(12 / 23) そういう時は黙って赤飯 (12)
雪は縁側で敏木斎に膝枕をしながら耳かきをしていた。
しかし耳かきが終わったと知らせようとして敏木斎を覗き込めば、敏木斎は気持ちよさに眠っていた。


「雪ちゃん」

「姉上」


するとどこかに消えていた姉が帰ってきた。
姉の妙は自分の方へ振り返る雪を見て緊張の糸が解れたように肩の力を抜き笑みを浮かべていたが、その雪の膝の上に頭を乗せている敏木斎を見て、敏木斎の肩を揺らす。


「おじいさま、おじいさま…起きてください、時間ですよ」

「ふぁ〜…母ちゃん、あと5分…」


体を揺らされた敏木斎はむにゃむにゃと中々目を覚まさない。
雪に膝枕で安眠を取っていた敏木斎はスリスリと雪の、16歳の少女の膝の柔らかさを堪能しようとした。
しかし、敏木斎が雪の膝に擦り寄ったのと、妙が敏木斎の頭を鷲掴みにしたのは同時だった。


「おじいさま?お時間ですよ?このまま目を覚まさないのなら地獄へ送ってさしあげましょうか?」

「起きます起きます!!マッハで目が覚めましたァ!!!すんませんンンン!!」


ガシリと鷲掴みされた敏木斎は言葉通りマッハで目を覚ました。
いつも半分くらいしか開いていないその目をパッチリと全開にさせる敏木斎の言葉に妙はにっこりと笑い『あらそう…それは良かったです』と言ってパッと掴んでいた手を放す。
恐らく妙は雪の膝枕を堪能していたのに嫉妬していたのだろう。
今の妙はいつも以上に嫉妬深いため、敏木斎はあくびをした後ピョンと庭に降りる。


「おじいさま?どこへ行かれるんです?」

「まあ、ちょっと所用をな」

「?」


どこかへ向かう敏木斎は額に何故か布に張り付けた皿をつける。
何故皿をくっつけるのか分からない雪は首を傾げたが、それを問う前に敏木斎はその場から去っていった。
不思議そうに見送る妹を妙はただじっと見つめていた。


「なんだったんでしょう?」


不思議そうに見送っていた雪は姉に顔を上げた。
その時にはすでに妙は笑みを浮かべており、その笑みを張り付けたまま『さあ?』と零し雪の隣に座る。
そしてポンポンと自分の膝を叩いた。
そんな姉に雪は首を傾げ姉を見る。
キョトンとする妹は可愛くて思わずクスリと笑ってしまう。


「姉上?」

「久々に膝枕しましょう、雪ちゃん」

「え!?」


姉の言葉に雪は目を丸くした。
妙は驚く雪に『雪ちゃんに膝枕をしてもらっているおじいさまを見ていたらしたくなったの』と言う。
雪は姉に弱く、『ね、お願い』とお願いされてしまえば無下には出来ず姉の膝の上に恐る恐る頭を預けた。


「て、照れちゃいますね…」

「ふふ、そう?」

「はい…でも…最後に姉上にこうして膝枕してもらったの、いくつの時でしたっけ…」

「………」

「確か…父上が亡くなる前だから…」

「雪ちゃん」

「?」


昔はよく姉に膝枕をしてもらった覚えがある。
母を幼くして失くした雪にとって姉が母の代わりだった。
だからよく姉に膝を貸してもらっていた。
照れる雪に微笑ましく見つめていた妙だったが、雪の言葉に表情を強張らせた。
それに気づかず雪は姉の膝枕をしてもらったのはいつだったかと思い出そうとする。
そんな妹を遮り、妙はそっと雪の目を手で覆った。


「姉上?」

「雪ちゃん、少し眠りなさい…お滝さんに扱かれて疲れたでしょう?」

「でも…それじゃ姉上が…」


仮眠を取った方がいいと言われ、雪は戸惑った。
眠たくないと言えば嘘である。
銀時と会えなくなってから気が休んだことはない。
睡眠時間も短いのだ。
だから眠たくないわけがない。
しかしここで休むと姉に負担が掛かると雪は心配した。
雪が戸惑っていると姉からクスリと笑みを貰う。


「私はいいのよ…久々に雪ちゃんに膝枕できてとても幸せなの」


目を覆われ表情を見ることができず、雪はその声に強張っていた体を解す。
妙の声は本当に穏やかな声をしていたのだ。
暫くすると眠りについた雪の髪を妙は梳くように撫でる。


「雪ちゃん…大丈夫よ…雪ちゃんは私が守るわ…もう…あんな思いなんかさせるものですか」


目を瞑って眠る妹の頭を撫でながら、妙はそう呟く。


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