(3 / 10) ベルトコンベアには気をつけろ (3)
屯所を見て回っていた怪しい三人組を土方は放っておくわけなく、山崎についていくように命じ見張らせていた。
その間土方達三人は居間で待っており、その間も煙草を吸おうと土方は煙草に火をつける。
今度はライターから火がつけられ、土方は漸くニコチンを摂取することが出来た。


「そんなにあのメガネが気になるんですかい?」

「…あ?」


目をつぶりニコチンを体に浸透させていく土方を見て、沖田がそう呟いた。
三人組が屯所を見て回っている間も沖田は土方を盗み見していた。
勿論土方には気づかれていない。
煙草を吸って多少は苛立ちも収まったようだが、貧乏ゆすりが始まり、沖田は面白いと言ったように目を細めて問う。
沖田の問いに土方は睨むように沖田に視線をやる。
目つきの悪い土方に慣れている沖田は睨まれても平然と表情を変えずにおり、無表情の沖田に慣れている土方も沖田の問いに『何がだ』と答えた。
土方は惚けるように答えたが、声が低くなっているため沖田には心情がバレバレで沖田は目を細め土方を見つめる。


「最近あのメガネ、どういう訳か俺に電話してくるんでさァ」

「……へぇ」


沖田は先ほどの言葉に返さず、話題を変えるように『そういやぁ』と思い出したように呟いた。
沖田の気まぐれはいつものことなため一々話題を変えたことに食ってかかるようなことはしない土方だったが、続けられた言葉にピクリと反応を見せる。
何を考え今この話題を振ったかは知らないが、土方は落ち着けと心の中でそう言い聞かせながら平然を装い話を聞いてやる。
そんな土方に沖田は更に愉快そうに続けた。


「まあ、近藤さんを迎えに行くため仕方なく行くんですがね、労いに茶ァ出してくれるんでさァ」

「……………」

「いやー、メガネだメガネだと馬鹿にしていやしたが…あのメガネの淹れる茶は美味いもんですねェ」

「………おい、何が言いたいんだてめえは…」

「土方さんが何の理由でメガネに嫌われたかは知らねえが、安心してメガネを俺に任せてくだせェ…きっと立派なMに仕立ててみせまさァ」

「てめ…!俺ァ嫌われてねえし安心できるかアア!!Mってなんだよ!Mって!!一般市民をMに仕立てんな!!そんな事したら俺もてめえもあのゴリラ女に地獄に落とされんぞ!」

「大丈夫でさァ、そん時すでにメガネは俺の奴隷なもんで。主人の俺を奴隷のメガネが見捨てるわけがねェ」

「俺だけってか!?俺だけ地獄に落とされるってか!?」

「線香くらいはあげてやりまさァ」

「よーし!てめえを斬る!あの三人組よりもまず先にてめえを斬ってやるよオオ!!!」


沖田は面白い玩具を手に入れた、と内心楽しんでいた。
そもそも土方が何をやったかは分からないが雪を怒らせたせいで自分が近藤の回収に行かなければならなくなったのだ。
鷹臣は大抵の夜は仕事でおらず必然的に兄の近藤を迎えに行かなければならない。
しかし近藤を放っておけず土方に任せるよう言っても断固として雪は『沖田さんで』と言って聞かず押し付けられる形で沖田は土方の代わりに近藤を迎えに行っている。
その憂さ晴らしを土方でしても罰は当たらないだろう。
雪にしてもいいが、雪の背後にいる鬼には流石の沖田も逆らえないのかちょっかいを掛ける程度で済ませている。
すでにじゃれているとしか考えていない近藤は2人のようすをほのぼのと見ており、土方は自分だけ助かる気でいる沖田に立ち上がり再び刀を抜こうとした。
その瞬間を狙ったかのように三人組と山崎が帰ってきた。


「ざっと屋敷を見させてもらいましたがね、こりゃ相当強力な霊の波動を感じますなぁ、ゴリラ」

「あ!今確実にゴリラって言ったよね!?」

「まーとりあえず除霊してみますかねえ…こりゃ料金も相当高くなるゴリよ」

「おいおい!何か口癖みたいになってんぞ!」

「して、霊はいかようなものゴリか?」

「移ったアア!!」


何故かしら先ほどからゴリラやらゴリやらと付け足す三人組(のうちの2人)に近藤は過剰に反応する。
多分この間『ねえゴリラ…あ、間違えた。ねえ兄上。』と最愛の弟に言い間違えられた事が原因だろう。
あと周りも。
沖田もゴリ語が移ったように語尾にわざわざゴリを付けて近藤で遊び、そんな沖田は近藤が悲しげにツッコミ、もはや近藤など放って中華少女は沖田の問いに答える。


「えーっと…うーん……工場長…」


中華少女は沖田の問いに曖昧な返事を返しながら答えたが、その瞬間隣にいたミイラ男に何故か殴られ倒れる。


「ええーっとベルトコンベアに挟まれて死んだ工場長の霊です。」

「あのー…みんなが見たって言ってるのは女の霊なんですが…」


何故ベルトコンベアなのか、何故工場長なのかは分からないが、ミイラ男の答えに待ったをかけたのは近藤だった。
近藤の言葉にミイラ男の隣にいる鼻眼鏡が『間違えました』と渋い声で訂正する。


「ベルトコンベアに挟まって死んだ工場長に似てるって言われて自殺した女の霊です。」

「なげえよ!!工場長の行いるか!?」

「いるんです」

「いるのかよ!」


突っ込みキャラとして土方が鼻眼鏡に突っ込みを入れた。
聞いているとベルトコンベアに挟まれて死んだ工場長の行はどう考えても必要ないのだが、鼻眼鏡がキッパリと言い切ったため自分が間違っているのかと勘違いしそうになる。
言い切った鼻眼鏡は堂々たるものだった。
土方の突っ込みもそこそこにミイラ男は縁側に座っていた山崎に振り向く。


「とりあえずお前、山崎と言ったか?」

「え?」

「お前の体に霊を入れて除霊するから」

「え、ええ!?ちょっと待ってください!!」


主に近藤・土方・沖田に任せればいいか、と考えていた山崎だったが、急に自分に振るミイラ男に目を丸くした。
しかも三人は立ち上がり自分を囲った挙句ミイラ男と中華風少女は指を鳴らしている。
これはどう見ても霊を下すというよりリンチである。


「あ、あのー…除霊ってどうやるんですか?」

「お前ごとしばく。」

「なんだァァ!!?それ誰でもできるじゃねえかぐほぉっ!!」


除霊するのに何故囲むのか、何故指を鳴らすのか…山崎は嫌な予感しかしていない。
逃げ出そうにも逃げ出す前に突っ込む山崎の腹に中華風少女が一発入れたため山崎は気を失ってしまった。
それを見てミイラ男は『よし』と頷く。


「はーい!これ入りました!霊入りましたよコレー!」

「霊っていうか…ボディブローが入ったように見えたんですけど…」


頷いた後ミイラ男は近藤達に霊が入ったと振り返った。
しかし霊の下ろし方は山崎だけではなく近藤や沖田、土方から見ても一発入れたようにしか見えず、土方の突っ込みなどよそに中華少女は山崎の背後に回る。


「違うヨー私入りました!えー、みなさーん今日でこの工場は潰れますが責任は全て私が…」

「おいイイ!!工場長じゃねえか!!」


中華少女は山崎の手首を掴みブラブラと手を振るが、入ったらしい霊はどう聞いても工場長だった。
赤い着物の女もベルトコンベアに巻き込まれて死んだ工場長に似てると言われて自殺した女の霊とも全くの無関係だった。
それを近藤が突っ込めば、中華少女はミイラ男と鼻眼鏡を見上げる。


「あれー?なんだっけ?」

「バッカ!お前、ベルトコンベアに挟まれて死んだ女だよ!」

「違います!ベルトコンベアに挟まれる女なんているわけないでしょ!!ベルトコンベアに……あれ、なんだっけ…?」


近藤に突っ込まれ、中華少女は座り込んで考えた。
手を離せば気を失っている山崎がコロンところがったが、今はそれはどうでもいい。
土方はひそひそと話す三人組に静かに刀に手を伸ばした。


「もういいから普通の女やれや」

「無理よ!普通に生きるっていうのが簡単そうで一番難しいの!」

「誰もそんなリアリティ求めてねえんだよ!!」

「煩いミイラ男!!お前の恰好にリアリティがなさすぎネ!!だから雪に告白しても流されるネ!!」

「なんだとコラ!人が気にしてることを…!!大体な!こんなんしてた方がミステリアスだろうが!雪も惚れること間違いなしだろうが!!」

「ミステリアスな男がモテるって考えてる所からモテない要素満載ネ!!女は現実を見て生きる生き物ネ!!だからいい年こいてまともな恋愛もしてこなかったアル!!」

「てめーに俺の何が分かるんだー!!!てめーは俺の母ちゃんか!!」

「あーもー!やめてくださいよー!!」


ついには取っ組み合いが始まり、主に中華少女VSミイラ男の戦いが始まった。
しかも喧嘩内容が次第に関係なくあり、2人は恋愛論で口論しはじめる。
手も足も出して喧嘩を始める2人に鼻眼鏡が止めに入るも無駄なのか二人は止まる勢いを知らない。


「「「あ。」」」


口論の末…三人の正体がバレた。


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