久々に万事屋に帰ってくるとまず出迎えてくれたのは定春だった。
正直忘れられてるかと思った定春だったが、何とか忘れられることなく、抱き着いて出迎えてくれた。
顔中舐められ、眼鏡も顔もベットベトになり、銀時が『おいおい俺でさえまだそんなプレイしてねえんだからやめろよな』と言って定春を退かせてくれた。
『いや、これから先そんな特殊なプレイするつもりはないんで』と冷たく返しながら雪は洗面台からタオルを取ろうと上がりトイレ、お風呂場にもつながる脱衣所の扉を開いた。
だが開けたその先は―――腐海だった。
「ぎ、銀さん…これ…」
「なに?」
「これ、どういうことですか…」
雪が脱衣所の前で立ち止まり入らないのを不思議に思いながらブーツを脱いでいると雪に呼ばれ、ブーツを脱ぎ捨てたまま雪の背後に歩み寄る。
『どうした?』と問えば雪は脱衣所の中を指さしており、その指さしている方へ向ければ銀時からしたら何の変哲もない光景が広がっていた。
しかし、雪は違っていたらしい。
「どういうって……なにが?」
「これですよ!!この洗濯物!!どうしてこんなに溜まってるんです!」
雪が驚いた光景とは洗濯機の傍に置かれているカゴに零れるほど溜まった洗濯物だった。
それを見て銀時は頬をかく。
「いや、なんていうか…やる気なくて…一気に片付けようとしてたんだよ?一応片付けようとは思ってたんだけど…ね?」
「いや、ね?じゃないですよ…―――!、まさか…」
一応お登勢やたまが定期的に来てくれるとはいえ雪のように毎日はしていないため洗濯物も溜まる一方だった。
雪は目線をあちこちにやる銀時にハッとさせ、銀時から抜け出し居間へと向かう。
居間はお客を出迎える為綺麗でそれにはホッとさせる。
次に神楽と定春の部屋と言う名の押し入れに向かうとやはり予想通りぐっちゃだった。
銀時の部屋も見れば片してはいるけど片しきれない物が散乱しており、布団も敷きっぱなし状態。
最後に主婦の城とも言われているキッチンへ向かえば、案の定使った形跡はほぼ皆無。
冷蔵庫を開けると雪が妙によって引き離される前に賞味期限がギリギリだった味噌の賞味期限が以前見たままになってるし納豆なんて振ればカラカラと音が鳴っていた。
残ってる物で賞味期限が切れてない物と言えば、神楽が好きな卵かけごはん用のたまごとなぜか入っている酢昆布、そして銀時の糖分の様々な物と定番のいちご牛乳があった。
お米なんて米粒一粒もなく、パンもカビが生えていた。
「……銀さん…なんですかこの有様は…」
「あー…えーっとぉ……雪、ちゃん?あの…怒っちゃった?」
「…怒りを通り越して呆れてます」
冷蔵庫を開けて呆ける雪を銀時は目線を泳がせながら台所の入り口に立つ。
フルフルと震える雪の背に銀時は『ヤバイ』と思った。
お登勢が気を使うと言っても銀時は正直雪との思い出深いこの家に誰かを上げるのをあまり良しと思っていなかった。
それが例え大家であり恩人のお登勢や金を落としてくれる依頼人としても、だ。
だから掃除の範囲は客が来る廊下と居間にしてもらっていたし、食事なんてお登勢のところに食いに行っていてここ数か月数えるほどしか台所を使用していない。
その癖自分たちの好きな物だけは揃えているのでそれを見て雪は怒っているのだろうと思った。
道場の娘だからか、妙の教育の賜物か、雪はこういうのには結構うるさいのだ。
しかし雪は怒ってはいなかった。
が、呆れてはいたらしい。
せっかく付き合えるようになったのに呆れられ捨てられると思った銀時は焦る。
「あ、ああ、そう…ご、ごめんね、なんか俺も神楽も何もやる気がなかったっていうかなというか…」
「銀さんも神楽ちゃんもちゃんと食べてました?」
「へ?あ、ああ…ババアのとことかに行ってたから…なんとか」
「そうなんですか、なら良かった…でもお登勢さんに改めて何かお礼しなきゃな…」
銀時と神楽と離れ離れになっている時、ずっと雪は二人の事を思っていた。
主に体調面を心配していた。
銀時がいるから何とかやっていけるとは思っていたが、案外精神的にきていたらしく家事は出来ていなかったらしい。
それは雪も同じで、妙といる間いつも通り動いてはいたが、楽しくないし掃除も料理も甘かった。
だからそれで銀時だけ責めるのは少々可哀想だと思い、雪は食べてさえいてくれればいいかと思った。
また後日、お登勢にお礼しに行こうと雪は思いながら冷蔵庫を閉じ、銀時に振り返る。
銀時は雪が怒っていないのを見てホッとしており、それが親に怒られる子供のように可愛く見えた。
でも、それとこれとは別である。
雪は銀時の横を通り抜け、ある物を銀時に持たせる。
それは…
「えーっと……これはなあに?雪ちゃん…」
「ゴミ袋です」
「いや、分かるけど…分かるんだけれども…なんでこんなものを持たせるのかって銀さん聞いてるんだけど…」
持たせたものとは、可燃と資源のゴミ袋だった。
せっかく雪が怒っていないのだからイチャイチャしようと思った銀時だったが、持たされたそのゴミ袋に目を瞬かせる。
そんな銀時に雪はたすき掛けをして女物の着物でも動きやすくする。
壁には雪が出した掃除機や雑巾などの道具が掛けられているため、銀時は掃除という選択肢しかない事を悟る。
しかも雪を見れば掃除する気満々であり、何故か生き生きしていた。
銀時は昼からイチャイチャする計画が崩れそうになるも何とか持ちこたえようと向かい合う雪を腕に閉じ込める。
突然抱きしめてくる銀時に雪は顔を赤くして困惑した。
「ぎ、銀さんっ?」
「なあ、そんなもん後でもいいだろ?それよりせっかく恋人同士になれたんだからいいことしようや…な?」
困惑し顔を赤らめる雪を見て『やれる!!』と思った。
むしろ落ちた!、と思った。
しかし…
「駄目です」
銀時は帰ってきた言葉に呆気に取られる。
「…え?」
「駄目です」
キョトンとなり雪を見下ろす銀時に雪はもう一度復唱した。
まさかの却下に銀時は焦りを覚える。
「い、いや…でもさ…俺達恋人じゃん?せっかく恋人同士になれたんじゃん?メスゴリラの壁をあんなにも苦労して乗り越えてやっと俺達結ばれたんじゃん?それなのに駄目って…むしろそれ以外何するっていうんだ?」
「掃除しましょう」
「なんでだよ!!」
恋人同士でやる事と言えばなーんだ、という質問に半数以上が『夜の運動会』だろう。
むしろ銀時は雪さえよければ朝も昼も夜も大運動会である。
セックスである。
エッチである。
だが、それを雪に拒絶された挙句に掃除をしろと言われた。
まあ確かに客が入る場所以外は汚いが、それが嫌ならソファでするのも一興ではなかろうか!!
銀時はこの時必死だった。
だが、そんな焦りを見せる銀時に雪は頬を更に染め気恥ずかしそうに目を逸らし腕に閉じ込める銀時の胸元に顔を寄せる。
「だ、だって…私…銀さんとの初めてはお布団でって、決めてるから…」
銀時はその初心さを見せる雪の乙女な言葉にズッキューンと心臓を、心を、全てを撃ち抜かれた。
腕に閉じ込めている体はフルフルと震えており、まさに守ってやりたいと思うほど愛おしい。
今最強を誇る夜兎の集団が攻めてきても一人で全て倒せるくらいの気力が沸いていた。
しかし銀時は知らない…グッと拳を握りベットインに向けてやる気を燃え上がらせる銀時の胸元に顔を寄せる雪の顔が…―――ニヤリと笑みを浮かべていることを。
「じゃあしょうがないよなー!!じゃあ銀さん頑張っちゃうわー!!!よっしゃー!!雪!待ってろよ!!掃除なんて一秒で終わらせてやる!!!」
「わー、とっても頼り甲斐があって銀さん超ステキー!じゃあまずは自分の部屋をお願いしまーす」
『まかせとけェェェ!』、と棒読みの雪の応援を糧に銀時は自室へ駆け込んだ。
そんな銀時の背に手を振って見送りながら…
「銀さんって、こんなにチョロかったっけ」
そうぽつりと呟く。
幸いなことに銀時は気づいていなかった。
銀時を見送った後、雪はまず洗濯物を始める。
銀時曰く洗濯物の中には洗ったのもあるらしいがごじゃまぜで何が何だか分からないらしい。
神楽も銀時も匂いを嗅いで比較的匂いがないものを着ていると聞き、雪は『戻ってきて本当に良かった…』と心からそう思う。
何が洗ってあるかなど分からないということで、全部洗う事にした。
流石に一回では済まされない量なので何回か分けて洗濯をする。
その間神楽の部屋の掃除を始めた。
部屋と言っても神楽の部屋は押入れなので掃除はあっという間に終わる。
その後台所に向かい何日前かの生ごみを捨てついでにシンクを掃除し、台所の床をホウキで掃いた。
一回目の洗濯が終わり掃除をする前に雪はその濡れた洗濯物を干す。
また洗濯物を入れてスイッチを入れた後、冷蔵庫の賞味期限のチェックをし、食べれなさそうなものは全てゴミ袋に入れる。
あとは丁度明日が燃えるゴミなのでゴミ箱にあるゴミを全て袋に入れる。
布団はもう干す時間がないので明日干すとして、残りの洗濯物も干す場所がないからコインランドへ行ったりと銀時も頑張ってくれたのであっと言う間に終わった。
「あ゙−…疲れた…」
「お疲れさまです、銀さん」
雪とコインランドから乾いた服を持って帰った銀時は普段しない掃除をして疲れたように雪の背中と自分の背中を合わすように座る。
ズシリと来る銀時の重さに雪は笑みを浮かべた。
彼は相変わらず文句をいいながらも何だかんだ言ってやってくれるのだ。
だからこそ神楽も銀時に懐き、雪もそんな彼だからこそ恋に落ちた。
畳みながら雪は重さを増やしていく銀時に『もう、重いですよ、銀さん』と声をかけるも『重労働した俺を癒してくれないのか〜』と大げさに言った。
そんな銀時に雪はくすくすと声を零しながら笑う。
「これ、終わったら買い物に出掛けましょう…今夜は何が食べたいですか?」
「雪」
「……銀さん…なんていうか…コメント返しにくいっていうか…オヤジくさいです」
「だって俺、今、雪が食べたいんだもん」
「もんって言ったって駄目です!まだ日が高いうちからそんな乱れた生活していたら人間堕落していく一方ですよ?それでなくてもマダオだマダオだって言われてるのに…」
そういえば銀時は『ちぇ』と拗ねたように声を零し体勢を変える。
背中を合わせるように座っていたが、体を反転させ、雪を後ろから抱きしめるように座る。
銀時の両足に囲まれ、腰には銀時の太い腕でガッチリホールドされ、銀時は顎を雪の肩に乗せる。
ふわりとした銀時の髪と、銀時の匂いが香り、更には彼の温もりに包まれているようで雪は正直恥ずかしくてたまらなかった。
『邪魔です』と邪険にして緊張しているのを隠したが、拗ねたのか銀時には無視されてしまう。
『子供ですかアンタ』と言ってもやっぱりツンとそっぽを向かれて無視された。
そんな子供っぽさも可愛くは思うが、そこまでされると雪ももはや緊張するとか恥ずかしいなどはなく溜息しか出ない。
何も反応しないので雪は洗濯を畳むのを再開する。
しかし…さわっ、と胸や膝当たりから触れられているような感覚に襲われ、雪はゆっくりと下へ目をやる。
「銀さん…」
「んー?」
「セクハラはやめてください」
「………」
雪が下を見れば…銀時の手が胸と太もも辺りにあり、さわさわと触れていた。
それを雪は冷静に咎め、耳元から銀時の舌打ちが聞こえた。
銀時の手は渋々に腰に戻っていった。
「着物もいいけどよ…やっぱり袴が一番いいよな」
「そうですか?まあ私も袴の方が動きやすくて好きですけど」
「だろ?袴の方が脱がせやすいもんなァ…着物はガッチリ着込んでるから胸触っても硬いしあれだ…全然感じてくれねえし…やっぱ袴だよなぁ…」
暫く黙っていたかと思えば、しみじみと言う銀時に雪は顔を引きつらせる。
雪だって結ばれるのなら心も体も結ばれたい。
だが、やる事はまだまだ沢山あるのだ。
それに姉の事もある。
まだ雪は姉や銀時程吹っ切れてはおらず、只今考え中なのだ。
だから…雪はエロ親父思考の銀時に指を二本立てて見せた。
「ねえ、銀さん…別にそのオヤジ思考をどうこう言うつもりはないですけど、口に出すのやめてくれません?」
「……すみません…」
『鼻フックデストロイヤー』の構えをする雪に銀時は顔を青ざめ手を上げて降参をする。
一瞬だけ、雪は『なんでこんなエロオヤジ好きになったんだろう』とまだ付き合って数時間だというのに心の底からそう思ったという。
正直忘れられてるかと思った定春だったが、何とか忘れられることなく、抱き着いて出迎えてくれた。
顔中舐められ、眼鏡も顔もベットベトになり、銀時が『おいおい俺でさえまだそんなプレイしてねえんだからやめろよな』と言って定春を退かせてくれた。
『いや、これから先そんな特殊なプレイするつもりはないんで』と冷たく返しながら雪は洗面台からタオルを取ろうと上がりトイレ、お風呂場にもつながる脱衣所の扉を開いた。
だが開けたその先は―――腐海だった。
「ぎ、銀さん…これ…」
「なに?」
「これ、どういうことですか…」
雪が脱衣所の前で立ち止まり入らないのを不思議に思いながらブーツを脱いでいると雪に呼ばれ、ブーツを脱ぎ捨てたまま雪の背後に歩み寄る。
『どうした?』と問えば雪は脱衣所の中を指さしており、その指さしている方へ向ければ銀時からしたら何の変哲もない光景が広がっていた。
しかし、雪は違っていたらしい。
「どういうって……なにが?」
「これですよ!!この洗濯物!!どうしてこんなに溜まってるんです!」
雪が驚いた光景とは洗濯機の傍に置かれているカゴに零れるほど溜まった洗濯物だった。
それを見て銀時は頬をかく。
「いや、なんていうか…やる気なくて…一気に片付けようとしてたんだよ?一応片付けようとは思ってたんだけど…ね?」
「いや、ね?じゃないですよ…―――!、まさか…」
一応お登勢やたまが定期的に来てくれるとはいえ雪のように毎日はしていないため洗濯物も溜まる一方だった。
雪は目線をあちこちにやる銀時にハッとさせ、銀時から抜け出し居間へと向かう。
居間はお客を出迎える為綺麗でそれにはホッとさせる。
次に神楽と定春の部屋と言う名の押し入れに向かうとやはり予想通りぐっちゃだった。
銀時の部屋も見れば片してはいるけど片しきれない物が散乱しており、布団も敷きっぱなし状態。
最後に主婦の城とも言われているキッチンへ向かえば、案の定使った形跡はほぼ皆無。
冷蔵庫を開けると雪が妙によって引き離される前に賞味期限がギリギリだった味噌の賞味期限が以前見たままになってるし納豆なんて振ればカラカラと音が鳴っていた。
残ってる物で賞味期限が切れてない物と言えば、神楽が好きな卵かけごはん用のたまごとなぜか入っている酢昆布、そして銀時の糖分の様々な物と定番のいちご牛乳があった。
お米なんて米粒一粒もなく、パンもカビが生えていた。
「……銀さん…なんですかこの有様は…」
「あー…えーっとぉ……雪、ちゃん?あの…怒っちゃった?」
「…怒りを通り越して呆れてます」
冷蔵庫を開けて呆ける雪を銀時は目線を泳がせながら台所の入り口に立つ。
フルフルと震える雪の背に銀時は『ヤバイ』と思った。
お登勢が気を使うと言っても銀時は正直雪との思い出深いこの家に誰かを上げるのをあまり良しと思っていなかった。
それが例え大家であり恩人のお登勢や金を落としてくれる依頼人としても、だ。
だから掃除の範囲は客が来る廊下と居間にしてもらっていたし、食事なんてお登勢のところに食いに行っていてここ数か月数えるほどしか台所を使用していない。
その癖自分たちの好きな物だけは揃えているのでそれを見て雪は怒っているのだろうと思った。
道場の娘だからか、妙の教育の賜物か、雪はこういうのには結構うるさいのだ。
しかし雪は怒ってはいなかった。
が、呆れてはいたらしい。
せっかく付き合えるようになったのに呆れられ捨てられると思った銀時は焦る。
「あ、ああ、そう…ご、ごめんね、なんか俺も神楽も何もやる気がなかったっていうかなというか…」
「銀さんも神楽ちゃんもちゃんと食べてました?」
「へ?あ、ああ…ババアのとことかに行ってたから…なんとか」
「そうなんですか、なら良かった…でもお登勢さんに改めて何かお礼しなきゃな…」
銀時と神楽と離れ離れになっている時、ずっと雪は二人の事を思っていた。
主に体調面を心配していた。
銀時がいるから何とかやっていけるとは思っていたが、案外精神的にきていたらしく家事は出来ていなかったらしい。
それは雪も同じで、妙といる間いつも通り動いてはいたが、楽しくないし掃除も料理も甘かった。
だからそれで銀時だけ責めるのは少々可哀想だと思い、雪は食べてさえいてくれればいいかと思った。
また後日、お登勢にお礼しに行こうと雪は思いながら冷蔵庫を閉じ、銀時に振り返る。
銀時は雪が怒っていないのを見てホッとしており、それが親に怒られる子供のように可愛く見えた。
でも、それとこれとは別である。
雪は銀時の横を通り抜け、ある物を銀時に持たせる。
それは…
「えーっと……これはなあに?雪ちゃん…」
「ゴミ袋です」
「いや、分かるけど…分かるんだけれども…なんでこんなものを持たせるのかって銀さん聞いてるんだけど…」
持たせたものとは、可燃と資源のゴミ袋だった。
せっかく雪が怒っていないのだからイチャイチャしようと思った銀時だったが、持たされたそのゴミ袋に目を瞬かせる。
そんな銀時に雪はたすき掛けをして女物の着物でも動きやすくする。
壁には雪が出した掃除機や雑巾などの道具が掛けられているため、銀時は掃除という選択肢しかない事を悟る。
しかも雪を見れば掃除する気満々であり、何故か生き生きしていた。
銀時は昼からイチャイチャする計画が崩れそうになるも何とか持ちこたえようと向かい合う雪を腕に閉じ込める。
突然抱きしめてくる銀時に雪は顔を赤くして困惑した。
「ぎ、銀さんっ?」
「なあ、そんなもん後でもいいだろ?それよりせっかく恋人同士になれたんだからいいことしようや…な?」
困惑し顔を赤らめる雪を見て『やれる!!』と思った。
むしろ落ちた!、と思った。
しかし…
「駄目です」
銀時は帰ってきた言葉に呆気に取られる。
「…え?」
「駄目です」
キョトンとなり雪を見下ろす銀時に雪はもう一度復唱した。
まさかの却下に銀時は焦りを覚える。
「い、いや…でもさ…俺達恋人じゃん?せっかく恋人同士になれたんじゃん?メスゴリラの壁をあんなにも苦労して乗り越えてやっと俺達結ばれたんじゃん?それなのに駄目って…むしろそれ以外何するっていうんだ?」
「掃除しましょう」
「なんでだよ!!」
恋人同士でやる事と言えばなーんだ、という質問に半数以上が『夜の運動会』だろう。
むしろ銀時は雪さえよければ朝も昼も夜も大運動会である。
セックスである。
エッチである。
だが、それを雪に拒絶された挙句に掃除をしろと言われた。
まあ確かに客が入る場所以外は汚いが、それが嫌ならソファでするのも一興ではなかろうか!!
銀時はこの時必死だった。
だが、そんな焦りを見せる銀時に雪は頬を更に染め気恥ずかしそうに目を逸らし腕に閉じ込める銀時の胸元に顔を寄せる。
「だ、だって…私…銀さんとの初めてはお布団でって、決めてるから…」
銀時はその初心さを見せる雪の乙女な言葉にズッキューンと心臓を、心を、全てを撃ち抜かれた。
腕に閉じ込めている体はフルフルと震えており、まさに守ってやりたいと思うほど愛おしい。
今最強を誇る夜兎の集団が攻めてきても一人で全て倒せるくらいの気力が沸いていた。
しかし銀時は知らない…グッと拳を握りベットインに向けてやる気を燃え上がらせる銀時の胸元に顔を寄せる雪の顔が…―――ニヤリと笑みを浮かべていることを。
「じゃあしょうがないよなー!!じゃあ銀さん頑張っちゃうわー!!!よっしゃー!!雪!待ってろよ!!掃除なんて一秒で終わらせてやる!!!」
「わー、とっても頼り甲斐があって銀さん超ステキー!じゃあまずは自分の部屋をお願いしまーす」
『まかせとけェェェ!』、と棒読みの雪の応援を糧に銀時は自室へ駆け込んだ。
そんな銀時の背に手を振って見送りながら…
「銀さんって、こんなにチョロかったっけ」
そうぽつりと呟く。
幸いなことに銀時は気づいていなかった。
銀時を見送った後、雪はまず洗濯物を始める。
銀時曰く洗濯物の中には洗ったのもあるらしいがごじゃまぜで何が何だか分からないらしい。
神楽も銀時も匂いを嗅いで比較的匂いがないものを着ていると聞き、雪は『戻ってきて本当に良かった…』と心からそう思う。
何が洗ってあるかなど分からないということで、全部洗う事にした。
流石に一回では済まされない量なので何回か分けて洗濯をする。
その間神楽の部屋の掃除を始めた。
部屋と言っても神楽の部屋は押入れなので掃除はあっという間に終わる。
その後台所に向かい何日前かの生ごみを捨てついでにシンクを掃除し、台所の床をホウキで掃いた。
一回目の洗濯が終わり掃除をする前に雪はその濡れた洗濯物を干す。
また洗濯物を入れてスイッチを入れた後、冷蔵庫の賞味期限のチェックをし、食べれなさそうなものは全てゴミ袋に入れる。
あとは丁度明日が燃えるゴミなのでゴミ箱にあるゴミを全て袋に入れる。
布団はもう干す時間がないので明日干すとして、残りの洗濯物も干す場所がないからコインランドへ行ったりと銀時も頑張ってくれたのであっと言う間に終わった。
「あ゙−…疲れた…」
「お疲れさまです、銀さん」
雪とコインランドから乾いた服を持って帰った銀時は普段しない掃除をして疲れたように雪の背中と自分の背中を合わすように座る。
ズシリと来る銀時の重さに雪は笑みを浮かべた。
彼は相変わらず文句をいいながらも何だかんだ言ってやってくれるのだ。
だからこそ神楽も銀時に懐き、雪もそんな彼だからこそ恋に落ちた。
畳みながら雪は重さを増やしていく銀時に『もう、重いですよ、銀さん』と声をかけるも『重労働した俺を癒してくれないのか〜』と大げさに言った。
そんな銀時に雪はくすくすと声を零しながら笑う。
「これ、終わったら買い物に出掛けましょう…今夜は何が食べたいですか?」
「雪」
「……銀さん…なんていうか…コメント返しにくいっていうか…オヤジくさいです」
「だって俺、今、雪が食べたいんだもん」
「もんって言ったって駄目です!まだ日が高いうちからそんな乱れた生活していたら人間堕落していく一方ですよ?それでなくてもマダオだマダオだって言われてるのに…」
そういえば銀時は『ちぇ』と拗ねたように声を零し体勢を変える。
背中を合わせるように座っていたが、体を反転させ、雪を後ろから抱きしめるように座る。
銀時の両足に囲まれ、腰には銀時の太い腕でガッチリホールドされ、銀時は顎を雪の肩に乗せる。
ふわりとした銀時の髪と、銀時の匂いが香り、更には彼の温もりに包まれているようで雪は正直恥ずかしくてたまらなかった。
『邪魔です』と邪険にして緊張しているのを隠したが、拗ねたのか銀時には無視されてしまう。
『子供ですかアンタ』と言ってもやっぱりツンとそっぽを向かれて無視された。
そんな子供っぽさも可愛くは思うが、そこまでされると雪ももはや緊張するとか恥ずかしいなどはなく溜息しか出ない。
何も反応しないので雪は洗濯を畳むのを再開する。
しかし…さわっ、と胸や膝当たりから触れられているような感覚に襲われ、雪はゆっくりと下へ目をやる。
「銀さん…」
「んー?」
「セクハラはやめてください」
「………」
雪が下を見れば…銀時の手が胸と太もも辺りにあり、さわさわと触れていた。
それを雪は冷静に咎め、耳元から銀時の舌打ちが聞こえた。
銀時の手は渋々に腰に戻っていった。
「着物もいいけどよ…やっぱり袴が一番いいよな」
「そうですか?まあ私も袴の方が動きやすくて好きですけど」
「だろ?袴の方が脱がせやすいもんなァ…着物はガッチリ着込んでるから胸触っても硬いしあれだ…全然感じてくれねえし…やっぱ袴だよなぁ…」
暫く黙っていたかと思えば、しみじみと言う銀時に雪は顔を引きつらせる。
雪だって結ばれるのなら心も体も結ばれたい。
だが、やる事はまだまだ沢山あるのだ。
それに姉の事もある。
まだ雪は姉や銀時程吹っ切れてはおらず、只今考え中なのだ。
だから…雪はエロ親父思考の銀時に指を二本立てて見せた。
「ねえ、銀さん…別にそのオヤジ思考をどうこう言うつもりはないですけど、口に出すのやめてくれません?」
「……すみません…」
『鼻フックデストロイヤー』の構えをする雪に銀時は顔を青ざめ手を上げて降参をする。
一瞬だけ、雪は『なんでこんなエロオヤジ好きになったんだろう』とまだ付き合って数時間だというのに心の底からそう思ったという。
← | back | →
しおりを挟む