ミーンミーン、と蝉がうるさい。
雪は熱い中暑苦しい恰好で熱い太陽の下を歩いていた。
のぼりを持って歩き、その前を銀時と神楽がこれまた暑そうな格好で触れ回っている。
主に『お祓い』やら『拝み屋』やらの単語を叫ぶ2人の後を雪は何とかついて回っている状態である。
熱いからもあるが、何よりバカバカしくなってきていたのだ。
「ねえ銀さん、神楽ちゃん…こんなことして仕事見つかる?っていうか何で拝み屋?何で拝み屋限定?」
「ばっか!お前…夏と言えばオバケだろ!幽霊だろ!!そして拝み屋だろ!!」
「…ねえ、本当に危機的状況だっていうの…理解してましたか?」
「理解してるアル。贅沢は難病の元ネ。」
「違うだろ!!それ違うわ!!そっちじゃねえし全然理解してねえじゃねえか!!!家計が苦しすぎて食べる物もねえってことだよ!!むしろ電気代やら水道代も危ういんだよ!!今!!もおお!!!2人とも真面目にやってよぉ!私こんな生活もうやだよぉぉ!」
言われたままに着替えた雪は2人と共に町に出かけていた。
朝食は雪が買ってきていたパンを2人に与えたのでお腹すいたうんぬんの下りはもうないだろうが…仕事を探さなければ本当に飢えてしまう。
銀時の尻を叩きようやく重すぎる腰を上げさせたが…銀時は拝み屋の仕事を探し出したのだ。
衣装を渡されのぼりの『拝み屋』という文字で気づけばよかったのだが…というか気づきそうなものだが、雪はこれでやっと月を超えれる!!と喜んでいたのもあり、全然まったくミジンコほどにも気づいていなかった。
ようやく気づいた雪は炎天下の中鼻眼鏡に弁慶のような格好をさせられ本気で熱く苛立っていた。
それを言うならミイラ男のように顔を包帯で巻く銀時も熱いのだろうが、いかんせん他人の感覚器官など雪が知る由もない。
突っ込めば突っ込むほど体力が奪われると雪は頭を抱えた。
こんな胡散臭い連中に誰が依頼を頼むか、と雪は心からそう思った。
そう、思ったのだが…―――
「あの、拝み屋さん…ですよね?」
胡散臭い連中にも声を掛ける輩がいたようである。
雪はげんなりとさせながら振り返ったその表情を…ひきつらせた。
真選組。
江戸の治安を守る特殊警察である。
そんな真選組に奇妙な現象が起こっていた。
隊の人間が次々と倒れるのだ。
それも赤い着物を着た女とうわごとに呟いて。
すでに隊の半数以上が寝込む事態に、副長である土方は頭を悩ませていた。
「みんなうわ言のように赤い着物の女と言ってるんですが…稲山さんが話してた怪談のあれかな…」
「馬鹿野郎。幽霊なんかいてたまるか。」
「じゃあタッキーのストーカー」
「ある意味こええが鷹臣がいねえ場所にあいつらがいるか。」
沖田はお茶を啜りながら昨日の怪談を思い出す。
それはまさに着物を着た女の霊の話で、隊の人達がつぶやくうわ言にそっくりだった。
それを零せば土方に切られ、じゃあ、と鷹臣のストーカーを零しても土方にバッサリと会話を切られた。
『タッキー』、とは沖田だけが呼んでいる鷹臣のあだ名である。
鷹臣も沖田の事を『総くん』と呼び、2人は年が近いというのもあり結構それなりに仲がいい。
多分鷹臣の優しげな笑みが姉と重なるのだろうと近藤はそう見ていた。
「ったく大体幽霊騒ぎで寝込むたぁ気が緩んでる証拠じゃねえのか?ちゃんと稽古してんのかよ…」
土方は舌打ちをしながら煙草を取り出し口にくわえる。
そんな土方を沖田はジッと凝視するように見つめており、その沖田の視線に気づいた土方は『…なんだ』と低い声でそう問うも沖田は相変わらずの無表情で『なんでも』と短く答えた。
そっと逸らされた目線の意味が分からず土方はまた舌打ちを打ちライターを手に火をつけようとした。
しかしこんな時に限って火は着かず、土方は煙草を吸うのを諦めライターを机に放り投げる。
「…………」
煙草が吸えない苛立ちを飲み込むように土方はお茶を一気に飲み干すも、その姿を沖田は視線を戻し目を細めて見つめていた。
土方はここ数日苛立った様子を見せていた。
本人が自覚があるかは分からないが、沖田はそれを面白いと思う。
土方が苛立っている理由を知っているから余計に。
「局長、連れてきました!」
部下達のことなど気にもせず近藤が、『今頃何をしているのだろうなぁ』、と青空を見上げて弟の身を案じていると山崎が戻ってきた。
山崎の方へ振り向けば山崎の後ろにきっちり着込んでいる三人の人間がついてきている。
「街で探してきました、拝み屋です。」
そう言って山崎は着込んでいる三人を局長に紹介する。
土方が山崎の言葉に目をやれば、三人とも恰好はバラバラだが顔を隠しており、怪しさ全開である。
「なんだこいつら…サーカスでもやるのか?」
「いや、霊を払ってもらおうと思ってな」
「おいおい冗談だろ?こんな胡散臭い連中…」
誰がどうみても胡散臭いとしか言いようがなく、確実に信用はない。
しかもどこかで見たような感じもしており土方は近藤の言葉に当然訝しんだ。
だがその瞬間一番小さい中華風のサングラスを掛けた少女が『おお!あらお兄さん背中に…』と意味ありげな事を呟いて止めた。
背中に、の後が続けられず、隣にいた包帯の男に小声で何かを言っていた。
男と少女の内緒話に余計背中の行が気になり『なんだよ…背中のなんだよ』とムッとさせる。
そんな土方に2人はププ、と笑い『ありゃもう駄目だな』と不吉な言葉だけを残した。
不吉にしかならない言葉を投げかけられた土方はイラッときたのか刀に手を伸ばし先ほどからの苛立ちも相まって『斬っていい!?こいつら斬っていい!?』と叫ぶ。
「先生なんとかなりませんかね…このままじゃ恐くて一人で厠にも行けんのですよ」
刀に手を伸ばした土方の言葉を遮るように近藤は立ちあがる。
近藤の言葉にププと2人で笑っていた少女がゆっくりと近藤に歩み寄った。
「任せるね、ゴリラ」
「あれゴリラって言った?今ゴリラって言ったよね!?」
少女の言葉に誰もツッコミはしなかったが、本人だけはツッコんだ。
そんなツッコミなど無視してとりあえず軽く屋敷を見て回る。
「おいてめえら…妙なマネしやがったら即打ち首だからな」
すれ違いざまに土方にそう言われ、三人は立ち止まる。
振り返れば殺さんばかりの土方の目線が三人に向けられ、包帯の男と中華の少女は『へいへい』と適当に返すも鼻眼鏡の男は困ったように眉を下げるだけだった。
雪は熱い中暑苦しい恰好で熱い太陽の下を歩いていた。
のぼりを持って歩き、その前を銀時と神楽がこれまた暑そうな格好で触れ回っている。
主に『お祓い』やら『拝み屋』やらの単語を叫ぶ2人の後を雪は何とかついて回っている状態である。
熱いからもあるが、何よりバカバカしくなってきていたのだ。
「ねえ銀さん、神楽ちゃん…こんなことして仕事見つかる?っていうか何で拝み屋?何で拝み屋限定?」
「ばっか!お前…夏と言えばオバケだろ!幽霊だろ!!そして拝み屋だろ!!」
「…ねえ、本当に危機的状況だっていうの…理解してましたか?」
「理解してるアル。贅沢は難病の元ネ。」
「違うだろ!!それ違うわ!!そっちじゃねえし全然理解してねえじゃねえか!!!家計が苦しすぎて食べる物もねえってことだよ!!むしろ電気代やら水道代も危ういんだよ!!今!!もおお!!!2人とも真面目にやってよぉ!私こんな生活もうやだよぉぉ!」
言われたままに着替えた雪は2人と共に町に出かけていた。
朝食は雪が買ってきていたパンを2人に与えたのでお腹すいたうんぬんの下りはもうないだろうが…仕事を探さなければ本当に飢えてしまう。
銀時の尻を叩きようやく重すぎる腰を上げさせたが…銀時は拝み屋の仕事を探し出したのだ。
衣装を渡されのぼりの『拝み屋』という文字で気づけばよかったのだが…というか気づきそうなものだが、雪はこれでやっと月を超えれる!!と喜んでいたのもあり、全然まったくミジンコほどにも気づいていなかった。
ようやく気づいた雪は炎天下の中鼻眼鏡に弁慶のような格好をさせられ本気で熱く苛立っていた。
それを言うならミイラ男のように顔を包帯で巻く銀時も熱いのだろうが、いかんせん他人の感覚器官など雪が知る由もない。
突っ込めば突っ込むほど体力が奪われると雪は頭を抱えた。
こんな胡散臭い連中に誰が依頼を頼むか、と雪は心からそう思った。
そう、思ったのだが…―――
「あの、拝み屋さん…ですよね?」
胡散臭い連中にも声を掛ける輩がいたようである。
雪はげんなりとさせながら振り返ったその表情を…ひきつらせた。
真選組。
江戸の治安を守る特殊警察である。
そんな真選組に奇妙な現象が起こっていた。
隊の人間が次々と倒れるのだ。
それも赤い着物を着た女とうわごとに呟いて。
すでに隊の半数以上が寝込む事態に、副長である土方は頭を悩ませていた。
「みんなうわ言のように赤い着物の女と言ってるんですが…稲山さんが話してた怪談のあれかな…」
「馬鹿野郎。幽霊なんかいてたまるか。」
「じゃあタッキーのストーカー」
「ある意味こええが鷹臣がいねえ場所にあいつらがいるか。」
沖田はお茶を啜りながら昨日の怪談を思い出す。
それはまさに着物を着た女の霊の話で、隊の人達がつぶやくうわ言にそっくりだった。
それを零せば土方に切られ、じゃあ、と鷹臣のストーカーを零しても土方にバッサリと会話を切られた。
『タッキー』、とは沖田だけが呼んでいる鷹臣のあだ名である。
鷹臣も沖田の事を『総くん』と呼び、2人は年が近いというのもあり結構それなりに仲がいい。
多分鷹臣の優しげな笑みが姉と重なるのだろうと近藤はそう見ていた。
「ったく大体幽霊騒ぎで寝込むたぁ気が緩んでる証拠じゃねえのか?ちゃんと稽古してんのかよ…」
土方は舌打ちをしながら煙草を取り出し口にくわえる。
そんな土方を沖田はジッと凝視するように見つめており、その沖田の視線に気づいた土方は『…なんだ』と低い声でそう問うも沖田は相変わらずの無表情で『なんでも』と短く答えた。
そっと逸らされた目線の意味が分からず土方はまた舌打ちを打ちライターを手に火をつけようとした。
しかしこんな時に限って火は着かず、土方は煙草を吸うのを諦めライターを机に放り投げる。
「…………」
煙草が吸えない苛立ちを飲み込むように土方はお茶を一気に飲み干すも、その姿を沖田は視線を戻し目を細めて見つめていた。
土方はここ数日苛立った様子を見せていた。
本人が自覚があるかは分からないが、沖田はそれを面白いと思う。
土方が苛立っている理由を知っているから余計に。
「局長、連れてきました!」
部下達のことなど気にもせず近藤が、『今頃何をしているのだろうなぁ』、と青空を見上げて弟の身を案じていると山崎が戻ってきた。
山崎の方へ振り向けば山崎の後ろにきっちり着込んでいる三人の人間がついてきている。
「街で探してきました、拝み屋です。」
そう言って山崎は着込んでいる三人を局長に紹介する。
土方が山崎の言葉に目をやれば、三人とも恰好はバラバラだが顔を隠しており、怪しさ全開である。
「なんだこいつら…サーカスでもやるのか?」
「いや、霊を払ってもらおうと思ってな」
「おいおい冗談だろ?こんな胡散臭い連中…」
誰がどうみても胡散臭いとしか言いようがなく、確実に信用はない。
しかもどこかで見たような感じもしており土方は近藤の言葉に当然訝しんだ。
だがその瞬間一番小さい中華風のサングラスを掛けた少女が『おお!あらお兄さん背中に…』と意味ありげな事を呟いて止めた。
背中に、の後が続けられず、隣にいた包帯の男に小声で何かを言っていた。
男と少女の内緒話に余計背中の行が気になり『なんだよ…背中のなんだよ』とムッとさせる。
そんな土方に2人はププ、と笑い『ありゃもう駄目だな』と不吉な言葉だけを残した。
不吉にしかならない言葉を投げかけられた土方はイラッときたのか刀に手を伸ばし先ほどからの苛立ちも相まって『斬っていい!?こいつら斬っていい!?』と叫ぶ。
「先生なんとかなりませんかね…このままじゃ恐くて一人で厠にも行けんのですよ」
刀に手を伸ばした土方の言葉を遮るように近藤は立ちあがる。
近藤の言葉にププと2人で笑っていた少女がゆっくりと近藤に歩み寄った。
「任せるね、ゴリラ」
「あれゴリラって言った?今ゴリラって言ったよね!?」
少女の言葉に誰もツッコミはしなかったが、本人だけはツッコんだ。
そんなツッコミなど無視してとりあえず軽く屋敷を見て回る。
「おいてめえら…妙なマネしやがったら即打ち首だからな」
すれ違いざまに土方にそう言われ、三人は立ち止まる。
振り返れば殺さんばかりの土方の目線が三人に向けられ、包帯の男と中華の少女は『へいへい』と適当に返すも鼻眼鏡の男は困ったように眉を下げるだけだった。
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