土方の言葉にその場は凍り付いたように静まり返る。
目の前にいる九兵衛は男――ではなく、女だと土方は言っていた。
普段ならば『何言ってやがんだ』と揶揄ってやるが、銀時も九兵衛と会ってから多少の違和感を感じていた。
それが土方の言葉、そしてチラリと見た雪の反応にて確信に至っただけである。
「…どういう事だ?」
銀時は九兵衛や雪ではなく、妙へ振り返る。
雪が知っている様子からして、妙が知らないと考えられない。
そうすると大切な妹を女に嫁がせようとする妙の行動に疑問が沸いてくる。
しかし妙は銀時を睨みつけるだけでなんの反応もせず、変わらず雪を背に隠しながら銀時に薙刀を構えていた。
しかし銀時も急かすことなく妙をじっと見つめていると、諦めたのか妙が重い口を開いた。
「九ちゃんは身体は女の子なんです…でも心は男の子なの…九ちゃんは女の身でありながらも女の人しか愛せないんのです」
簡単な説明だが、それでも納得いく言葉ではない。
銀時はそれを聞いて眉間にしわをよせ妙を睨む力を強める。
「ふざけてんのか、お前ら…女の身でありながら雪と結婚?そんなことが通ると思っているのか」
「九ちゃんが女の子だって知っているのは極僅かな人だけ…」
「だから隠し通せるってか?んなもん無理に決まってんだろ…現にこいつも俺もあいつが女だって気づいた…勘の良い奴も他にもいる…その中でどうやって隠し、雪をどうやって守るってんだ?」
「…確かに九ちゃんの体は女の子だから隠し通すのは難しいわ……でも…それでも…あなたとの関係を認めるくらいなら…同じ女の九ちゃんのところに雪ちゃんを嫁がせた方がまだマシよ」
「そこまで俺が嫌いか」
「ええ、大っ嫌いです…憎いほどに」
妙の回答に銀時の表情に険しさが増した。
銀時も妙は嫌いだ。
同族嫌悪という言葉が当てはまる彼等の関係だが、銀時は雪の悲しい顔を見たくないから今まで手を上げずに来た。
それに女に手を上げるほど腐ってはいない。
銀時的には別に妙と無理にでも和気あいあい人類皆兄弟、となりたいとは思っていない。
神楽と定春と、雪がいればそれでいい。
ついでに周りも大切にしているだけだが、それが案外居心地が良かった。
だからこそ銀時は自ら壊そうとは思っていない。
だからこそ妙に頭を下げ続けた。
それを妙が壊したのだ。
大切にしすぎて雪への愛が狂った姉に、銀時は初めて殺意を覚えた。
無意識だったのだろう銀時の持っていた木刀が妙に向けられた。
だが、その間を雪が入り込み妙を守る様に両腕を広げた。
「雪―――ッ!?」
銀時は入り込んだ雪に目を丸くし力を弱めたが、時すでに遅い。
殺気が込められている木刀が雪に当たりそうになり銀時は叫んだ。
しかし…その刃は雪にも妙にも届くことはなかった。
銀時の刃を止めたのは柳生九兵衛であった。
ギリギリと押してくる木刀を受け止めながら九兵衛は雪と妙を見る。
雪と妙に怪我がない事に安堵しながらキッと銀時を睨みつける。
「君は雪ちゃんを愛していると言っておきながら刃を向けるのか?」
「…ッ」
銀時は九兵衛の言葉にギリ、と奥歯を噛みしめ、言い返す言葉を失う。
標的が雪ではなくても実際危害を加えようとしていたのは確かである。
「僕は確かに体は女だ…だが雪ちゃんを愛する心も、彼女を支えたいという想いも…君と同じ…いや、君以上にある!!愛しい人に刃を向けるような貴様に雪ちゃんを渡してなるものか!」
「――ふざけんなァ!!!」
銀時の木刀を受け止めていた九兵衛の言葉に、銀時は声を上げる。
だが冷静さを失っているわけではない。
戦場を生き残った銀時は今やマダオになったとはいえ、白夜叉であることには変わらない。
戦場で冷静さを失うのは死に直結すると分かっているからカッとなりつつも冷静なのだろう。
己の木刀を受け止める九兵衛の木刀を薙ぎ払うように払いのけ、九兵衛は銀時の木刀を回避する。
妙も雪の腕を掴んで銀時から離れた。
それでも銀時は九兵衛へと木刀を向けるのを止めない。
「俺にやるぐらいなら同じ女に嫁がせた方がマシだ!?同性だが愛してる!?雪を支えたい想いが俺以上にある!?んなもん雪の顔を見てから言いやがれ!!雪が今どんな顔をしているのかてめえら分かって言ってんだろうな!!なァ!オイ!妙!!」
神楽は二人の戦いに手を出す気はない。
むしろ銀時が出させてくれないのだ。
銀時は喋りながら、声を荒げ、怒りに任せて木刀を振りながら九兵衛を追いつめ庭に追い出す。
「惚れた女が…!大切な妹が…!!辛くて苦しんで泣いているのに気づきもしねえ奴らなんかに俺の雪を渡せるか!!」
銀時の言葉に雪は目元が熱くなり、視界がぐにゃりと揺らぐ。
涙が溜まり雪の頬は涙で濡れる。
ずっと我慢していたものが銀時の言葉で溢れ出てきたのだろう。
妙は銀時の言葉を何も言わず受け止めていた。
九兵衛はそのまま庭にある岩を伝って塀へと上る。
それを銀時は追いかけると、竹林で戦っていた鷹臣と敏木斎が現れ、銀時と鷹臣は背中を合わせお互いの相手と睨みあう。
「あ?てめえ…おい、ゴリラ弟…お前なに?あんだけかっこつけてたくせして苦戦してんのか?やだねェ〜顔だけの男っつーのは」
「しょうがないでしょうが…俺は手加減が苦手なの!――っていうかそれはこっちのセリフなんだけど…俺お雪さんを奪い返してこいって言ったよね?そのためにあのお爺さんの相手変わってあげたよね?なんなの?なんでまだお雪さんあっち側にいるわけ?え?もしかして苦戦してんの?君があの嬢ちゃんに?」
「うっせェよ…これはあれだ…その………色々あんだよ」
「その色々ってなにさ」
「だからうっせぇって言ってんだろ!―――てめえは相変わらず変なとこに細ェんだよ!!」
トン、と背と背を合わせ相手を睨みながら銀時と鷹臣はお互い憎まれ口を叩く。
鷹臣の『嬢ちゃん』という言葉に九兵衛はピクリと反応させるも銀時は気にもしない。
ただ『やっぱこいつも気づいてやがったか』と思っただけだった。
それと同時に九兵衛と敏木斎が動く。
身軽な彼等を鷹臣と銀時は持っている木刀で受け流し、受け止め、時にはやり返す。
互角ともいえる戦いだった。
鷹臣は人を殺す剣しか知らないため、人を生かしながら倒す剣を知らない。
南戸は弱かったから最小限の力で倒せただけのことである。
だが、そんな南戸とは違い敏木斎も九兵衛も強く、それが余計に力加減を難しくしていた。
珍しく苦戦している鷹臣を見抜き、敏木斎が強く出る。
カン、と強く鷹臣の木刀を跳ね返し出来た隙に付け込み敏木斎は素早く鷹臣の懐に入ろうとする。
勿論それに鷹臣も気づいていた。
そして跳ね返った木刀を持ち直しそのまま振りかざそうとした。
間に合おうが間に合わなかろうが、腕で皿を守ってさえいればそれでいいと思っていた。
そんな鷹臣の前に銀時が立ちふさがり、庇って敏木斎に吹き飛ばされた。
銀時は持っていた木刀で受け止めようとしたがその勢いで手から木刀が抜け、そのまま部屋へと飛ばされる。
鷹臣は銀時の行動に呆気に取られる。
「…?」
呆気に取られ、そして理解できなかった。
なぜ自分が庇われたのかを。
なぜ銀時が憎んでいるはずの自分を庇ったのかを。
その銀時の感情を理解できない頭で鷹臣は銀時の名を叫びながら塀から降り、銀時の元へと向かおうとする。
それもまた理解が出来なかった。
しかしそんな鷹臣に敏木斎が立ちふさがった。
「大将撃沈…これで終わりじゃ」
「…………」
敏木斎に足止めをされている鷹臣を目にしながら九兵衛は塀の上から飛び降り銀時の元へと歩み寄る。
鷹臣はその九兵衛の背を見送った後敏木斎へ目をやれば、敏木斎は本来鷹臣が持っているべきものがないのに気づく。
「あんちゃん、木刀は?」
それは木刀だった。
鷹臣の手には木刀が握られているはずなのに、今はその木刀が見えない。
鷹臣は敏木斎に言われ己の手を見る。
そして…
「さあ、どうしたんだろうね」
そう呟いた。
その瞬間、部屋から九兵衛が吹き飛ばされ庭に倒れる。
「九兵衛!?」
孫は女だが、男に負けないほどの腕前を持っていると断言できる。
しかしその九兵衛が吹き飛ばされ、敏木斎は目を丸くした。
そんな敏木斎と九兵衛をよそに鷹臣は部屋へと目をやる。
「ちょっとォ〜俺の木刀勝手に持ち出さないでくれませんかァー」
「ああ?てめえが手放したんだろうが…一旦手放した物にどうこう言う資格はありませんー」
「はあ?ありますぅーそれに名前が書かれている以上あるんですぅー」
「名前ってお前…子供か………ってこれ山崎退って書いてんぞおい」
「うん、俺木刀持ってないから山ちゃんの借りたの」
「じゃあ元々お前のでもねえじゃねえか!!」
と、いうコントをしている間に倒れていた九兵衛が起き上がり、ぎゃあぎゃあと言い合いをしている銀時に木刀を向けた。
そして、同時に敏木斎も銀時に気を取られている鷹臣へと木刀を向ける。
しかし隙を突いた彼等だったが、銀時は九兵衛の殺気に気付き一瞬にして険しい表情に替え、銀時も九兵衛へと木刀を向けた。
クロスされた木刀はお互いの体を突く。
だが吹き飛ばされたのは九兵衛だった。
そして皿を割られたのも…九兵衛だった。
クロスカウンターのようにお互い木刀を突いた二人だったが、銀時が僅かに体をずらし九兵衛の木刀の先を皿から遠ざけ、そして九兵衛に向けた木刀を思いっきり皿へと向けて突いた。
銀時の微かな動きまで読めなかった九兵衛はそのまま皿を割られ倒れてしまう。
そして同時に木刀を持っていない鷹臣は敏木斎に皿を割られそうになりながらも同じく体をずらして回避し、敏木斎が持っている木刀を蹴り飛ばしてキャッチし、その敏木斎の木刀の柄頭でトンと叩いて割った。
二つの皿が同時に割れ、そして…――――長きに渡った戦いは終わりを告げた。
目の前にいる九兵衛は男――ではなく、女だと土方は言っていた。
普段ならば『何言ってやがんだ』と揶揄ってやるが、銀時も九兵衛と会ってから多少の違和感を感じていた。
それが土方の言葉、そしてチラリと見た雪の反応にて確信に至っただけである。
「…どういう事だ?」
銀時は九兵衛や雪ではなく、妙へ振り返る。
雪が知っている様子からして、妙が知らないと考えられない。
そうすると大切な妹を女に嫁がせようとする妙の行動に疑問が沸いてくる。
しかし妙は銀時を睨みつけるだけでなんの反応もせず、変わらず雪を背に隠しながら銀時に薙刀を構えていた。
しかし銀時も急かすことなく妙をじっと見つめていると、諦めたのか妙が重い口を開いた。
「九ちゃんは身体は女の子なんです…でも心は男の子なの…九ちゃんは女の身でありながらも女の人しか愛せないんのです」
簡単な説明だが、それでも納得いく言葉ではない。
銀時はそれを聞いて眉間にしわをよせ妙を睨む力を強める。
「ふざけてんのか、お前ら…女の身でありながら雪と結婚?そんなことが通ると思っているのか」
「九ちゃんが女の子だって知っているのは極僅かな人だけ…」
「だから隠し通せるってか?んなもん無理に決まってんだろ…現にこいつも俺もあいつが女だって気づいた…勘の良い奴も他にもいる…その中でどうやって隠し、雪をどうやって守るってんだ?」
「…確かに九ちゃんの体は女の子だから隠し通すのは難しいわ……でも…それでも…あなたとの関係を認めるくらいなら…同じ女の九ちゃんのところに雪ちゃんを嫁がせた方がまだマシよ」
「そこまで俺が嫌いか」
「ええ、大っ嫌いです…憎いほどに」
妙の回答に銀時の表情に険しさが増した。
銀時も妙は嫌いだ。
同族嫌悪という言葉が当てはまる彼等の関係だが、銀時は雪の悲しい顔を見たくないから今まで手を上げずに来た。
それに女に手を上げるほど腐ってはいない。
銀時的には別に妙と無理にでも和気あいあい人類皆兄弟、となりたいとは思っていない。
神楽と定春と、雪がいればそれでいい。
ついでに周りも大切にしているだけだが、それが案外居心地が良かった。
だからこそ銀時は自ら壊そうとは思っていない。
だからこそ妙に頭を下げ続けた。
それを妙が壊したのだ。
大切にしすぎて雪への愛が狂った姉に、銀時は初めて殺意を覚えた。
無意識だったのだろう銀時の持っていた木刀が妙に向けられた。
だが、その間を雪が入り込み妙を守る様に両腕を広げた。
「雪―――ッ!?」
銀時は入り込んだ雪に目を丸くし力を弱めたが、時すでに遅い。
殺気が込められている木刀が雪に当たりそうになり銀時は叫んだ。
しかし…その刃は雪にも妙にも届くことはなかった。
銀時の刃を止めたのは柳生九兵衛であった。
ギリギリと押してくる木刀を受け止めながら九兵衛は雪と妙を見る。
雪と妙に怪我がない事に安堵しながらキッと銀時を睨みつける。
「君は雪ちゃんを愛していると言っておきながら刃を向けるのか?」
「…ッ」
銀時は九兵衛の言葉にギリ、と奥歯を噛みしめ、言い返す言葉を失う。
標的が雪ではなくても実際危害を加えようとしていたのは確かである。
「僕は確かに体は女だ…だが雪ちゃんを愛する心も、彼女を支えたいという想いも…君と同じ…いや、君以上にある!!愛しい人に刃を向けるような貴様に雪ちゃんを渡してなるものか!」
「――ふざけんなァ!!!」
銀時の木刀を受け止めていた九兵衛の言葉に、銀時は声を上げる。
だが冷静さを失っているわけではない。
戦場を生き残った銀時は今やマダオになったとはいえ、白夜叉であることには変わらない。
戦場で冷静さを失うのは死に直結すると分かっているからカッとなりつつも冷静なのだろう。
己の木刀を受け止める九兵衛の木刀を薙ぎ払うように払いのけ、九兵衛は銀時の木刀を回避する。
妙も雪の腕を掴んで銀時から離れた。
それでも銀時は九兵衛へと木刀を向けるのを止めない。
「俺にやるぐらいなら同じ女に嫁がせた方がマシだ!?同性だが愛してる!?雪を支えたい想いが俺以上にある!?んなもん雪の顔を見てから言いやがれ!!雪が今どんな顔をしているのかてめえら分かって言ってんだろうな!!なァ!オイ!妙!!」
神楽は二人の戦いに手を出す気はない。
むしろ銀時が出させてくれないのだ。
銀時は喋りながら、声を荒げ、怒りに任せて木刀を振りながら九兵衛を追いつめ庭に追い出す。
「惚れた女が…!大切な妹が…!!辛くて苦しんで泣いているのに気づきもしねえ奴らなんかに俺の雪を渡せるか!!」
銀時の言葉に雪は目元が熱くなり、視界がぐにゃりと揺らぐ。
涙が溜まり雪の頬は涙で濡れる。
ずっと我慢していたものが銀時の言葉で溢れ出てきたのだろう。
妙は銀時の言葉を何も言わず受け止めていた。
九兵衛はそのまま庭にある岩を伝って塀へと上る。
それを銀時は追いかけると、竹林で戦っていた鷹臣と敏木斎が現れ、銀時と鷹臣は背中を合わせお互いの相手と睨みあう。
「あ?てめえ…おい、ゴリラ弟…お前なに?あんだけかっこつけてたくせして苦戦してんのか?やだねェ〜顔だけの男っつーのは」
「しょうがないでしょうが…俺は手加減が苦手なの!――っていうかそれはこっちのセリフなんだけど…俺お雪さんを奪い返してこいって言ったよね?そのためにあのお爺さんの相手変わってあげたよね?なんなの?なんでまだお雪さんあっち側にいるわけ?え?もしかして苦戦してんの?君があの嬢ちゃんに?」
「うっせェよ…これはあれだ…その………色々あんだよ」
「その色々ってなにさ」
「だからうっせぇって言ってんだろ!―――てめえは相変わらず変なとこに細ェんだよ!!」
トン、と背と背を合わせ相手を睨みながら銀時と鷹臣はお互い憎まれ口を叩く。
鷹臣の『嬢ちゃん』という言葉に九兵衛はピクリと反応させるも銀時は気にもしない。
ただ『やっぱこいつも気づいてやがったか』と思っただけだった。
それと同時に九兵衛と敏木斎が動く。
身軽な彼等を鷹臣と銀時は持っている木刀で受け流し、受け止め、時にはやり返す。
互角ともいえる戦いだった。
鷹臣は人を殺す剣しか知らないため、人を生かしながら倒す剣を知らない。
南戸は弱かったから最小限の力で倒せただけのことである。
だが、そんな南戸とは違い敏木斎も九兵衛も強く、それが余計に力加減を難しくしていた。
珍しく苦戦している鷹臣を見抜き、敏木斎が強く出る。
カン、と強く鷹臣の木刀を跳ね返し出来た隙に付け込み敏木斎は素早く鷹臣の懐に入ろうとする。
勿論それに鷹臣も気づいていた。
そして跳ね返った木刀を持ち直しそのまま振りかざそうとした。
間に合おうが間に合わなかろうが、腕で皿を守ってさえいればそれでいいと思っていた。
そんな鷹臣の前に銀時が立ちふさがり、庇って敏木斎に吹き飛ばされた。
銀時は持っていた木刀で受け止めようとしたがその勢いで手から木刀が抜け、そのまま部屋へと飛ばされる。
鷹臣は銀時の行動に呆気に取られる。
「…?」
呆気に取られ、そして理解できなかった。
なぜ自分が庇われたのかを。
なぜ銀時が憎んでいるはずの自分を庇ったのかを。
その銀時の感情を理解できない頭で鷹臣は銀時の名を叫びながら塀から降り、銀時の元へと向かおうとする。
それもまた理解が出来なかった。
しかしそんな鷹臣に敏木斎が立ちふさがった。
「大将撃沈…これで終わりじゃ」
「…………」
敏木斎に足止めをされている鷹臣を目にしながら九兵衛は塀の上から飛び降り銀時の元へと歩み寄る。
鷹臣はその九兵衛の背を見送った後敏木斎へ目をやれば、敏木斎は本来鷹臣が持っているべきものがないのに気づく。
「あんちゃん、木刀は?」
それは木刀だった。
鷹臣の手には木刀が握られているはずなのに、今はその木刀が見えない。
鷹臣は敏木斎に言われ己の手を見る。
そして…
「さあ、どうしたんだろうね」
そう呟いた。
その瞬間、部屋から九兵衛が吹き飛ばされ庭に倒れる。
「九兵衛!?」
孫は女だが、男に負けないほどの腕前を持っていると断言できる。
しかしその九兵衛が吹き飛ばされ、敏木斎は目を丸くした。
そんな敏木斎と九兵衛をよそに鷹臣は部屋へと目をやる。
「ちょっとォ〜俺の木刀勝手に持ち出さないでくれませんかァー」
「ああ?てめえが手放したんだろうが…一旦手放した物にどうこう言う資格はありませんー」
「はあ?ありますぅーそれに名前が書かれている以上あるんですぅー」
「名前ってお前…子供か………ってこれ山崎退って書いてんぞおい」
「うん、俺木刀持ってないから山ちゃんの借りたの」
「じゃあ元々お前のでもねえじゃねえか!!」
と、いうコントをしている間に倒れていた九兵衛が起き上がり、ぎゃあぎゃあと言い合いをしている銀時に木刀を向けた。
そして、同時に敏木斎も銀時に気を取られている鷹臣へと木刀を向ける。
しかし隙を突いた彼等だったが、銀時は九兵衛の殺気に気付き一瞬にして険しい表情に替え、銀時も九兵衛へと木刀を向けた。
クロスされた木刀はお互いの体を突く。
だが吹き飛ばされたのは九兵衛だった。
そして皿を割られたのも…九兵衛だった。
クロスカウンターのようにお互い木刀を突いた二人だったが、銀時が僅かに体をずらし九兵衛の木刀の先を皿から遠ざけ、そして九兵衛に向けた木刀を思いっきり皿へと向けて突いた。
銀時の微かな動きまで読めなかった九兵衛はそのまま皿を割られ倒れてしまう。
そして同時に木刀を持っていない鷹臣は敏木斎に皿を割られそうになりながらも同じく体をずらして回避し、敏木斎が持っている木刀を蹴り飛ばしてキャッチし、その敏木斎の木刀の柄頭でトンと叩いて割った。
二つの皿が同時に割れ、そして…――――長きに渡った戦いは終わりを告げた。
← | back | →
しおりを挟む