(7 / 11) その後 (7)
雪は山崎と2人で妙と神楽を寝かせ、鷹臣のいるであろう部屋へ向かう。
襖が開けられておりそこから顔を覗かせれば布団に座る銀時と障子に体を預ける鷹臣が見えた。
雪は銀時が目を覚ましているのを見て、彼に駆け寄った。


「銀さん!気が付いたんですね!良かった…」


トトト、と銀時へ一目散に向かう雪に山崎は微笑んだ。
『よほど心配してたんだなぁ』とほのぼのとしていると鷹臣が近づいてきて『そろそろお暇しようか』と声を掛けて来た。
山崎は退散するという言葉を鷹臣から聞き目を見張る。
まだストーカーすると思ったのだ。
それを読んだのか鷹臣は『だって流石に山ちゃんでも兄上とあのくのいちを一人で運べないでしょ?』という言葉に山崎は『兄と弟でこうも違うとは…』と思った。


「じゃあ、お雪さん、俺たちはここで…」

「あ、はい!あの、山崎さん、色々ご迷惑かけてごめんなさい!お2人共手伝ってくださってありがとうございました!」


玄関まで見送ってくれるという雪に二人は『いいよ』と言って断った。
部屋を出ていく二人に頭をさげて見送り、鷹臣は近藤を、山崎は猿飛を持って志村家を出て行った。
そして鉄子と出会い、山崎は作文を書きあげたのだ。





銀時は鷹臣の気配が消えたのを確認し、やっと体の力を抜ける。
鷹臣を銀時は心底恨んでいる。
だが、その恨みを晴らそうと思わなかった。
鷹臣は強い。
だから警戒していたのだ。


(これで一晩寝ればいつも通り、あいつをストーカーゴリラその2として扱えるだろうか…)


普段、銀時は鷹臣を眼中に入れていない。
それは見ないようにしているのもそうだが、何よりもう鷹臣と自分は敵ではないのだ。
あの時ははっきりと敵と味方と別れてしまったが、今はすでに終わったことである。
高杉のように執念深くはないが、銀時は桂の様に全て受け入れてはいない
だから鷹臣と馴れ馴れしく接する気は一切なかった。
お互い空気の様に扱うのが暗黙の了解になりつつある。
だけど、今は目を瞑れば過去の記憶が次から次と出てくる。
あの時の鷹臣と自分たちは友人のように笑い合い競い合っていた。
自分も高杉も桂も…目標は鷹臣だった。
鷹臣を倒して、そして鷹臣より強いあの人に勝つ事…それが三人共通の目標だったのだ。
銀時は懐かしい記憶を見たくなくて瞑っていた目を開ければ見慣れた志村家の襖が見えた。
布団の上に胡坐をかき、頬杖を突いてあくびをしながらストーカーゴリラとして扱えるかと思っていると『銀さん』と可愛らしい声で名前を呼ばれ、その声の方へ目だけを向ける。
そこには愛する少女…雪がおり、不思議と雪を見ると銀時の機嫌が直っていくのが分かった。
『末期だな』と先ほどまで不機嫌極まりなかった感情が一気に浮上しているのを感じ、銀時は苦笑いを浮かべながらこちらを大きなおめめで見つめてくる可愛い子に『なぁに、雪ちゃん』と頬杖を突きながら顔を雪に向ける。
何故かニヤついている銀時を不思議に思いながら雪は『ちゃんと寝てください』と零した。


「まだ怪我が完治していないんですから安静にしてください…お医者様もそうおっしゃっていたでしょう?」

「え〜でも超暇なんだけどぉ〜」

「そんな駄々を捏ねても駄目です!もう夜なんですから寝ちゃってください」

「雪ちゃんは?」

「私は銀さんが脱走しないか見張ってます」

「え、一晩中?朝まで?」

「はい」


胡坐をかき頬杖を突いて怠そうにこちらを見る銀時に雪は一切首を縦に振らなかった。
こうして胡坐をかく事も正直してほしくはない。
岡田につけられた傷はあちこちにあり、その傷は腹にもあるのだ。
刺されたのか深いその傷を負いながら戦っていたためか姉が治療してくれたのにまた開いてしまって医者にも安静を言い渡された。
少し怪しまれたが、あまり深くは聞かない医師を選んだのでそこは安心出来た。
腕はピカイチだが医師本人も若干闇医者家業もしているため真選組に報告などはしないだろう。
安静を言い渡されても銀時は動くのだから寝たからと言って安心はできない。
雪は見張る気でいると言うと頬杖をついたまま『ふーん』とニヤニヤと笑う。


「じゃあ、銀さんをずっと見張れる方法あるんだけど」

「え?何ですか、それ」

「セックス」

「…………」


ニヤニヤと笑うから少し警戒していたが、銀時の出た言葉に雪は半目で銀時を見つめ、そのニヤつく顔の頬を思いっきり抓ってやった。
抓れば銀時から『いだだだだ!』と声が上がり『ごめんなさい!ごめんなさい!調子に乗りました!!』とも声が上がった。
一応反省しているようなので手を放してやると銀時は抓られた頬を擦りながら恨めしそうにこちらを見る。


「んだよ〜!雪が言ったんだろ!?約束守ったらご褒美くれるって!」

「だからご褒美あげましたでしょ、さっき」

「ご褒美ってあれなの!?抓るのがご褒美なの!?雪ちゃん!?銀さんSだから!MじゃなくてSだからね!?抓られたって銀さんは『我々の業界ではご褒美です!ありがとうございます!!』とか言わないからね!?」


むすっとする雪に銀時はあの殿の際雪から『ちゃんと帰ってください』という言葉に約束したのだ。
約束ね、というものも指切りもなく、当たり前だと言っただけだが、それでも銀時と雪は約束を交わした。
死ぬ思いで帰ってきたというのにご褒美が頬を抓る事だと言う事に銀時は抗議した。
これがMの人間なら『ありがとうございます!』とでも言っただろうが、生憎と銀時はSでありMではない。
今度は銀時がむすっとさせ拗ねてしまい、雪は困ったように眉を下げ苦笑いを浮かべ、『銀さん』と呼ぶ。
そっぽを向いていた銀時はその声に振り返ると…雪から口づけを送られた。
しかしあの船の時と同じで銀時が驚いている間に雪はすぐに唇を離し銀時から離れようとした。
だが、二度目のそれに銀時はすぐに我に返り離れようとする雪の後ろ頭に手をやりグイッと引き寄せ銀時から口を塞いだ。
今度は雪が目を丸くする番で、驚いている隙に口内に銀時の舌が入ってくる。


「んっ、ふ、ぁ…ちょ、…まっ…待って…」

「まーたない。だって雪、ご褒美くれるんでしょ?」

「だ、だって…銀さん…怪我、してるし…駄目、です…」


いつの間にか引っ張り込まれ押し倒されてしまった雪は危機感を覚えた。
息遣いの合間に待ってもらうよう言えば止める気はないが銀時は覆い被っていた体を放す。
こちらを見上げる雪の顔は頬を染めており銀時とのキスでうっとりとしていてとても色っぽい。
濡れた目で見上げられ銀時はゴクリと喉を鳴らした。


「怪我が悪化しますから駄目です」

「でもよ〜銀さんはそのつもりで頑張ったんだけど?天人を斬って斬って斬ったのも雪ちゃんがご褒美くれるって信じてたから頑張れたんだけどな〜」

「でも駄目です。これだけは譲りませんよ…もしそれでもしたいっていうなら私の意志など関係なくどうぞご勝手にしてください。」

「お、まえねぇ…それってズルいんじゃねえの?」


銀時の欲情したオスの顔を見て、雪も体が熱くなるのを感じるが、それでも銀時は怪我を負っておりいくら雪が動くとしても負担が大きい。
銀時の負担を考えるとセックスはどうしてもする気が起きなかった。
諦めたように体の力を抜く雪の言葉に銀時は『うぐっ』と言葉を詰まらせた後、ガクリと雪の肩に埋めるように項垂れた。
銀時の零した言葉に雪はふと笑みを浮かべ、『ふふ、そうですか?』と返した。
雪も銀時が体に大きな傷がなければご褒美として銀時の好きにしてくれても構わないと思っているが、傷が開けば治る物も治らないではないか。
雪は肩に顔を埋める銀時の銀色の髪に触れる。
相変わらずふわふわしていて気持ちがよく、雪は撫でるように手を動かした。


「銀さん」

「んー?」

「今、出来なくてもいいじゃないですか」

「えー…今したいんだけど…」

「じゃあ、こういう考え方はどうですか?今我慢せず怪我を更に悪化させてセックスの回数を減らされるか、今我慢して怪我を完治させて沢山セックスできるのと…どっちがいいですか?」

「沢山えっちがしたいです」

「じゃあ、我慢しましょう?」

「ん…そうするわ…」


男の銀時には少々酷かもしれないが、雪はそれでも怪我を治してほしかった。
雪だって今すぐセックスしたいという気持ちは銀時と変わらないのに我慢しているのだ。
銀時は雪の提案を本能よりも理性が勝ったのか、それともこれは本能が勝ったと言っていいのか…なんとも男らしい返答に雪はくすりと笑った。
この場は我慢するという事で収まり雪は愛し気に銀時の髪を撫でる。


「でもご褒美が欲しいんだけど」

「え?だからご褒美は…」

「別にセックスがしたいってわけじゃねえよ…なあ、雪…俺さ、お前の全てが知りたいな」


銀時の言葉に雪は息を呑む。
全て…それは雪が遊女だったころも含めて、であろう。
銀時は何となく察してはいるが、まだ雪本人からその事を聞いていない。
本当なら雪から言いたいときに聞いてやるつもりだったが…高杉が知らない事を自分が知らないというのも面白くないと思った。
雪の息を呑む気配を感じながら銀時は体を起こし雪を見下ろす。
そして雪の顔の両脇に伸ばしていた手の片手をスッと雪の着物の半衿に入れ雪の肩を露わにさせる。
片側の肩を露わにさせる銀時に雪は顔を赤く染め胸元も露わになる前に着物を抑える。


「ぎ、銀さん?」

「ここの傷の事とか…"清花"とか、高杉との関係を聞きたい」

「…!」


そう言いながら露わになった肩にある刀傷を手でなぞり、そしてあからさまに付けられているキスマークにも触れた。
高杉と何かしら関係があるというのは薄々分かってはいたが、ここまであからさまに体の関係がありますよと言わんばかりの印に銀時はそこにも指を滑らせた。
体に咲くそれに銀時はまるで浮気を発見した夫のように不快感を積もらせる。
それでも雪の肌に触れ、好き合う前まで触れ合うことがなかった彼女の肌はとてもサラサラして柔らかく、女の体をしていた。
普段隠れている肌や胸元がさらけ出されているのを見て銀時はゾクリとさせる。
しかし約束した以上そういった意味合いで触れるのは控えるべきだと銀時は思ったが、片想いが通じたとなっては中々その熱は引いてくれない。
意味ありげに高杉につけられたであろうキスマークに指を滑らせながら銀時は隠している胸へと伸ばす。
銀時の手が押さえている手ごと着物を脱がそうとし雪はギョッとさせた。


「ぎ、銀さん!!」

「あー…すまん……だけどよ、お前…こんな独占欲を見せつけられて黙ってられると思ってんのか?」


銀時の言葉はすぐ分かった。
お風呂に入った時に鏡に映っていたのだ。
雪は思わず首筋を手で隠したが、高杉が付けたキスマークは首筋だけではなく胸元や様々な場所につけられていたのだ。
雪が首筋を隠したのを見て銀時の機嫌は更に悪くなり雪は銀時の機嫌の悪さを察し恐々と銀時を見上げた。


「…銀さん…これ、は…その…」

「…分かってるよ…神楽からおおよその事は聞いた…」

「か、神楽ちゃんから?」

「ああ…でも安心しろ…あいつにゃまだ女だ男だの事なんて分かってもいないからな…」


『まあ察しはついているだろうけど』と心の中で続ける銀時などよそに雪は神楽に高杉と関係を持った事を知られていないと安堵していた。


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