ミーン、ミーン、と蝉の声がうるさく響く。
炎天下の中、雪は目の前に広がる光景に何とも言えずただ見てるだけしかできなかった。
「……顔が真っ青…」
雪の目の前にいるのは木に吊るされている銀時と神楽がおり、雪は捕まったことは捕まったがすぐに解放され何故かお茶やお茶菓子を用意されもそもそと食べていた。
食べなくてもいいが食べなければいけない空気だったため今雪の口内はとてつもなく甘い。
「あの…悪気はなかったんです…その…仕事なくて…お金もなくて…通帳が落書き帳になってて…」
雪は隣で仲良く縁側に座る近藤を見る。
その正反対には土方がいたが、まだ『胸しかない地味女』事件は解決していない…というよりは雪がまだまだ根に持っているため土方を無視している。
それを当然気づいている土方は小さく舌打ちを打つも雪は一切こちらをみようとはしない。
雪に懇願された近藤は困ったように眉をさげ、土方を見た。
つられて土方を見れば土方もまた雪の視線に気づき目を落とす。
久々に目と目があった雪はとても悲しそうな顔をしており土方は負けそうになった。
「だからって詐欺はダメだろ…暫くはあのままだな」
「そんなぁ…じゃあ共犯の私もあそこに吊るしてくださいよ」
「お、自らMに心願たァ調教のしがいがあらァ…じゃあ早速、この縄で…」
「そおおごおお!!!だから言ってんだろ!!一般人をMにしたてんなって!!」
何だか自分だけが刑を免れている罪悪感からか一緒に吊るしてほしいと願い出るもやはり答えはNO。
どうしてかと聞けば局中法度の第46条の『万事屋憎むべし、しかし雪ちゃんにだけは優しくすべし』を出される始末。
だから先ほどお茶とお茶菓子が出てきたらしい。
雪は最初、近藤からそれを聞いた時素直に『馬鹿ですか?』と言ってしまった。
喧嘩をはじめた土方と沖田をよそに雪は2人に歩み寄り心配そうに声をかけた。
「大丈夫ですか、2人とも…」
「大丈夫なわけねえだろ…血ィ上るどころじゃねえよ…意識朦朧としてきたよ…」
「ちょっとどうするですか?土方さんすっごく怒ってますよ…しばらくこのままだって言ってました…私2人もおんぶできませんけど…」
「んなこと言ったってなぁ…縛られてるんだから仕方ねえだろ?」
「随分と余裕ですねィ、旦那。」
「沖田さん…」
先ほどから神楽が何も言わないのがとてつもなく心配になり、雪は無駄だと分かっていつつも手で煽って風を送ってやる。
神楽が『うー』やら『あー』やらしか喋れないなか、銀時は辛そうにしつつも雪との会話を成立しており、土方との喧嘩もひと段落ついたらしい沖田が雪の隣に並び顔色が悪い銀時を無表情に見下ろした。
その手にはジュースが握られており、見せつけるように銀時の前で飲んでいく。
「しかしまァ…すぐばれるような嘘をよく思いつきますね、尊敬しやすぜィ」
「え、あー…ほら、俺昔から霊とか見えるからさ、それを人の役に立てたくて…あ、君の後ろにめちゃめちゃ怒ってるババアが見えるねぇ」
「マジですかィ?きっと駄菓子屋のババアだ…アイスの当たりクジ何回も偽造して騙したから怒ってんだ…どうしよう…」
「心配いらねーよ。俺達を解放し水を与えてやれば全部水に流すってよ」
「そうかィ、分かりやした。じゃあコレ鼻から飲んでくだせェ」
「え゙――いだだだだだだ!何これ!なんか懐かしい感覚ぅ!昔プールで溺れた時の感覚ぅ!!」
ジュースを飲みながらの問いに銀時は答えたが、雪は銀時から霊感があるなど聞いたことがなく『ああ、嘘か』と思う。
沖田は信じたのかは不明だが相変わらずの無表情で困ったように呟き、そんな沖田の言葉に解決策として開放を望んだが、それが裏目に出たようで沖田は持っていたジュースを銀時の鼻に流す。
高さを持って真っ直ぐに鼻にむかって落ちてくるジュースが銀時の鼻に入り、銀時は何とも懐かしい感覚を思い出した。
「銀ちゃん…私頭爆発しそう…バーンって…たすけて…」
「おいー!!いたいけな少女が頭爆発するってよおお!!いいのかてめえら!!この小説おわんぞコラアア!!」
「次回から『真選組血風帳』スタート!みんな絶対見てくれよな!」
「あ、コレ私達殺されますね。」
「誰か助けてえええ!」
雪はキラッキラと輝く少年のような目でどこかへ振り返って零す沖田の言葉に銀時達の死を感じ取った。
顔を引きつらせてそう呟く雪に銀時の叫びが響いた。
「おいトシ、そろそろ降ろしてやれよ…いい加減にしないと総悟がSに目覚めるぞ」
「何言ってんだ…あいつはサディスティック星からやってきた王子だぞ…もう手遅れだ。」
見兼ねた近藤が土方に心配したように言うが、返ってきた答えは『手遅れ』だった。
近藤には猫を多少かぶっているらしいく沖田のドSには気づいていない様子だった。
そんな2人の会話を聞きながら中々お許しが出ず更に神楽が本気で落ちそうなのと鼻からジュースを入れられ苦しそうにしている銀時を雪は見ていられなかった。
「あの…」
「あ?」
「もういいんじゃないですか?銀さんも神楽ちゃんも反省していますし…それにそろそろ銀さん達死んじゃう…」
「…………」
土方達に振り返りながら雪はチラリと銀時と神楽を心配そうに見つめた。
土方はそれを見て眉間にしわをよせる。
どうしてか雪が銀時を心配するのが気に入らないのだ。
その想いに気づかないほど土方は幼くもない。
何も言わずムスッとさせる土方に雪は焦りだけが積もっていく。
もしこのまま朝まで吊るされれば確実に死ぬ。
人がこの程度じゃ死なないのは百も承知だが…このままドSを傍に置いていたら確実に、死ぬ…そう確信が持てていた。
だから雪は『ええい!背に腹は代えられない!!』と勇気を出し、『土方さん!近藤さん!沖田さん!!』と声を大にして三人の名を呼ぶ。
呼ぶとより叫んだと言った方が正しいだろうか。
いつもは銀時や神楽の隣で大人しくそして煩くツッコミを入れていた雪に大声で呼ばれ三人は思わず背筋を伸ばしてしまいそうになった。
もし雪が妙なら確実に背筋を伸ばし、そしてのちに土下座だろう。
雪は三人どころか銀時も注目している中、スーッ、と空気を思いっきり吸い込みお腹に力を入れて目いっぱい叫んだ。
「銀さん達を解放してくれるなら私のおっぱい揉んでもかまいません!!」
表情を険しくさせ力いっぱい叫んだ言葉が、これ。
何もかも犠牲にしてでも助け出そうと思い言った言葉が、コレ。
豊満なおっぱいを強調させるように胸を張って叫んだ雪の言葉に周りは静けさだけが落ちていった。
誰もしゃべれなかった。
むしろ驚きすぎて言葉を失っていた。
それは沖田ですら驚いて言葉を失くすほどだった。
雪は何の反応もない彼らに何だかだんだんと居たたまれなくなり恥ずかしさが蘇っていく。
次第に冷静になっていく雪は自分の顔がカアア、と真っ赤に染まるのを感じる。
「な…何言ってんの雪ちゃんンンンン!!!そ、そんな…そんな破廉恥な事言う子に銀さんは育てた覚えはありませんよおおお!!!」
「だっ…だって!神楽ちゃんこれ言うと言う事聞いてくれるから…!!それに男の人っておっぱい好きだし…だから…聞いてくれるかなって…思って…っ!!」
「神楽はまだ乳離れしてねえから!まだママのおっぱいが恋しい時期なの!!女の子はそういう時期があるの!!だから神楽と世の人間と一緒に考えない!!めっ!!」
「で、でも!でもこれ銀さんのせいでもあるんですからね!!銀さんが私のおっぱいは俺のだー!!って対抗するからいつまでも神楽ちゃんがおっぱい離れができないんです!!もう神楽ちゃんをからかうのやめてくださいよっ!!私のおっぱいは私のであって決して神楽ちゃんや銀さんのおっぱいじゃないんですから!!」
「いいえー!雪ちゃんのおっぱいは俺のですぅー!!神楽には今は許してるだけですぅー!!いずれ雪ちゃんのおっぱいは銀さんのモノになる予定なんですぅーー!!!」
冷静になっていけば自分が何を言ったのか、そして誰に言っているのか自覚し、雪は自分で言っておいてなんだが泣きそうになった。
いち早く我に返ったのは銀時だった。
銀時は今以上に顔を真っ青に染め『こらー!!』と破廉恥極まりない事を言いだす雪を叱った。
本来の雪の性格ならすぐに謝るのだが、雪もテンパっているのかあわあわと手を振り言い訳を並べる。
実は神楽がいう事を聞かなかったとき、これを言えば大抵聞いてくれる。
始まりは家にいるのに全然手伝いをしてくれない神楽を動かすためから始まった。
『家でゴロゴロしてる暇あったら手伝ってよ!』とどうしても手が離せず、しかしやることが山ほどあるときに雪が神楽に言えば神楽は鼻をほじりながら『じゃあやってやるから後で雪のおっぱい揉ませろヨ』と交換条件に言いだしたのだ。
この時は手伝わせることで頭が一杯だったために頷いた雪だったが、後に手伝いを終えた神楽からの『終わったアルおっぱい揉ませろ。』と脅しに近い事を言われ後悔することとなる。
それ以来雪が気が向かいない時の神楽に何か頼めば必ずこの交換条件が上がり、雪は断ることを少しずつ覚えていく。
だが結局自分でやると言ってやっている雪から横取りして『動いてやったんだからお前のおっぱい寄越すネ』ともうモノ扱いのように言いだすのだ。
それを繰り返していけばもう雪は正直神楽がおっぱいを触る事に関しては慣れと諦めがつき好きにさせている。
そしてこんなに神楽がおっぱい狂になったのは銀時のせいだと雪は常々思っていた。
神楽が雪のおっぱいに頬ずりすれば、触れば、もふれば、突っつけば…とにかく神楽が雪のおっぱいに触れれば必ず銀時が横から茶々を入れるため、神楽が余計に頑なにおっぱいから離れなくなっていると考えていた。
誰かに相談すればいいと思うだろうが、他人におっぱい戦争されて困ってるんです…とは流石に言えず、そして更には姉に言えば確実に銀時は血祭りにあげられるだろう。
それはもう三途の川などすっとんでショートカットするほどに。
おっぱい揉んでもいいと断言した雪が言えることではないが、みんなの前で『雪のおっぱいは俺のモノ!』とドヤ顔で断言する銀時に雪は更に顔を赤くして銀時の前に速足で駆け寄り『もー!』と膨れながら銀時の青い顔を爪で引っ掻く。
普段は避けられるが今は吊られているため銀時の顔には8本の爪痕が縦に真っ直ぐ走り『い゙だーー!!』と叫んだ。
『銀さんのばかー!』と叫ぼうとした雪の顔横にすっと真剣が伸び、雪は『ひっ』、と小さな悲鳴を零した。
振り返ればそこには常日頃からオープンな瞳孔が更に開き、雪はその恐ろしさから思わず後ずさって銀時の後ろに隠れてしまう。
土方は盾にされている銀時の眉間に刀の先を向けた。
「てめぇ…さっきから黙って聞いてりゃ何雪に卑猥な事してんだ!前々から思ってたがな!てめえらのやりとりはセクハラだぞ!!あ゙ァ?」
「セクハラァ?何言っちゃってんの?これは愛情表現っていうんですぅー!父ちゃんと娘が母ちゃんのおっぱいを取り合いしてるだけですぅー!他人が人の家庭に首突っ込むのやめてくれませんー?」
「お前ら結婚してねえだろ!!大体な!それは愛情表現って言わねえよ!!立派なセクハラだボケ!!立派な犯罪だ!!強制わいせつ罪でしょっ引くぞオラ!!」
「ハッ!ばっかじゃねぇー?俺と雪は将来を誓い合った仲だぜ?そんな2人の間におめえらが決めた法律なんざ通用しねえんだよ!!」
「通用するわ!!どんな法律でも通用するわアアア!!人間であればどの法律も通用すんじゃアア!!」
雪は2人の言い合いに口が挟めないでいた。
土方がキレた事にちょっぴり嬉しく思いながらも(実は神楽と銀時のおっぱい口論に誰も助けてくれないことに不満を持っていた)、このままの勢いでは土方が銀時を刺し殺さんばかりだったためとにかく止めようと思った。
しかし非力な自分が侍2人を止めれるなど思っていない。
息子が生まれなかったがために父に男として生きさせられそうになったが、雪自身女の子なのは自覚していたために本気で道場を継ぐつもりはなかった。
父が望み道場が生き残れるならと男として生きようとは思ったが、父が亡くなり否応なしに女として生きていかなければならなかったため雪はもう男として生きるつもりはない。
だから剣術も真面目に稽古していない駄目駄目女子である。
そんな駄目人間が間に入ったら即死なため雪は止めれる人間であろう沖田に歩み寄った。
「お、沖田さん!あの二人…っていうか土方さん止めてくださいっ!!」
「……………」
確実に止めてくれるのは近藤だろうが、慌てていた雪は近くにいた沖田に助けを求める。
しかし沖田はドSな顔も見せず何も言わずただこちらを見つめているだけ。
雪はジッと何かを見つめる沖田の視線を辿っていく。
そこは自分の胸だった。
「……止めてくれたら顔も埋めていいですよ」
「2人ともそこまでにしてくだせぇ!見苦しいでさァ!!」
「………………」
雪はジッと自分のおっぱいを凝視する沖田に試しにポツリと呟いてみた。
その声はとても小さく聞こえるか聞こえない程度だったが、その呟きに沖田は剣を抜き2人の間に入る。
早業な彼の堂々たる下心に雪は何も言えずただ青々とした空を見上げ『男って…』と心の中で愚痴るしかなかったという。
炎天下の中、雪は目の前に広がる光景に何とも言えずただ見てるだけしかできなかった。
「……顔が真っ青…」
雪の目の前にいるのは木に吊るされている銀時と神楽がおり、雪は捕まったことは捕まったがすぐに解放され何故かお茶やお茶菓子を用意されもそもそと食べていた。
食べなくてもいいが食べなければいけない空気だったため今雪の口内はとてつもなく甘い。
「あの…悪気はなかったんです…その…仕事なくて…お金もなくて…通帳が落書き帳になってて…」
雪は隣で仲良く縁側に座る近藤を見る。
その正反対には土方がいたが、まだ『胸しかない地味女』事件は解決していない…というよりは雪がまだまだ根に持っているため土方を無視している。
それを当然気づいている土方は小さく舌打ちを打つも雪は一切こちらをみようとはしない。
雪に懇願された近藤は困ったように眉をさげ、土方を見た。
つられて土方を見れば土方もまた雪の視線に気づき目を落とす。
久々に目と目があった雪はとても悲しそうな顔をしており土方は負けそうになった。
「だからって詐欺はダメだろ…暫くはあのままだな」
「そんなぁ…じゃあ共犯の私もあそこに吊るしてくださいよ」
「お、自らMに心願たァ調教のしがいがあらァ…じゃあ早速、この縄で…」
「そおおごおお!!!だから言ってんだろ!!一般人をMにしたてんなって!!」
何だか自分だけが刑を免れている罪悪感からか一緒に吊るしてほしいと願い出るもやはり答えはNO。
どうしてかと聞けば局中法度の第46条の『万事屋憎むべし、しかし雪ちゃんにだけは優しくすべし』を出される始末。
だから先ほどお茶とお茶菓子が出てきたらしい。
雪は最初、近藤からそれを聞いた時素直に『馬鹿ですか?』と言ってしまった。
喧嘩をはじめた土方と沖田をよそに雪は2人に歩み寄り心配そうに声をかけた。
「大丈夫ですか、2人とも…」
「大丈夫なわけねえだろ…血ィ上るどころじゃねえよ…意識朦朧としてきたよ…」
「ちょっとどうするですか?土方さんすっごく怒ってますよ…しばらくこのままだって言ってました…私2人もおんぶできませんけど…」
「んなこと言ったってなぁ…縛られてるんだから仕方ねえだろ?」
「随分と余裕ですねィ、旦那。」
「沖田さん…」
先ほどから神楽が何も言わないのがとてつもなく心配になり、雪は無駄だと分かっていつつも手で煽って風を送ってやる。
神楽が『うー』やら『あー』やらしか喋れないなか、銀時は辛そうにしつつも雪との会話を成立しており、土方との喧嘩もひと段落ついたらしい沖田が雪の隣に並び顔色が悪い銀時を無表情に見下ろした。
その手にはジュースが握られており、見せつけるように銀時の前で飲んでいく。
「しかしまァ…すぐばれるような嘘をよく思いつきますね、尊敬しやすぜィ」
「え、あー…ほら、俺昔から霊とか見えるからさ、それを人の役に立てたくて…あ、君の後ろにめちゃめちゃ怒ってるババアが見えるねぇ」
「マジですかィ?きっと駄菓子屋のババアだ…アイスの当たりクジ何回も偽造して騙したから怒ってんだ…どうしよう…」
「心配いらねーよ。俺達を解放し水を与えてやれば全部水に流すってよ」
「そうかィ、分かりやした。じゃあコレ鼻から飲んでくだせェ」
「え゙――いだだだだだだ!何これ!なんか懐かしい感覚ぅ!昔プールで溺れた時の感覚ぅ!!」
ジュースを飲みながらの問いに銀時は答えたが、雪は銀時から霊感があるなど聞いたことがなく『ああ、嘘か』と思う。
沖田は信じたのかは不明だが相変わらずの無表情で困ったように呟き、そんな沖田の言葉に解決策として開放を望んだが、それが裏目に出たようで沖田は持っていたジュースを銀時の鼻に流す。
高さを持って真っ直ぐに鼻にむかって落ちてくるジュースが銀時の鼻に入り、銀時は何とも懐かしい感覚を思い出した。
「銀ちゃん…私頭爆発しそう…バーンって…たすけて…」
「おいー!!いたいけな少女が頭爆発するってよおお!!いいのかてめえら!!この小説おわんぞコラアア!!」
「次回から『真選組血風帳』スタート!みんな絶対見てくれよな!」
「あ、コレ私達殺されますね。」
「誰か助けてえええ!」
雪はキラッキラと輝く少年のような目でどこかへ振り返って零す沖田の言葉に銀時達の死を感じ取った。
顔を引きつらせてそう呟く雪に銀時の叫びが響いた。
「おいトシ、そろそろ降ろしてやれよ…いい加減にしないと総悟がSに目覚めるぞ」
「何言ってんだ…あいつはサディスティック星からやってきた王子だぞ…もう手遅れだ。」
見兼ねた近藤が土方に心配したように言うが、返ってきた答えは『手遅れ』だった。
近藤には猫を多少かぶっているらしいく沖田のドSには気づいていない様子だった。
そんな2人の会話を聞きながら中々お許しが出ず更に神楽が本気で落ちそうなのと鼻からジュースを入れられ苦しそうにしている銀時を雪は見ていられなかった。
「あの…」
「あ?」
「もういいんじゃないですか?銀さんも神楽ちゃんも反省していますし…それにそろそろ銀さん達死んじゃう…」
「…………」
土方達に振り返りながら雪はチラリと銀時と神楽を心配そうに見つめた。
土方はそれを見て眉間にしわをよせる。
どうしてか雪が銀時を心配するのが気に入らないのだ。
その想いに気づかないほど土方は幼くもない。
何も言わずムスッとさせる土方に雪は焦りだけが積もっていく。
もしこのまま朝まで吊るされれば確実に死ぬ。
人がこの程度じゃ死なないのは百も承知だが…このままドSを傍に置いていたら確実に、死ぬ…そう確信が持てていた。
だから雪は『ええい!背に腹は代えられない!!』と勇気を出し、『土方さん!近藤さん!沖田さん!!』と声を大にして三人の名を呼ぶ。
呼ぶとより叫んだと言った方が正しいだろうか。
いつもは銀時や神楽の隣で大人しくそして煩くツッコミを入れていた雪に大声で呼ばれ三人は思わず背筋を伸ばしてしまいそうになった。
もし雪が妙なら確実に背筋を伸ばし、そしてのちに土下座だろう。
雪は三人どころか銀時も注目している中、スーッ、と空気を思いっきり吸い込みお腹に力を入れて目いっぱい叫んだ。
「銀さん達を解放してくれるなら私のおっぱい揉んでもかまいません!!」
表情を険しくさせ力いっぱい叫んだ言葉が、これ。
何もかも犠牲にしてでも助け出そうと思い言った言葉が、コレ。
豊満なおっぱいを強調させるように胸を張って叫んだ雪の言葉に周りは静けさだけが落ちていった。
誰もしゃべれなかった。
むしろ驚きすぎて言葉を失っていた。
それは沖田ですら驚いて言葉を失くすほどだった。
雪は何の反応もない彼らに何だかだんだんと居たたまれなくなり恥ずかしさが蘇っていく。
次第に冷静になっていく雪は自分の顔がカアア、と真っ赤に染まるのを感じる。
「な…何言ってんの雪ちゃんンンンン!!!そ、そんな…そんな破廉恥な事言う子に銀さんは育てた覚えはありませんよおおお!!!」
「だっ…だって!神楽ちゃんこれ言うと言う事聞いてくれるから…!!それに男の人っておっぱい好きだし…だから…聞いてくれるかなって…思って…っ!!」
「神楽はまだ乳離れしてねえから!まだママのおっぱいが恋しい時期なの!!女の子はそういう時期があるの!!だから神楽と世の人間と一緒に考えない!!めっ!!」
「で、でも!でもこれ銀さんのせいでもあるんですからね!!銀さんが私のおっぱいは俺のだー!!って対抗するからいつまでも神楽ちゃんがおっぱい離れができないんです!!もう神楽ちゃんをからかうのやめてくださいよっ!!私のおっぱいは私のであって決して神楽ちゃんや銀さんのおっぱいじゃないんですから!!」
「いいえー!雪ちゃんのおっぱいは俺のですぅー!!神楽には今は許してるだけですぅー!!いずれ雪ちゃんのおっぱいは銀さんのモノになる予定なんですぅーー!!!」
冷静になっていけば自分が何を言ったのか、そして誰に言っているのか自覚し、雪は自分で言っておいてなんだが泣きそうになった。
いち早く我に返ったのは銀時だった。
銀時は今以上に顔を真っ青に染め『こらー!!』と破廉恥極まりない事を言いだす雪を叱った。
本来の雪の性格ならすぐに謝るのだが、雪もテンパっているのかあわあわと手を振り言い訳を並べる。
実は神楽がいう事を聞かなかったとき、これを言えば大抵聞いてくれる。
始まりは家にいるのに全然手伝いをしてくれない神楽を動かすためから始まった。
『家でゴロゴロしてる暇あったら手伝ってよ!』とどうしても手が離せず、しかしやることが山ほどあるときに雪が神楽に言えば神楽は鼻をほじりながら『じゃあやってやるから後で雪のおっぱい揉ませろヨ』と交換条件に言いだしたのだ。
この時は手伝わせることで頭が一杯だったために頷いた雪だったが、後に手伝いを終えた神楽からの『終わったアルおっぱい揉ませろ。』と脅しに近い事を言われ後悔することとなる。
それ以来雪が気が向かいない時の神楽に何か頼めば必ずこの交換条件が上がり、雪は断ることを少しずつ覚えていく。
だが結局自分でやると言ってやっている雪から横取りして『動いてやったんだからお前のおっぱい寄越すネ』ともうモノ扱いのように言いだすのだ。
それを繰り返していけばもう雪は正直神楽がおっぱいを触る事に関しては慣れと諦めがつき好きにさせている。
そしてこんなに神楽がおっぱい狂になったのは銀時のせいだと雪は常々思っていた。
神楽が雪のおっぱいに頬ずりすれば、触れば、もふれば、突っつけば…とにかく神楽が雪のおっぱいに触れれば必ず銀時が横から茶々を入れるため、神楽が余計に頑なにおっぱいから離れなくなっていると考えていた。
誰かに相談すればいいと思うだろうが、他人におっぱい戦争されて困ってるんです…とは流石に言えず、そして更には姉に言えば確実に銀時は血祭りにあげられるだろう。
それはもう三途の川などすっとんでショートカットするほどに。
おっぱい揉んでもいいと断言した雪が言えることではないが、みんなの前で『雪のおっぱいは俺のモノ!』とドヤ顔で断言する銀時に雪は更に顔を赤くして銀時の前に速足で駆け寄り『もー!』と膨れながら銀時の青い顔を爪で引っ掻く。
普段は避けられるが今は吊られているため銀時の顔には8本の爪痕が縦に真っ直ぐ走り『い゙だーー!!』と叫んだ。
『銀さんのばかー!』と叫ぼうとした雪の顔横にすっと真剣が伸び、雪は『ひっ』、と小さな悲鳴を零した。
振り返ればそこには常日頃からオープンな瞳孔が更に開き、雪はその恐ろしさから思わず後ずさって銀時の後ろに隠れてしまう。
土方は盾にされている銀時の眉間に刀の先を向けた。
「てめぇ…さっきから黙って聞いてりゃ何雪に卑猥な事してんだ!前々から思ってたがな!てめえらのやりとりはセクハラだぞ!!あ゙ァ?」
「セクハラァ?何言っちゃってんの?これは愛情表現っていうんですぅー!父ちゃんと娘が母ちゃんのおっぱいを取り合いしてるだけですぅー!他人が人の家庭に首突っ込むのやめてくれませんー?」
「お前ら結婚してねえだろ!!大体な!それは愛情表現って言わねえよ!!立派なセクハラだボケ!!立派な犯罪だ!!強制わいせつ罪でしょっ引くぞオラ!!」
「ハッ!ばっかじゃねぇー?俺と雪は将来を誓い合った仲だぜ?そんな2人の間におめえらが決めた法律なんざ通用しねえんだよ!!」
「通用するわ!!どんな法律でも通用するわアアア!!人間であればどの法律も通用すんじゃアア!!」
雪は2人の言い合いに口が挟めないでいた。
土方がキレた事にちょっぴり嬉しく思いながらも(実は神楽と銀時のおっぱい口論に誰も助けてくれないことに不満を持っていた)、このままの勢いでは土方が銀時を刺し殺さんばかりだったためとにかく止めようと思った。
しかし非力な自分が侍2人を止めれるなど思っていない。
息子が生まれなかったがために父に男として生きさせられそうになったが、雪自身女の子なのは自覚していたために本気で道場を継ぐつもりはなかった。
父が望み道場が生き残れるならと男として生きようとは思ったが、父が亡くなり否応なしに女として生きていかなければならなかったため雪はもう男として生きるつもりはない。
だから剣術も真面目に稽古していない駄目駄目女子である。
そんな駄目人間が間に入ったら即死なため雪は止めれる人間であろう沖田に歩み寄った。
「お、沖田さん!あの二人…っていうか土方さん止めてくださいっ!!」
「……………」
確実に止めてくれるのは近藤だろうが、慌てていた雪は近くにいた沖田に助けを求める。
しかし沖田はドSな顔も見せず何も言わずただこちらを見つめているだけ。
雪はジッと何かを見つめる沖田の視線を辿っていく。
そこは自分の胸だった。
「……止めてくれたら顔も埋めていいですよ」
「2人ともそこまでにしてくだせぇ!見苦しいでさァ!!」
「………………」
雪はジッと自分のおっぱいを凝視する沖田に試しにポツリと呟いてみた。
その声はとても小さく聞こえるか聞こえない程度だったが、その呟きに沖田は剣を抜き2人の間に入る。
早業な彼の堂々たる下心に雪は何も言えずただ青々とした空を見上げ『男って…』と心の中で愚痴るしかなかったという。
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