしたのだ。
神楽のせいにして、高杉のせいにして…雪は銀時への感情を自覚するのを恐れて、高杉に全て擦り付けて逃げようとしたのだ。
雪は人に恋をするのが怖くてずっと誤魔化し続けてきた。
だけど、恋というものは隠し通せるものではなかった。
ずっと逃げて来た雪は、まるで神楽が作ってきた壁を壊してくれたように彼への想いがすっと入って受け入れた。


「………す、すき…です…」

「それは男としてアルか?兄貴分としてアルか?」

「………一人の男性として、すきです…」

「なら何も迷うことはないネ!!」


雪の言葉に神楽は嬉しそうにニッと笑う。
その笑顔があまりにも眩しすぎて雪は目を細め釣られたように笑った。


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