銀時は公園のベンチに座り、ぼーっと空を見上げていた。
ふと顔に影がかかり、目線を空からその影へ目をやればそこには気にくわない顔があり銀時は隠すことなく『うげ』と嫌そうに顔を歪めた。
「なんでこんなとこにいんの」
その影とは、土方だった。
土方は相変わらず瞳孔開いてるし目つき悪いし煙草臭いしで銀時の声は自然と低くなる。
そんな銀時に土方も同様に顔を歪め、銀時を睨む。
お互いを嫌っているくせしてどうしてか今日は土方が隣に座り、ポツリと呟かれた銀時の言葉に『それはこっちのセリフだ』と零し煙草に火をつける。
「なんで雪を帰した」
火をつけ吸った煙を吐き出しながら零れた土方の言葉に銀時は眉間にシワを寄せる。
あまりそこには触れてほしくないというのもあるが、やっぱり知ってたかという意味合いが強い。
土方の言葉に銀時は頭を掻く。
「んなこと言ったってしょうがねえだろうが…雪が戻るって言ったんだ…無理に引き留められねえよ」
「男としてそこは引き留めておけよ…あいつが欲しいんだろ?だったら奪ってでも手に入れてやれや…雪もそれを望んでお前のところに逃げ込んでたかもしれねえだろ」
土方は銀時が毎日志村家に頭を下げ続けているのは知っている。
頭を下げながらも仕事をしているのも噂で聞き、それを聞いた感想は『んな事できるならなんで普段からもっと働かねえんだこいつは』と思った。
普段は駄目な男だからマダオだと言われんだぞ、とも思いながらも失恋した腹いせか正直『ざまあみやがれ』と思わなくはない。
ただそう思っていたのは最初の頃で、会うたびに雪から元気がなくなっているのを見て土方は次第にその感情は消え去った。
今では雪があの元気な笑顔を見せてくれるのなら銀時に手を貸す事も苦ではないだろう。
しかし土方の言葉に銀時は…
「…そりゃねえよ」
そうぽつりとつぶやいた。
その言葉に土方は銀時を見る。
銀時は公園を見つめており、一切土方には目もくれていない。
「恐いのか?」
銀時のその呟きに土方は挑発めいた事を零しながら睨み、銀時は土方の言葉にふと笑った。
「いや、恐かねえよ…雪が望めば俺はお妙から奪って江戸…いや地球だって捨てることも出来る…だけどよ…それは雪が望んだことじゃねえんだよ…あいつはさ…俺と神楽を家族として愛してくれてる…でも、その家族の中にはお妙もいるんだよ…あいつはいつだって俺達家族を一番に考えてくれてんだ…お妙を、俺を、神楽を、一番に考えてくれてる…あいつだって俺が言えば最後は俺の手を取って駆け落ちでもなんでもしてくれるだろうけどよ…そんなのあいつが望んだことじゃねえだろ?俺はあいつから…あいつや神楽から色々貰ってんだ…俺だってあいつらが望むことの一つくらいは叶えてやりてぇんだ…」
銀時は神楽や雪から色々な物を貰っている。
それは説明できるものから言葉に表すのが難しいものまで様々だが、大きく言ってしまえば『家族』というものだった。
貰ってばかりの自分が返せるものといえばこんなことくらいしか思い浮かばない。
土方はそれを聞き、『ああ、こいつは本当に雪の事が好きなんだな』と思った。
普段ならば腹が立つだけだが、今は銀時に腹を立たせることは何一つない。
ただやはりまだ雪への恋心が消え失せていないため複雑ではあるが。
煙草の煙を吐き出す土方は『そうかい』とだけ零し、空に消える煙をただ見送っていた。
そんな土方に銀時は初めて目を向け、『そういや』と零す。
何か言おうとしている銀時に土方は横目で銀時を見た。
「あいつ、どうしてる?」
「あいつ?」
『あいつ』と銀時から言われ『どいつだ』と返した土方に銀時は『ゴリラ弟』と呼べば『ああ、鷹臣か…』と名前を呟かれた。
すでに鷹臣への感情は戻っておりあの日のような苛立ちはない。
「どうしてるって…今日も仕事に出てるが…それがどうした」
「いや…なんでもねえ」
土方の言葉に銀時は首を振る。
なんの用もなく鷹臣の事を聞く銀時に土方は怪訝と銀時は見たが、銀時は何か言いたげに見せた後また土方に問う。
「あいつをどう思う?」
「…そんな事聞いてどうする」
「…ちょっと気になっただけだ…あいつは雪にストーカーしてるからな…」
流石にそんな問いをされれば土方も疑ってしまうのか、怪訝さを強くさせた。
銀時はあえて誤魔化した。
過去にあいつと会ったことがあると言ったら面倒な事になりそうだと思ったのだ。
そんな銀時の本心をよそに土方は怪訝とさせながらも『どうなのよ』と急かす銀時に鷹臣の印象を考える。
「近藤さんの弟だが、正反対の人間…だな」
「正反対の人間?」
土方の言葉に銀時は怪訝とさせた。
その返しに土方は『ああ』と零し、続ける。
「容姿もそうだが、あいつと近藤さんの性格は真逆だ」
「…そうか?俺にはそうは思えなかったが…ストーカーゴリラなところは瓜二つだろ」
「……あいつはいつも笑みを浮かべてるせいで周りはあいつが近藤さんと同じで温厚で優しい男だと勘違いされてんだよ」
「…実際は違う、と?」
「ああ…あいつ、意外と短気だぞ?いや、正確に言えば一般の短気とは違うな…なんていうか…諦めが早いのか?何でもあいつは妥協するんだよ…だから近藤さんはいつも鷹臣を甘やかす…まあ、幼い頃生き別れたっていうのもあるから仕方ねえとは思うけどな…」
『それでも甘やかしすぎて困る』と零れた愚痴に銀時は『ふーん』と興味なさげに聞く。
土方を知る鷹臣は寛容な兄と同じくなんでも受け入れる。
だがそれは兄とは違い諦めが早いからだ。
例えば彼等の前に欲しい物があるとして貰えるとする。
だけどその条件に何か無茶振りをしなければならない状況だとしたら、鷹臣は『あ、そう?じゃあいいや』と言ってどんなに欲しい物でもどちらも手に入れることはないのだ。
近藤の場合はどんな無茶振りでも限界を超えてでも挑戦するだろう。
あの兄弟は似ているようで、似ていない。
「あと、そうだな…あいつ、笑ってるようだけど笑ってねえぞ」
「は?」
「あの笑顔は営業用ってこった…本当のあいつの笑顔は俺達の前じゃねえと見せねえよ」
銀時も鷹臣が諦めの早い事は知っている。
昔団子が三つしかなく4人で争ったとき一番に辞退したのは鷹臣だった。
それだけでなく、思い出せば鷹臣は色々辞退したり諦めたりとしつづけ、終いには桂と高杉に半分こされ気を使われてたりもした。
ただ、妥協しないのが一つだけあった。
それは剣。
勝負では鷹臣は妥協はしない。
だから銀時達は一度として勝てたことはないのだ。
しかし続けられた土方の言葉に呆気に取られた。
いや、銀時も鷹臣のあの笑みが本心からではないというのは知っている。
だが、土方達の前では本心の笑みを浮かべているという事に銀時は呆気に取られたのだ。
「何それ…お前らあいつの笑顔みたことあんの?」
「あるが?」
「うっそぉ…マジで?」
「ああ、マジだが?」
「…………」
この時、銀時は『俺らでさえ見た事ねえのに?』と続けようとしたがそれでは過去につながりがあると知られ、自分が白夜叉だと知られると思い口を閉ざした。
そして、まず出たその自分の言葉に落ち込んだ。
あれほど恨んでいるというのになぜそんな事を思うのか、と自分を責めた。
うがーっ!と頭を抱える銀時に土方は何を勘違いしたのか真剣な表情を浮かべ銀時に忠告する。
「鷹臣に勝負を挑むんだったら無駄な事だ、やめときな」
「は?」
「あいつァ、俺ら真選組が束に掛かろうと勝てやしねえ奴だ…剣の腕なら真選組や警察含めトップだ」
「……おんやぁ?土方君にしては弱気だねぇ…え?なに?それって土方君も勝てないって事ぉ?ゴリラもって事ぉ?お兄ちゃんなのに弟君に負けるんだぁ〜」
「ああ…そうだ」
「…………」
「あいつは恐らく江戸一番の腕を持ってる…俺も近藤さんも何度も挑んでいるが一度として勝てた事ねえし、勝負してるときの奴は余裕綽々だった…もし勝負をしかけようとしてんならやめときな…雪を思うならな」
そう言い残し土方はベンチから腰を上げ、銀時から去る。
『何しにきたのあいつ』と銀時はそう呟きながら土方の言葉が何度も頭でリピートされる。
「あいつが強い?あいつに一度も勝てたことがねえ?―――んなもんとっくの昔に知ってんだよ…」
銀時は空を見上げ、そう呟いた。
その頭には稽古で何度もぶつかり合った時の鷹臣の姿が浮かび、銀時は目を瞑ってその記憶を奥へ仕舞いこむ。
ふと顔に影がかかり、目線を空からその影へ目をやればそこには気にくわない顔があり銀時は隠すことなく『うげ』と嫌そうに顔を歪めた。
「なんでこんなとこにいんの」
その影とは、土方だった。
土方は相変わらず瞳孔開いてるし目つき悪いし煙草臭いしで銀時の声は自然と低くなる。
そんな銀時に土方も同様に顔を歪め、銀時を睨む。
お互いを嫌っているくせしてどうしてか今日は土方が隣に座り、ポツリと呟かれた銀時の言葉に『それはこっちのセリフだ』と零し煙草に火をつける。
「なんで雪を帰した」
火をつけ吸った煙を吐き出しながら零れた土方の言葉に銀時は眉間にシワを寄せる。
あまりそこには触れてほしくないというのもあるが、やっぱり知ってたかという意味合いが強い。
土方の言葉に銀時は頭を掻く。
「んなこと言ったってしょうがねえだろうが…雪が戻るって言ったんだ…無理に引き留められねえよ」
「男としてそこは引き留めておけよ…あいつが欲しいんだろ?だったら奪ってでも手に入れてやれや…雪もそれを望んでお前のところに逃げ込んでたかもしれねえだろ」
土方は銀時が毎日志村家に頭を下げ続けているのは知っている。
頭を下げながらも仕事をしているのも噂で聞き、それを聞いた感想は『んな事できるならなんで普段からもっと働かねえんだこいつは』と思った。
普段は駄目な男だからマダオだと言われんだぞ、とも思いながらも失恋した腹いせか正直『ざまあみやがれ』と思わなくはない。
ただそう思っていたのは最初の頃で、会うたびに雪から元気がなくなっているのを見て土方は次第にその感情は消え去った。
今では雪があの元気な笑顔を見せてくれるのなら銀時に手を貸す事も苦ではないだろう。
しかし土方の言葉に銀時は…
「…そりゃねえよ」
そうぽつりとつぶやいた。
その言葉に土方は銀時を見る。
銀時は公園を見つめており、一切土方には目もくれていない。
「恐いのか?」
銀時のその呟きに土方は挑発めいた事を零しながら睨み、銀時は土方の言葉にふと笑った。
「いや、恐かねえよ…雪が望めば俺はお妙から奪って江戸…いや地球だって捨てることも出来る…だけどよ…それは雪が望んだことじゃねえんだよ…あいつはさ…俺と神楽を家族として愛してくれてる…でも、その家族の中にはお妙もいるんだよ…あいつはいつだって俺達家族を一番に考えてくれてんだ…お妙を、俺を、神楽を、一番に考えてくれてる…あいつだって俺が言えば最後は俺の手を取って駆け落ちでもなんでもしてくれるだろうけどよ…そんなのあいつが望んだことじゃねえだろ?俺はあいつから…あいつや神楽から色々貰ってんだ…俺だってあいつらが望むことの一つくらいは叶えてやりてぇんだ…」
銀時は神楽や雪から色々な物を貰っている。
それは説明できるものから言葉に表すのが難しいものまで様々だが、大きく言ってしまえば『家族』というものだった。
貰ってばかりの自分が返せるものといえばこんなことくらいしか思い浮かばない。
土方はそれを聞き、『ああ、こいつは本当に雪の事が好きなんだな』と思った。
普段ならば腹が立つだけだが、今は銀時に腹を立たせることは何一つない。
ただやはりまだ雪への恋心が消え失せていないため複雑ではあるが。
煙草の煙を吐き出す土方は『そうかい』とだけ零し、空に消える煙をただ見送っていた。
そんな土方に銀時は初めて目を向け、『そういや』と零す。
何か言おうとしている銀時に土方は横目で銀時を見た。
「あいつ、どうしてる?」
「あいつ?」
『あいつ』と銀時から言われ『どいつだ』と返した土方に銀時は『ゴリラ弟』と呼べば『ああ、鷹臣か…』と名前を呟かれた。
すでに鷹臣への感情は戻っておりあの日のような苛立ちはない。
「どうしてるって…今日も仕事に出てるが…それがどうした」
「いや…なんでもねえ」
土方の言葉に銀時は首を振る。
なんの用もなく鷹臣の事を聞く銀時に土方は怪訝と銀時は見たが、銀時は何か言いたげに見せた後また土方に問う。
「あいつをどう思う?」
「…そんな事聞いてどうする」
「…ちょっと気になっただけだ…あいつは雪にストーカーしてるからな…」
流石にそんな問いをされれば土方も疑ってしまうのか、怪訝さを強くさせた。
銀時はあえて誤魔化した。
過去にあいつと会ったことがあると言ったら面倒な事になりそうだと思ったのだ。
そんな銀時の本心をよそに土方は怪訝とさせながらも『どうなのよ』と急かす銀時に鷹臣の印象を考える。
「近藤さんの弟だが、正反対の人間…だな」
「正反対の人間?」
土方の言葉に銀時は怪訝とさせた。
その返しに土方は『ああ』と零し、続ける。
「容姿もそうだが、あいつと近藤さんの性格は真逆だ」
「…そうか?俺にはそうは思えなかったが…ストーカーゴリラなところは瓜二つだろ」
「……あいつはいつも笑みを浮かべてるせいで周りはあいつが近藤さんと同じで温厚で優しい男だと勘違いされてんだよ」
「…実際は違う、と?」
「ああ…あいつ、意外と短気だぞ?いや、正確に言えば一般の短気とは違うな…なんていうか…諦めが早いのか?何でもあいつは妥協するんだよ…だから近藤さんはいつも鷹臣を甘やかす…まあ、幼い頃生き別れたっていうのもあるから仕方ねえとは思うけどな…」
『それでも甘やかしすぎて困る』と零れた愚痴に銀時は『ふーん』と興味なさげに聞く。
土方を知る鷹臣は寛容な兄と同じくなんでも受け入れる。
だがそれは兄とは違い諦めが早いからだ。
例えば彼等の前に欲しい物があるとして貰えるとする。
だけどその条件に何か無茶振りをしなければならない状況だとしたら、鷹臣は『あ、そう?じゃあいいや』と言ってどんなに欲しい物でもどちらも手に入れることはないのだ。
近藤の場合はどんな無茶振りでも限界を超えてでも挑戦するだろう。
あの兄弟は似ているようで、似ていない。
「あと、そうだな…あいつ、笑ってるようだけど笑ってねえぞ」
「は?」
「あの笑顔は営業用ってこった…本当のあいつの笑顔は俺達の前じゃねえと見せねえよ」
銀時も鷹臣が諦めの早い事は知っている。
昔団子が三つしかなく4人で争ったとき一番に辞退したのは鷹臣だった。
それだけでなく、思い出せば鷹臣は色々辞退したり諦めたりとしつづけ、終いには桂と高杉に半分こされ気を使われてたりもした。
ただ、妥協しないのが一つだけあった。
それは剣。
勝負では鷹臣は妥協はしない。
だから銀時達は一度として勝てたことはないのだ。
しかし続けられた土方の言葉に呆気に取られた。
いや、銀時も鷹臣のあの笑みが本心からではないというのは知っている。
だが、土方達の前では本心の笑みを浮かべているという事に銀時は呆気に取られたのだ。
「何それ…お前らあいつの笑顔みたことあんの?」
「あるが?」
「うっそぉ…マジで?」
「ああ、マジだが?」
「…………」
この時、銀時は『俺らでさえ見た事ねえのに?』と続けようとしたがそれでは過去につながりがあると知られ、自分が白夜叉だと知られると思い口を閉ざした。
そして、まず出たその自分の言葉に落ち込んだ。
あれほど恨んでいるというのになぜそんな事を思うのか、と自分を責めた。
うがーっ!と頭を抱える銀時に土方は何を勘違いしたのか真剣な表情を浮かべ銀時に忠告する。
「鷹臣に勝負を挑むんだったら無駄な事だ、やめときな」
「は?」
「あいつァ、俺ら真選組が束に掛かろうと勝てやしねえ奴だ…剣の腕なら真選組や警察含めトップだ」
「……おんやぁ?土方君にしては弱気だねぇ…え?なに?それって土方君も勝てないって事ぉ?ゴリラもって事ぉ?お兄ちゃんなのに弟君に負けるんだぁ〜」
「ああ…そうだ」
「…………」
「あいつは恐らく江戸一番の腕を持ってる…俺も近藤さんも何度も挑んでいるが一度として勝てた事ねえし、勝負してるときの奴は余裕綽々だった…もし勝負をしかけようとしてんならやめときな…雪を思うならな」
そう言い残し土方はベンチから腰を上げ、銀時から去る。
『何しにきたのあいつ』と銀時はそう呟きながら土方の言葉が何度も頭でリピートされる。
「あいつが強い?あいつに一度も勝てたことがねえ?―――んなもんとっくの昔に知ってんだよ…」
銀時は空を見上げ、そう呟いた。
その頭には稽古で何度もぶつかり合った時の鷹臣の姿が浮かび、銀時は目を瞑ってその記憶を奥へ仕舞いこむ。
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