(5 / 13) その後 (5)
朝ごはんを食べた後、洗濯物をしたり掃除したりとのんびりしていた。
銀時も今日は休暇にし(人の家なのに相変わらず)のんびりしようとしたのだが、妙が銀時に『あらお仕事はいいんですか?』『あらまだいらしたんですか?』『あらこんなところに仏像なんてあったかしら?』と全く動かない銀時を邪険にし始めたので銀時と神楽は帰る事にした。
まあいずれは万事屋の掃除もしなくてはいけなかったし、平然と装っていても妙の心はまだ吹っ切れていないだろうから今日はこの辺でお暇しようと考えていたのだ。
だが…


「お泊りしたいアル!」


玄関で靴を履く銀時の背に神楽がそう言った。
その言葉に銀時はブーツを履いているのが途中だったが神楽に振り返り、雪も神楽を見た。


「あ?今なんつった神楽」

「私、もう一泊したいネ!姉御と一緒にお風呂入ったり寝たりしたいヨ!」

「あら、嬉しい事を言ってくれるのね神楽ちゃん!じゃあ今日は二人で過ごしましょうか…神楽ちゃんに似合う着物や浴衣買ったのよ」


銀時の問いに神楽は妙に抱き着く。
神楽からそんな我が儘初めてで、それも銀時と同じく神楽も妙を警戒していたはずなのだ。
そんな神楽の突拍子もない行動と言葉に銀時は『はあ?』と零した。
『お前らそんな仲良かったか?』とも思ったが、雪の『え!いつの間に買ったんですか!?』という驚きの声で言うのを面倒臭くなってやめた。


(行き成りなに言ってやがんだ、こいつ…もしかしてこいつのダークマター(卵焼き)を食べて頭可笑しくなったか?)


ジトリと銀時は神楽を見る。
今まで妙に抱き着く事がなかったのでそれがまた嘘っぽかった。
何の心変わりか分からないが、そうなると今夜は一人か…と銀時は思い、どうも誰も帰ってこない万事屋に帰って素直に寝る事も出来ず『飲みに行くか』と考えていた。
行きつけ飲み屋の名前を何件か思い出していると銀時は神楽と目と目があった。


「雪は万事屋に泊るアル」

「え?」

「どうせ銀ちゃんこのまま飲み屋に行って散財させるつもりネ」


『だからそれを阻止するために、雪、泊るアル』、と続ける神楽の言葉に銀時は目を見張った。
『え!それは困る!』と雪が万事屋の家計を握っているため神楽の話を信じて妙と交渉してよそ見をしている間に、神楽は驚く銀時にニヤリと笑いグッと親指を立てて見せた。


(舞台は揃えたネ!銀ちゃん!気張れヨ!!)

(グラさんンンンンン!!!)


グッと親指を立てる神楽を銀時は神にも見えた。
神楽は己を犠牲にし、銀時に雪と二人っきりにしてくれた。
妙が何故か神楽の我儘を受け入れたといのが引っかかるが、銀時は今はどうでもよかった。
雪と二人っきりになれるのだ。
銀時は神楽に同じく指を立てて返した。





雪と銀時は追い出されるように志村家を出て行った。
神楽の『明日迎えに来いヨ〜』という一方的な約束を交わしながら銀時と雪は帰宅するため歩き出す。
隣を歩く雪をチラリと見れば自分との距離が少し開けていた。
それは着物を着ているというのもあるし、久々に二人っきりだし付き合い始めた気恥ずかしさなどもあり、そして何より緊張しているのだろう。
今更なんだけどなぁと思いながら緊張している表情の雪に銀時は苦笑いを浮かべ、そっと雪の手を掴んで手と手を繋ぐ。
その手に雪は弾かれたように顔を上げ銀時を見た。
銀時も雪を見下ろせば雪は顔を赤く染めており、それが可愛くて目を細める。


「ぎ、銀さん?」

「俺らもうカップルだし、変じゃないだろ?」

「そ、そうですけど…」

「それとも嫌?俺と手を繋ぐの。」


銀時に問われ雪は首を振った。
銀時に触れるのも、触れられるのも嫌いじゃなかった。
むしろ触れられると胸のあたりが暖かくなって好きだった。
ただ、今更ながら姉に認められ改めてこの人と恋人同士になったと思うと緊張してしまうのだ。
しかし案外その緊張は長くは続かなかった。


「銀さんにお雪ちゃんじゃないか!!なんだなんだ!手なんか繋いじゃって!!やっとお妙ちゃんの許可貰ったのかい?」

「おうよ、雪はもう俺の可愛い恋人だから手ェ出すなよ?おやっさん」

「ハハハ!熱いねえ!!おい!てめえら!やっと銀さんとお雪ちゃんがくっついたぞ!!今夜は祝杯だ!!」

「え!!銀さんおめでとう!!頭を下げ続けた甲斐があったよな〜!!お雪ちゃんもおめでとう!」

「おーい!!銀さんとお雪ちゃんがついにゴールインしたぞーー!!!」


万事屋へ帰る途中、手と手を繋いで堂々と歩く二人を見た近所の人や知り合いが集まり、それぞれお祝いの言葉をくれた。
中にはおめでとうと言いながら男泣きする人もおり、雪はそれを見て土方達だけではなく周りにも迷惑や心配を掛けさせてたんだなぁと少し居たたまれなさを感じる。
だが、自分の事のように心配してくれていたのだろうと嬉しくも思った。
わらわらと集まりついには人が人を呼び芸能人のように囲まれてしまった。
更に言えばまるで結婚したように言いだし、『これでやっと神楽ちゃんもお姉ちゃんになれるなァ』とか『神楽ちゃん妹が欲しいとか言ってたぞ?』とか『結納はいつだ?』とか『式には呼んでくれよな!ご祝儀奮発するからさ!!』とか色々好き勝手言っていた。
それらを銀時は適当にお礼を言いながら流し、人の波から脱出し何とか万事屋に帰ってこれた。


「す、すごい人でしたね…」

「そうだな…まあそれだけ俺らは周りを巻き込んでたってことだろ…その分幸せにならなきゃな、雪」

「銀さん…」


銀時は雪には言わないが、将来も考えてはいた。
結婚前提で、と堅苦しい事は言わないが銀時の中ではそれを前提に付き合っていた。
銀時の言葉に雪は『そうですね』と照れたように笑った。
その笑みに釣られるように銀時も笑みを浮かべるとお登勢の店のドアが開き、たまが出て来た。
どうやら店の前の掃除のために外に出て来たらしい。
たまは持っていたホウキで掃除をしようとしたが、近づいてくる銀時と雪に気づき目を丸くした後慌てて店に入る。
それに雪は首を傾げていたが、すぐにたま、キャサリン、そしてお登勢が出て来た。


「雪!!」

「お久しぶりです、お登勢さん」


お登勢は店で開店の準備をしていたがたまから聞いて慌てて出て来た。
お登勢はすぐに雪に駆け寄り銀時と雪の手が繋がっているのを見て目を濡らせ涙を拭った。


「そうかい…ようやく認めてもらったんだねェ…よかったねェ、銀時、雪」

「おいおい、泣くほどか?俺らまだ交際スタートしたばっかりなんだが…」

「しょうがないだろう?私もたまもキャサリンもずっと雪と銀時を心配していたんだからね」


お登勢は普段は憎まれ口を叩くが、何だかんだ言いながらも銀時達を可愛がっており二人が引き離されたと知り、そして元気を失くしていく銀時と神楽、雪を見ていて心を痛んでいたのだ。
それはたまも同じで、キャサリンは素直ではないが同じように心配していた。
それが今、銀時と雪は手と手を繋ぎ、あの、雪が脱走した時とは違い道を堂々と歩いているのを見て思わずお登勢は涙ぐんでしまった。
お登勢達にも心配を掛けさせてしまったという事で雪は謝る。


「すみませんでした、お登勢さん…皆さんに迷惑をかけてしまって…」

「なに言ってんだい…そんなこと気にしちゃいないよ……こうして二人で一緒に歩いているのを見ただけで…それだけで…」


頭を下げる雪にお登勢はまた涙ぐんでしまい最後まで言えなかった。
お登勢がこれほど涙を見せるという事はよほど自分たちは心配をかけてしまったのだろうと反省する。
それと同時に、だからこそ銀時と幸せになろうとも思えた。


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